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『轟轟戦隊ボウケンジャー』感想・第10話

◆Task.10「消えたボウケンレッド」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:會川昇
唐物屋波右衛門の人形については牧野も詳しい事を知らず、確認した女雛のハザードレベルは、0。
「プレシャスでは、ない?」
「だって、最初からプレシャスだなんて、言ってないよ?」
まん丸の目をくりっとさせて、非常にイラッとくる表情になるミスターボイス。2Dキャラクター性を、巧く活用しています。
「まあプレシャスより危険ともいえるけど」
「この人形にどんな危険があるのです?」
「いいかね。その人形が悪の手に渡れば、サージェスが崩壊しかねない」
つまり、脱税の証拠書類が隠されているのか。
ボウケンジャー、もう一体の波右衛門の人形を、必ず取り戻せ。そしてただちに、二体とも焼却処分するのだ。これは、命令だ」
詳細は最高機密と口を閉ざすミスターボイスは厳しく命令を下して姿を消し、菜月はそれに動揺。
「ダメ! 駄目……これ、お婆ちゃんの大切な人形なんだよ」
人形を燃やす事に関する意見の対立、明らかに隠し事をする財団上層部へ生まれる不審、それぞれが出来るアプローチで行動していく、と5人5様の姿が描かれ、定石ではありますが、この定石がまるで打てない作品もままありますので、安心します(笑)
ここで、普段は対抗心を燃やしている真墨がチーフ寄り、普段は片腕の参謀役に見える蒼太が反チーフ寄り、とキャラクターの立場が逆になっているのも、新しい切り口が見えて巧妙。
一方その頃、懲りずに新たな巨大ドラゴン兵器を制作中の竜王陛下の元を、ガジャ様ご一行が訪れていた。
「手を組めというのか? 一度は裏切り、このリュウオーンに屈辱を与えた貴様と」
強引に拉致した記憶なのですが(笑)
「ふっ……影の衆、ダークシャドウから奪ったものだ。あやつらより陛下の方が頼りになると思ってな」
見解の相違にはこだわらず、不在の組織をこき下ろして踏み台とし、目の前の相手を持ち上げて気持ち良くさせるという、ガジャ様、鮮やかな人心掌握術!!
ボウケンベースでは蒼太とさくらが人形を詳細に分析するが結局何も出てこず、危険性は無いと判断されて胸をなで下ろす菜月。だが、人形が着ていた衣装の中に縫い込まれていた地図を目にしたチーフは、何故かそれを部下には隠したまま、人形の焼却を指示。菜月がそれを拒否すると、その制止を振り払い、蒼太にも真実を誤魔化しながら、一人で焼却を強行してしまう。人形を燃やしたチーフは、がっくりと膝をつく菜月の様子に構わず、さくらには真墨の応援、蒼太と菜月には待機を指示。
「俺は既に命令した!!」
「……こんなの、おかしいですよ」
第1話においてボウケンジャーの関係性を決定づけ、チーフのリーダーシップを象徴したこの台詞を、現在起きている不協和の象徴として持ってきたのは、鮮やかな構築。
チーフは無言で炎を見つめ、ダークシャドウ接触していた男を追跡する真墨と合流したさくらは、ベンチで雑誌を読みふけっていた真墨に突っかかる。
「なにイライラしてんだよ?」
「イライラなんかしてません!」
「……人形、燃やしたのか」
命令遵守を旨としながらも、サージェスの決定、菜月の気持ち、チーフの説明不足の間で戸惑うさくらの姿が描かれ、キャラクターの表現が重層的で、ホッとします(笑)
「……チーフらしくは、ありません」
「あいつは闇のヤイバとの勝負を俺に託してくれた。気持ちがわからない奴じゃない筈だ」
前回を踏まえ、高圧的な冒険野郎というだけではない、チーフの情緒面をフォローして、いい台詞。真墨のチーフに対する、あ、憧れだなんて口が裂けても言わないけど超えるべき目標だから器の小さい男では困るんだから、的な視点も巧く盛り込まれています。……まあ真墨、焼却現場の方に居たら、女を泣かすとか最低だな明石暁! とあっさり蒼太と同盟を組みそうですが(笑)
「そんなわけで青き戦士・最上蒼太、今日からおまえの真なる魂の名は、約束された楽園を見守る聖なる頂の使徒、永遠の光の翼背負いし空の冒険者だ!」
「あ、ごめん、僕、そういうの無理」
そして訣別。
(そろそろこのネタから離れなさい)
「上層部は都合の悪い秘密は下には教えない。組織ってのはだいたいそうだ。でも……サージェスは、チーフはそんな事しないと思ってた」
基地では蒼太が菜月をなぐさめていたが、そこへ唐物屋和子から、腕輪について思い出した事があるので話したいと連絡が入り、公衆電話から電話がかかってくるアクセルラー、普通に携帯電話として使える事も判明。
「……命令に従うのは、チーフだけでいいさ」
蒼太と菜月は待機命令を無視して和子へ会いに行ってしまうが、一方のチーフは、牧野と何やら密談中。
「明石くん、君が人形を燃やしたのは、もしかして……」
「牧野先生、俺に何かあった時は、あいつらの事を頼みます」
チーフが着々と駄目な上官フラグを積み上げていく一方、ガジャの暗躍を突き止めた真墨とさくらは蒼太&菜月と合流。ガジャに操られて女雛を手に入れようとしていた和子を気絶させるが、ジャードム連合軍に囲まれてしまう。
青と黄を同時にあしらう強さを見せる陛下! そこに飛んでくる天敵の赤! 腕を伸ばして掴み攻撃で赤を苦しめるガジャ様! と混戦の中、ドリルでガジャ様をぐっちゃぐちゃにしようとする赤だが、ガジャが男雛を所持している事から、青と黄がフォーメーションを拒否。やむなく赤黒桃の3人フォーメーションでドリルを打ち込むが、ガジャ様を<かばう>竜王陛下!
ぴっぴろりろりーん♪
ボウケンジャー側の内部分裂が合体攻撃の失敗で象徴される一方で、ガジャ様と竜王陛下の絆レベルが上昇していく、という実に皮肉な構図。
竜王陛下はハンマードラゴンロボを召喚し、気まずい空気の中とりあえずダイボウケンに合体するボウケンジャーだが、ドリルとミキサーを万力ハンドで封じられてしまう。強引に押し切ろうとするダイボウケンだったが、なんと背後から竜王陛下の隠し球、もう一体のドラゴンロボが出現し、挟み撃ちに。
ドリルとミキサーは機能停止、追加で召喚したショベルとクレーンも合体前に損傷してしまい、あらゆる武器を失い、絶体絶命の危機に陥るダイボウケン。
「チーフ、一旦退却すべきです!」
「いや、あの地図は絶対取り戻さなければならん!」
レッドの言葉にブルーの不審は更に高まるが、二体のドラゴンロボの攻撃により、ダイボウケンはいよいよ戦闘不能に。ジャードム連合軍はプレシャス級の価値を持つダイボウケン(というか実質プレシャスでは)を我が物にしようとし、事ここに至って方針を転換するチーフ。
「総員退避!」
「え?」「え?」「え?」「え?」
あまりにちぐはぐな命令に部下達は顔を見合わせ、立ち上がるブルー。
「チーフ、人形はどうなるんです?! いったいあなたは!」
内では詰め寄るブルーをレッドが殴り飛ばし、外からはドラゴンロボの攻撃がダイボウケンを追い詰め、第10話にして、戦隊史上でもあまり見ないレベルの混乱状況に陥るボウケンジャー。巨大ロボの完封負け×絶賛内輪もめ、という映像はなかなか衝撃的。
「退避! 退避ー!」
ダイボウケンは完全に機能停止し、ドラゴンロボがそれを引きずっていく中、なんとか脱出する真墨、蒼太、菜月、さくらだが、その中にチーフの姿はなく……
「邪魔者は消えた。地図が目指す島へ向かうのだ。そこに 脱税の証拠書類 サージェスの宝が隠されている」
「必ず見つけ出してやる」
後編でひっくり返してくる要素でしょうが、ガジャ様とリュウオーン陛下のタッグがやたらと息が合っている分、ボウケンジャー側の混乱が際立ちます。従来作における〔悪の組織−現場指揮官−怪人vs戦隊〕よりも、〔悪玉vs戦隊〕という、キャラクターとキャラクターの直接的なぶつかり合いが多い今作の構造も、対比として効果的に機能。
分裂、完敗、そして喪失……果たしてチーフの、ボウケンジャーの運命は?! 次回――なんか、顔が格好悪くなった?!