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感想番外編:『ビーロボカブタック』扇澤回その2

◆第18話「迷惑博士の大予言」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:扇澤延男)
そういえば渡辺監督は『メガレンジャー』には参加していませんでしたが、この時期はまた、《メタルヒーロー》に入っていたのか。助監督には《不思議コメディ》で活躍した岩原直樹監督の名前があり(監督としても参加)、今作の方向性が窺えます。
間にどうやら新ビーロボの登場があったようで、変人博士ならもっとビーロボを作っていてもおかしくない……と、街中にはびこるビーロボの姿を想像して嫌悪感を示すママ、同居している割に、直球で酷い。
主人公・譲少年の両親は、身内であるが故の恨み辛みを隠さずに高円寺博士を遠慮なく批判。祖父の事を好きな少年は落ち込むが、そんな時にカブタックが、10年前に博士が出し忘れたとおぼしき封筒を発見する。
……ところで、第8話を見た時は設定を知らなかったのですが、父親のそっくりさん(借金苦で追われている)・母親のそっくりさん(全てを失って自殺寸前)だけでも酷かったけど、祖父(3年間行方不明)のそっくりさん、を少年に見せつけていたトンボーグ、ホント外道……。
封筒から出てきたのは、これから生まれる孫(譲)へ贈られた『後の祭』というタイトルの本。その中身は、第1章「猫が家出をする日 空からキャンディの雨が降るだろう」、最終章「性格の悪いコブラがおいおい泣く時 地球は真っ二つに割れ 巨大なスイカが生まれるだろう」などなどという出鱈目な予言ばかり。
「お爺ちゃんの事……嫌いになりたくないからね」
祖父の変人ぶりをこれ以上なく示してしまう妄言の数々から目を逸らす為に、少年は予言書を公園のゴミ箱に投擲。ところがそれにスターピースが張り付き、ツケで食事をしたいが為に有名人になろうとするコブラ一味が拾ったその内容をTVに向けて読み上げた所、「キャンディの雨が降る」という出鱈目な予言がスターピースの作用により成就してしまう。
という事は、このままではいずれ、地球が真っ二つに割れて巨大なスイカが生まれてしまう……!
「真っ二つになんかさせない。僕が……孫の僕が、地球を守らなきゃ」
と、コブラ一味の動機を含め実に馬鹿馬鹿しい展開から、今作の特性(スターピース)を経由して、一気に地球の危機に向かう事に説得力を持たせつつ少年の決意に繋げるのは、扇澤さんがさすがのテクニック。
冒頭に家族間の視点の違いを置く事で、この1話だけでも少年の祖父への思いが伝わりますし、だから予言書を捨てる、だからそれを止めようと立ち上がる、という流れに納得できるのが実に鮮やか(逆に、10数話の積み重ねがしっかり反映されているのかどうかは、わかりませんが)。
少年とカブタック達はTV局へ向かうコブラ一味を発見、予言書を取り返そうとした所でスターピース争奪戦の認定が下され、今日も出てくるキャプテントンボーグ。そして選ばれた対決の内容は、マト役の頭に乗せたリンゴを見事に射落とした方が勝ちという、『ウィリアム・テル』的な<恐怖の弓矢>。
出鱈目な予言書が引き起こしつつある事態に孫として責任を取る、と自らマト役を買って出る譲少年ですが……カブタックなら、矢の一本や二本ぐらい当たっても大丈夫なのでは(笑)
まあここで、「友情パワーだよ、カブタック!」と笑顔を浮かべ、信じる気持ちを伝えてスーパーモードを発動する流れはヒロイックで格好良いのですが。
説得されて弓矢を構えるカブタックだったが、やはり譲に向けて矢を射るなんて出来ないと狙いを大きく外し、背後の木の幹に突き刺さる矢……が爆発。
………………カブタックでも、駄目かもしれない。
続いてコブラ一味のターンになり、腹部に直撃したガニランは痛がっているぐらいで済んでいるので、改めてそこに立っているクワガタを的にすればいいのでは感はありますが、心情的に代わってくれと言いにくいのはまあ確か。
そんな状況で、一度決めた対決内容は変更できない、と自身もルールに縛られる存在である事を見せつつも、覚悟の決まらないカブタックを
「カブタック、どうした」
と握り拳で煽るトンボーグ、外道すぎる(笑)
このままではカブタック棄権により敗北というその時……空腹の余り道ばたのワライタケを口にしていたコブランダーが笑いすぎで涙を流し始め、「性格の悪いコブラがおいおい泣く時 地球は真っ二つに割れ 巨大なスイカが生まれるだろう」という終末の予言が効力を発揮し始めてしまう!
天は裂け太陽は翳り、地は割れ火を噴き上げ、真っ暗闇の中で炎上する森、と物凄くカタストロフな状況になり、地球崩壊までもはや一刻の猶予もなし。ジャマールからもメルザードもから守り通したこの星を救うには、この支配者の遊戯を打ち破り、スターピースという超越的な摂理を手に入れて塗り替えるしかない!
「カブタック、出来るよ君なら。僕、信じてるよ!」
「互いを信じる事……それが、友情」
「うん、そうだよカブタック。僕は怖くなんかない。だって僕たち、親友だもん!」
「譲……!」
「うん!」
今、その魂に星を宿し、真っ直ぐに立ち上がるカブタック。
「……この弓に、一本のこの矢に、今、君への友情を懸ける!」
背後に炎が燃え広がり、雷光煌めき足下では火花が弾ける中、カブタックは微動だにせず弓矢を構え――。

「君の勇気がこの胸に!
 熱く響いていい感じ!
 ビーロボの一番星! カブタック!」

今作平均を知りませんが、渡辺監督のテイストとあいまって、やり過ぎなのではレベルに盛り上がり、素晴らしく格好良かったです。
Aパートではキャンディの雨が降り、おかしな祖父との血縁関係ついて悩んでいたのに、気がつくと勇気と信頼で運命を乗り越えるというド王道に着地していて凄まじい。
よっぴいでひょうと放った一矢は見事にリンゴを貫き、背後の木に突き刺さってやっぱり爆発。……下手するとリンゴに直撃した瞬間に少年の頭上で爆発していた気がしないでもないのですが、これ、爆薬が仕込まれていたのは背後の木(と恐らく周囲の地面)という、トリックだったのか?
ゲームマスターの真意はさておき、これにより勝者決定。譲少年がスターピースを回収して予言の効果は消滅するのですが、描写の限りでは先攻の筈のカブタックが命中した時点で勝者決定してしまい、トンボーグ、地球の危機に慌てて不正したのでは(笑)
コブラのターンの際、マト役に向けて「今度はおまえの番や」という台詞があったので、本当はコブラ先攻なのにカットされたのか、そもそも命がけなので先攻有利のルールなのかもですが、そこだけ惜しい。
もどきであったスターピースは灰になり、予言書を改めて破り捨てようとする譲だが、友達の小百合が最後のページに書かれていたメッセージに気付く。それは、孫に夢見る子に育ってほしいと、わざと出鱈目な予言を書いた、というものだった。
「忘れないでおくれ。夢にこそ未来を開く力があるんだ」
表現方法は斜め上に背泳ぎで飛んでいるものの、メッセージ性は非常に正統派。また、譲とカブタックのお互いの信頼が友情になっているのに対し、自分の祖父への好意は一方通行で祖父はただの変人で世間の鼻つまみ者で東映的に暗黒メンターというヤツではないかと悩める少年に、祖父からの素っ頓狂だけど純粋な愛情が示される、というのも綺麗に繋がりました。
この、純粋だけど色々迷惑というのは高円寺博士のキャラクター性そのものなのでしょうが、譲少年は3年前から行方不明の祖父に思いを馳せ、人と人、人とロボットのお互いを想う感情の繋がりが重ねられ、清々しく大団円。テーマ性と、ヒーロー物としての盛り上がりもしっかり融合され、良いエピソードでした。
良いエピソードで……次回――
「譲! 大変カブ! ガニランが小百合ちゃんたちを囲って、ハーレムを作ってるカブ」
「ハーレム……? ハーレムって、なに?」
「ハーレムってのは、酒池肉林カブ」
「しゅちにくりんって?」
「ああ〜、もうとにかく、ガニランのハーレムに潜入するカブよ!」
「わかったよ。『ビーロボカブタック』、「潜入!!踊り子少年隊」」
「絶対見るカブよ!」
うらさわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
…………ゴホン、失礼しました。
念のために放映リスト確認しましたが、ハーレム→女装への実に自然な流れは、やはり浦沢先生でした(監督は石田秀範)。予告を誰が書いているのかはわかりませんが、「囲って」「酒池肉林」という言葉のチョイスが、酷い意味で酷い。
いい話だったなぁ……と爽やかな気持ちになっていたら、まさかこんな形で強烈なオチがあるとは……!(笑)