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『仮面ライダービルド』感想・第9話

◆第9話「プロジェクトビルドの罠」◆ (監督:山口恭平 脚本:武藤将吾
「これがビルド。作る、形成する、って意味のビルドだ」
凄く自己主張の強いPV来たーーーーーーッ!
〔PROJECT BUILD〕――それは、究極の防衛を目的としたライダーシステム。
「これは、その源となるビルドドライバー。ある条件を満たして装着すれば、仮面ライダービルドに変身できる!」
HAHAHA、このビルドドライバーがあれば、貧弱な君も夏のビーチの視線を釘付けだぜトニー! 今ならお徳用フルボトル3本セットを付けて、19,800円、19,800円のご奉仕価格!ノリの葛城ですが、第1話ではジャーナリスト女の口から「そう呼ばれる噂のヒーローがいる」と都市伝説系の飾り付けをされていた「仮面ライダー」という単語が、この時点で既に葛城によって名付けられていた事が判明。
それにしても、「ライダーシステム」と呼称されると、「ライダーシステムに不備はない」を思い出してしまい、なんとなく困ります(笑)
葛城のデータからは、ハザードレベルとはファウストによるサンプルのランク分けである事が明確に。
ハザードレベル1.9以下:素体がネビュラガスに耐えられず、スマッシュ化と共に崩壊。
ハザードレベル2:通常のスマッシュ怪人。ネビュラガスを取り除くと人間に戻る。
ハザードレベル2.1以上:スマッシュ怪人化せずに、人間の姿を保った存在。
ハザードレベル3以上:仮面ライダーに変身可能な存在。
であり、ファウストは人体実験を繰り返しながら、ハザードレベル3以上の素体を探していたのだった。
「許せねぇ! 俺をモルモットにしただけじゃねぇ。香澄の命まで奪いやがって……葛城は人を人だと思ってねぇんだよ! そんなやつは殺されて当然だ」
ここでようやく、第2話以来となる万丈彼女に触れてくれたのはホッとしました。
「……確かに、ネビュラガスの副作用を無視して、人体実験に踏み切ったのは問題だ。けど、科学の発展という観点でいえば、これだけのシステムを構築した功績は大きい」
一方で、ハザードレベルの説明の際にも平然と万丈彼女を例に出していた、戦兎の無神経な科学バカの部分が爆発。
「…………なに言ってんだよ? ……そいつは多くの犠牲者を出したんだぞ! 仮面ライダーだってマスターがパクんなきゃただの殺人兵器だったかもしんねぇだろ?!
「科学を軍事利用しようとするのは周囲の思惑だ! 科学者の責任じゃない!」
……いや最初から、“国防という軍事目的”ありきの研究だったのでは(^^;
戦兎と龍我の視点の違いには納得した上で、なにぶん研究開発した当の本人が超ノリノリだったので、周囲の思惑に責任を転嫁する一般論はさすがに無理筋だと思うのですが、反射的に葛城を擁護したい衝動にでもかられたのか。
戦兎の危うさとして意図的に描いていて、後で殴られてくれるなら構わないのですけど。
「悪魔の科学者の肩入れをするのか? ふざけんな! だいたい俺の冤罪となんも関係ねえじゃねぇかよ! さっさと事件を――」
またも衝突する二人だが、そこでボトルが完成し、水入り。
ボトルが完成すると直前までの会話も感情も吹き飛ぶ戦兎のマッド気質、というのは今作における定番ギャグなのですが、状況切り替えのスイッチになっているのは便利。
戦兎は新たに完成した錠前ボトルにはしゃぎ、美空はベッドに倒れ込み、奇人変人達の巣窟で吠える万丈。
「なんなんだよおまえら!!」
うん、今回は、怒っていい所だ、万丈。
その頃ヒゲ所長は、ファウストの闇のスポンサーである難波重工会長・難波重三郎(浜田晃!)と銭湯で密談していた。
お色気担当として、入浴シーンはお約束なのです。
いきなりの裸で初登場になりましたが、若き野心家に出資する貫禄たっぷりの大物としてベテランの役者さんを起用した対比が光り、ライダーシステムのデータを他に流す事をほのめかすなど一気に生臭い展開に。
東都の影に澱む闇が色濃くなっていく中、戦兎は仕事に出かけ、暇をもてあます万丈は怪しい変装をして美空を外へと連れ出す。危機感の薄さは相変わらず困ったものですが、ボトル爆発のタイミングが意図的に喧嘩を止める為だと気付き、ファウストへの警戒から自由に外を出歩けない美空を気遣う、と確実に万丈の人間としてのレベルが上昇しています!
「楽しかったー! こういうの、初めてだったから」
「嘘つけよ。恋人の一人や二人ぐらい居ただろう」
「ううん、あたしずっと寝てたから、7年くらい」
美空はスカイウォールの惨劇が起きた日に気を失ってから約7年の間昏睡状態にあり、目覚めると決して外れない金の腕輪と、ネビュラガスの浄化能力を身につけていたのだった。その後もファウストに囚われ、戦兎が変換装置を発明するまではボトル浄化1本ごとに1週間寝込むほど消耗するなど、ごく普通の日常から遠く隔たった生活を余儀なくされていた……。
「そんなんだから、ずっと普通の女の子の生活に憧れてた。…………万丈は、香澄さんとよくデートしてたの?」
「ああ。いろんなところに連れ回されたよ」
桜の舞い散る中、亡き香澄の微笑に重なるドラゴンボトル。
「……これ持ってると、不思議とあいつを身近に感じられて」
回想シーン(香澄)と現在のシーン(ボトル)をパッと切り替えてしまうのではなく、回想シーンの桜の花びらが舞っている中で香澄の姿がボトルに転じるという演出が良く、ようやくですが、ドラゴンボトルに香澄の存在を結びつけてくれたのは非常に良かったです。
万丈の軽口から始まる会話の流れも自然でしたし、万丈にとって美空に向けて「……これ持ってると、不思議とあいつを身近に感じられて」というのは素直に口にできない感謝の念でもあり、縮まる要素の少なかった二人の距離感が、万丈の馬鹿な思い切りの良さ(日常)と、美空が作りだしたフルボトル(非日常)を通して接近する、というのも鮮やかで、今回の白眉。
……買い物シーンの何かとやり過ぎ風味のギャグは好みではなかったのですが、ここが良かったので目をつぶる方向で。
「香澄さんの事、ほんとに好きだったんだね」
「……だからこそ、香澄をあんな目に遭わせたファウストが許せねぇ。人体実験を考えた葛城も同じだ。なのに戦兎の野郎、あんな奴をかばいやがって」
「万丈……」
だが平穏も束の間、二人へ迫るファウストガーディアン。ガーディアンを食い止めて美空を逃がす万丈だったが、美空の前にはセクシーコウモリが姿を見せる。
「今までは泳がせてやったが、もうタイムリミットだ」
ですよねー。
ナイトローグに対する恐怖の記憶から美空は気絶し、駆けつけた万丈もコウモリにあしらわれるが、そこにお父さん、じゃなかった、ブラッドスターク参上。そもそも美空のヤサが割れている、と考えるとマスター=コブラの可能性がますます濃厚になるのですが、さてはて。
「俺に内緒で勝手な真似するなよ」
絆レベルの低い二人が今回も揉めている間に万丈は美空を担いで逃走。ガーディアン部隊に囲まれてしまうがそこにビルドがしゅしゅっと参上し、ピンチにニンジャが上から降りてくる、というのはそれらしくて良かったです。
美空を追わずにアジトに戻ったローグは、スポンサー(難波)から東都政府によるライダーシステムの公式開発をせっつかれているという事情をスタークに説明し、遂に強行策を決断。
「研究所からパンドラボックスを奪う。そうすれば間違いなく戦争の火種になるだろう。さすがの親父も、重い腰を上げる筈だ」
翌日――北と西の首相が視察に訪れる中、突貫作業の徹夜明けでノびていた戦兎は、同僚眼鏡がガスで兵士を眠らせ、コンピュータを弄っているのを目撃。
「今こそ、革命の時!!」
眼鏡は携帯用ネビュラガスボトルで自らにスマッシュ成分をふりかけて赤ホークスマッシュへと変身し、台詞といいアクションといい、狂信的テロリスト風味が色濃く出ていて、良かったです。
戦兎はビルドに変身するとホークガトリングでそれを追いかけ、ビルドベースでは、美空が目を覚ましていた。さすがに反省したのか、ずっと付き添っていたらしい龍我の人間としてのレベルがドンドン上がっていきます!
「戦兎は?」
「やっぱお前が呼んだのか。あいつなら敵を倒して何も言わずに研究所に戻ったよ」
デスマーチの真っ最中に同僚達の冷たい視線を浴びながら抜け出してきたからね!
「まだ仲直りしてないんだ」
「もともと仲良くねぇし! もしかしたらあいつは、葛城を殺った犯人かもしんねぇかんな」
「もうそんな事思ってないくせに」
本心を見透かされて背中を向ける万丈に、美空は自分の過去を語る。
「あたしね……戦兎に救われたの」
ファウストに、そして浄化の力に怯え、自分の居場所を無くしていた美空……
「そんな時に、戦兎が言ってくれたの。あたしが浄化したボトルがあるから、仮面ライダーは正義の味方として、たくさんの人の明日を作ってあげられるんだ、って」
“今日を守り、いつかの明日へ繋ぐ”というテーゼは、『フォーゼ&オーズ MOVIE大戦 MEGA MAX』を思い出すところですが、今作の方向性を考えると、意図的な盛り込みか。
「そのドラゴンだって、戦兎が、万丈の為を思って作ったんだよ。万丈の道しるべになるようなアイテムにしたいって」
――「俺の務めは、万丈の冤罪を晴らす事だけじゃない。あいつを正しい場所に導いてやらねぇと」
やたら、上から目線。
「それが、香澄さんを死なせてしまった、自分の贖罪だ、って」
視線の角度は気になるものの、言及する時の態度が軽いので心配していましたが、戦兎も忘れていなくて良かった。まあ戦兎のヒーロー性としては、責任を感じているからこそ、言動より行動で示す、という事なのでしょうが。
「……死なせたって…………あいつは何も悪くないだろ!」
「それが戦兎なんだよ。……戦兎は、科学の力を信じてる。だからこそ、葛城巧を責めるんじゃなくて、それが正しい事に使われなかった現実を何とかしたい。そう思ったんじゃない?」
アバンでの戦兎の発言を、道具(ここでは科学)に善悪はなく使う者次第で神にも悪魔にもなりうる、というテーゼを用いてフォローし、戦兎の理念としてはわかるのですが、こと〔PROJECT BUILD〕に関しては、そもそも「ネビュラガスによる超人計画の時点でだいぶ踏み外しているので、やはりちょっと無理があるような気がします!!
今回の諸々を見ると相当目配りしながら作っているようなので後々の布石だと思いたいのですが、戦兎にはどうも「結局、道具は誰かが使う者」という視点が不足しているようで、それは恐らく自分自身が「理想を演じようとしている」からなのでしょうが、だからこそ「誰かを善導する道具」を作ってしまおうとするのかなと。
そんな戦兎が、「ままならない現実を少しでも理想に近付けたい」という在り方は好きですが、その抱える危うさがどこかで破裂してくれるともっと好みで、いつか訪れるその時に龍我が戦兎を殴り飛ばせる存在で居てくれると、更に好み。
というかこのまま進むと、ブレイン製作一直線ではなかろうか戦兎。
それから今作、北都の描写や、国防と軍事力など、メタファーというにはかなりストレートな要素が取り込まれていますが、そんな「現実」に対して「ヒーロー」がどんな答を出すのか、というのは今後の描き方が楽しみです。
劇中におけるこの「現実」の扱いは、「ヒーローが干渉できない現実がある」事を執拗に描いた『仮面ライダーオーズ』を思い起こすのですが、今作がそんな「現実」に対して直接、「理想を持って抗おうとするヒーロー」を立ち向かわせようとしているのは対照的なアプローチ。
桐生戦兎が、切り離された世界と繋がる為に「こうありたいという人間を演じている」のに対して、『オーズ』の主人公・火野映司が、切り離された世界とのフィルター越しに「こうありたいという自分を失って唯一残った執着だけで動いている」存在であったのも、面白い気がします。
赤ホークと戦うビルドは、ライオン×掃除機ベストマッチで、ライオンクリーナーにビルドアップ。「ようやくこいつの出番か!」と言うのですが、両方とも新しいボトルではないので、何が「ようやく」なのかはよくわかりません(^^; 以前に同型のスマッシュと戦った時は別フォームで倒しましたし、新フォームラッシュの運用が、ちょっと苦しい。
ビルドはなんか適当なライオン波動拳でスマッシュを撃破し、割と派手な勢いで地面に叩きつけられたスマッシュからガスを回収。だが眼鏡同僚の狙いはビルドに対する囮であり、研究所ではもう一人の同僚(使い捨てのキャラなのでこだわらなかったのかもですが、映像的にはこの二人にもっと明確な外見的差異をつけて欲しかった所)が、セキュリティを解除していた。
「作戦決行だ。パンドラボックスを、奪え」
ところでヒゲ所長は、アジトから電話をかけていないで、首相の公務に同行しておいた方がアリバイ作りに良かったのでは。
セキュリティが解除された研究所へスタークとガーディアン部隊が向かい、黒塗りの高級車の中では難波会長が事態の推移を静かに見守っていた。その会長に横からビルドの写真を手渡したのは……これまで戦兎達に数々の便宜を図ってきた、ジャーナリスト女。
あくまで難波への売り込みだけで、ファウストとは繋がっていない可能性はありますが、露骨に色々と不自然だったので、むしろスッキリ(笑) こうなると劇中で最初に「仮面ライダー」と口にしたのがジャーナリスト女である事も意味深ですし、最初にスマッシュに襲われた時点から、仮面ライダー接触する為の仕込みでしょうか。そして考えてみれば、秘密基地の入り口(冷蔵庫の扉)を開けっ放しにして女を招き入れたのはマスターでありました。
「最後に教えてあげよう。葛城巧は……生きている!! はははははははは!」
ビルドへ向けて衝撃的な言葉を遺すと、眼鏡同僚は自らに追加のスマッシュ成分をふりかけて消滅し、つづく。
話が進む程にそもそも殺されているのか怪しくなっていた葛城ですが、ここで「生きている」発言。ここまでの布石を拾うと、戦兎の中で「生きている」可能性もありそうですが、露骨な違和感を引き延ばしすぎずに、葛城の死にまつわる謎の意味づけを変えてきたのは、秀逸。
また、同じく不自然さの目立っていたジャーナリスト女も、どう転ぶかはさておき(実は二重スパイでした、とかもありそうですし)、それなりの人脈を持った人物だった、と明確にしてきたのは良かったと思います。
このペースで転がしていて息切れしないかは心配になりますが、その場の思いつきみたいなインパクト勝負で引っ張るのではなく、推察を誘導しておいてから種明かしを繰り返していく、という形式とタイミングは現状ストレスも少なく、だいぶ面白くなって参りました。
戦兎にとってはビルドとしての戦い――ビルドがヒーローである事――が、そのまま“理想的な科学の力”の証明にもなりそうですが、次回、かなり盛り上げてきてくれそうで、楽しみ。