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久々に歴史の本

◇『信長研究の最前線』 (日本史史料研究会:編)

信長研究の最前線 (歴史新書y 49)

信長研究の最前線 (歴史新書y 49)

足利義昭との関係は? 天皇や朝廷をどう考えていたのか? 経済などの政策は当時本当に革新的だったのか? など、14のテーマについて、織田信長研究の今(2014年発行)を概説。
複数の執筆者が参加しているので書き方は若干変わりますが、基本的には、通説はどうなのか、それに対してこういう反論が登場、更に研究が進んで現在ではこういう説が出ている、それらはどういった史料が典拠でありその信頼性は……といった研究の流れが順を追って説明されており、最新の学説だけが紹介される、という形でなかったのがまずわかりやすかったです。
先行研究の丁寧な紹介に紙幅を裂いている為、既にある程度の知識を持っていると物足りない内容かもしれませんが、大まかな概要が掴みやすく、入門編としては有り難い一冊でした。
また各テーマに応じて、「天下」とは何か、「国衆」とは、「官途」とは、など基本的な所から解説してくれているのも良く、単元ごとに主要参考文献があげられているので、興味を持ったテーマに関してより詳しく知りたい場合のガイドラインとしても、親切な出来。
とりあえず、日本陸軍参謀本部がだいたい悪い。


◇『家康研究の最前線』 (日本史史料研究会:監修/平野明夫:編)
家康研究の最前線 (歴史新書y)

家康研究の最前線 (歴史新書y)

上記書と同コンセプトの『家康』編で、発行が2016年後半と、まさに「最前線」の研究を紹介。
編者が入った影響か、『信長』よりは前提知識のハードルが上がっており、やや堅苦しい作り。家康の家系の出自〜東照大権現として神格化されるまで、その生涯を辿るという構成の為、テーマをピックアップした『信長』よりも読み物としてのキャッチーさも薄れており、より真面目なスタンスになっています。
不満点は、生涯をたどるという構成にも関わらず、「関ヶ原の戦い」に関して、ばっさり抜け落ちている事。……邪推すると、関ヶ原関ヶ原で一冊の本にする企画があるのか?


◇『織田信長 不器用すぎた天下人』(金子拓)
織田信長 不器用すぎた天下人

織田信長 不器用すぎた天下人

“信長はなぜ裏切られたのか”をテーマに、信長の経験した同盟破棄や家臣叛逆に焦点を当て、浅井長政明智光秀まで、7つの裏切りから信長像を検証。
“裏切り”の前段階として、足利幕府を後ろ盾に、後には自ら「天下人」として天下静謐を目指す信長の、上洛以前の段階も含め、武田・上杉・毛利など有力大名との外交の経緯がわかりやすく解説されていて、読みやすかったです。
特に諸大名との同盟の破綻に関わる共通項として、境界紛争に関する見立ての甘さ、行きすぎた理想主義を見る著者は、信長はあまり外交が巧くなかったのではという結論に達するのですが、この本で紹介されている内容から個人的には、自分の理念は正しいから多少の無茶を言ってもみんな(家臣以外含む)ついてきてくれる筈、といったタイプの正義の人だったのではないか、という印象を受けました。
そういう点で、諸紛争の調停において大きな名分であったと思われる足利義昭との関係が如何にして決裂したのか、という点に興味が湧いたのですが、足利義昭を中心に扱った章が無かったのは残念。
武田・上杉の和睦に向けて活動している間に家康と信玄の関係が修復不可能になり、最終的には信玄の一方的な同盟破棄を招くに至るまで、信長はなぜ家康×信玄の軋轢を放っておいたのか?
毛利・大友の和睦を仲介しようという動きを見せ、毛利とは同盟関係にありながら、なぜ中国地方における反毛利の急先鋒である浦上家を支援していたのか?
など、著者が信長の外交上の見立ての甘さを指摘する事例に関しては、他の角度から書かれた本も読んでみたいです。