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『激走戦隊カーレンジャー』感想32

◆第40話「浪速ともあれスクランブル交差ロボ!?」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久
「余がアイデアと資金と材料まで提供した作戦だ。きちんとやれば必ずカーレンジャーは倒せる」
あくまでボーゾックを矢面に立てて夢へ向けて邁進する暴走皇帝エグゾス、監督も楽ではありません。
「ちょっとちょっとあんた! いっつもいっつも偉そうな事ばっか言ってるけど、あたし達をなんだと思ってんのよー!」
「まあまあ、ゾンネットー。見ててくれー。今度こそ奴らを十字架にかけてみせるぜー」
スポンサーがついて気が大きくなっているのか、珍しく洒落た台詞を口にするガイナモ(笑)
一方地球では、恭介が出社すると、実は神社で必勝祈願中…………阪神タイガースの。
「神様、今年もまたタイガースは駄目でした」
こてこての関西人を突き進む実ですが、1996年当時の阪神タイガースは、85年を最後にリーグ優勝から遠ざかり、87年から続く暗黒時代の真っ最中。この年は前年に続いて最下位でシーズンを終え、再びリーグ優勝(どころかAクラス入り)を果たすのは、2003年だよ実!
他人事ながら辛い。
そこにボーゾック発生の警報が鳴り響くが、カーレンジャーが目にしたのは、ボーゾックから足抜けしようとしてゼルモダに追われるOOバットン。5人はとりあえずバットを助けてゼルモダを追い払い、緑は戦闘中に自分をかばってくれたバットに心を許す……という、いい怪人?との交友エピソードなのですが、正体は秘密の関係で、終始変身後の姿のまま怪人とやり取りする、というのは珍しいような。
交友エピソードとしては、予告および「ボーゾックは普通に引退できる」という過去の事例から、裏切りは偽装工作でありエグゾスの作戦の一貫、というのがわかった上でというパターン。
バットが関西風タコ焼きを気に入ったのを喜ぶ緑は、頭に締めていたタイガース必勝ハチマキをプレゼントし、
「なんか、俺ら固い友情で、結ばれそうやのぉ」
この台詞と共に、ハチマキを結ぶ、というのが巧い。
バットはいかにもカーレンジャーの優しさに打たれた様子で、ボーゾックが地球を花火にする為に地下秘密基地に大量の爆薬を集めている事を密告。……偽装作戦とはいえ、カーレンジャーがボーゾックの元来の活動目的を知ったの、初めてのような(笑)
「信じない方がいいダップ」
ほだされ気味のメンバーに対して、相談を受けたダップの対応は超クール。
「どうしてだ?」
「このボーゾックサイレンは、改心したボーゾックには、反応しない筈ダップ」
恐らくクルマジックアイテムである便利なサイレン、これまで何度かボーゾックに反応しない事があったのを、悪意を持っていないボーゾック(普通に買い物に来たり)には反応しない、ならば逆に……とエピソードの内容に沿いつつ見事に設定の穴を埋めてきたのはウルトラC。
タイガースグッズの溢れる部屋にバットを匿っていた実(自宅でもグリーンレーサー)は基地に呼び出され、ダップから向けられる疑いに対してバットを擁護。
「どうって……あいつな、ほんまええ奴やねん!」
星の海の垣根を越えて、猛虎魂で結ばれる実とバットであったが、他のメンバーは対応を決めかねて無言。その反応を見て、俯いた実がちょっと間を置くのがまた秀逸です。
「……あんなぁダップ、俺なぁ……あいつの事信じてみたいねん!」
地下秘密基地は1人で探す、と飛び出していく実。
「……ダップ悪い! 俺もあいつを信じてみたいんだ!」
恭介達も次々と実を追いかけて飛び出していき、ここで「実を」と「バットンを」を、「あいつを」にまとめている台詞の妙がお見事で、単純かつ頭使わずに全面的に怪人を信じ込んでいるのではなく、ダップの疑念も理解した上で(他人を信じない冷たい奴だと一方的に非難しない上で)、まず何より「実を」信じようとしている。そしてその姿勢が、ヒーローのお約束としてではなく、お人好しで気持ちのいい連中であるカーレンジャー、という蓄積の上にしっかり成り立っています。
タイミング的には偶然ぽいですが、前回、ビーガーを飼おうとする土門に否定的なスタンスながらも何も言わずにそんな土門を助けた姿とも、綺麗に繋がりました。
またここで実を追いかけるのが、恭介→土門→洋子→菜摘、という順番で、同じ「信じてみたい」でも信:疑の割合が信寄りなキャラ順(事前の会話でも、菜摘が最も慎重派)に動いており、演出・脚本ともにバランスの取れたテクニカルなシーン。
4人は実に追いつき、
「馬鹿たれ。俺たちはいつも一緒だろ」
「みんな来てくれるんか?」
「ただ……信じるって事を、してみたくなっただけさ」
照れくさくなったのか、恭介、謎の格好つけ(笑)
5人は変身してVRVマシンに乗り込むが……その頃ゼルモダから電話を受けたバットンが態度を豹変させ、ハチマキをほどいて踏みにじっていた。
「へっ、くだらねぇ」
そして地下秘密基地を探っていたVRVロボは、爆薬の罠にはまり、皇帝印の十字架に拘束されてしまう。
「まんまとかかったな、カーレンジャー
「楽勝だったぜ、グリーンレーサーさんよぉ」
バットは芋羊羹を食べて巨大化すると行動不能となったVRVロボを攻撃。自分が騙されていた事を突きつけられた緑は落ち込むが、そこに基地から声援を送ったのはダップ。
「グリーンレーサー、信じた事を悔やんではいけないダップ! 大切なのはそれよりも、今を頑張る事ダップ!」
思えばダップと5人の関係も「信じる」事からはじ…………えーと……あ、あれ? ……ダップと5人の関係は、「強制」と「拘束」と「死んだフリ」から始まり、始まったけど、その後、信頼関係が育まれたんですよ!!
……荒川さんが凄く美しくまとめ直そうとしたのですが、落ち着いて考えると大変無理がありました。
無理はあったのですが、定番のプロットをベースにして、『カーレンジャー』的なるものを終盤前に整理しようというのは、実に荒川さんらしい仕事。
ダップがレンジャービークルを出撃させて5人は乗り換え、熱心に取り戻した割にはその後放置されていたRVロボを拾ったのもお見事(修理していた、と発言)。
久々登場のRVロボだったが、熱い展開の勢いも戦力差を覆すには至らず、両手両足を潰される絶体絶命の危機に陥ってしまう。迫り来るバットドリルに対して、緑の叫びがバットンの良心を一瞬呼び覚ますが、監督による制裁の恐怖からバットンはそれを振り払う。
「バラバラにされる前にぃ……バラバラにしてやるバットン!」
だがその叫びに、勝機を閃く緑。
「そうや……みんなバラバラや!」
カーレンジャーはRVマシンとVRVマシンの、それぞれ無事な車に乗り込み、RV赤青+VRV緑黄桃が、スーパー緊急合体して、天下の浪速ロボスペシャルが誕生。哀しみをこらえて自ら引き金を引いた緑により、驚愕するバットンを、Vツイスターで葬り去るのであった。
「ボーゾックにも、きっとおるよなぁ……ええ奴」
信じた事を裏切られたが、それでも信じる事を諦めたくはない……実の呟きに、恭介は無言になってはいけないのでは(笑)
交換日記事件は、そこまでショックだったのか。
タイガース必勝ハチマキを巻いた実は空元気を振り絞り、六甲おろしを唄いながら去って行き、その背中を無言で見守る仲間達……と今作にしては非常に珍しく、しみじみとしたまま、阪神エンドでつづく。
ボーゾックを信じられるかどうかを、タイガースを信じられるかどうかに掛けていると捉えると実に悪辣な脚本ですが(なお脚本の荒川さんは中日ドラゴンズファン)、この後、4年連続最下位とかもあるけど、2003年まで力強く生きろ実!
実の関西弁キャラをフル活用した戦隊史上空前かと思われる阪神タイガース回で、ポイントポイントは非常に面白かったのですが、ギャグゆえに無神経に他者の命を奪えるボーゾック怪人を、良心と命令の間で揺れ惑う存在として描いたのはやや違和感があり、従来の戦隊フォーマットに強引にあてはめてしまった感があります。
エグゾスがスポンサーについてからのボーゾックの体制の変化を、従来的な悪の組織に近づいている、という形で象徴的に盛り込む意図もあったのかとは思われますが、悪い意味で紋切り型になってしまい、クライマックス〜オチのまとまりが悪く感じてしまいました。オチからギャグを外した事自体は、年に1本ぐらい違う味わいを混ぜたかったのかとは思われ、悪くはなかったのですが。
助走から踏み切りまで素晴らしかったのに、ジャンプ中に体勢を崩して記録を伸ばせなかったという感じで、惜しい。
次回――順番的に黄色回かと思ったら、最近存在感を増しているダップに、暴走皇帝の魔手が迫る?!「どんな時でも、赤信号では止まるんダップよ」。