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『ウルトラマンジード』感想・第5話

◆第5話「あいかた」◆ (監督:市野龍一 脚本:三浦有為子)
いっけん可愛らしい宇宙小生物モコと売れない芸人の絆がエピソードの中心なのですが、肝心の芸人が、大事な金づるでもある筈の宇宙生物を、至極あっさりと手放してしまう為、のっけから意味不明な事に。
果たして保健所職員を語る愛崎モアは、芸人から如何にして宇宙生物を回収したのか、以下の中から選びなさい。

  1. ヒールでぐりぐりと踏みつけながら光線銃をちらつかせた。
  2. 右手から順番に、指を一本ずつ折っていった。
  3. 公園の砂場に頭だけ出して埋め、スイカ割り大会を始めた(未遂)。


ジーッとしててもドーにもならないので、一般市民には実力行使あるのみなのです。
一足違いで芸人と接触し、リトルスターが宇宙生物に宿っていた事を知るリク達だが、それを狙う怪獣が出現。怪獣に追われ踏み潰されそうになったモアは結果としてジードに助けられ、ひっそりとヒロインポイントを上積みする。
モアの窮地にリクが走りながらの変身、という状況ながら、長い変身バンクで勢いが一度断ち切られてしまったのは勿体なかったところ。まだ第5話なので省略するというわけにはいかなかったのかもしれませんが、今回はクライマックスで新フォームへの変身も入るので、ここは思い切って短くできればヒーローの疾走感が出て良かったのですが。
前作はこの辺り、主人公がキャラ作りして形から入る残念な人だったので、長い変身バンクにも一定の説得力があったのですが、今作においてリクの持っている若い激情――すなわち、「ジーッとしててもドーにもならねぇ!」――と、この変身シーンの相性がもう一つというのが浮き彫りになっており、今後演出上でどうやって噛み合わせていくのかは、気になる所です。
口では「珍しい生き物なら売り飛ばしてしまえば良かった」と言いながら、怪獣に狙われていると知った芸人はモコを必死に探し、ライハに逃げるように言われながらも
「モコは俺を見捨てなかった、たった一人の相方なんだ。なのに、俺がモコを見捨てるなんて、出来るわけねえだろ」
と心意気を見せて助けようとするのですが…………最初に見捨てているので精神の錯乱が疑われます。
この状況に手をこまねいてしまうライハは、キャラとしては悪くないのだけど、結局、怪獣相手だと出来る事がないのが大きなネックで、そこはウルトラマンを中心とした世界観で覆せない(覆してはいけない)所だとしても、早い内にもう少しライハだからできる活躍を織り込んで欲しい部分(第3話でも、少年を避難させるどころか、説得失敗していますし)。
ジードは怪獣が背後にガスタンクを背負っている為に必殺光線を撃てず、火炎放射による反撃を受けてしまう。だがその時、モコから抜け出たリトルスターがジードに新たな力を与える!
…………一応解釈できる範囲としては、迫り来る怪獣から芸人を助けたいというモコの想いがウルトラマンに力を与えた、という事なのでしょうが、極めて利己的なウルトラマンという力の利用を“祈り”と呼んでいいのかに加え、リクとモコが実質無関係な為に劇的な集約がどこにも発生せず、時間が来たのでイベントが発生しましたという、これまで以上にギミック追加の都合の為の都合による、頭を抱える展開。
新フォーム誕生の成り行きとしては、かなり歴史的な酷さでは。
リクは前回手に入れたヒカリカプセルと今回手に入れたコスモスカプセルを起動し、青いジード、アクロスマッシャーが発動。
メカメカしく暑苦しい姿だったスポ根バーニングとは対照的に、荘重なBGMを背にすらりとした姿で優雅な立ち振る舞いを見せるアクロスマッシャーは、日本舞踊などがイメージに入っているのでしょうか。
あの手の動きがもう、
「おくつろぎの所、失礼いたします。こちら当宿自慢の鴨鍋コースでございます」
にしか見えなくて困っています!
仲居スマッシャーは光線技で怪獣をガスタンクから遠ざけ、光の剣を一閃。怪獣の火炎を華麗なジャンプでかわすと、催眠光線を放ち、それを浴びた怪獣は地下へと帰っていくのであった…………と、ものすっごい意味不明な事に。
いや、えーと、恐らくコスモス先輩の能力なのであろう事は想像がつきますし、新フォームの能力をいきなり使いこなせるのはまあ良いのですが、これまで基本的に敵対する怪獣をざっくり葬り去ってきたジード(リク)が、もう帰りたい光線でお引き取り願って満足するに至る感情の経緯が一切描かれないので、物語の流れから完全に浮き上がってしまっています。
リクの願いや想いがこの必殺技になるとかなら話はわかるのですが、単純に与えられた力を無造作に使ってみただけで、それに対する反応も描かれないので、見ているこちらが呆然とします。
今回も様子見していたレイトとゼロに「コスモスってなんです?」「後で説明する」というやり取りがあるのですが、もういっそ外野から、コスモスとはなんぞや、と説明してくれた方がスッキリしたのですが。
これは青いフォームの誕生が全く劇的でない事とも繋がるのですが、例えば芸人とモコの関係にリクとペガの関係を重ね合わせるとか、リクを主軸に据える手段は色々あったと思われるのに、執拗にリクは怪獣を排除する機能のみに追いやられ、そのくせ全く脈絡なく働いたら負け光線で解決してしまう為、極めて不可解。
その家に帰って録画見ないと光線に至る流れを積み重ねる事こそが“物語”なのですが、新たな力にも、これまでと毛色の違う必殺技にも、物語が全く乗っていない為に、酸鼻きわまる出来でした。
2話続けてここまでリクの主体的な感情から焦点が外されていると意図的な狙いにすら思えますが、それ以外の部分も面白く繋がっているわけではないので、狙いがあればいいというレベルにすら達していません。
とにもかくにも怪獣は姿を消し、一度は改めてモアが回収するモコだったが、脱走を繰り返して芸人の元に戻ってしまう為、諦めて定期的に経過を観察する事になるのであった……て、それでいいのか宇宙Gメン。今、あなた方の目の前で外来宇宙生物が地球人に体当たりを繰り返しているのですが、それでいいのか、宇宙Gメン!
モコに関してはGメンが危険性を煽っておきながら、なんか地球人に馴染んでいるみたいだから良いか、と自分たちで流してしまう、という凄い放り投げっぷり。
一方、青いフォームが女性の支持を集め、世論調査ではじめて、「好き」(51%)が「嫌い」(40%)を上回るジード。この結果に大喜びのリクはウルトラマン生活に前向きになっていくが、柱の陰でジェラシーにプルプル震える作家先生がエレキング×エースキラーのカプセルを起動。新たなカップリングの融合怪獣・サンダーキラーが出現すると、私だって女子高生からファンレターが欲しいというストレスを市街地にぶつけ、それに意気揚々と立ち向かうジード……でつづく。
前回今回は完全にリトルスター回収ありきで、やっつけ仕事としか言いようのないエピソードになってしまいましたが、さすがに次回、リクの内心を掘り下げてくれそうなので、リクが物語の中心になる事で立て直してくれる事に期待。