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『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想・第28話

 先週分。
◆Space.28「怪盗BN団、解散…」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:毛利亘宏)
 沢山並べるの大変だったのでしょうが、ビルド合わせに新装した〔スーパーヒーロータイム〕のコーナーに、ラッキーとツルギしか出てこないというのは、本編が本編だけに、のっけから口元がひきつります。
 冒頭、イソギンチャク男がちらっと顔出しして、忘れられないようにしておきたかったのでしょうが、割と暇そうフクショーグン。連携しないのは個人の作戦を尊重という事なのでしょうが、わざわざ出したのだからそれならそれで、「俺は見物させてもらうぜ」の一言ぐらい云わせておけば良いのにとは思うところ。
 「ナーガ、迎えに来たよ。一緒に帰ろう」
 街でライブもとい破壊活動を始めたナーガに、つとめていつもの調子で声をかけるバランスだが、お笑いからアイドルへの華麗なる転身を目指す貴公子ナーガに、コンビ解消を宣言されてしまう。
 ナーガはヘビメタに変身し、ダークチェンジをする度に(救世主の証ではなかったのかキュータマ……)と考え込んでしまうのですが、襲い来るヘビメタに対してラッキー達も変身。
 前々回ラストから少し気になっているのが、現在のナーガの「感情を解放」したら破壊活動に走る、という状況はフクショーグンの悪意の介在を感じる所なのですが、一方のラッキー達が何をもって「ナーガを助ける」だと考えているのかがもう一つ不明瞭な所。
 つまりラッキー達が、蛇遣い座系の人間は「封印していた感情を解放されると闇のビジュアル系になってしまう」と考えているのか、「アキャンバーのやっている事は感情ではなく破壊衝動(など)を与えているに過ぎない」と考えているのかで物語のゴールが少し違ってくるのですが、今回のアキャンバーへの対応を見ていると、あれ? ラッキー達、100%前者だと思っている? という不安がぬぐえません(^^;
 状況が状況だけに、とにかく元に戻す(第25話のセーブデータをロードする)のを最優先、という理解も出来はするのですが、とりあえずほら、再会したらみんな一言ずつ謝るぐらいはしても良かったと思うのですが。
 前々回、善意ではあるが無思慮な一言でナーガ迷走に拍車を掛け、前回は深く反省したような面持ちだったハミィが、今回これといってナーガに特別なアプローチをしない、というのは愕然とする展開。パーティー二分割体制により概ね適正人数になっての話運びに注目していたのですが、実に『キュウレンジャー』平常運行でした。
 「俺はアキャンバーのお陰で感情を手に入れた! 嬉しいだろ?!」
 「そんなの嬉しいわけないじゃないか!」
 「そうか……やっぱりお前も、俺に感情を取り戻してほしくなかったってわけか!」
 ほら、ジャンル転向する前に聞いた発言が、しっかりトラウマになっているわけで。
 「違う! ……ナーガ、一緒にやろうよ」
 さすがに他の4人とは一線を画して、変身して戦わない事を貫くバランスは、生身に激しい攻撃を受けながらも立ち上がるとBN団の名乗りで歩み寄るが……求めたハイタッチに代わり、その足を鎌に貫かれる。
 「馬鹿にしてんのか?」
 ……ごめんバランス、それは怒られるよ。
 ナーガに必要なのは「嬉しいわけない」理由の説明なのですが、それは言わなければナーガには伝わらない事であると同時に、「感情を理解できないナーガにはわからないから説明しない」事がナーガをここまで追い詰めたわけで、ここでまた同じ失敗を繰り返してしまうのは、ナーガに対してバランスが不誠実であると思わざるを得ません。
 「馬鹿にしてんのかーーー?!」
 4人を相手取るスクールアイドルはその光景を嘲笑。
 「問題です。ナーガを元に戻すには、どうしたらいいでしょう?」
 「わかってんなら教えな!!」
 そして本当に救世主の皆さんは、どうやって「ナーガを助ける」のか、誰一人考えていませんでした。前回の彷徨期間はいったい何だったのか……。
 「答――痛みを与えるの。全て忘れてしまうぐらいの激しい痛みをね! あきゃきゃきゃきゃきゃ……」
 「激しい痛み?」
 「だったら仕方ねぇ! 俺がやってやる!!」
 信 じ る の?(唖然)
 「ナーガを元に戻すには、痛みを与えるしかないんだ」
 なんだろうこの人達、ホント酷いな……(^^;
 ここで躊躇せずに攻撃を仕掛けるのは、良く受け取れば革命戦隊キュウレンジャーらしい覚悟とはいえるのですが、他の手段を試すどころか考えもしないで敵の言葉を鵜呑みにして殴りかかる為、ホント酷いな……以外の言葉が思いつきません。
 ひとり戦いを止めようとするバランスだったが、まとめて吹っ飛ばされて全員変身解除。追い打ちのデスメタルクラッシュを放たれて全滅寸前になるが、そこに駆け込んできた蛇遣い座星人の女に助けられ、一時撤退。その女とは、母星を出て外界で感情を得ようとしているナーガを、異分子として抹殺に来た蛇遣い座星人・エキドナ (名前からすると、ナーガの母親(的存在)か?)。
 エキドナに反発する5人ですが、一緒に旅してきた仲間との絆が問われている展開の中で、幾ら顔が瓜二つ(二役)といっても、「ナーガが……2人?」と台詞にしてしまうのがまた、本当に酷いと思います。
 「ナーガと似ているけど……ナーガじゃない」ぐらいの事を言わせておけば、救世主運動を通してナーガに起きていた変化と、それを皆がしっかり認識していた事を補えたのですが、むしろラッキーがナーガに興味ない事が裏打ちされてしまいました。
 そう、大切なのは、革命を成功に導ける戦力か否かです。
 その頃、過去――ツルギ達6人はかぶりつきの特等席から救世主軍団vsドン・アルマゲの最終決戦を観戦し、カラス軍師の死亡後、ツルギ怒りの自爆技・鳳凰ダイナマイトが確かにショーグンを一刀両断して消滅させるのを目撃する。
 「やった! てことは、やっぱり?」
 「ああ。確かに俺様は、ドン・アルマゲを、倒している」
 謎は深まった……とオリオン号に戻って考え込むのですが、それはもう、ごくごく素直に代替わりしたか別人が名乗っているという結論になるのでは(笑) 将軍様が300年前の本人でなければ知らない筈の事を知っている、というのがツルギ達に明示されていればミステリーになるのですが、そういう仕込みが無い上にフクショーグンがツルギの事を知らないなど、むしろその方が自然という状況になっており、どうして皆が「死んだ筈のドン・アルマゲが300年後に甦ってたんだよ!!」という珍説にこだわるのか、そちらの方がよほど謎になっています(^^;
 ここまでおかしな妄想を強引に説得力ある意見として突き通そうとしているのを見るに、本来はショーグン同一人物説を裏付ける情報を先に描いていたのに、シーンカットとかで辻褄が合わなくなったりしてしまったのでしょうか。
 謎の鍵を求め、過去のオライオンとの接触を決断するツルギだが、オリオン号が謎の攻撃を受け、地球へ向けて緊急ワープをする事に……!
 現代――エキドナから、ナーガをそそのかして連れ出したと糾弾されて逃げるようにその場を離れたバランスは、追いかけてきた4人に、それが真実である事を告白。かつて蛇遣い座系惑星で捕まりそうになったバランスは、「感情が欲しい」と現れたナーガを逃亡の為に利用したのであった。
 第2話でさっくり見捨てようとしたのとも矛盾せず、もともと怪盗であったバランスの裏の面を描いてくれたのは良かったのですが、第3話以降これまで、まるで顧みられていなかった要素なので、とってつけた感は否めません(^^; ナーガだけではなくバランスもまた変わっており、その変化ゆえに本心からナーガを救おうとする……と繋げたかったのでしょうが、なにぶん第3話から今回まで、バランスが裏で何を考えていたかなど匂わされもしていなかった(裏があるキャラとしてすら描かれていなかった)わけで、それを全て想像で補えというのは、無茶にも程があります。
 何度か書いていますが、つくづく、BN団をキュウレンジャーに吸収合併する事で、その立ち位置を“救世主”という一色にあっさり塗り固めてしまい、バランスの通り名でもあるトリックスター要素を排除してしまったのは、物語として痛恨。
 「俺はナーガと一緒に笑い合いたい! 喜び合いたい!」
 バランスが連れ出してくれたから俺たちはナーガと出会えたんだ、と台詞だけ取り出すといい事言っているように聞こえるけど積み重ねが何もないので空疎に叫ぶラッキーは、相手が本気で怒ってからやっと気付くタイプ。
 バランスもその言葉に、最初は一方的に利用していたけれど、今では本心から一緒に感情を分かち合いたいと思っている事を確認し、決意を新たに駆け出した5人は、ライブ活動中の暗黒アイドルユニットの元へ。
 「君を必ず、取り戻す。たとえ、君を傷つけたとしても!」
 バランスの変化、という流れから、普段本心をハッキリさせないバランスが真心を吐露する、みたいに組んだつもりなのかもしれませんが成功したとは言いがたく、そして巡り巡って結局、記憶を失うまで殴り続ける方針は変わらないのか。
 「忘れたのかな? あいつを元に戻すには、激しい痛みが必要だってこと。あきゃきゃ、もしかしたら死んじゃうかもよー」
 「だからって、仲間を見捨てる理由にはならねぇ!」
 いっけん「仲間」を大事にしているように聞こえるのですが、死ぬかもしれないから敵の言葉を鵜呑みにせずに別の方法を考えたり自分たちなりのアプローチを試してみるのではなく、死ぬかもしれないけど見捨てない事の証明として敵の言葉を鵜呑みにして死ぬ寸前まで殴り続ける、というキュウレンジャースタイル。生き残った奴だけが救世主だ!
 「そうだろう、バランス!」
 獅子レッドは光キュータマを発動し、マッスルゴールドが再誕。
 「そのとぉりでぇす! しゃきーん! ナーガが欲しかった感情は、そんな、全て破壊し尽くすような感情じゃない!」
 そもそも今のナーガが得ているものは「感情」なのか、という当然の疑問の一端にようやく触れてくれたのは良かったのですが、マッスルゴールドは逞しい上腕二頭筋でヘビメタへと殴りかかり…………あれ、ええとこれはあれ?
 おまえに本物の感情を教えてやる!
 痛み!
 苦しみ!!
 絶望のフルコースをなぁぁぁぁぁ!!
 てやつ?
 「みんなで笑い合いたかったんじゃないのか、ナーガぁ!」
 金と銀の激しい一騎打ちが繰り広げられ、「感情があったら、平和になる。皆が笑って、喜び合える世の中ができる」という、ナーガが感情を欲しがった本当の理由を突きつけたゴールドは、射手座キュータマで自分もろとも絨毯爆撃し、大ダメージで揃って変身解除。
 だが……
 「どうして?! 痛みを与えれば、元に戻るんじゃ?!」
 「あきゃきゃきゃ! 騙されてやんの!」
 「なんだと?」
 ナーガは乱暴な口調の貴公子モードのままであり、アキャンバーの発言は当然「嘘ぴょーん」だったわけなのですが、本気で驚いているメンバーは脳細胞をデカレンユニバースに忘れてきてしまったのか。
 「この痛みを俺の怒りに変えて、必ずてめぇを葬る」
 負傷したナーガが副将軍に連れられて撤退すると、物凄く唐突に代官が巨大化して、ロボ戦の消化を要求。バランスが負傷している為に青と緑が双子分身で補う、というトンチは『ニンニンジャー』でも似たようなネタをやっていましたが、青緑のボイジャーもそれぞれ2体召喚されるという意味不明な事に。
 そして今回の小太郎のまともな台詞は、ここでバランスに肩を貸しながらバランスそっちのけで
 「凄い! こんな事もできるんだ」
 のみで、何しに現代残ったのですかねこの子……。
 ホント可哀想ですが、人数削っても清々しいまでに『キュウレンジャー』平常運行でした。
 で、重い展開の次は劇中人物の感情の流れなどお構いなしに明るくする、という今作の方針も平常運行で、赤青緑が凄く楽しそうにロボ戦を行う姿は、さすがにドン引き。
 仲間の一人が失われるかもしれず、これまで積み重ねてきた絆が試される、というシリアスな展開で人数を半分に絞ったので、個々の感情を細やかに描いてくれる事を期待したのですが、バランスは物語の設計ミス、ハミィと小太郎は空気、頭は使わないけど率先して泥を被ろうとするだけガルの方がまだマシで、ラッキーは空疎、自分たちなりのやり方は何も考えずに敵に言われるままの手段で解決しようとするという、まさかの真逆。
 5人なりのアプローチを試みるも失敗、その後フクショーグンに弄ばれて失敗、それでも俺たちは諦めない、みたいな構成ならわかるのですが、一番重要な最初のアプローチが存在しないために、とんでもないカタストロフ。
 どういうわけかエキドナと再会した5人(柱の陰から戦闘をピーピングしていたのか……)は、「絶対にナーガを助ける」と啖呵を切るが、そこへ突然響くオリオン号の救難信号。
 発信源で5人が目にしたのは、なぜか地球の大地で損壊し遺跡のように朽ち果てたオリオン号の姿。そして過去では、6人の救世主がオライオンの前で倒れていた……(小太郎が現代組だったのはつまり、生小太郎が倒れているとショッキング映像になりすぎるという配慮からか)
 次回、「みんなに何が起きたのか、過去に行って確かめるしかない!」。
 
 ナーガ話のぶった切りがさすがに目に余るのですが、なんだかもう、この同時進行に、根本的な無理があったのでは。