はてなダイアリーのサービス終了にともなう、旧「ものかきの繰り言」の記事保管用ブログ。また、旧ダイアリー記事にアクセスされた場合、こちらにリダイレクトされています。旧ダイアリーからインポートしたそのままの状態の為、過去記事は読みやすいように徐々に手直し予定。
 現在活動中のブログはこちら→ 〔ものかきの繰り言2019〕
 特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)

感想番外編:『ビーロボカブタック』扇澤回その1

◆第8話「幸せの赤いポスト」◆ (監督:坂本太郎 脚本:扇澤延男)
ある日、主人公(小学生)の元に届く不幸の手紙。気にするまでもない悪戯だと無視しようとする主人公だが、なんとそれが小学校中に届いている事が判明。使命感に燃える児童会長と共に犯人を捜す事になり、手紙の中で指定されていたポストへ向かうと、なんとそこでは意識を持ったポストがせっせと不幸の手紙を書いていた。
設置場所が悪く、何年も郵便物を投函された事がないポストが、スターピースと雷の作用で意識と自由に動かせる手足を手に入れ、何とか自分をポストとして利用してほしいと、思いあまって自ら不幸の手紙をばら撒いていたのだ!


 「“不幸の手紙”が持つ意味とは何だろう……?」
 「相手を嫌な気持ちにさせること?」
 「勿論それもある。だけど今回の事件では、不幸の手紙心理的ではない、別の効果こそが重要だった。犯人はそれを利用して、被害者の行動をコントロールしたんだ。つまり、不幸の手紙の指示に従った者が、必ずしなければいけない事」
 「……ポストを、利用する……?」
 「そう。それこそが犯人の狙いだったんだ」
みたいに書くと、気の狂った展開のようで、どこかミステリ的な逆転の発想を含んでいるように思えるのですが、もしかしたら近年の扇澤さんが『名探偵コナン』で筆を振るっている事に繋がるシナリオだったりするのかも。
「とにかく欲しいんだよ、投げ込んで欲しいんだよ、手紙を。この口によ〜」
切々たるポストの訴えにカブトとクワガタが同情していると、そこへ子供達が走ってきて、何やら感動的なBGMが流れ出す。
「「「どうぞ俺を不幸にしないでください! お願いします!」」」
なんという外道な演出と脚本。
「みんながやっと俺を利用してくれた。みんなのハガキが俺の体を満たす。俺は、今ものすごーく幸せ。やっと俺にも運が向いてきた。幸せだなぁ」
他人の不幸を糧に、自分を幸せで満たすポスト、という物凄く凶悪な風刺。
「幾ら利用される人が増えたって、不幸の手紙だけじゃないか!」
「兄ちゃんにはわからねぇ。忘れられた者の寂しさなんかよぉ」
生まれてきた役割を果たせず、社会から疎外される内にすっかり歪んでしまったポストの暴走を主人公は止めようとするが、そこでスターピースが張り付いているのを発見。
不幸の手紙でもなんでもいい。とにかく手紙が欲しいんだ。だから、不幸の手紙を配るんだよ」
自分の幸福の為に手段を選ばないポストを捕まえようとしている所にコブラ達も加わり、話はスターピース争奪戦に。
「ひとーつ、贔屓は絶対せず。ふたーつ、不正は見逃さず。みっつ、見事にジャッジする! キャプテン・トンボーグ、只今見参!」
スターピースを入手した暁には、世界で一番利用されるポストにして下さい、とお願いしようと考える真っ直ぐな少年に課せられた対決3本勝負のお題は、指定の人物に「私は幸せです」と言わせる事で、そこに現れたのは主人公の父親に瓜二つの男。
「パパではない。誰かに似ているとしても、彼は特定の誰かではない。対決の為に用意した、いわば、小道具の一つと、思ってほしい」
メタ的にはキャスティングの都合なのでしょうが、誰か(ポスト)を真っ当に幸せにしてあげたいと考える少年が、家族と瓜二つの人物が借金苦にまみれて追われていたり、仕事も恋も失って飛び降り自殺しようとする姿を次々と見せつけられるという、鬼畜極まりない展開で、少年の心の傷が心配になりますが、一度順応すると割と平気で接していたので、その程度の精神力ではこの世界では生きていけないのかもしれません。
1対1で迎えた最終戦では、母親と瓜二つの女性の自殺を止める過程で、それぞれスーパーチェンジ。3頭身ぐらいのゆるキャラ的なデザインから6頭身ぐらいへの変形はそれぞれパターンを変えて凝っており、足を長く伸ばすコブラの「こんな格好悪い俺でも、スーパーチェンジでイケメンになれる」というのは面白かったです(笑)
軽い物理攻撃などありつつ、主人公達の真心よりも一手早くコブラの奸計が功を奏し、勝負に勝って試合に負けてしまう主人公達。だがスターピースはもどきで消滅してしまい、ポストは物言わぬただのポストに。しかし主人公やカブト達は積極的に手紙を出して、そのポストを利用するようになるのであった。
ユーモアタッチを前面に押し出す作風の都合もあってか、3本勝負がややくどく間延びしてしまった上で、強烈な導入と話の流れが活かされず、とってつけたようなオチになってしまったのは残念。ただ、社会から落伍したものの悲哀、という主題が忘れられたポストを通して強烈な風刺へと繋がり、思った以上に扇澤脚本していたのは良かったです。
作品の要請としてのバトルギミックが無い分、落伍者の怨念が社会へ突き刺さる姿が、よりえぐみを増した感はあるのかも。