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『激走戦隊カーレンジャー』感想21

◆第28話「さらば信号野郎!!」◆ (監督:坂本太郎 脚本:浦沢義雄
ポリス星の息子の事を思いつつ、さらわれた市太郎を懸命に捜索するシグナルマンだったが、バリバリアンに連れ去られた市太郎はボーゾック祭の神輿にくくりつけられていた。
ボーゾックの一大イベント、年に一度のボーゾック祭……それは、宇宙の邪悪なエネルギーを特殊な神輿に集め、特製栄養ドリンクに変えて皆で飲む、という大変和気藹々かつ恐るべきものであった!
『暴辞苑』の項目を読む、という形で毎度毎度の馬鹿馬鹿しい説明が入る一方、神輿に群がるボーゾックが特製栄養ドリンクをストローで吸い上げると、神輿にまつられた市太郎はみるみる内に骸骨に……というストレートな残酷描写が凄く『カーレンジャー』です。
太陽系をぐるりと回ったボーゾック神輿は、いよいよチーキュへと降り立ち、大変珍しい幹部揃い踏みの中、集まってくる邪悪なエネルギー。カーレンジャーが正面からいつもより派手に名乗って陽動を務め、その隙に後方から市太郎を救出しようとする本官だったが、その前に立ちはだかり、立派な悪役のように笑うリッチハイカー教授!
に、宇宙の邪悪なエネルギーが直撃!!
本来は神輿を通して栄養ドリンクとして皆で分け合う筈だったエネルギーを一人で全て受け止めてしまった教授はその場にひっくり返り、てっきり季節ネタの一発ギャグだと思っていたので、この急展開はビックリ。
「ボーゾックと戦うという任務を投げ出して、チーキュを離れる事はできないのだ。宇宙警察の名にかけて、本官は戦う!」
教授が倒れている間に助けた市太郎と、帰りを待つ息子の姿を重ねつつも、戦う公務員として職務を選ぶシグナルマンは、ワッショイ怪人とワンパー相手に、珍しく格闘戦を展開。必殺の警棒で叩き伏せたワッショイが巨大化するとRVロボを綿飴攻撃で行動不能に追い込むが、サイレンダーのバルカンによってデリート執行するのであった。
市太郎は無事に父母と再会するも、その姿にますます揺れるシグナルマン。
「帰りたい……帰りたいが、本官にはチーキュでボーゾックと戦う任務があり、帰る事はできない。息子よ許せ……今年も運動会の二人三脚で、本官は、いや、父ちゃんは、一緒に走れない……!」
選ぶべきは、任務なのか? 家族なのか?
これまでずっと、あくまで職業人である事を前に出していたシグナルマンが、ここでとうとう個人としての本音を吐露する、というのを一人称の違いで鮮やかに示し、一見すると前回の実が口にした「仕事と家族とどっちが大事なの?」とヒーローに現実的問題を突きつけるギャグなのですが、そのギャグにくるまれた本質は、“ヒーローとして守るべきもの”と“個人として一番大事なもの”を天秤にかける問いであり、普遍的な大義と個人の相克といえます。
ここで今作は、その相克に折れそうになるシグナルマンに対して、ヒーローを応援する少年、の立ち位置である市太郎が真っ先にその背中を押します。
「シグナルマン。帰ってあげて」
と。
そしてカーレンジャーがシグナルバイクにカーナビをセットするというお節介を焼き、シグナルマンに家族を選ばせる。
象徴としてシグナルマンの職業が警官となっているように、例えば、警察官、消防士、自衛官……また、医者や各種インフラに携わる方々など、“現実”には事にあたって公私における公を優先する方々が勿論いてくれて、でもなるべくなら、そうやって時に誰かが突っ張って折れそうにならない世の中の方が、いいに決まっている。
それを手助けできるのは誰だろう?
それは、私たち一人一人ではないか?
大きなお世話になる危険性を常に孕みつつも、小さな親切で公をより良くしていこうとする一般市民がヒーローになれる、それがすなわちカーレンジャーなのかな、と。
(そこに一抹の危うさが描かれるのが、今作の抱くアイロニーといえましょうか)
また、前回今回の葛藤を経たシグナルマンは自分の内心と深く向き合う事で、
自分にもある 弱さを知れば 本当のヒーロー
に近づいたといえ、強いだけでは折れてしまう、だから自分の弱さを知るのが大事であるし、弱さと向かい合った時に支えてくれる誰かと居られるといいし、支えられる誰かになれればいい、そうすれば次はきっと問題を乗り越えられるようになる、というのもまた『カーレンジャー』的なヒーローの姿なのかと思います。
「市太郎くん、では、さらばだ! ペガサスの諸君、カーレンジャーの諸君に、もしも会ったら、よろしく伝えてくれたまえ」
「もしも、会ったらね」
「さらばだ!」
というわけで、サブタイトル通りに、シグナルマン、本当に帰還。
凄いぞカーナビ。
というか超高性能なカーナビは、あまりに高性能すぎたので、このままシグナルマンと一緒に退場なのか?!(笑)
やはり、一度狙った標的をどこまでも追いかけ続けるホーミングビームはやり過ぎだったと思うのですが、シグナルマンは大塚芳忠さんのボーナスポイント込みで好きなキャラなので、帰還をお願いしたいところ。
――その頃バリバリアンでは、まさか仇敵が運動会の為に帰郷しているなど知る由もなく、全身に包帯ぐるぐる巻きで呻いていたリッチハイカー教授の中で何かが蠢き……立ち上がった教授が包帯を剥ぎ取ると、顔が金色に。
「閃いたぞ、カーレンジャーを倒す方法を。宇宙の邪悪なエネルギーを浴びたこのわたくしが、必ず、カーレンジャーを倒してみせる。ふふふふふふふふ、ぬはははははははは……りーっちっちっちっちっちっちっち」
まさかのゴールデンリッチハイカーは、今度こそ、本当に、有能な悪のコンサルタントなのか?!
予想外のシグナルマン前後編から意表を突く教授強化(希望)で、たたみかけるように、つづく!
また、ダップが最近眠たくて仕方がない……という伏線が入り、ようやくスポットが当たりそうですが、やはり、成長期なのでしょうか……超スマートなイケメン(CV:速水奨)になったらどうしよう?!
次回――「止まってる車でも、急に動き出す事があるから」「気をつけてね」。