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『仮面ライダー555』感想25

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第36話「仮面」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹
「真理! 俺は……俺は!」
「……嫌! 駄目……来ないで。来ないで!!」
山中に逃げていった真理を追う巧だが激しい拒絶を受け、草加が真理をがしっと回収。
「大丈夫だ、真理。俺がついてる。奴の正体は見ての通り。俺たちをずっと騙してたんだ!」
隙あらば、火元にガソリンを注ぎ込んで適度に空気も吹き込んでいく『555』スタイル。
真理は草加の手の中で気絶してしまい、草加は呆然と佇む巧に厳しい言葉を投げつける。
「言った筈だ、もう、今まで通りにいかないってな」
巧達が大きな亀裂の淵に立たされている頃、勇治は巧がオルフェノクである事を結花と海堂にも伝えていた。
「一応、君たちにも言っておく」
一応なのか!
巧のプライバシーに配慮していたわけでなく、重要な情報の共有だと考えているわけでもないらしく、勇治は、とことん勇治です。
海堂はなんだかんだで少年を気にして福祉センターに電話をかけており、少年の存在は明確に終盤へ向けた布石という形に。
菊池クリーニングでは真実を巡り、情報を整理しきれない真理が、啓太郎に平手打ち。
「なんで……なんでこんな事になっちゃうのよ!」
混乱し、膝を抱える真理に、囁きかける草加
「悪いのは全て乾巧だ。少なくとも奴は俺たちの信頼関係を裏切ったんだからな」
隙あらば、落とし穴に落ちた相手に上から泥水とタバスコを振りかけて嘲笑う『555』スタイル。
「でも……本当にそうなのかな。確かに俺、びっくりしたけど、でも、でも……裏切られたってのは……なんか、違う気がする」
頭を抱えて床を転がりながらも、巧をかばう啓太郎に、草加は苛立ちをぶつける。
「どこまでもおめでたい奴だな! それじゃ君は今まで通り、乾巧と付き合っていけるというのか」
「それは!」
温厚な啓太郎も立ち上がって草加に掴みかかるが、二人の諍いは真理に止められる。
一方、ふーふー社長は冴子と琢磨にいびられていた。
「では、約束しましょう。乾巧は必ずラッキークローバに入る事になると」
一夜が明け、橋の下で黄昏れながら、過ぎし日の平凡な日常の幻影を見ていた巧に、啓太郎から電話がかかってくる。同じく、ベンチに呆然と座り込みながら巧の幻影を見ていた真理の元には、草加が姿を見せる。巧の事を忘れるよう告げる草加に、蘇生手術と巧ショックで思い出した同窓会の日の出来事を伝える真理。そこには何故か、居なかった筈の草加の姿も……。
「黙れ!」
狼狽して声を荒げた草加は作り笑いで慌てて取り繕い、妄想だと一刀両断するのですが、過去も現在も合わせて非常に不穏になって参りました。ところでこの同窓会、関係者が集う過去の出来事が大きなキーになっているが、終盤までその真相が明かされない……という手法は全く『アギト』と同様なのですが、どうして2年前の作品と同じ構造を持ち込んだのかは、少々気になる所。まあ2年連続というわけではないので作り手の側はそこまで気にしなかったのか、単純に気に入ったプロットだったのでもう一度やりたかったのかもしれませんが。
その頃、巧と啓太郎は、池でボートに浮かんでいた。
……石田監督はこういうのホント好きだなぁ(笑)
「俺思ったんだよね、たっくんは、たっくんだって。だからうちに帰ってきてよ。今まで通りみんなで暮らそうよ」
啓太郎は作ってきた弁当を取り出すが、巧に差し出したその両手はガタガタと震え、俯いてしまう。
「無理すんな」
啓太郎の優しさを嬉しく思いながらも、その恐怖も理解する巧の優しさが見えて、いい演技でした。
根を同じくする怪物とヒーローを、「人間」の視点から相対化するというのは、“物語に無条件に認められるヒーロー”を解体して現代に新たに変身ヒーローを立脚させようとした『クウガ』が強く意識した手法ですが、今作ではそれを“怪物と同じ扱いを受けるヒーロー”ではなく、“ヒーローは実は怪物だった”という形で持ち込み、怪人の側のドラマを描くという手法を「仮面ライダー」という象徴の逆転に利用する事で、今作が『仮面ライダー』である事の意味を生み出しています。
そしてそれが問いかけるのが、ヒーローとは何か? を突き詰めていった時に生じる、では、人間とは何か? に繋がっていくのがかつての『鳥人戦隊ジェットマン』と通底する作劇で、そこに井上敏樹がヒーロー作品を通してやりたい事、の一端が見えるような気がします。
「――さて」
「……ちょっと待ってよたっくん!」
立ち去ろうとする巧に、啓太郎はファイズギアを渡そうとするが、そこで勇治からの電話が繋がり、巧と勇治は再びバッティングセンターで邂逅する。
「なあ、おまえは、オルフェノクである事をどう思ってんだ? 自分を、怖いと思った事はないのか?」
巧がオルフェノクになったのは、子供の頃と判明。
「ええ、ありますよ。以前、オルフェノクの力に呑み込まれそうになった事がある。でも、結局は意思の持ちようです。人間でありたいという気持ちが強ければ、何も心配する事は無い」
「強いな、あんたは」
巧がこれまでオルフェノクに変身しなかったのは、自分自身への恐怖でもあった、と理由が補強された上で、オルフェノクの力を制御している勇治の精神力の強さが持ち上げられるのですが、「人間でありたいという気持ちが強ければ、何も心配する事は無い」という自己申告には、事情を正直に話せるわけがないにしても余りにも大きな欠落があり、勇治の足下には引き続き深くて大きな穴が開きっぱなし。
そして散々、乾巧を信じていいのか悩んでいたのに巧がオルフェノクとわかった途端にころっと態度を変えてしまっており、勇治が、人間でありたいと口では言いいながら人間を信用できないのは悲哀ではあるのですが、なにしろ自覚がないのが非常にタチが悪い。
「俺にはそこまで自信が無いんだ。以前、一度だけ自分の意思でオルフェノクに変身した事があるが、その前後の記憶がないんだ。なんかこう、巨大な力に呑み込まれてしまったような感じで……
もしかしたら俺は今まで、オルフェノクである自分を否定する為に――ファイズとして戦ってきたのかもしれない。
……わかるだろ?
人間を守るとかじゃなくて、本当の自分の姿を打ち消す為に、戦ってきたのかも。
そんな俺に、このベルトを持ってる資格はない。だから、これはあんたが預かっといてくれ」
異形の存在が怪物を退治する事で社会に迎えられて英雄となる、或いは、半人半獣の文化英雄が専制君主となった時に新たな人間英雄に打ち破られる、というのは古代より存在するモチーフであり、巧がファイズとして戦っていた理由、怪物と英雄の同根性がかなりストレートに語られるのですが、ここに来て、改造人間テーゼという以上に、『ファイズ』にはかなり、神話的な源流に遡った“英雄の物語”の意識を感じます。
クウガ』とは別のアプローチで、ヒーローとは何か、というのを掘り起こそうという狙いであったのかもしれません。
そういう観点で、もう少し今作における神話的モチーフをこじつけると、度々映像が挿入されるスマートブレイン社屋が高層ビルなのは世界樹(軸)を示し、ならば地下流星塾とは死の世界のイメージであり、そこの王にして、父殺しの対象になりそうな花形前社長が、ヤギのオルフェノクというのは、なかなか意味深長。そしてベルトとは、世界を囲む円たる世界蛇でもあるのか。
また今作を離れると、2年後の『響鬼』のモチーフが、まさしく英雄の対にして同族である“鬼”というのは、もしかしたら今作を意識した結果なのだろうかとも思えてきます。放映当時はノれなかったのですが、配信順調に行けば次の次でしょうし、この辺り踏まえて、じっくり見てみようかなぁ……。
「俺にはわかる。このベルトは、オルフェノクを倒す為に作られたものだ。もしもの時は、こいつを使って俺を倒してくれ」
「……大丈夫。そんな事にはなりませんよ。君はもう一度、自信を持って、このベルトを巻く時が来る。俺はそう信じてます」
繋がりの象徴であるベルトについて触れ笑顔で励ます勇治に、しかしそれを手放して託した巧は、今度は草加に電話で呼び出される事に。
「俺はオルフェノクを信用していない。スマートブレインの圧力だけで、オルフェノクが人を襲ってると思うか。違うな? オルフェノクとなった人間は、心まで腐っていくんだ」
敵視する姿勢を崩さない草加だが、真理の働きかけで巧は店に戻る事になり、黙々とクリーニングを続ける4人。
「色々あったけど、これからもみんなで頑張らなくちゃ。ね?」
「ああ」
草加、それでいいのか、草加
真理、それでいいのか、真理。
いつの間にか全員の人生が菊池クリーニングの発展と栄光に捧げられていて、毎日の食事に何か盛られているのではないかと心配になります(笑)
だが、商品を渡す際に巧と触れた手が、フラッシュバックする記憶からウルフオルフェノクへの本能的な恐怖を感じる真理の抑制を決壊させてしまい、繰り返し謝りながらも、自分ではどうしようもない感情の本流に乱され、白いワイシャツ(今作における“幸せ”の象徴)に顔を埋めながら真理は嗚咽する。
巧は沈黙するしかなく、啓太郎は言葉を失い、草加は静かに激怒し……もはや決して元通りにはならない関係を痛切にえぐり出して凄まじい。一方で、今回何度も繰り返され、真理や啓太郎が必死に取り繕おうとする“今まで通り”では駄目で、新しい関係を築かなくてはいけないのだ、という形の否定には、わずかな希望の光も垣間見えます。
「いいんだ、真理が悪いわけじゃない。ここは、俺がいるべき所じゃないんだよ」
「そんな、たっくん……」
「啓太郎、ファイズの力が必要な時は木場勇治に連絡してみろ」
真理を残し、座り込む啓太郎に別れを告げてバイクで走り去る巧だが、その行く手を阻んだのは久々登場でハイテンションのスマートレディ。
「はーい! あなたが噂の乾巧くんね。会いたかったわ! お姉さん、ハンサムな子って、大好きなの。これからもずーっと、仲良くしてね」
(な・ぐ・り・た・い)
という顔になった巧は社長の下へ連れていかれ、社長が新たに入手したという、流星塾同窓会のビデオ映像を見せられる。そこに映っていたのは、夜の公園でやかましく騒ぐ塾生が近所の人に怒られる姿……ではなく、オルフェノクに襲われて次々と焼却されていく姿……そしてそれを行い、真理に爪を向けたのは――ウルフオルフェノク
これホント、野宿していた所にサッカーボールが飛んできてイラっとしたのでは。
「嘘だ……俺じゃない……俺じゃない!」
「ようこそ、ラッキークローバーへ」
最近何かと手を噛まれる事が多かった社長ですが、ここの言い方はとても格好良かったです。
社長があれだけ知りたがっていた同窓会の日の出来事が具体的な映像で出てくるのは余りに都合が良すぎるので、手術中に真理の記憶をスマートブレインの超科学でキャッチして、それを一部都合良く改変したとかでしょうか。真犯人はウルフオルフェノクはミスディレクションかと思われますが、草加が頑なに口を閉ざすのは、皆(真理)を見捨てて逃げた負い目とかそういう事なのか。
「巧……さがそ……」
啓太郎と車で配達中、心の整理がつかぬままに、それでも巧に謝りたいと願う真理だが、二人はボクサーオルフェノクの襲撃を受け、啓太郎から連絡を受けた勇治が、ファイズへと変身。
巧を徹底的に追い込んだ上で、長らく天秤のもう片方に置かれていた勇治が遂に仮面ライダーへと変身。
そして、木場勇治もまた、ファイズという仮面を手に入れる事で人間として“力”を振るえるという、この邪悪で一杯の構図。
古来、変装とは人間が神霊の属性を得るための行為であり、これは変身ヒーロー物の源流にある考え方ですが、ファイズギアはまさしく聖俗を転換する呪物の象徴であると共に、人間が神霊の属性を得、同時に神霊が人間の属性を得る、という双方向性を持った触媒として機能しています。
そしてそれ故に怪物と人間は、属性の転換にとどまらず、ファイズの中で統合されてしまう。
ファイズとは、怪物か、人間か。
ファイズが拳を向けるのは、怪物か、人間か。
果たしてそれを決める者自身は、怪物なのか、人間なのか。

「人間であるという事が、そんなに大事なことなのか?」
真面目に説明書を読んでいたらしい勇治ファイズは鮮やかにボクサーを焼却するが、真理と巧はその姿をどこか切なげに見つめ、え、なんでそんな顔されないといけないの、みたいな感じになる勇治ファイズはさすがに気の毒。
これまで、ファイズは(特定の条件さえ満たしていれば)誰でも被ってしまえる仮面であり、その“姿”はヒーローの精神性を何ら象徴していなかったのですが、ここで、真理と啓太郎にとってはもはやそうではなくなっている、という大きな意味づけの変化が描かれます。
ファイズという仮面に、乾巧の精神性が重なる事で、仮面ライダーファイズ/乾巧が真の英雄として社会に帰属しえる、という道筋が搦め手から示されたその時――
「さあ、見せてもらいますよ。あなたの決意のほど」
「木場勇治を倒し、ファイズのベルトを取り戻してごらんなさい。そうすれば、あなたはラッキークローバーに入る事ができる」
琢磨、冴子、そして、乾巧がそこに姿を見せる。
巧はオルフェノクへと変身してファイズに襲いかかり、今回の勇治は、さすがに被害者。
「たくみぃーーー!!」
真理の絶叫が響き渡る中、巧は、就職の為に心まで怪物になってしまうのか?!
前回今回と、最近の色物扱いが嘘のように琢磨が真っ当に悪役なのですが、ファイズギア後遺症が薄れてきたのか。画面的には冴子さん一人だとこういった嫌がらせの時にハッタリが弱いし、北崎は格の問題で簡単に出し入れしにくいし、と琢磨の存在が便利な頭数として有効に働いており、ここまで生き延びてきた甲斐がありました(笑)
戦力としてはゴミ同然なのは如何ともしがたいですが、ハイパー琢磨とかになれないものか。
次回――草加雅人、本気。