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『轟轟戦隊ボウケンジャー』感想・第12話

◆Task.12「ハーメルンの笛」◆ (監督:竹本昇 脚本:小林靖子
前回で一区切りついた所で、メインライターを務めた『タイムレンジャー』以来、実に6年ぶりの戦隊となる小林靖子が参戦。
風のシズカが盗み出したプレシャス・ハーメルンの笛を奪い返そうとするボウケンジャーだが、音波妖怪の奇襲攻撃で青と黒が高層ビルの屋上から転落してしまう。慌てる赤と黄に対して、桃は攻撃の余波でシズカが取り落とした笛を冷静に回収し、ゲッコウの命令でシズカと怪人はあっさり撤退。
ボウケン吸盤で壁に張り付いていた蒼太と真墨はなんとか屋上に復帰し、さくらの咄嗟の判断力に皆が感心する中で、自衛隊の特殊部隊に所属していた、と割と突然明かされるその前職。
「ああいう時の判断の素早さは、俺も叶わないよ」
「でも、仲間がこんなとこから落ちたのに、全然気にならないなんてあるかな?」
「それだけ信用しているって事だ。現にお前達、自力でここから助かっただろ。さくらにはわかってたんだよ」
ところが……所有者から、笛を財団の管理下に置く了承を得て帰還したさくらは、菜月からのキラキラした感動の眼差しをバッサリ切断。
「既に落ちてしまった以上、出来る事は何もありません。優先すべきはプレシャス回収。そうでしょ?」
「さくらさん、二人が心配じゃないの?」
「心配ですよ! でも、任務があったでしょ」
愕然とする菜月の前でさくらを乗せたエレベーターの扉は無情に閉まり、さくらさん、感情と行動を意識的に切り離せる割とヤバい人だという事が、第12話にして判明。
「ん! 間違ってないぞ! さくらの判断は正しい。な?」
持ち上げてしまった手前、慌ててフォローを入れるチーフに向け、間違っているのはおまえの人間観察力だと揃って溜息をつく真墨と蒼太(笑) 段々みんな、チーフへの対応が厳しくなって参りました。このペースだと、3クール目ぐらいにはチーフは部屋の片隅でメンバーのアクセルラーを無言で磨く係になっていそうで、大変心配です。
一方、シズカがDS屋敷に戻ると、何故かそこには横取りされた筈のハーメルンの笛が。それは闇のヤイバが入手してきたもう一つの笛であり、その正体は子供の生命エネルギーと引き替えに巨大な力を得るプレシャス。
「こやつらも使うが良い」
ゲッコウの声に応えてゴードム兵が姿を見せ、ガジャ様、いつの間にやらダークシャドウとも提携関係を結ぶという、寝業師ぶりを発揮。このまま、傭兵派遣会社を経営して現代社会に順応して生きていく事にしたのでしょうか。なにしろ、ゴードム兵の原価は限りなくタダに近いので、ウハウハです、豪遊です、現代社会には娯楽が一杯です。
新たな闇の繋がりが生まれているとは露知らず、冒険ベースでは牧野がもう一つの笛に刻まれていた文字を発見し、青黒黄はオペレーションルームで食事中。
「確かにさくら姐さんは間違ってないんだけどな……」
真墨はいじましくチャーハンのグリンピースをよけながら黄昏れていた。
「ま、女性としてはもうちょっとこう、可愛げがね」
スリルジャンキーの蒼太としては、高層ビルから墜落死しかけるというのもそれはそれで快感だったので、あまり気にしていなかった。
「菜月が言っているのは、そういう事じゃないの」
「俺たちは冒険のプロであって、戦闘のプロじゃあない。仲間が死ぬかもって時に、ああ冷静にはなれない」
「そう、そういう事! さすが菜月の気持ちわかってんじゃん」
さくらの冷静すぎる対応に感情面で納得できない菜月を描きつつ、ボウケンジャーはあくまで戦闘要員ではない、という話の都合で放り捨てがちな設定を、ここで改めて強調。
今作の世界観で言うと、職業軍人こそ正気であって、冒険者こそ狂気なわけですが、その点でさくらが他のメンバーと違った種類の怖さを持っているのは、正気と狂気を自分でコントロールできるからか(笑)
「さくらさん、頭もいいし、頼りになるし、菜月すっごい尊敬してるけど、菜月の目指す冒険者……とはちょっと違うかなぁ」
「安心しろ。おまえはなろうと思ったって、さくら姐さんみたいには、なれやしない」
むくれた菜月が折角選り分けたグリンピースをひっくり返した所で響く、ボイスの声。
「大変だ! ハーメルンの笛が、もう一本あった」
ボウケンジャーは、笛を使って子供達の集団を先導する音波妖怪とシズカの後を追うが、その目の前で子供達は一塊のスーパーボールのような姿にされてしまう。冷静に対処法を待てと諭すさくらだが、蒼太や真墨の墜落の時と同じように、さくらは子供達の命も割り切ってしまうのでは、と我慢ならずに菜月は突撃。割り切られた経験を持つ真墨と蒼太も後に続くが、3人まとめて笛の力で洗脳されてしまう。
牧野からの通信により、マスクのジャミングレベルを3にする事で笛の効果を打ち消した赤桃だが、青黒黄と同士討ちに。外部からの手動操作でなんとかイエローだけは救出すると一時退却しようとするが、こんな時にもやたらと息の合った青黒の射撃により、アクセルラーが破壊されてしまい、変身解除。
腰部後ろ側(?)にアクセルラー剥き出し、というアクセルスーツの致命的な弱点が発覚しましたがつまり、敵に背を向ける者は冒険者道不覚悟で死という事なのか。
ちなみに青黒の2人で、逃げる3人のアクセルラーを瞬時に撃ち抜くという神業を披露しているのですが、洗脳によってリミッターが解除され、絆レベルが一時的にMAXになったので合体技が使えたのです。封印していた闇の力なのです。
倒れた3人に妖怪が追い打ちの衝撃波を放ち、大爆発。手ぬるいDS一行は死体を確認せずにそのまま立ち去るが、竜王陛下に負けじとダブル<かばう>を用いたチーフが重傷を負ってしまうのであった……。
気絶したチーフを運び込んだ基地では、牧野が笛の音波を追って敵の拠点を突き止め、これまでプレシャスの解析とビークルの調整が主な仕事でしたが、あのチーフが敬意を払っているだけの優秀さを見せます。
たぶん落ち込む菜月を元気づけようとしているのだとは思いますが、意識不明でベッドに横たわり点滴中の明石について、「明石くんの傷は、大した事ないそうです」と言っているのは気になりますが!
牧野が急ぎアクセルラーを修理中、現状に責任を感じた菜月はそれを待たずにDSの拠点へと向かってしまう。山中に配備されたゴードム兵に襲われる菜月だが、それを助けたのは、全身に銃火器を身につけたコマンドーさくら。
「昔のツテで、用意できるだけのものは持ってきました。一緒に行きますか?」
私たちが守るべきは法律じゃない。冒険とお宝だ!
ボウケンジャー』世界は《レスキューポリス》世界と隣接しているので、サブマシンガンまではコンビニで、手榴弾自動販売機で、ミサイルランチャーからR15です。
拠点の奥では集めたスーパーボールで生け贄の儀式が進行し、実際に何が出てくるかわからないまま儀式を実行してしまうダークシャドウは、そこはかとなく愉快犯路線。
菜月と協力し、現代文明の火力でゴードム兵士を薙ぎ払ってきたさくらは、スモークグレネードを用いて奇襲をかけると、シズカの手からアクセルラーを強奪。変身して檻を脱出した残念ボーイズがシズカの相手をしている間に、さくらが持ってきたもう一つの笛を吹くと子供達はスーパーボールから解放され、1ボールあたり10人と考えても洞窟の中で溢れないか……と思ったら、CGで処理されました(笑)
子供達を解放したボウケンジャーに向けて音波妖怪の衝撃波が炸裂する寸前、おいしい所を持っていく不滅の牙。修復されたアクセルラーでさくらと菜月も変身し、揃い踏み。黄色がショベルパンチを放ち、ピンクは第2話以来の個人武器……は使わずにアクセルテクターを装備してデュアルクラッシャー。
……あの銃に冷たいなぁ。
シズカは回避するも妖怪はドリルで爆死し、巨大化。ボウケンジャーは容赦なくいきなり超轟轟合体すると、衝撃波を気にも留めずに直進し、ボウケン体当たりで瞬殺するのであった。
かくして実は対の存在だった二つのハーメルンの笛は無事に回収され、さくらに一斉に謝る青黒黄。
「「「ごめんなさい!」」」
揃ってさくらの銃器を捧げ持っている姿から、凄く下僕感が迸ります。
「さくらさんの指示、無視したせいで捕まったのに」
「そうでしたね」
「正しいだけじゃやってらんないなんて、偉そうなこと言っちまって」
「ああ。でも、それはそうだと思いますよ」
さらっと同意して振り返り、他人の感情も感傷も否定しない上で、自分はそれらを全てねじ伏せて“正しい事”の為に行動可能だという強靱な精神力が凄く怖いです。……まあ、苦手分野(子供)が絡むと、ボケピンクになるのですが。
「私的には、80%の安全は確保してあったんです」
「「え」」
なにも仲間を助ける為に無茶をしたのではなく、あくまで状況を分析して最適と思われる行動をしただけだ、というさくらの言葉に凍り付いて固まる残念ボーイズ。
基地での表情などからは建前込みでの発言でしょうが、それでも気にしていた割合は
〔チーフ:57%/菜月:40%/その他2名:3%〕
ぐらいでしょーか。
「私は、無謀な冒険はしませんから。さ、帰りましょう」
ナチュラルに真墨を荷物持ちに指定したさくらは終始笑顔で歩き出し、フリーズ状態を解除しながらその後に続く男衆。
「やっぱり、超クール……」
「ま……そういう事。まったく面白い奴だよ、あいつは」
にこやかな不滅の牙ですが、それを聞かれたら、面白い扱いを受けるいわれはない、と再び必殺技を人体急所に打ち込まれそうです。……まあさくらさん的に、素手はむしろ優しさなのでしょうが。
「んーと……100引く80は……うん、20%の危険もあったんだよね。クールだけど、それだけじゃない」
「菜月、置いてきますよ!」
「はーーーい! ……菜月の目指す冒険者、1人増えたかも!」
笑顔の菜月はさくらに飛びつき、この「1人増えた」という言い回しが、「既に誰か居る」&「1人に限定するわけではない」という事を示した、実に上手い台詞。
11話連続でメインライターが書いた所からの参加、という事で役者陣との呼吸合わせなどもあったか、まずは落ち着いて直球をストライクゾーンに入れてくる、といったエピソード。最初のメイン回では作品の振り幅としてコミカルな面を描かれたさくらの“強さと優秀さ”に焦点を合わせる一方で、部分的にその対比に置かれた、戦闘のプロではない冒険者イカれ具合がむしろ炙り出されてしまっているのが、小林靖子らしいといえばらしい(笑)