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『轟轟戦隊ボウケンジャー』感想・第5&6話

◆Task.5「帝国の真珠」◆ (監督:竹本昇 脚本:會川昇
真墨は精神的に子供っぽいという話を聞き、そうか、真墨のOPの変なポーズは、いわゆる「お、俺の右手に眠る闇の力が解放されてしまう……鎮まれ!」なのかと今日も気付かなくていい事に気付いてしまう。
そしたら本編では、事あるごとにビシバシと手を広げてチーフが俺格好いい不滅の牙アクションを連発しており、溢れ出す冒険魂に遠い目になるそんな第5話。
「あなたが取引しようとしていたのは、危険なプレシャスです。我々が保護し、厳重に管理します」
(訳:命は助けてやるけど、お宝は我々がおいしくいただく)
ボウケンジャーは、黒服の白人と風のシズカの取引に割って入り、桃が大砲怪人の弾丸を銃撃で弾き落とす技術を披露。
「さっすが元オリンピック候補」
戦闘中に問題のプレシャス――帝国の真珠――が建物の外へと飛び出してしまい、チーフの指示で確保に向かったピンクだが、その前で通りすがりの少年が真珠を手にしてしまう。怪しいスーツ姿のまま少年へ呼びかける桃だったが、そこにシズカが現れ、少年を逃がす事を優先。
「もしかして、貴方ってヒーロー?」
「逃げて!」
ゲッコウの指示でシズカと怪人は撤退し、安心して少年に声をかけるさくらだったが、少年からは不審者扱いを受けてしまう…………変身を解除していたので。
慌てて物陰で変身し直すもその間に少年は姿を消してしまい……
「これじゃボウケンピンクじゃなくて、ボケピンクじゃないですか!」
と、立ち上がりのベリーハードモードから、今回はかなりコミカルに展開。ギャグ回という程ではないものの早めに作品世界の幅を広げておこうという意図でしょうが、そのメインに如何にもお堅いさくらを配置してきたのは、面白いアプローチ。
チーフ達には「すぐに回収できます」と連絡したさくらは、ガジェットを駆使して大人げなく少年を追いかけ、
「石を渡して! 子供の玩具じゃないんです!」
と段々、本末転倒。
鯛焼きで懐柔しようとするも、
「悪いヤツってよくそういう手を使うんだよね。先生が言ってた。それに、お礼が欲しくてやってんじゃないよ!」
正論で鮮やかにカウンターを受け、轟沈。
「目が笑ってない! 作り笑いなんかじゃ騙されないよ!」
少年は逃亡し、メンタルにダメージを蓄積していくさくらは、博物館で迷子をうまく相手できなかった時の事を思い出す……
「子供が不安になっている時は、笑ってやればいい」
「おかしくもないのに笑う事はできません」
「真面目すぎるんだよおまえは」
(いらっ)
「たまには子供のように笑ってみろよ」
(いらっいらっ)
「冒険を楽しむには、子供のようになる事も必要だぞ」
「私は、冒険を楽しむつもりはありませんから」
順調に、いつかこの男の不正を報告書にまとめてシベリア送りにしてやろうかゲージを蓄積させていくさくらは、菜月の鮮やかな子供への対応に引け目を感じるが、菜月は菜月でちょっと特殊(精神年齢が子供に近い)なので、参考にならないと思います!
「だけどやっぱり……笑えませんこんな時に」
チーフからの連絡に鯛焼きを頬張り、どんどん墓穴を掘っていくさくらは通信を切断し、その様子におかしなものを感じたチーフは1人で外出。その後、なんやかやで少年に話を聞いてもらえるようになるまで近づくさくらだが、そこにシズカが再登場。
(笑え……笑うんだ)
少年を勇気づけようとするさくらは笑顔を浮かべて判定に成功するが、どちらかというその直前の、両手で顔タッチがクリティカルしたものと思われます!(笑)
さくらはシズカに立ち向かい、その間に逃げる少年だったが、大砲怪人に掴まり帝国の真珠を奪われてしまう。怪人は真珠の中に隠された超巨大戦車の設計図を読み込み、その特殊能力によって瞬く間に製造。ダークシャドウの目論見通り、何故か主砲が糸鋸の超巨大戦車が誕生してしまう。
「こうなったら、私はどうなろうと……」
「ピンク!」
自分のミスを誤魔化している内に都市壊滅レベルに傷口を広げるという、降格してシベリア支部送りレベルのやらかしをしたさくらの元へ、やってくるチーフ。
「チーフ、申し訳ありません。実は……」
不滅の牙は手をあげてさくらの言葉を制し、気絶した少年の姿と無事を確認。
「自分のミスは自分だけで解決するか。……そういう真面目すぎる奴もまた、面白い。ヤツと戦えるのはゴーゴーショベルだけだ。最後まで一人でやってみろ!」
組織としては大変駄目なのですが、ミスをなぁなぁにしてしまうのではなく、部下のミスさえ冒険魂で飲み込んでしまうチーフの姿に集約してきたのは、チーフも格好良くなって、うまい解決。
また、チーフの被害者街道を驀進しそうだったさくらが、チーフの冒険ジャンキーぶりに救われる、というのも良いバランスになりました。
ピンクはゴーゴービークルナンバー7、ゴーゴーショベルに乗り込み、ショベルvs丸鋸戦車のメカ対決。戦いの余波で少年が危機に陥るもゴーゴーダンプが助けに入り、最後は上手出し投げでショベルの勝利。指を鳴らして「グッジョブ!」とかやってしまう不滅の牙が大変ノリノリです。
超巨大戦車は破壊され、ゲッコウ様は改めて怪人を遠隔巨大化。遠隔トンズラの術も使えるし、ゲッコウ様は色々と便利です。一方ヤクザ先輩は座ってシズカに小言を言うだけで今のところ何の役にも立っていないのですが、組織の資金源としてキャバクラでも経営しているのか(それは違う黒田崇矢です)。
さくらの帰りを待っていたら、チーフが1人で格好つけに行った事を知らされた青黒黄が合流し、ダイボウケンショベルで巨大怪人はざっくり撲殺。第4話に続いて投入された新武装のショベルですが、顎と牙を思わせるブレード部分のデザインに加え、水色のカラーリングも格好良く、かなり良い感じ。「盾」・「拳」・「掴んで投げる」と、3つの機能を持っているのも優秀です。
戦い終わり、どこかへ飛んでいったままの真珠を探し回る5人の元へ、真珠を手に現れる少年。
「君……ずっとそれを守ってくれていたんですね」
「うん、約束したから」
物陰でピンクに変身してこようとするさくらだが、少年はそれを止めて真珠を渡す。
「お姉ちゃん知り合いなんでしょ? 渡しておいて」
「いいの?」
「うん。それと、ごめんなさい」
さくらは今度こそ心からの笑みを浮かべ、微笑みを交わした少年は走り去って行き、一件落着。中盤の笑顔がだいぶ怪しげだったので、最後にもう一度、「笑顔」という要素を拾ってくれたのは良かったです。
なにぶん會川脚本なので、「もしかして、貴方ってヒーロー?」という台詞から、少年視点の「ヒーローとは何か」というテーマへ進んでくれるのかと思っていたら、その点はあまり掘り下げられずに少々肩すかし。ラストのやり取りなどからも、“さくらが少年にヒーローとして認められる”構造ではあったと思うのですが、さくらの真面目さが一周回って少年の心を溶かすくだりの唐突さや、結局敵(シズカ)が出てこないとヒーローになれない、など、「笑顔」という要素との接続がもう一つ上手く行かなかった印象。


◆Task.6「呪いの霧」◆ (監督:竹本昇 脚本:會川昇
滅びた古代民族の聖地だったという首谷で、連続行方不明事件が発生。プレシャスが発動しているのではと調査を指示するミスター・ボイスだが、「首谷の呪いは本当だ」と、真墨が出動を拒否。
「成る程、俺には勝てないと認めるわけだな」
勿論、速攻で煽りに行くチーフ。
「なに?」
「この俺を超えようってやつが、この程度の伝説にびびって逃げ出そうとは」
「この野郎! 誰が逃げるか!」
「ヨシ、総員出動ダナ」
あっさり掌の上で転がされる真墨ですが、チーフの場合、恐れ知らずというか、歴史や伝説や古代民族に対する敬意が限りなく薄そうでちょっと怖い(笑)
アタックを開始する5人だが、調査を始めるや否や菜月が霧の空間に囚われて行方不明になってしまい、チーフ、いきなりのやらかし案件。更にさくらも同じ空間に囚われ、「首を返せ……」と繰り返す、謎の鎧武者に襲われる。
残された男3人は、落ちていたボウケンチップ(コイン状の金属)に残された「MASK」と「WATER」というさくらからのメッセージを目にすると、渋る真墨を引きずり、アタックを継続。伝説のポイントに辿り着くが既にプレシャスは掘り出されており、真墨もまた、霧の空間に囚われて鎧武者の襲撃を受けてしまう。
「ネガティブなんかじゃない……あれは……呪いだ! 呪うなら首を盗んだヤツを! ……似たような事はたっぷりやってきた。俺が呪われても、おかしくないか」
精神抵抗に失敗して自虐モードに入る真墨だが、そこへ飛び込んできたボウケンレッドが霧の空間を切り裂き、鎧武者は現実空間に出現。赤と青の2人がかりもはね除ける強さを見せるが、チーフ渾身の一撃と青の頭脳プレイにより、なんとか動きを封じて3人は一時撤退。
状況を分析した3人は呪いの正体が霧に紛れて対象に付着、マーキングする水滴であると気付き、正体不明の呪いではなくプレシャスのトラップだと知った真墨は、お宝への熱意を取り戻す。
「あんなすげぇやつが守っていたプレシャスがどんなものか、見てみたくなった!」
「それでこそ伊能真墨。世界で二番目のトレジャーハンターだな」


「二番目だと? じゃあ、日本一は誰だ」
「ひゅう〜♪ ちっちっちちちち、(自分を指さす)はっはっはは」
……今なにか混線しましたが気にしない事にして、再び伝説のポイントへと向かった3人の前に現れたのは、ゴーダム1の大神官・ガジャ様。ガジャの狙いはプレシャスそのものではなく、プレシャスの番人にボウケンジャーを襲わせる事にあり、既に捕らえた菜月とさくらの姿を見せつける。
「女2人の命が惜しくば、私の部下になれ」
ガジャ様、まさかのヘッドハント(笑)
「平和など口実だ! お前達は冒険に取り憑かれているだけ。プレシャスがあるとわかれば呪いも恐れずに、欲望のまま突き進む!」
そして第6話にして、ボウケンジャーの抱える危うさを敵サイドから突きつけてくるという、積極果敢なストロングスタイル。
「確かに……まだ見ぬプレシャスの事を思うと、体も心もカッとしてくる」
「私につけば、最高のプレシャスを手にできるぞ」
善も悪もなく、プレシャスさえ手に入ればそれでいいのでは、という大神官の誘惑に揺らぎかける真墨だが、それを切り裂く不滅の牙。
「お断りだ! 宝は自分で見つけるものさ。俺たちを熱くするのは、宝への道を自分の手で切り拓く冒険。欲しいのは、最高の冒険だ!」
必殺《俺は既にいい事を言った! このボウケン(びしっ)レッドが!》が炸裂するが…………えーとチーフ、人質は?(笑)
スカウトを拒否されたガジャは、門番のマーキングとなるプレシャス内部の液体を3人めがけてぶちまけ、鎧武者が再出現。
「女達は心配するな。私がこの手で始末してくれるわ」
ほーらガジャ様怒ったー。
ガジャは姿を消し、迫り来る強敵を前に、青と黒は女性陣の救出を赤へと促す。
「あんなヤツ、俺一人で十分だ!」
「……任せた」
「ふーん、一人で十分?」
「……しょうがねぇから、一緒に戦わせてやるよ」
第3話を発展させる形で青と黒がコンビを組み、青は徐々に、情報通という位置づけも含めて、なんだんかんだ皆のフォローをするお兄さん役に。
一方、囚われのさくらと菜月は、責任を押しつけ合って揉めていた。
「「部外者は引っ込んでて!」」
……フリをして監視のゴーダム兵を退け、脱出に成功。という経緯を通して、「菜月さん」から「菜月」呼びに変わるが、そこに現れたガジャ様の攻撃を受けた所で、ボウケンレッドがキバッと参上キバッと解決。
青黒は、竜王陛下より明らかに強そうな鎧武者に苦戦していたが、チーフがクリティカル貫通した傷跡が残っている事に気付くと、コンビ殺法を炸裂させて撃破に成功。青のジャイロと黒のハンマー、双方の特性を活かした上下攻撃というのが、格好いいアクションでした。
そして流行りだす、「グッジョブ!」。
だが鎧武者の撃破は更なる危険を報せるサインの役目を持っており、山をも揺るがす大魔神武者が覚醒してしまう。
「プレシャスの呪いを受けて滅びよ。それがお前達の末路だ」
盗掘の被害者であるところのガジャ様が大変説得力のある言葉を残して姿を消し、今回、搦め手から頭脳で攻めてくる事で、ガジャ様の格を落とさぬままボウケンジャーとぶつからせたのは、大変良かったです。
早くも新ビークル2台追加など、ギミック面でもかなり忙しい今作ですが、〔侵略者とそのカウンター〕という従来作の基本的な構図を離れた上で、プレシャスが悪玉の手を離れて暴走する、プレシャスそのものを目的ではなく罠として使う、など善玉と悪玉でただプレシャスを奪いあうというだけではない、プレシャスを中心に据えた今作ならではの話のパターンを序盤でこれだけ展開しているのはお見事。
複数の敵組織の存在も、単純な対立構造にはまってしまわないという点で、非常に効果的に機能しています。その分、毎回のエピソードで説明しなくてはいけない要素が増えるので、筋を圧迫するというデメリットも生じてはいますが。
覚醒した大魔神武者は分厚い鎧でゴーゴー剣を弾くが、ボウケンジャーは右手にドリル、左手にショベルを装着した負荷4倍のダイボウケンドリル&ショベルを起動。ショベルで投げてドリルで貫くコンボ攻撃で、大魔神武者を粉砕する。
キチガイじみた手持ち武器が大型剣になるのは割と好きなダイボウケンですが、コンパチ強化型の宿命か、あっという間にスコップとツルハシの出番が無くなっていきそうな気配(^^; まあ環境破壊アタックには色々と問題があるので、使わない方が地球には優しそうですが。
ガジャ様が捨てていった失われた民の秘宝を持ち帰るボウケンジャーだが、そのハザードレベルはなんと0。危険性のあるプレシャスは、秘宝そのものではなく、秘宝を守る門番の呪いであった、という事が判明する。
「いいじゃないか、プレシャスはなくしたが、女の友情を手にしたという事。禍福はあざなえる縄のごとし」
チーフの必殺《俺は既にいい事を言った! このボ
「は?」「へ?」「え?」「ん?」
だが何も起こらなかった!
「ん? ……ん?」
部下4人に一斉にきょとんとされ、目が泳ぐ不滅の牙。そこにエレベーターの扉が開いて牧野博士が顔を出し……
「明石くん。今のはちょっと、オヤジくさいです」
「え?!」
必殺技失敗の反動で500MPダメージを受けたチーフが皆に笑われ、“意外と打たれ弱い”という弱点が発覚したところで、つづく。
なお何がオヤジくさいって、それっぽい事を言いながら女の子の肩に手を置くところだと思いますチーフ!
ダブル武装ダイボウケンをクライマックスに、「トレジャーハンター伊能真墨の懊悩」と「男女パーティそれぞれの距離感短縮」という二つの軸を持ったエピソードでしたが、
呪いは本物だ! → チーフに煽られてアタックに参加 → へへ、俺も呪われちゃってるのさ…… → やっぱりプレシャス見るぜ! → プレシャス以外どうでもいいかも…… → チーフの必殺技に乗せられて翻意
と、真墨の感情の起伏が激しすぎて頷きにくい話でした(^^; 真墨の負けん気は強いが精神的に未熟な面がある部分を描こうとしたのでしょうが、これならもっと明確に真墨メインの回でやってほしかった内容で、詰め込み具合がマイナスに出てしまった感。
次回――早くも強化アーマー?