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『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想・第22話

◆Space.22「伝説の救世主の正体」◆ (監督:加藤弘之 脚本:毛利亘宏)
 作品自体への好感度が大暴落している所に、押しと我の強い文字通りの俺様キャラがひたすら我が道を突き進んでいく所を見せられるという視点の置きどころに困る展開で、心がどんどん無の領域に近づいていきますが、つい美人秘書妄想モードに入ってしまうラプターは面白かったです。
 演技力込みで手軽に面白くできるネタなのに、ラプターの妄想発動したのはいつ以来だろう……と思わず遠い目になってしまいますが。
 恐らく作っている側の思惑としては、一つの因縁に(感動的な)決着が付き、スティンガー込みで結束を強めたキュウレンジャー、ところが打倒幕府の切り札の筈だった伝説が思わぬ波乱を巻き起こし、いったいどうなる?! という流れの想定だと思うのですが、見ている側としては、
 二人だけで盛り上がるサソリ兄弟
 博士の仇に対する思いの吐露さえさせてもらえないチャンプ
 そんなチャンプに一方的に気遣われるだけで全く気遣いを返す気のないスティンガー
 終始因縁とまるで関係のないおまけのラッキー
 オリオン号で傍観する約4名
 母船を守るのに精一杯で地球を守るどころでなくなっている約3名
 地球人との間の深い断絶
 と、むしろこれ以上ない空中分解を見せつけられた後なので、みじん切りにしたパーツを更に粉砕器にかけて海に撒き散らされている感じ。
 砂上の楼閣どころか星屑しか見えない大宇宙、オリオン号に自ら乗り込んできた鳳ツルギは、宇宙で初めてキュータマを手にした男にして、宇宙連邦初代大統領を自称。
 「俺様が復活した。すなわち、おまえらの救世主としての役目は終わったという事だ」
 約300年の眠りから目覚めたというツルギは、倒幕運動は一人で充分、キュウレンジャーは用済みだと宣告。
 大雑把に分類すれば自信家のエリート戦士の亜流で、これまで戦ってきたヒーローを見下し否定する立ち位置なのですが、「否定的な割には情報を求めてくる」し、「キュウレンジャーリベリオン)のこれまでの活動」について一切質問しないのに、「キュウレンジャーからの情報は鵜呑みにする」というのが、どうもちぐはぐ。
 冷凍睡眠カプセルの開封と、覚醒後に見た幕府大軍団の時点で大体の状況は把握しており、オリオン号を訪れたのは裏取りと戦力外通告に来ただけとも考えられますが、そういった思考の過程が伏せられすぎている為に、悪い意味で把握しづらいキャラクターになっています。何やっていても最終的に「全部こういう計算があった上での事だ」で八方丸く収めてしまいそうな雰囲気も漂う為に、本気で受け取りづらいというか。
 勿論、作劇的にはここで共感すべきはキュウレンジャー側ではあるのでしょうが、キュウレンジャーキュウレンジャーで、
 「これでジャークマターをぶっ倒せるってわけだな」
 「アルゴ船にどんな力があるのか、試してみたいけぇの〜」
 と、伝説の力を都合良く利用する気満々だった癖に、当の伝説から要らない子扱いを受けると、あいつなんかムカつく〜と言い出し、いや君達そこは、あんな奴に頼る必要はない! 俺たちは伝説を超えるんだ!! という所ではないのか。
 リュウコマンダー誕生時にあれだけ熱く語られた「伝説を超える」というフレーズは、どこに雲散霧消してしまったのか。
 ラッキーらの反発をよそにツルギに追従した司令が、秘書(ラプター)と料理人(スパーダ)をツルギの案内役につけ、ツルギはどうやらジャークマターによって歪められてしまった歴史を確認するべく地球へ向かう。ジャークマター大学へ乗り込んだツルギの手元に、火の鳥が飛んできてスペースウルザードソードに変形する、という映像は格好良かったです。
 大学で教鞭を執っていた悪代官を追い詰めるも取り逃がしてしまった3人の元へラッキー達が合流。そこにオリオン号から、付近のモアイ基地が暴走して爆発寸前という連絡が入り、ラッキー達はそちらへ急ごうとするが、ツルギは悪代官を追う事を優先。
 反発を強めるラッキー達だが……いや、8人も雁首揃えているのだから純粋に手分けすればいいのでは。
 人命がかかっているので安全係数を高める為に最大戦力を投入すべし、というのは理屈ではありますが、そもそもキュウレンジャーキューエナジー節約を言い訳に最大戦力を投入しない戦隊なので、ここでそれを理屈にしてしまうと、これまでの戦いの9割がなんだったのか、という事になってしまいます。
 なにしろこの時点でオリオン号に戦闘力上位の2人が待機しているわけで、ツルギに凄んでみせても説得力皆無。
 ツルギとキュウレンジャーの明確な対比として「人の命がかかっている」「そんなもん知るか」というのをやりたかったのでしょうが、人命優先を唱えるキュウレンジャーが最大限の努力を払っていない、という悪夢的大惨事。
 加藤監督が前年で魂を燃やしすぎた反動かどうも冴えないのを加味するにしても(しかし個人的に、前年あれだけやってくれたので加藤監督は許す)、毛利さん、元来ここまで“書けない”人ではないと思うのですが、とにかく処理しなくてはならない要素――この場合はツルギとキュウレンジャーの対立点の設置――を一つ一つ片付けるのに手一杯で、それらの連動性に全く手が回っていません。
 だいたい「戦うな、と言われて、はいそうですか、とはならないよね〜。我々にも意地がある」と言って後から出てきたわけですから、ツルギの行動方針が気に入らないなら「俺たちは俺たちのやり方で戦う!」ぐらいの啖呵を切ってほしいものですが、両者の対立を煽る事だけが目的になった結果、それを果たした途端に話の都合でラプターとスパーダはツルギに同行してしまうという衝撃の展開。
 つまり2人は「緊急事態による人命の危機」よりも「ショウ司令の命令」を優先した事になるわけですが、ここで「ウィ・シェフ!」の精神を発揮するのは、ただの飼い犬ではあるまいか。
 一方で「人命最優先のキュウレンジャー」という看板を掲げておきながら、裏側に書かれた「革命組織では命令に絶対服従」という別の文句でそれを上書きしてしまっており、ツルギと対比すべきキュウレンジャーの魂の在り方がもはや行方不明。
 ラプターとツルギを先行させる都合でスパーダはやや躊躇っている素振りがあるので、画面の外で方針を話し合ってから追いかけてきた、という事なのでしょうが、結局やっている事は同じなのでフォローは発生しません。
 そしてスパーダが見たのは、ラプターに口づけせんばかりに覆い被さるツルギの姿であった。
 「ラプタぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 ぜぇはぁ言いながらラプターとツルギを引き離すスパーダだが、ツルギはラプターの駆動音を確認していただけと判明。実はラプターの基本設計は、ツルギが300年前に開発しいてたアンドロイドの発展型だったのである。
 かつてない絶叫を振り絞ったスパーダは、大興奮の弁明としてラプターの保護者を自称し始めるも、今の今までそんな描写は欠片もなかったのでただの変態に近づきましたが、そっちか、そっちで目立つ気なのか。…………というか、以前に乙女日記を盗み読みしていたのは、僕は保護者だから娘の日記を読む権利がある!という妄想の発露だったのか。
 今作、変態が足りていないといえば足りていないので、スパーダがそっちに行くのなら応援しない事もないでもないですが……まあつまるところ、積み重ねの無い文字設定の唐突な開陳に見えるのが困ったところです。
 以前に書いたように、スパーダがそこはかとなくハミィを気遣っている描写は何度かあるので、ハミィとラプターの保護者気分という事なのでしょうが、そもそもラプターとセットで行動しているのが3回目ぐらいなので、種も播かれていない行間を想像で補うには限度が。後それなら、合わせて小太郎も気遣うとかさせておけばいいのに、スティンガーが居る為に小太郎にはほぼ無関心なので、野郎には興味ないという正直だけど残念な人に。
 おまわりさーーーん!
 ……は、残念ながらこの世界に居ない。
 一方、モアイ基地の暴走を止めに向かった赤・青・緑・銀・空は、そこで〔鳳ツルギ科学研究所〕という蔦に埋もれた看板を目にするのですが、歴史から名前を抹殺したのに、堂々とした看板を300年以上放置という、あまりにも雑すぎる描写にクラクラします(^^;
 ラプターの不具合を修理したツルギは、設計の問題から戦闘行動には無理がある事に改めて言及。同時に、料理人であるスパーダも戦いには向いていないと告げるのですが……が、が……凄く根本的な所で、ツルギがスパーダを「料理人」だと認識しているのって、「司令がそう言ったから」であり、スパーダが料理を作っている所すら見た事がないので(本人が否定はしていないけど)、何をもってそこまで強く「料理人」を根拠に置いているのかが、どうにも疑問。
 先の悪代官との戦いにおいてLVを見抜いたのかもしれませんが、それならすっぱり「戦力不足」と言えばいいところを「料理人だから駄目だ」と言う為に、外面で他者を否定する浅はかな人格、に見えてしまっています。
 合わせてツルギは批判をキュウレンジャー全体へ向け、ラッキーを「運任せの男」、ナーガを「無感情」と評価するのですが、前回の今回でツルギがそういった個人情報を得る機会は皆無の筈であり(特に今回、オリオン号の中でナーガはツルギに激しい感情をぶつけている)、「料理人」問題を含めて考えられる結論は一つ……ツルギはリベリオン(司令)とべったり繋がっている。
 推論から導き出される「俺様はお前達の覚悟を試していたのさ!」「そうだったのか!」だったら物凄く白けますが、300年前の倫理観はわからないもののガルに対する「犬」は人種差別ですし、「無感情」と戦闘力は関係ないなど、スパーダに対してのみならずツルギの批判自体がいちいち的外れな為、本気で言っていたら凄く駄目な人なのも困ります。
 「戦えるかどうか、確かめて下さい!
 「僕はシェフだ。そして、ラプターは秘書。あんたに言わせたら、大した事ないかもしれない。でも……! 僕たちはキュータマに選ばれた救世主、キュウレンジャーだ!」
 そしてまたこの問題が顔を出すのですが、メンバー各人の“戦う理由”が掘り下げられていないので、未だ最大の動機付けが「キュータマに選ばれたから」になってしまっており、批判的スタンスに対して20話超えてぶつける信念が「力を与えられたから」というのは、ヒーロー物としては正直なんとも情けないと思わざるを得ません。
 スタートは「キュータマに選ばれたから」で良いですし、勿論それを契機に強大な敵を相手に命をかけている正義感などは伝わってくるのですが、例えば前作で言う“命の繋がりを大切にする”のような、今作としてそれをどう表したいのか、というのがまるで具体化されてこないのが、非常に困った所。
 一応、第13話でラッキーの目指す道は見せたのですが、その後、サソリ兄弟編でそれとは別のテーマが展開している内にラッキーが希釈、スティンガーにかまけている間に他のキャラクターはどんどん蒸発が進んでしまい、11人それぞれの動機付けの昇華などまるでうっちゃられてしまった結果、集約できるのが「キュータマに選ばれたから」しかない、という大惨事。
 本来ならば、戦隊として一つのまとまりになった所にアンチテーゼをぶつけられる、という作劇を志向していると思われるのですが、対立を描こうとボールを投げた結果、ぶつかる物が何もない虚無が浮かび上がってしまうという、致命的問題点が大穴を開けてしまいました。
 そしてワシピンクがなんとなく空中戦を展開したら「結構やるじゃないか」と認められ、悪代官に向けた攻撃がマジ鳳凰に当たってしまう呪いを受けたカジキは、敢えてマジ鳳凰を攻撃する事で、間に挟んだ悪代官に連携攻撃をヒット…………て、あれだけ料理人を強調していたのに、シェフならではの機転とか全く発生しない、という空虚な内容。
 また、ワシピンク誕生時にラプターがこだわった「戦える」という意志の問題を再度持ち出したので、ラプターの掘り下げにはかなり期待したのですが、秘書アンドロイドだから戦えない→変身したら結構戦える→じゃあいいか、で1ミリも掘り下げられなくて唖然。
 劇中に持ち込んだ要素を全く活かす事なく、殴り合いで勝ったからOKという結論に着地するという、前回に匹敵する酷さで、どうしてこうなった。
 「あんたに何言われようが構わない。けど、僕たちがキュウレンジャーとして戦ってきた歴史は変わらない! 無くならない! それだけは、覚えておいてくれ」
 「覚えておこう」
 ツルギの消された歴史と絡めたカジキの言葉は悪くはなかったのですが、ここまであまりにも話が繋がっていない上に、いつも大人しいスパーダが熱い所を見せた、というより、徹頭徹尾スパーダの人格が話の都合という印象で、なにしろメイン回だというのに、料理のたとえ話皆無で、その路線ぐらい貫いていただきたいのですが。
 巨大化した悪代官に対して、マジ鳳凰アルゴ船の力を発動。アルゴ船は、ベース・シャトル・ステーションの3つの巨大メカに分離し、シャトルと宇宙ステーションが合体して二刀流ロボ・ギガントホウオーが誕生。モアイロボと悪代官を葬り去るのであった。
 ツルギは、ドン・アルマゲは300年前に自分が殺した筈、と言い残して歩み去り……まあ、300年生きていたと考えるよりも、名跡を継いだ別人、と考えるのが普通なわけですが、相変わらず宇宙幕府の描写不足がミステリーを煽れません。
 「あいつが何者だろうと俺には関係ない。今まで通りジャークマターと戦って宇宙を解放する。それだけだ!」
 今回終始しかめっ面のラッキーはドスの利いた声で宣言するが、宇宙幕府では将軍様が、今年の夏休み出オチ要員(?)として、3人の副将軍を呼び寄せていた……。
 キュウレンジャー側がまるでまとまっていないのに相乗効果狙いの対比キャラを出したら分解が加速してしまい、スタンスの衝突を描こうとすればするほど銀河が拡大して星の光が綺麗です。
 ちょっと森エルフの所まで情報収集に行ってこいや、とアバンタイトルで登録抹消されるチャンプとバランスも酷かったですが、打撃要員なのに大爆発の危機をオリオン号から伝えるスティンガーの姿も、視界が真っ白になるレベル。スティンガーの出番を少し抑える→オリオン号に無駄に座らせておく、という発想が安易すぎて頭痛い。
 おまけにスティンガーを座らせるならそこでスティンガーなりの個性が出てこそ面白いのわけですが、誰が座っても何も変わらないので、ホントに単なる無駄遣いという。
 第13話までは、問題点は色々あれど、それなりに楽しんではいたのですが、放置していた問題点が次々とブラックホール化していて、何もかも飲み込まれそう。