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『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想・第36話

 ちょうど一ヶ月ぶりになってしまいました……(^^;
◆Space.36「ラッキーの故郷に眠る伝説」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:毛利亘宏)
 将軍ドン・アルマゲの本拠地と目される南十字座系を目指すキュウレンジャー、前回のショーグン@広報担当との戦いについて「しかしあまりにも手応えがなかった」とツルギが不思議なニュアンスで振り返ったと思ったら


 将「やりおる。しかし、たとえこの私を倒せても、貴様等に、私の命は奪えん!」
 鳳「そういう事か。俺様達は倒せてたんだ。ここに居るのは、過去で戦ったドン・アルマゲじゃない」
 赤「つまり、ドン・アルマゲは一体じゃない」
 という重大な会話を、
 「戦いの中で妙な事言ってたな……」
 とまとめるラッキー(笑)
 ようやく訪れた理解を全て忘れ去る、キュウレンマジック!
 ……前回−今回で監督・脚本が入れ替わっているので、打ち合わせの際の意思疎通が上手くいかなかったとか、アフレコ段階で言い回しを変えてしまったとか、前回完成〜今回撮影の間の修正できないタイミングで何らかの齟齬が生じたのかと思われるのですが、のっけから大事故。
 結局、「分身」で「どこかに本体が居る筈」だから「このまま南十字座系を目指そう」という事で落ち着くのですが、毛利さん的には、前回ラストでショーグンが思わせぶりな事を言い残す → 移動中それについて考えていた面々が将軍の秘密に近づく、という構成にする予定が、前回ラストでショーグン様が思ったより直球を投げすぎたのでしょーか(ショーグン様自らのネタばらしも急に物わかりの良くなる赤&鳳も、どちらもだいぶ不自然でしたし)。
 下山−毛利というと、『ニンニンジャー』(メイン:下山健人/サブ:毛利亘宏)の時も、これ両脚本家の間で擦り合わせが全然されていないのでは、という描写があちこちに見られましたが、この2人、実は物凄く相性が悪いのでは(^^;
 一方、ショーグンの呪縛から解放された大宇宙アイドル・ホシ☆ミナトは反幕府の広告塔に転身し、民衆をアジデート。
 「僕たちには、伝説の救世主が居る。みんな、今こそ立ち上がるんだ!」
 前回あまりに扱いの酷かったホシ☆ミナトを拾ってくれたのは良かったのですが、これまで特に革命運動の高まりや幕府の圧政の綻びなどが描かれていなかったので、
 「知名度抜群の彼の呼びかけがあれば、ジャークマターに立ち向かう人々は、全宇宙に広がっていくだろうね」
 というのが余りにも都合良く唐突。
 確かに副将軍や代官が次々と殉職しているのですが、“その影響”というものを劇中で一切描写していない(物語世界のリアクションが存在していない)ので、それら全ての行間を視聴者の想像で補って下さい、というのはさすがに甘えすぎではと思います。
 つまるところ何が「今こそ」なのかさっぱりなのですが、リベリオンから接触を受けたと思われるミナティーの言葉に乗せられ、反乱起こして皆殺しにされるのも、革命のリスクの内なので致し方ありません。掴み取りたい物が大きければ大きいほど、賭け金の額も大きくなるのがこの宇宙の真理です。宇宙各地で反抗の火の手が上がれば上がるほど、本丸を目指すキュウレンジャーが動きやすくなるのです。
 真っ黒だ。
 基本的には、そうやって各地で起きた反乱が虫のように踏みつぶされていく、というのが今作の“現実”であったわけですが、その現実をひっくり返すに至る“劇的な転機”が欲しかったところ。
 考えてみれば、前回の巨大ショーグン@広報担当の撃破は、そのフックになり得る出来事に化けたかもしれず、たとえば控えメンバーがTV局をジャックして、ショーグン(と誰もわかりませんが少なくとも幕府の巨大怪物)撃破シーンが全宇宙に生中継されました、ぐらいの仕込みがあれば説得力も多少変わってきたのですけど。
 あと今作はかなり長期にわたって、“服従する事に慣れすぎて立ち向かう牙を失ってしまった地球人”を描いていたわけですが、その“抑圧された民衆の劇中における象徴”であった地球の人々の変化が一切描かれていないのに、カリスマアイドルが煽動したら宇宙各地で反幕府の機運が高まっている、としてしまったのは、残念。
 まあ諸々の都合で最終盤に話が再び地球に戻りそうな気はするので、地球人に関してはそこで拾う予定なのかもしれませんが。
 とにもかくにも南十字座系へ針路を向ける一行だが、かつてラッキーが暮らしていたコジシ座系の惑星ルースから救難信号をキャッチし、赤青黒黄緑橙の6人で、その救援へ。そこではコジシ座系の家老が伝説のマシンを求めて住民を攻撃しており、タコ型宇宙人が戦闘機に乗っている、という意匠を人型に取り込んだデザインはなかなか面白いのですが、家老の小物化はとどまる事を知りません(涙)。
 “恐るべき家老が怪人ポジションとして出てくる”から終盤の激闘感が増すのであって、“一般怪人と差別化されていない家老が出てくる”のでは宇宙幕府の格が落ちていくだけなのですが、ジャークマターの人材難は深刻です。
 先のミナティーによるアジデートの有効性問題にも繋がりますが、銀河を支配する宇宙幕府の強大さに対する皮膚感覚(世界によるリアクション)が不足しているので、宇宙幕府のスケール感がとにかく弱い、というのが貫かれる今作の大きな問題点。
 射手座家老、今思えば惜しい人物をあまりにも早く亡くしました……。
 キュウレンジャーは幕府の雑兵を蹴散らし、獅子レッドは小さなライオンメカ・シーザーと再会。
 「俺の子供の頃からの、唯一の友達だ!」
 「唯一の友達?!」
 悲しい事実を実に爽やかに断言し、それはガルも驚きます。
 伝説のメカを呼ぶ餌にしようとした家老によってシーザーがさらわれてしまい、助けた住人の一人、年嵩の男性からいきなり叱られたラッキーは、家出して宇宙に飛び出していた事が判明。
 「宇宙の果てを見てみたかったんだ。仕方ないだろ」
 「そんな事、それまで少しも言っておらなんだではないか」
 旧知の人物に情け容赦なく赤裸々に過去を曝され、上擦った声で目が泳ぐラッキー、というのはこれまでになく面白い(笑)
 「ああそうだよ。でも、それはじいやが、俺が何度聞いても教えてくれないから!」
 なので、すぐに最近恒例の険しい表情で開き直ってしまったのは残念。
 赤と青はシーザーを探しに向かい、「シーザーは……父さんに貰った大切な友達だ。だから絶対に助けたい」と、ラッキーの家出の動機は父を探す為であった事が明かされる。
 その頃、ビッグオリオン組は何をしているのかと思ったら……既に南十字座系に乗り込もうとしていた(おぃ)
 ……や、威力偵察の予定だったのかもしれませんが、何故、戦力半減状態で敵の本拠地に突入を図ろうとしているのか。しばらく前に、戦力分割して過去に向かった結果全滅しそうになったのを忘れたのか(勿論、忘れている)。
 惑星ルースでは、ラッキーの過去を知りつつその過去を頑なに隠すじいやの話を聞いていた4人が、ラッキーの運任せの無謀な行動への苦言に対し、異を唱えていた。
 「俺たちはあいつの運に助けられてここまで来た。だから、俺たちは全員、ラッキーの運を信じてる」
 「みんな、まぐれじゃないって、思ってるよ」
 「どんな状況でも運を呼び込む、それがラッキーの力だ」
 「まあ……確かに知らねぇほうがいい事も、あるかもしれねぇ。だがよ、あいつは、それすらラッキーに変える。そういう男だ」
 今作における、「よっしゃラッキー!」を通して見せたいであろうもの自体は好きなので、それに理想的な形で言及したここは、好きなやり取り。特に、アントン博士の事が脳裏にあるであろうチャンプの配置は、良い所に決まりました。
 「お前達、そこまでラッキーの事を……」
 その時、幕府軍を見つけたというラッキーからの応援要請で、全員出撃。
 「キュウレンジャー、何故ここがわかった?!」
 「シーザーは、俺の唯一の友達だ! 鳴き声は聞き逃さねぇ。それにピンチの時には、駆けつけるって約束したからな。行くぞ、ガル!」
 その状況で、シーザーが「唯一の友達」なら自分はなんだ、と立場の確認を求めるガル……ガル……(泣) 「頼れる仲間」と言われて安心して喜ぶのですが、本格的に飼い犬の魂で、狼の牙はどこで失ってしまったのだ! まあ本人としては、「ラッキーの為の牙となる覚悟」とかを抱いているのかもしれませんが、もう一つぐらいガルの、任侠な面を描くエピソードはやはり欲しかったです。
 合流した6人は変身して戦うが、突出した赤がシーザーを人質にされてピンチに陥ってしまう。だがその時、物陰から様子を見ていたじいやが怪人に体当たりを敢行し、ラッキーの危機を救う。
 「じい! なんでこんな無茶な真似を?!」
 「命を粗末になさるでない、王子!」
 「……王子?」
 遡れば第11話にそれらしい回想シーンが描かれてから約2クールあまり、とうとうラッキーの出自が貴種である事が明確に。合わせて、焼け出された際のトラウマの影響か、幼少時の記憶がハッキリしない為に自らの血統について全く知らなかった、という事になったのですが……それなのにナチュラルに「じい」呼びだったの?!
 いやまあ、秘密を守る為(?)に、「唯一の友達はミニライオンだ!」というかなり世間と隔絶した生活を送っていたようなので、「私の事は「じい」と呼ぶように」と教えられ、それをなんの疑いもなく使っていたのか、或いはじいの本名は「ジーヤ・ジーヤ」(富野由悠季的ネーミング)というネタなのかもしれませんが、これまでラッキーに関してはジャークマターの件を除くと社会的常識の欠如、みたいなものは特に描かれていなかったので、前者にするのは色々と苦しい設定。
 というよりも、そういった設定をベースにして端々に肉付けしていくのが「物語」の役割なわけなのですが、生煮えの設定だけお皿に乗せて、メタ気味のギャグというスパイスを振りかけて出された感じ。
 「あなた様は、いずれ獅子座系の王となり、民を導く御方。決して、死んではならないのです」
 それはそれとして、ここでラッキーが“かつてのツルギと同じ立場の自分を知る”というのはちょっと面白い要素ですが、果たして振り返って顧みられる事はあるのかどうか。
 「俺はどんな時でも未来を切り拓いてみせる。そんで、宇宙に平和を取り戻してみせる!」
 ラッキーは改めてビッグ獅子に変身すると、家老の銃撃をものともせずに突貫。
 「なぜ……当たらない! 何故だぁ?!」
 「当たんないって信じてるからな。俺は宇宙一、運のいい男だ!」
 どこかの戦国武将のような事を吠えるビッグ獅子の鬼気に逃げ腰になる家老の手から、ワームホールを利用してシーザーを取り返す、というのはらしくて面白いアクションになりました。
 半数だけどオールスタークラッシュで家老を撃破し、巨大化したところで、シーザーが吐き出したコジシキュータマを用いると、中型の新ボイジャーが出現。5台のボイジャーと組み合わさってのライオンモードから、再変形合体でキュウレンオーの追加武装(ショルダーキャノン)となり、何やら初期パワーアップみたいな事に。
 「名付けて、スーパーキュウレンオーだ!」
 名前もそれっぽい(笑)
 そして合体前にオレンジがじいやを避難させる素振りがあり、珍しいなと思ったら、地上で余っていた(涙)
 まあこれは仕方ないといえばないのですが、『キュウレンジャー』における人数と玩具ギミックの摺り合わせはどうにも至る所で失敗している気がします。今回、スーパーキュウレンオーのデザイン自体は割と悪くなく、ロボ戦は思ったより盛り上がったのですが、随所の人(物)余り感を、もう少し低減するギミックは互い(バンダイ東映)に生み出せなかったものか。
 超キュウレンオーは家老の召喚した飛行部隊(これは家老らしくて良かった)を次々と撃墜すると、シーザーキャノンで家老も成敗。じいやは長らくラッキーに隠していた秘密――ラッキーの父は生きているが、それはジャークマターの軍門に降った上で、惑星カイエンの暴君としてだった――を告げる……。
 そして、いずこかの幕府施設においてイソギンチャク副将軍が「博士」の手によって蘇り、かつて滅ぼした惑星カイエンに向けて送り込まれるのであった、で、つづく。
 リアルに半年ほど放置されていた上にこれといって物語に影響しないので特に謎要素としての意味は持っていなかったラッキーの素性が明かされ、ラッキーが「他人の気持ちがまるで理解できない」「基本的に集団行動に向いていない」「仲間語りの中身が無かった」のは、他人と真っ当なコミュニケーションを取った経験がほぼ皆無だった為と判明。
 それで一本の糸が繋がって面白いかというと、むしろラッキーはもっと滅茶苦茶でなくてはいけなかったのでは、という新たな疑問が生じるのが困りものなのですが、ミニライオンとしかコミュニケーションが取れずに20過ぎ(?)てもジャークマターのジャの字も知らない温室栽培の挙げ句に家出される、って爺は完全に育て方を間違えたのでは。
 そんなラッキーが仲間を得る事で……という要素も物語の通奏低音としてあったようなのですが、それを描くとすればラッキーのリアクションの積み重ねがどうにも不足を感じ、やはり改めて、サソリ兄弟編の間にラッキーから完全に焦点を外してしまったのが、ボディブローとして全体の積み上げにダメージを与えている気がします。
 次回――オデュッセウスは帰還する。