はてなダイアリーのサービス終了にともなう、旧「ものかきの繰り言」の記事保管用ブログ。また、旧ダイアリー記事にアクセスされた場合、こちらにリダイレクトされています。旧ダイアリーからインポートしたそのままの状態の為、過去記事は読みやすいように徐々に手直し予定。
 現在活動中のブログはこちら→ 〔ものかきの繰り言2023〕
 特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)

『仮面ライダー555』感想34

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第45話「王達の目覚め」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹
増援の警官隊の銃撃を受けたホースオルフェノクファイズに促されてその場を脱出。変身を解除して結花を探す勇治は、教会のチャペルが響く中、舞い散る白い羽と地面に残された携帯電話を発見する。
「長田さん……?」
呆然とする勇治と遠くから響いてくる鐘の音の対比が印象的で、前回ラストの流れを受けて、勇治の衝撃が伝わってくる良い演出でした。
愕然と羽毛を握りしめ、哀しみを上回る憤怒に塗りつぶされていく勇治の激情を、カメラ自体を小刻みに振るわせる事で表現。
「人間のせいだ……人間ども……奴等が……奴等が長田さんを……!! 人間が!」
そして、壊れていく勇治。
そもそも勇治は、人間としては裁かれるべき罪(殺人2件)を犯しながら、そこから目を逸らす為に
“自分はオルフェノクである”(故に人間の倫理では裁かれない)
が、
“人間を殺す事には罪悪感を抱いている”(故に人間である)
という矛盾を
“そんな自分は正しいオルフェノクである”
という形で正当化していたのですが、正しいオルフェノクが成立する為には、正しくない存在が必要になります。つまり人間としての自分の罪と向き合う事に耐えられない勇治が自分を許す為には、常に“正しくない”敵が必要になる。
これまでその都合の良い対象がスマートブレインであり、人間を襲うオルフェノクだったのですが、ここに来て人間達が自分を攻撃し、あろう事か“仲間”である長田結花(勇治は結花が覚醒時に人を殺しているのは把握している筈)が人間の介入によって死亡してしまう。
であれば、勇治が“正しいオルフェノク”として許される為には、“正しくない”のは人間だと考えるしかない。
ここに至って勇治は、自己の矛盾を許容する為に、自己の理想を破壊してしまう。
巧も転がされているように、木場勇治は基本的に“正義の人”なのですが、その正義には、悪が存在しなくては成立しえない正義、という強烈なアイロニーが込められているように思えます。
感情を昂ぶらせた勇治は気を失うが、そこに何者かが近づく……。
一方、バットを追い詰めていたブラスターファイズだったが、警官隊の銃口を前にフライング脱出。そして巧は、勇治と同じ光景を目にし、結花の携帯電話を拾い上げる。
その頃、カイザ&デルタは北崎オルフェノクに大苦戦中。
2人を嘲笑する北崎の姿が壁と天井の間にいびつに浮かび上がるなど、第15話以来となる田崎監督が、凝った演出を連発。
渾身のダブル円錐キックも弾き飛ばされ、変身が解けて気絶した草加に北崎オルフェノクの爪が迫るが、それを止めたのは、山羊オルフェノク。山羊オルフェノクは北崎オルフェノクのあらゆる攻撃を軽々と捌くと、キャストオフした北崎オルフェノクさえ撃退。
「とう……さん……?」
山羊は立ち去り際にちらっと三原にその正体を見せ、いつの間にやら地上に脱出してきているのですが、社長は節穴だから仕方ない……!
結花を待ち疲れて座り込んでいた啓太郎を起こす巧だが、結花の事を言い出せず、結花にフられた、と無理に明るく振る舞ってみせる啓太郎。元気づけようとする真理にも虚勢を張ってみせる啓太郎だが、結花から届いた最後のメールを握りしめて堪えきれずに嗚咽を洩らし……恐らく啓太郎も結花がもう生きてはいない事を察しているのだけど、それを直接口にせず、結花はどこかで幸せになっている、それならいいんだ、と言い聞かせようとしている姿が、恐らく最期のその時、僅かなりとも結花は幸せであったからこそ、非常に痛切。
(ごめん……啓太郎……俺、彼女の事を、助けてやれなかった。ごめん。ごめんな)
遺された者の描写が重く響き、むしろ前回よりきつい。
同時に、「結花の死」に際して、「啓太郎に謝る」巧と、「人類に憎悪を向ける」勇治、と2人の道の違いも決定的に。
その頃、てっきり鈴木少年と旅にでも出たのかと思った海堂は、普通にマンションに居た(おぃ)
てっきり逃避は逃避でも自立に向けた行動をするのかと思ったら半ば現状維持を選択しており、そうだよ海堂に、そんな甲斐性と克己心があるわけなかったよ!! ……まあそれでも、オルフェノクでもない鈴木少年を懐に入れるというのは、“外の世界”と接続し続けるという点において、非常に大きな意味を持っているわけですが。
そういう点では海堂は、真理に積極的にアプローチしたり、啓太郎と最低ブラザーズを結成したり、緊張感が無いともいえますが、外の世界と交わる事に対して躊躇はなく、むしろ最初からずっと勇治よりも人間を信じているといえます。
更に考えてみれば、これまでも会社で普通に仕事していたり(冴子さんに処刑された人)ピザ屋だったり、リスクを負いながらも人間を襲わずに人間の社会に隠れ住むオルフェノクは描写されてきたわけで、人間不信になる事情はあったとはいえ、“人間を信じたい”と言いながら、実質引きこもりで社会との関係性を再構築できなかった(だから草加に軽くかき回されただけで巧への不信感を強めてしまう)事こそが、勇治の大きな過ちだったと言えるのでしょう。
一つ不幸だったのは、そんな勇治にとって貴重な、外の世界との接点だった乾巧が、オルフェノクであった事。
巧にとって勇治がオルフェノクだった事は、オルフェノクを(ひいては自分自身を)信じる大きな福音だったのですが、勇治にとっては信じられるのは結局人間ではなくてオルフェノクだった、という事になってしまい、この非対称性は今作の構造の中でも極めて残酷です。
となれば最終盤の焦点は絞られてくるのかなと思えますが――果たして巧は、木場勇治を救えるのか。
南はオルフェノクに関する新発見をメールで社長に伝え、それを見た社長はラッキークローバーを召喚。人間によるオルフェノク研究所の完全破壊を依頼する。
「へぇ〜、なんで? お金がなくなっちゃったの?」
リアルですね!
「……北崎くん、いい子だからあなたは黙ってなさい」
冴子さんが止めると、ますますリアルですね!
「邪魔になったんですよ。彼らは、知ってはならない事を知ってしまった」
3人が去った後、社長は感情をあらわにパソコンを叩き壊し、後で総務部からお叱りをうけそうです。
創才児童園に出勤した三原は鈴木少年の行方不明を知るが、その鈴木少年は1人でマンションを抜け出していた。
「おまえ達、オルフェノクだな」
2人組の男の前で様子の変わった鈴木少年の影から青年の姿が浮かび上がると、その指から放たれた青い閃光を浴びた若いオルフェノクは、体中から蒼い炎を噴き上げた上で、凍り付いたように固まってしまう。少年を探す海堂がやってくるとその声を聞いた鈴木少年はいつもの様子に戻るが、逃げたもう1人の男が戻ってくるとオルフェノクに変身し、なんとその正体はバットオルフェノク。
意外とノリの軽いおじさんでした(笑)
わけのわからないまま成り行きでバットと戦う事になる海堂だが勿論勝負になるわけもなく一方的に叩きのめされ、その戦闘を目撃する三原と里奈。単独で格好良く変身する三原デルタだったが勿論勝負になるわけもなく一方的に叩きのめされ、恐ろしいほど弱いぞ三原デルタ! 海堂オルフェノクとさして変わらないってどういう事だ三原デルタ!
……ただ三原、(多分ややこしくなるからでしょうが)デルタの力に呑み込まれずにこれまで通りの精神を保っているので、呪い耐性は強いのかもしれません。或いは、あまりにもデルタギアの力を引き出せていないので、精神に影響が出ないのかもしれませんが(^^;
もしかしてこれなら私が変身した方が強いのではないかとちょっぴり思う一発ダウン実績持ちの里奈は慌てて巧に連絡を取るが、その巧は沢村に抗議した後、連絡が途絶えたという秘密研究所に向かっていた。そこで巧が目にしたのは、全滅した警官隊、崩壊した研究所、オルフェノクに襲われたと輪唱のように言い残して灰と化す研究員達。
「何があったんだいったい……」
ざっくり壊滅した研究所ですが、南から見限られた事が幸いした沢村はこの惨劇に巻き込まれる事を回避し、思わぬ所から第三のサバイバーが登場。沢村、侮りがたし。
犯人を突き止める前に里奈からの連絡が入り、バットとの戦いに駆けつけたファイズは久々にソードを握ると更にアクセルフォームを発動。デルタが殴られている間に背後から思い切り不意打ちはどうかと思ったものの、バットの周囲を複数の円錐で取り囲むアクセル多重分身円錐キックは非常に格好良く、それを受けて焼却されたバットも強敵らしい最期となりました。
そして……研究所から車で必死に逃亡する南の前に立ちふさがったのは――木場勇治。
「化け物め……っ」
南は車でダイレクトアタックを敢行するが、ホースオルフェノクはパンチ一発でそれを弾き返す。
……正直、戦闘力的にはいいとこ上の下ぐらいに思えるホースにしては強いのですが、もしかして、結花の死に激高した際に頭の血管が切れて一度憤死して、再復活で強化とかしたのでしょうか。
「終わりだ」
「研究所を破壊し、それで勝ったとでも思ってるのか。違うな」
憎々しげに告げるもホースに心臓を刺し貫かれる南だが、立ち去る勇治の背に、その哄笑が響く。
「はははははははははははははは、はははははは」
灰になりかけながらも、立ち上がる南。
「何がおかしい?」
「いずれわかる。俺がなぜ笑うのか。お前達オルフェノクは、決して人間には勝てない」
南は勇治に指を突きつけながら、どうと倒れて完全な灰となり、しっかり尺を貰ったいい死に様でした。
復讐を果たした勇治の前には、胡散臭い 道士 花形胡散臭いが姿を見せる。
「気が済んだか」
「……あなたの……お陰です」
2人は肩を並べて何処かへと去って行き……つづく。
南の発見したオルフェノクの秘密、鈴木シャドーの謎の光線、帰ってきた花形の思惑……と様々な謎が交錯し、物語はいよいよ佳境、次回――役員会議で社長の節穴が発動してしまうのか?!