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ミステリ以外

『剣と紅』(高殿円)、読了。


 天正14年、小牧・長久手の戦の後、病を患って伏せる徳川家康は、ふとしたきっかけで、寵臣・井伊直政からその養母の物語を聞く事になる。不思議と物事の先を見通し、“井伊谷の小法師”と言われた、千里眼の持ち主、その名を香(かぐ)。名門井伊家の総領姫でありながら十六を前に出家、仏門に入りながらもやがて井伊家存続の為に並々なら手腕を振るったその養母とは、如何なる人物であったのか。のちに遠州に女地頭ありと呼ばれた、井伊二郎法師直虎の物語である。
香、のちの井伊直虎の幼年から晩年までを軸に、戦国動乱の激流に揉まれる遠州の名門・井伊家の興亡を描いた歴史小説。主人公を異能のヒロインと置きつつ全体的には歴史小説として抑制が効いており、話の流れがてきぱきと進行するので読みやすく、諸々の要素も綺麗に収まってなかなか面白かったです。
登場人物では、家老・小野政次の歪み方が個人的に凄くツボ。才知ゆえの野心と、香に対する屈折した心情を併せ持ち、そもそも香自身が政次を歪ませた要因の一つといえるのですが、ではその選択が間違っていたのかというと……という辺りが、逆説としての歴史小説の面白さ。最期の描き方も良く、現在放映中の大河ドラマでは一体どういった人物として描かれているのか、今更ながらに気になってきてしまいました。
他の読みどころは、調薬マニアの主君からオットセイを原材料にした謎の手作り滋養強壮剤を贈られてマジ説教する井伊直政26歳。そして武田軍は山賊。