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『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想・第16話

◆Space.16「スティンガー、兄との再会」◆ (監督:加藤弘之 脚本:毛利亘宏)
「許せ。あの時は何も話す事ができなかった」と何やら事情があった事をほのめかし、仲間である筈のタコに毒を打ち込んだサソリ仮面様から密書を渡されたスティンガーは、兄との話し合いの場を持とうとし、否定的ながらもそれに付き合うチャンプ。
兄を信じたいという気持ちが強すぎて感情に流され冷静な判断力を失っているスティンガーに対して、スティンガーの気持ちを汲む情を見せつつも正しい判断をするチャンプ、という形で二人が対比されているのですが、チャンプはチャンプでスコルピオに対してアントン博士の仇だから悪と頭から決めつけて行動しているので、実はあまり差がありません(^^;
それでもスティンガーに対して気遣いと譲歩を見せるチャンプの器が大きいですが、スティンガーとコンビ化する事で、ようやくチャンプのキャラクターと位置づけも定まってきた感(文字の設定が物語としての血肉をともなってきた、というか)。
「俺には兄しか居なかった。だから……頼む」
「俺の……命だと……?」
「昔のままだ」
心が隙間だらけのスティンガーは、全てはジャークマターに潜り込んで将軍を倒し、この宇宙を救う為にやむを得ずした事でありその罪は全てが終わった後に償う、という兄の言葉を信じ、その口笛に合わせて思い出の歌とか口ずさんだりしちゃった挙げ句、現在のキュウレンジャーの行動目的――アルゴ船を甦らせる為のキュータマ集め――について話してしまうが、それを聞いた途端に豹変するサソリ仮面様。
「ふふふふふふははははは、ペラペラベラベラと大事な事を喋って……愉快だな」
正直、口軽いなスティンガー……と思っていたので、一瞬サソリ仮面様とシンクロしてしまいました(笑)
スティンガーを欺くサソリ仮面様の猿芝居のターンは少々長すぎた感はありましたが、ここで仮面を外すと、その下には内心を象徴するかのような半ばまで崩れた醜悪にして邪悪な顔、というのは非常に印象的になって良かったです。
「俺は俺の為にこの手で宇宙を掴む。弱い人間がいくら死のうが構わない。例えそれが、血を分けた兄弟だとしてもなぁ」
本性を露わにするスコルピオの目的、それは――
「ドン・アルマゲの、抹殺。俺がショーグンとなり、この宇宙を俺のものにする」
宇宙で一番ビッグな男になってやる、と言い出したスコルピオには是非ともこのまま、改悛も同情も一切余地がない極悪非道の野心家という路線を期待したい。
スティンガーと引き離されていたチャンプは、赤・紫・青・金と合流するが、その前に立ちはだかるのは、不二子ちゃん人格に覚醒したタコ。冒頭で打ち込んだ毒はてっきり仮死状態にする麻痺毒か何かかと思っていたら、人格変わっているのでバッチリ致死性の毒だった模様です。
スコルピオが他者の命をなんとも思っていない事を裏付けつつ、もう一度ぐらい欲しかった人格転換を入れてくれたのは良かったのですが、劇薬で死亡しても普通に蘇生するというのは、足の破片から再生とはまた種類の違う不死身生物になっていないか、タコ。
チャンプも「どうせあいつ甦るだろ」と偽装工作の可能性を指摘するのですが、最終的には液体窒素でコーティングした上で第二宇宙速度で宇宙の彼方へ向けて吹き飛ばさないと倒せない究極生命体なのでは、タコ。
前回お留守番だった紫・青・金がタコの相手をして戦闘で見せ場を貰い、その間にスティンガーの元へと向かう赤と黒。サソリ仮面様の操る巨大デスワームが出現して赤とオリオン号待機の4人はキュウレンオーに乗り込み、黒は橙と共にサソリ仮面様に立ち向かうが、強烈な足技を食らい、二人揃って変身解除。
「どうだ、実の兄に裏切られた気分は? 悔しいか? ……悲しいか? ――最高だな」
「ふっへ……チャンプ……お前の言うとおりだ。俺は、自分が思っている以上に、甘い男だった」
非情に徹し、兄の罪を裁くつもりの筈が、かるーく手の平で転がされたスティンガーは、死んだ魚のような目になってサソリ仮面様を見つめる。
「ねえ兄貴……俺はどっかで、兄貴は裏切らないって信じてた。俺には……俺には兄貴しか居ないから! これが絶望だ……俺を殺れ……スコルピオ」
「ああ。可愛い弟の望みを、かなえてやる」
放たれた超電子サソリキックはしかし、呆然と立ち尽くすスティンガーをかばったチャンプに直撃し、チャンプ、文字通りに爆発四散。
「チャンプ……! どうして……? どうして俺なんかかばった?! 俺は……!」
「……馬鹿野郎。兄貴しかいねぇとか、言いやがるんじゃねぇ。我が輩が、居るじゃねぇか……相棒、お前に、仇討ちを託してやる。有り難く思え……」
サソリ仮面様はチャンプに免じてその場を立ち去り、機能停止したチャンプはオリオン号へと運び込まれ、復活への一縷の望みを託してリベリオン本部へ送られる事に。
泣くなみんな。チャンプは、死んではいない。機能が一旦停止しただけだ。
(お約束)
司令は、チャンプの仇を討つ為に単身スコルピオを追おうとするスティンガーを止め、リベリオン本部までのチャンプ搬送を命令。
「君が冷静さを失い、チャンプがこうなった。それを胸に刻んでおけ」
自分のミスで死亡した仲間の死体を乗せて宇宙の旅とか、実に残酷なシチュエーションです。
そして本部で研修中の小太郎が、スティンガーが来たー! と事情も知らずに迎えに出ると、チャンプのバラバラ死体を見せつけられるという、凄まじいトラウマ案件。
きっと司令は、「そろそろ小太郎くんにも、革命に生き、革命に死すとはどういう事か、知っておいて貰う必要があるからな」とか考えているので、安定のド外道。
「正義があれば、チャンプは絶対戻ってくる」
その発言は、紫色になりそうで危険すぎる……。
キュウレンジャーは、記憶回路に損傷が無く、チャンプが元のチャンプのまま戻ってくる事を信じ、それまでに竜骨キュータマを手に入れてみせる! と強く誓うのであった…………これだけメンバー居て、スティンガー以外誰も、「スコルピオの野郎をぶっ殺してやる!」ではなく、「とりあえず竜骨キュータマを手に入れるぞ!」と目的意識がブレなくて、革命とは心を一つにする所から始まるのです。
多分帰ってくるであろうパーフェクトチャンプには是非、腕からパンチ飛ばしたり、角から薔薇の花びらを飛ばしたり、足がキャタピラに変形したりしてほしいなぁ……。
サソリ仮面様との直接対決からチャンプ機能停止という衝撃の展開で、メンバーの身内だし何か事情がありそうという好意的な推測を吹き飛ばすスコルピオの悪逆ぶりが強調されたのですが、今作の悪い所がまたまた出てしまったエピソード。
少年期のスティンガーがスコルピオを大好きだった事はこれまでの描写から伝わってきてはいるのですが、それが今回「俺には兄しか居なかった」まで言い出し、“目の前で一族郎党皆殺しにされてもなお兄を信じ、果ては裏切られたショックで命を投げ出そうとする”という今回の行動全ての理由にまでなっているとなると、それ相応の描写が事前にもっと必要であったように思います。
そこまで重要なポイントであるならば、“どういう風に”兄しか居なかったのか、まで描いてこそ、納得力が生じるわけですが、それが不足しているので、どうしても登場人物だけが盛り上がってしまっている感が否めません。
前回のハミィもこれと少し似ているのですが、回想シーンに台詞で説明を付け足すだけでキャラクターを掘り下げたつもりになっていて、そこに血肉を通わせて“今”の物語に反映させる描写が弱く、それが今回のような節目のエピソードでは特に、物語の重さとの齟齬になってしまっています。
ラッキーだけはとにかく重点的に描写したのでその齟齬が少ないのですが、9人+α戦隊というコンセプト時点で一人一人の掘り下げが不足する事はわかっていたわけですから、それに合わせてストーリー面も、軽快でハチャメチャ路線にした方が良かったのでは……? と、ここまでハッキリと人数のデメリット面を引きずり続けてしまうと、少々今作全体の先行きが心配になって参りました。
一方で現在の路線として、チャンプを吹き飛ばしてまでスコルピオを明確な悪として強調した思い切りは良く、とにかくこれに、ラッキーと司令以外のメンバーの重みもついてきてくれる事を祈りたいです(これは、全員にシリアスな背景が必要、という意味ではありません。物語と組み合えるだけの、キャラクターとしての重量が劇中で描写されてほしい、という話)。
次回――バランス&ガル回、という事はやはりガルをかばったバランスが瀕死の重傷を追ってリベリオン本部へと運ばれ……



司令「今、リベリオン本部から連絡があって、チャンプとバランス、二人を救う方法が一つだけあるそうだ……」
全員「そ、それは?!」
司令「二人の無事な部分を集めて、合体させる。つまり、二人は新たな生命体・チャンスとして生まれ変わるんだ!!」
になるのか。
最後に生き残れる救世主は9人だけ。それが大宇宙のジャスティス。