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『轟轟戦隊ボウケンジャー』感想・第1話

◆Task.1「魔神の心臓」◆ (監督:諸田敏 脚本:會川昇
冒頭からナレーションでがつっと背景が語られ、古代文明の遺物から絶滅寸前の希少動物まで、世界中の貴重な宝を集める民間団体・サージェス財団について説明。
「中でも、現代の科学水準を遙かに超えた、危険な力を持つ秘宝を、プレシャスと呼ぶ。サージェスは、プレシャスを見つけ出し守り抜く、秘密チームを組織した」
このサージェス財団はどれぐらい信用していいのか(笑)
私の中では凄く、黄色信号が明滅しているのですが。
財団に関する不審は今後の重要な議案として、秘密チームは海底探査中。潜水艦メカに乗り込んだ、丁寧語で真面目そうなピンク、やや斜に構えた感じのブラック、無邪気でノリの軽いイエロー、の3人がそこで謎の文明ゴードムの巨大な海底遺跡を発見する。
桃「ミッション中はコードネームです、ブラック」
と、キャラの性格を見せつつ、色呼びに劇中の理由を設定してくるのがまず手堅い。
テスト隊員である黒と黄が遺跡探索に先行して隠し通路を発見するが、如何にもお宝へ繋がりそうなパズルを解くと遺跡が浮上し、更に棺の中から謎の老人が甦るという、いきなりのやっちまった案件(笑)
「我らの時が、再び動き出した」
地上待機組だった赤はダンプマシンで遺跡に飛び込むと、マシンを華麗に操って二人を救出。
赤「ブラック、イエロー、楽しい冒険だったか?」
黒「だから色で呼ぶなって!」
青「トラップに引っかかるのが、元泥棒のテクニックかい?」
黒「泥棒じゃない! トレジャーハンターだ」
改めて遺跡に乗り込む5人だが、それを見つめる老神官と、それに従うモノトーンの雑兵。
「この時代にも、ゴードムの心臓を狙う者が居たか」
明らかに言い訳の効かない遺跡荒らしなので、どんどんやらかしが悪化していきます!
先行した黒と黄は崩落する橋の罠にまたも引っかかるが、その横を軽々と追い越していく赤青桃。
青「落とし穴は落ちる前に駆け抜ける」
桃「基本です」
赤「何してる。さっさと来い」
先輩と後輩の経験値の差を見せつつ、かなり突き抜けた人達である事を明示。5人は遺跡の奥で財団計測ハザードレベル86のプレシャス、ゴードムの心臓を入手するが、手にした心臓は本物と無数のダミーに分裂。ダミーは触れると爆発する強力な爆弾だったが、ここでイエローが本人も自覚していない予知能力のようなものを見せ、爆発を回避。
そしてレッドがダミーをまとめて誘爆させるという力技で、本物を炙り出す。
「海底に封印されていたという事は、壊す方法が無かったという事だ。これしきの爆発で、壊れるもんか」
ここでようやく変身を解除して中の人物が顔を見せ、ここまで約10分、というのはかなり珍しい作劇でしょうか。実際、OPで見せているとはいえ変身前の顔が見えないとキャラクターとして捉えにくいという所はあるのですが、それを損ねても、OPからここまで怒濤のスピード感により、アドベンチャー映画のような雰囲気を作りたかったのかなと思われます。
ただ、下が溶岩湖になっている洞穴で変身解除する理由がよくわからないので、結局、いい加減顔を見せないわけにはいかない、みたいな成り行きになってしまい、変身解除の顔見せ自体が劇のタイミングとして効果的にならなかったのは残念でしたが(^^;
「どうだい、元泥棒さん? これがボウケンジャーのやり方」
ところが新入りの黒は軽い調子で声をかけてきた青を殴り飛ばすと、黄色と共にプレシャスを回収して、アンカーロープで対岸へと逃走。赤へと奪った心臓を突きつける。
「プレシャスはこの伊能真墨がいただいた! わかったか、俺があんたを超えるトレジャーハンターだと。明石暁……いや、不滅の牙!
「「不滅の牙?」」
部下の前で、若さゆえの過ちをバラされたーーー?!
ボウケンレッド、チーフ、こと明石暁は、かつて世界最高のトレジャーハンターと謳われ、狙った獲物を決して逃さないその牙の鋭さから、“不滅の牙”と呼ばれていたのだった。そんなギラギラした男が今では資本主義の走狗に身をやつしている事が我慢ならず、対向意識を燃やしていた真墨は、明石に自分の力を証明すると同時に今の職場に恥ずかしい過去をバラす嫌がらせを行うと満足し、変身ブレスを投げ捨てていきなりの退職宣言。
ところがそのまま格好良く立ち去る予定だった真墨は、黄に呼び止められてしまう。
「またトレジャーハンターに戻るの?」
「……なんだよ。まさかおまえ、あいつらの方がいいなんて」
収入が安定して、保険入れるからね……休暇の時は多分、財団の保養施設でバカンスできるし。
そこに神官達が現れ、真墨はさくっと心臓を奪われた上に崖下にはたき落とされる大ピンチ。明石は青と桃、そして黄に神官達を追うように指示を出し、反駁する青を制する。
「ボウケンブルー! ボウケンピンク。俺は既に命令した! このボウケンレッドが!」
チーフの強いリーダーシップを示すシーンなのですが、
「このボウケンレッドが!(びしっ)」
と効果音が入る事で、凄く面白いシーンに。
キてる、キてるな、不滅の牙。
3人を先行させた明石は、崖の出っ張りに掴まっている真墨の元まで降りていくと、胸ぐら掴んでどやしつける。
「もう一度選べ。このアクセルラーを受け取るか、このままマグマに焼かれるか!」
「なんだと?!」
「おまえが言ったんだ……俺の牙から逃れられる獲物はいない。その獲物は――お前だ」
てっきり恥ずかしい過去をバラした若造を念入りに抹殺するのではないかと危惧されたのですが、むしろ攻めてきた。
キてる、キてるよチーフ……正直、女子に言ったらパワハラ&セクハラで降格+減給処分ですよチーフ。
「初めらわかっていたのか、俺が裏切ると」
「わかっていたが……見事に出し抜かれた。そう来なくちゃ部下にする価値はない」
ボウケンレッドは、80年代型の強いリーダーシップを持った完璧超人型レッドを再来させたい意図があった、みたいな話は以前に聞いた記憶があるのですが、確かにこう、「あちゃあ! ほあちゃあ! 超力ライザー!!」の人を彷彿とさせる人間的圧力を感じます。
地上では、心臓を手に何やら儀式を始める神官に先行した3人が見つかり、雑兵部隊と戦闘に。プレシャス確保を目的としたチームなので戦闘向きではないという設定なのか、雑兵に苦戦する青桃黄だったが、そこに赤が駆けつけて反撃開始。
「偉大なる神ゴードムに逆らうとは、何者だ」
「ふ……ボウケンレッド!」
「ボウケンピンク!」
「ボウケンブルー!」
「ボウケンイエロー!」
反撃しながら順番に名乗り、遅れてやってきた黒も飛んできた雑兵を一刀両断。
「ボウケンブラック!」
「あ、生きていたのか」
「今、ブラックって言いましたね?」
色のコードネームを「戦隊である事」の象徴とし、冒頭の基本設定を示すやり取りをそれだけで終わらせず、ひとまずのチームアップに集約してきたのはお見事。戦隊とは何か、というのをメタ要素も含めて足場を叩く所から始めよう、というのは會川さんらしい感じですが、メタ要素抜きでも成立する連結の仕方が鮮やか。
「我ら、轟轟戦隊!」
「「「「「ボウケンジャー!」」」」」
初回はやや変則で名乗りを決めるボウケンジャーだが、如何にもそれらしかった遺跡が、心臓をエネルギーに巨神ゴードムとして復活。魔神の力を恐れた人類によって封印されていたと語る(という事は現生人類とは違う種族?)神官は、復讐するは我にありと沿岸の街を襲撃しようとするが、それを食い止める五台のボウケンマシン。
「プレシャスは素晴らしい力を持っている。だけど悪用されれば、地球の一つや二つ……ボーンさ」
「だからこそ、安全に管理されなければなりません」
「プレシャスを悪から守り抜く。それがボウケンジャーだ!」
ボウケンジャーはともかく、財団は本当に信用していいのか。
「全車、轟轟合体だ!」
「しかし、新人の二人は合体訓練を終了していません!」
「ちょっとした冒険だなぁ」
ここの口調が物凄くいやらしくて、チーフはいつか、胃を痛めたピンクに刺されるエンドを迎えそうで心配です。
ダンプ・フォーミュラ・ジャイロ・ドーザー・マリン、5台のマシンがボウケンフォーメーションを組んで変形合体し、飛行メカのジャイロを除いては実物ミニチュア路線。変身アイテムも含めて車が走る感じを押し出しているのは、どこか『カーレンジャー』を彷彿とさせます(現在進行形で見ている、というのはありますが)。
煽ったものの特にトラブルはなく合体完了し、ショベルを構えたドデカブタック……じゃなかった、ダイボウケンが誕生。
エキサイトのあまりゴードムの上に乗っていたら振り落とされていた神官は、魔神と互角の巨体を誇るダイボウケンの姿を見上げ、ちょっと眠っていた間に人類ヤバい……と戦慄。
ショベルとツルハシの二刀流、という誰が見てもヤバい設計思想のダイボウケンはゴードムを穴掘り天地返しで弱らせると、ショベルとツルハシを合体させて放つ必殺剣で一刀両断。爆発の跡から無事に心臓も回収するが、そこへ怒りの攻撃を仕掛けてくる神官。
「ゴードムの秘宝は一つではない。この大神官ガジャある限り、巨神ゴードムは何度でも甦るのだ」
ボウケンジャーに宣戦布告する大神官だが、いきなり海面から顔を出した巨大な竜にぱくっと食われて海中に引きずり込まれてしまい、5人そっちのけの衝撃の展開で、つづく。
冒頭から約10分ほど変身した状態で進行・既に戦隊であるメンバーが敵を叩き起こす偶発的やっちまった案件からスタート・別の勢力が乱入して続く、と、かなり新機軸を意識したと思われる導入。第1話にしては情報量が多すぎる感じが気になりましたが、
「このボウケンレッドが!(びしっ)」
が凄く面白かったので満足です(え)
ボウケンレッド、劇中のキャラクターの位置づけに対する役者さんの演技の拙さが全て面白い方向に行っていて、奇跡の逸材かもしれない。