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『ウルトラマンジード』感想・第8話

◆第8話「運命を超えて行け」◆ (監督:武居正能 脚本:柳井示羊緒)
「若い……若いですよウルトラマンジード。さて……」
カラータイマーを点滅させながらギャラクトロンに立ち向かうも歯が立たず、至近距離からジャスティス熱線を浴びせられそうになるジードだったが、K先生は何故かギャラクトロンの電源をオフに。九死に一生を得たジードは活動時間限界に達して 木っ葉微塵に吹っ飛び リクの姿に縮小され、制限時間が来ると割と穏当に変身解除される事が判明。また、変身解除から次の変身までには二十時間程度のインターバルが必要な事が明確に。
「言ったでしょ? ヒーローには強い悪役が必要なんです」
レイトとライハに皮肉げな言葉をかけたK先生は、夕方のニュースでは「ウルトラマン最高です!」とこれみよがしな感謝の言葉を贈り、リクの怒りに火を点ける。
「あいつ、ぶっ飛ばしてくる!」
「待ちなさい!」
「離せ、離せよぉ!!」
乱暴に叫ぶリクはこの辺り、ベリアルの遺伝子を受け継ぐ者の一面、という意図もあるのでしょうか。
「まんまと罠にはめられて! 出てきた怪獣には歯が立たない。今のあなたに、何ができるの?」
基本的に実力不足な上に頭悪いよね? と正面から突きつけてくれたのは良かったです。
「負けたままで悔しくないのかよ!?」
「悔しいよ! 目の前で知ってる人が怪獣に襲われて、でも何も出来ない……悔しくないわけないでしょ!!」
荒れるリクに引きずられる形でライハも強い感情を表に出し、ようやく両者の内面を掘り下げつつ、2人とも強大な存在に雄々しく向き合う根っこには、少なからず公の義憤がある事が窺えます。
「だったら今すぐあいつを――」
「ごめん。……僕のせいだ。僕のせいで、ゼロさんは死んだ」
一方レイトは、怪獣に立ち向かうという恐怖を改めて実感していた。
「やっぱり僕には……戦うなんて、無理だ」
石化したゼロサングラスを秘密基地の机に置いたレイトは、家族とともに逃げると発言。
「僕には家族が居るんだ……君たちみたいに無責任に命を懸ける事はできない! 無駄死になんてしたくないんだ!!」
そんなレイトに、思わず平手打ちをするライハ。
「……無駄って……本気で言ってんの?」
「家族が心配なんだ……ごめん」
公の義憤よりも他に、優先して命を懸けるべきものを持つレイトは反論せずに基地を飛び出していき、寄って立つべき場所の違いから、レイトと若者達が決裂。また現状今作における「ヒーロー」とは、“公の理想の体現者”という事が言えそうです。だから守るべき家族を持つレイトには、私を省いたその正義が、一種の無責任に見えてしまう。
逆にライハの背景には、公の正義に関係する何かが存在していそう。
「レイトさんが死んじゃったら……マユちゃんのお父さんは居なくなっちゃう」
ここでリクが、レイト本人ではなく、マユにとっての父親、という立場を重視して理解を示す、というのも良かったところ。そこはかとなく「父親」「家族」というものに対するリクの想いも見えてきますが、ここに来るまでにもう少し、リクの家族観を明確にしておいても良かったかなとは思う部分でもあります。
ライハは何かを振り払うかのようにトレーニングに打ち込み、リクはペガ、レムと共に、戦いについて確認。
「ゼロは戻ってくる……絶対。……それまでは僕が……1人で戦ってみせる」
悲壮ともいえる決意を固るリクですが、そもそもジード、戦いにおいて誰かを頼る意識を見せた事がこれまでないので、今回急にゼロへの強い信頼感を示すのは、かなり強引(^^; どうしても、ここまでのリクの積み重ね不足が端々に顔を出すのが惜しい部分です。
ギャラクトロン対策についてライハに問われ、
「レムとシミュレーションした。戦い方は17通り」
と、ただ我武者羅に突き進めばどうにかなると思っているわけではなく、一応頭使ってて良かった(笑)
「その内、失敗する可能性が高いのは、17個」
LV差は覆せませんでしたが!
それでもそこでライハと微笑み合う辺り、要するにこの2人は、似たもの同士なのか。
地上では、ジード再変身のインターバル時間を知っているかのように、K先生がギャラクトロンを再起動。
「行くんだね」
「…………うん、僕はウルトラマンだから」
17通りの戦い方はどれも通用しないかもしれない、それでも、リクは立ち上がる。
何故なら、己の力が忌まわしい血筋に由来しているとしても、その力を正しく使う事で、力は意味を変える事が出来るから。
リクがウルトラマンであろうとするのは恐らく、その名の下に公の理想を追い求める事で、自分の力を正しく用いていると信じられるから。
だからこそリクは世論調査の動向を細かく気にするし、自分が体現しようとする理想のヒーローを汚されたと感じた事で、K先生に対して激怒した、と考えると、リクについてようやく腑に落ちてきました。
今作の行き着くところは、「ウルトラマン」から脱皮して、「ジード」になる事なのかも。
一方、避難の準備を進める伊賀栗家では、マユが無邪気にウルトラマンを信じていた。
「大丈夫だよ。ウルトラマンが、来てくれるもん」
「……マユ。……そうだね。いつだってウルトラマンは来てくれる。いつも必ず」
この辺り、お母さんは娘に話を合わせているにしても、一般へのヒーローとしてのウルトラマンの浸透度合いがもう一つ曖昧なのですが、仲居スマッシャーは女性に大人気だ!
「――行かなきゃ」
愛する妻子の言葉に、 嫉妬 恐怖に震える手を押さえ込み、決意を固めたレイトは、2人をぎゅっと抱きしめる。
「こんな頼りない僕だけど……やっぱり、守りたいんだ。……君も、マユも、君の好きなこの街も全部」
「レイトくん……?」
「だから、祈ってて。ヒーローの復活を」
伊賀栗レイトもまた、立ち上がる。
力があるならば――それを、理想に近付ける為に。
この両手で守れる世界を、もっともっと広げる為に。
ジーッとしててもドーにもならねぇとギャラクトロンに立ち向かうリク、その戦いの場へひた走るレイト。
……今回、てらいなくベタをやってきた(中途半端に恥ずかしがるのが一番良くないので)点も含めてここまでは結構好きなんですが、この後、大・失・速(^^;
ジードの戦いが見える所まで駆けつけるも地面に転んだレイトの前に、ゼログラスを持って立つライハ。
「普段はあんなに頼りない子が……ウルトラマンだなんてね。私には、リクのような強い力はない。私にその力があったらって、思う事もある。だけど……ウルトラマンになった事は、運命なんだよ」
……前半にも幾つか引っかかる部分のあった積み重ね不足ですが、ライハ主観にしても、リク=「頼りない子」というのはどうもすんなり頷きにくく、描写できていない設定をそのまま台詞にしてしまった感じに。そこに頷けない内に、ライハがいきなり「運命」という単語を持ち出してしまい、ライハの中では納得しているようだけど一人で思考が飛躍している印象が強くなってしまいます。
そしてそのライハの思考の飛躍に至る背景が劇中にまだ登場していないので、ライハの物の見方に共感しにくいまま、「運命」というボールをレイトにキラーパスしてしまうので、ライハが勝手に理想化した義務をレイトに押しつけたような形に。
恐らく次のエピソードへの前振りとして必要だったのでしょうが、正直ここライハ抜きでもまるまる成立すると思いますし(グラサン渡すだけなら、レイトを純粋に信じていたペガが持ってきたとかで充分なわけで)、より劇的にする為には、ライハ抜きの方が良かった気がしてなりません。
「あなたは、ウルトラマンの力で、何がしたいの?」
もう一つ言うと、ライハ自身が何やら重いものを背負っているのは透けて見えるにしても、妻子持ちの30がらみの社会人に説教モードを発動するには、あまりにも小娘感があって説得力がありません。もっと丁寧に雰囲気を仕込めば別ですが、どちらかというとキャラの日常感を重視している今作では、浮き世離れした神秘性などは存在していないわけで。
しかもつい先日、地味なサラリーマンにも社会でそれぞれの役割があってそれはとても大切な事だ、とやったばかりなのに、運命によって力を手に入れたのだからそんな事では駄目だ、とライハがバッサリ袈裟懸けに切り捨ててしまう事に。
既にこの前のシーンでレイト自身が、その役割の延長線上で自分が守れる世界を広げたいと決意をしているわけなので、ライハの介入は不必要な雑音になってしまいました。
これは恐らく、リクにしろレイトにしろ、今回のエピソードは現実と理想にまつわる“男の子の夢”をストレートに描いているので、いざその核心に入った時に物語の中にライハの居場所が無くなってしまったという影響もあったかと思います。この場面は次回を見ると遡って納得できるかもしれませんが、今回に限っていえばエピソードのテーマを損ねてしまっており、ライハ自体は嫌いでないだけに、残念。
「――守りたい。僕には……2万年早すぎますか? それでもやってみたいんです。みんなを守るって事を」
サングラスに向け、ゾーラの決め台詞を借用してのここは良かったのですが…………
(――俺の相棒だったらもう30分早く判断しろ)
石化していたゼログラスに輝きが戻り、“ゼロがサングラスの側から復活してしまう”というのが、今回最大のガッカリ。
てっきり、ゼロはレイトの生命活動を維持する為のほんの僅かなエネルギーをレイトの中に残しており、レイトの決意がそれにエネルギーを与える事で“レイトの内側からゼロは復活する”と思っていたのですが、それが“サングラス(レイトの外側)から復活してしまう”と、結局、ゼロは超強いので余力を残した仮死状態だった、という事に過ぎなくなってしまう。
勿論それを最終的に目覚めさせたのはレイトの決意なのでしょうが、それをより劇的にする為にはレイトの内側から目覚めてほしかったですし、運命とは別の手段でヒーローになれる可能性をそこに見たかったです。
サブタイトルは「運命を超えて行け」なのですが、実際に見せているのは、内側から生み出した力で運命を乗り越えるのではなく、外側から与えられた力を運命として受け入れる、という構造になってしまっているのは、非常に残念。
まあこの点は物語として、運命に選ばれて外から力を与えられた者(レイト)と、運命に選ばれず力を与えられていない者(ライハ)、を厳然と区別したい理由があるのかもですが。
あと、ゼロが死んだけれどレイトは生きている、という事自体はゼロが生きている物語的根拠だったとは思うので、それがレイトの内側からの復活という形で活用されなかったのもガッカリ。既にレイトの肉体は完全回復しているという事なのかもですが、そうすると今度はゼロがレイトと同居する建前が無くなってしまうわけで、その補強の為にも繋げてほしかった所です。
(行くぞ、レイト)
「……ハイ!」
レイトは自らの意志で変身し、復活したゼロはジードとのコンビネーション攻撃をギャラクトロンに浴びせるが、
「いいですねぇ、こんなに楽しめるゲーム未だかつて無かったぁ! では……こちらも」
熱射病になりそうな格好で戦いを見つめるK先生は、2台目のギャラクトロンを召喚する大盤振る舞い。
奥行きを使って2ラインでの同時バトルはあまり面白くならず、ギャラクトロンの攻撃を受けて吹き飛ぶゼロだが、その時、不思議な事が起こった(棒読み)
突如、空から落ちてきた金色の光が、ゼロに接触――その光の正体は、新たな力を届けにきたウルトラマンヒカリ
「ニュージェネレーションカプセル。ゼロ専用のパワーアップアイテムだ」
ええええええええええええええええええええええ。
そもそもリトルスター回収と新フォーム発動からして物語との連動性が希薄な傾向でしたが、ジードクローの出現といい今回といい、スタッフは誰もパワーアップギミックと物語を繋げる事に興味が無いのでしょうか(^^;
やる気の無さ度合いで言うと、よくわからない内に地球が新たな天装術カードを配信してくれて駝鳥を召喚したレベル。
そしてまたここでも、力が内側から生じるのではなく、外から与えられるものとなっているのも、残念な所。エピソードの流れとしてはゼロ復活から一気に強化に繋げてしまうのが一番説得力が生じたと思うのですが、玩具の都合でどうしても出来なかったにしても、物凄い放り投げ方。
そこから、ギンガとオーブのウルトラ成分を混ぜ混ぜしてニュージェネレーションカプセルアルファ、ビクトリーとエックスのウルトラ成分を混ぜ混ぜして同じくベータを作り、新たに生み出した二つのカプセルを改めてライザーで読み込んでネオフュージョンライズ、「俺に限界はねぇ!」と新たな姿にフォームチェンジするまで、約1分30秒。
さすがに長い。
そして「ニュージェネレーション」とは一体……と思ったのですが、つまり、ゼロの新しい舎弟達か。
「俺はゼロ……ウルトラマンゼロビヨンドだ」
出っ張りが増え、すかした喋り方になったゼロビヨンドは4つの舎弟スラッガーで遠距離攻撃を放ち、その生じた隙にジードは仲居スマッシャーを発動すると、連続攻撃からクロースプラッシュでギャラクトロンを撃破。ゼロビヨンドも8つのウルトラ舎弟ファンネルによる一斉射撃で撃破し、難敵・ギャラクトロンを共に打ち破るのであった
「はっ……面白い」
K先生は思わせぶりな事を言って退場し、前回−今回で悪役としての存在感は出ましたが、何が起きても計画に支障の無いポーズを取り続ける人にもなってしまい、あまり都合良く引っ張りすぎないでほしい所です。
感激の涙を流すレイトはリクとがっちり握手を交わし、妻と娘から見ると、避難そっちのけでどこかへ飛び出していったレイトが川岸で最近知り合ったばかりの青年と手を握って見つめあっている場面に遭遇したわけですが、どう言い訳するのかレイト! この危機を乗り越える事は出来るのかレイト?!
とりあえず、残念カプセルを使った後遺症が出ない事を祈ります。
「ルミナさん……僕最近、数奇な運命に導かれて旅に出たい気持ちなんですよ」
次回――ライハvsK先生!