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『仮面ライダー555』感想28

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第39話「チベットからの小包」◆ (監督:田村直己 脚本:井上敏樹
勇治をぐりぐり踏むも、突然、紙飛行機に気を取られてその場を去っていく北崎。
「面白そうだね……僕にもやらしてよ」
のんびり洗車していた草加には里奈から救援を求める電話が入り、草加は真理に肩を借りて逃走中の勇治にも連絡。薔薇の海に沈みかけていた巧の元にまずは勇治が駆けつけて、ファイズに変身。
続けて草加も現着し、挿入歌のサビと共に携帯電話を構え、「変身!」から社長オルフェノクへ向けてダッシュする草加の姿がカイザへと変わる映像がスピード感もあって非常に格好良く、今までの草加の「変身!」の中でもトップクラスの見栄え。
挿入歌の力もあり、なんだか色々と騙されそうになります(笑)
素手の戦いでもファイズとカイザを圧倒する節穴オルフェノクはダブル円錐キックを受けるが、節穴忍法バラ隠れで逃亡……て、え、跳ね返すのではなくて、逃亡なのか。
少々微妙な事になりましたが、出がかりを当てさえすれば強制で一撃死ほぼ確定に持ち込む円錐キックを回避しただけで、凄い事だと思っておくべきか。
複雑な思いが交錯する中、巧は逃走。草加の制止を振り切ってそれを追いかけるも見失ってしまう真理だが、別で探していた勇治が気絶していた巧を拾い、ひとまずマンションへ運び込む事に。
一方、連続ビル爆破の容疑者の足取りがまるで掴めない事から、ますますスマートブレインへの疑惑を強める刑事コンビ…………全く与り知らぬ事とはいえ、結果的に口を封じたのは勇治ファイズという(^^;
「乾巧が犯人じゃない?」
そして草加は、真理から甦った真の記憶を説明される。
何度目かの回想シーンで、門の所にかけられた流星塾の看板が初めて映り、塾生達がはしゃいでいたのは、流星塾の校庭と判明。夜空には月が浮かんでおり、この時点では、流星塾は普通に地上にあった模様です。という事はスマートブレインの地下にあるのは、流星塾の一部?を移設した、という事になるのか。
クリーニング店では、デルタギアを放り投げた三原が半狂乱。
「ほっといてくれよ! もう駄目なんだよ俺は! もう俺は戦えないんだ……デルタギア持つ資格なんて、俺には無いんだよ……」
一方、巧が拾われてきたメゾンオルフェノクでは、気まずい空気が流れていた。
「でも、わからないな。君ほどの男が何をそんなに悩んでいるのか。たとえオルフェノクであっても、人間の心を失わなければそれでいい。人間として生きていけると思うんだけど」
どの口で言うのか。
勇治は千恵殺しについて、あれは仕方のない事だったけどそれを反省して今の自分は人間として生きている、と自己防衛しているのか、或いはもうすっかり記憶に蓋をして千恵を殺してなどいない事になっている形で現実逃避しているのか、“壊れ方の深度”がハッキリしないのが、個人的に一番怖い所です。
これが例えば明確に、“人間の心”という基準から既に狂っている、というぐらい壊れているのが明示されていればそういうキャラクターとして受け入れられるのですが、勇治のこの掴み所の無い壊れ方というのが、非常に受け入れにくく、そして恐怖を感じる部分。それに周囲の人間が皆まとめて騙されている、というのも恐ろしい。
「…………自信がないんだ俺には。……いつ人間の心を失うか。いつ人間を襲うかわからない」
自分は境界のどちら側に居るのか、どちら側で生きる事を許されるのか、そして何が自分を裁いてくれるのか――巧がもがき苦しむ一方、草加もまたあの夜の真実を求め、澤田と対面する。
「意味がないな。どうせ君は死ぬんだから」
しかしこの二人に対話が成立する筈もなく、再び激突する直前、駆け込んでくる真理。気を取られた草加は腹に河童パンチの直撃を受けて吹き飛び、だいぶ可哀想(笑)
「生きていたのか、真理」
「教えて本当の事。流星塾の同窓会の日の事」
なんだかんだ変身を解いてしまう心がゼラチン質の澤田は、遂に重い口を開く。
「あの日俺たちは死んだ。……一人残らず」
同窓会の日の夜、流星塾の校庭ではしゃいでいた塾生達は、塾生の中に紛れ込んでいたオルフェノクと、もう一体のオルフェノクによって皆殺しにされたのだった。
「全て罠だったんだ、あの同窓会は。スマートブレインのね」
今作屈指のサバイバー・里奈も、この時点で一度、無惨に刺殺されていた事が判明。……考えてみれば琢磨も一度死んでいる筈なので、真のサバイバーになる為には一度死ぬ必要があるのか。
この虐殺による悲鳴を耳にした通りすがりの乾巧は止めに入ってウルフオルフェノクに変身し、オルフェノクの一体をウルフパンチで焼却するも、北崎オルフェノクに一蹴されて気絶。巧の言によるとオルフェノクに変身した前後の記憶を失っているとの事ですが、巧が東京を離れて九州で自分探しをしていたのは、喫茶店問題とは別に、この事件も影響しているのかと思われます。
「でもどうして? 今私たちこうして生きているのに?!」
蘇生系ヒロイン、という新ジャンルを切り拓く真理に近づく澤田だが、割って入った草加がカイザに変身。激突する両者だが、戦闘中、指先が砂になって崩れるという謎の異変に襲われた河童はそのまま逃走する……。
「できれば知ってほしくなかった。君には普通の女の子として、生きてほしかったから」
「まだ私、何がなんだかよくわかんない。でも……今は嬉しいんだ。私たちを襲ったのは、巧じゃないってハッキリしたから」
見ている側もまだ腑に落ちない部分が幾つかありますが、節穴社長が同窓会の出来事を知らなかった(知りたがっていた)事を考えると、事件の裏で糸を引いていたのは先代・花形社長という事になるのか。花形が何らかの目的で子供達を犠牲にしたのか、社内の別の派閥が子供達を犠牲にした事で花形がスマートブレインを裏切ったのかは、まだ何ともですが。
澤田の証言と真理の記憶から、巧オルフェノクに対する誤解を解いた草加は、塾生虐殺の真犯人としてラッキークローバのオルフェノクに復讐の標的を絞り、逃げて琢磨ーーーーーー!!
一方真理は、正体不明の男から届けられたという小包の中に入っていた、呪いのアイテムもとい、いかにもファイズの新装備を手に巧の元を訪れると、同窓会の夜の出来事を説明。
「俺じゃ……ない?」
むしろ自分が真理達を助けようとしていたと聞かされるも、巧はその受け取りを拒否。
「もし、お前の言う通りだとしても…………駄目だ。…………俺は自分が怖いんだ。今は平気でも、いつ人間の心をなくすかわからない。澤田のように」


「俺、人と親しくなんのが怖いんだ。人に裏切られるのが怖いんじゃない。俺が人を裏切んのが怖いんだ」
「なんでそんな風に思うの?」
「…………自信ないんだ、自分に」
(第5話)
と、他者と関係を深める事から逃げ、一匹狼を気取っていた序盤の巧は、現代の若者風悩みと見せて、自己に関する重い問題を背負っていたと接続。
「おい……ラッキークローバーのメンバー、だな」
その頃、バー・クローバーの前で出待ちしていた草加は、やたら肌色成分高めの北崎に因縁をつけていた。
「仇を取らせてもらう。俺自身の仇をなぁ!」
「ごめんね。今日は気が乗らないんだ。違う相手で我慢してよ」
予告の締めにも使われた格好いい台詞なのに、鮮やかにすかされたーーー。
「ふざけるな!」
変身するカイザだが、北崎に召喚された新手のオルフェノクに頭上からネットをかぶせられ、斧で攻撃を受ける。……北崎が格好良く指を鳴らしたら突然高い所から現れたのですが、親衛隊?(^^;
「舐めるなぁ!」
全身にネットを被りながら変身、と今回は変身に凝る草加は、トマホークオルフェノクに怒濤の反撃を浴びせ、それを見た北崎は、気怠げな様子のままながら自らも変身。
2対1となったカイザは苦境に追い込まれて変身が解け、そこに駆けつけるのはファイズギアを持った真理と、役立たずの三原に代わってデルタギアを手にした里奈、という予想外のコンビ(そして二人を物陰からピーピングする巧と三原)。
苦節38話、今回こそ格好良く変身しようとするも、またもエラーが出て綺麗に背後へと吹っ飛ぶ真理。あまりにも鮮やかに飛んでちょっと笑えるのですが、下手すると〔死因:認証エラー〕で3度目?のご臨終を迎えてしまう所でした。まあ、某世紀末なら自爆装置が作動する所なので、ファイズギアは地球に優しい。
里奈の方はデルタに変身成功するが、攻撃を二回食らってあっさり変身解除。
……未だかつてない貧弱なデルタですが、これまで、カイザにもデルタにもなる事なくここまで生き延び続けてきた里奈は、あまりにも運動神経が悪いので、あいつに変身させるのだけはやめよう的な、塾生達の暗黙の了解があったのか。
立ち上がった真理はもう一度変身を試みるも再びエラーで吹っ飛び、その姿に居ても立ってもいられなくなった巧がファイズギアを拾い、第33話以来、6話ぶりとなる変身。
田村監督はくしくも第17話に続いて、ファイズとして戦えなくなった巧が再びファイズに変身するエピソードを担当する事に。
改めてこの間を振り返ってみると、
−−−−−
33話:前回からの引きで冒頭に馬と戦闘
34話:出番なし
35話:出番なし
36話:勇治ファイズ
37話:勇治ファイズ
38話:勇治ファイズ
−−−−−
と約1ヶ月半の中で実質半分ぐらいファイズ不在、という、よくもまあやったものです(^^;
個人的に、ヒーロー物はヒーロー物の文法の中で何をどう見せるか、が肝心な所だと思っていますので(文法の拡張も含めて)、仮にもタイトルキャラクターの出番が無い、という事そのものは良し悪しありますが、この間カイザが頑張ってその不在を埋めているので、複数ライダーの一つの利用法、とはいえるのかも。
そして真理は、巧ファイズチベットから届いた気がして仕方がない怪しい新アイテム・ファイズアブソーバー(仮称)を渡す。
逞しくあれ。 そして怯む事なかれ。絶望の後には必ず希望が来る。
ライダーシステムに不備は無い!
「もう一度変身コードを入力して!」
届いたアイテムの説明書は熟読、それが『555』の常識。
『Awaking... Standing by...』
ファイズが携帯電話をはめて変身コードを入力すると、アブソーバーを通して衛星軌道のスマートブレイン衛星から電波が放たれ、ファイズがマジカルバーニング。赤いボディに黒いライン、とこれまでと配色が逆転したのは、全身に血流が漲ったというイメージでしょうか……? かくして2体のオルフェノクを前に、555−モード2が覚醒した所で、つづく。
またしても、予告で見せた一番いい所で次回へ続いてしまう作りが非常に不満ですが、真紅のファイズの力や如何に。そして、正統派のヒーローになるのかと思いきや、重い荷物を背負わされた凡人という位置づけで描かれる三原は、立ち上がる理由を見つける事ができるのか。その時、草加はどんな道を選ぶのか?!
目を開け、そして、立ち上がれ。
次回――今作でこの並びが見られるとは。