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天飛

◇『小説 仮面ライダークウガ』 (荒川稔久


 未確認生命体第0号が倒れてグロンギ族のゲゲルが終わりを告げ、仮面ライダークウガ――五代雄介が忽然と姿を消してから、13年の月日が流れた。未だ雄介が帰らぬまま、それでも様々な人々の時計の針は進んでいく日本、公安部外事第三課に所属する一条薫は、捜査一課特殊犯捜査課第四係の係長となった杉田から、奇妙な事件の相談を持ちかけられる。それは、新たなグロンギのゲゲルなのか?
一条薫を語り手に、TV『クウガ』から13年後の世界を描く、小説版。その後のエピソードというのがあまり得意ではないのでこれまでは避けていたのですが、思い入れの強すぎる本編を、2回目を見てだいぶ消化できていた事もあり、なかなか面白く読めました。
本編の主要登場人物達をほぼあますところなく拾い、随所に挟まれた回想シーンで本編を振り返りつつ名台詞のオンパレード、本編で説明しきれなかったと思われる設定を補完し、良くも悪くもツッコミどころだった部分も丁寧に潰していく、というまさにいたれりつくせりの内容。特に注目は、一条さんの携帯の秘密(笑)
サービス満点の上で、実際に本編から13年後に刊行された、“13年後の物語”という事で主要キャラ達のその後はかなり大胆に描かれており、これは小説ならでは、といった要素。まさかのあのキャラがヒロインポジションというのは驚きました。そして榎田さんは、13年後も強かった。あと、杉田ファンと桜井ファンにはかなりおいしいと思います(笑)
そんな世界で、まだ五代雄介は帰ってきていない、というのが物凄くきつい物語ではあるのですが。
スーパー刑事・一条薫を語り手にしつつ、一条さんのスーパーさが事件を解決していくのではなく、特撮ヒーロー番組という枠組みを離れたところで、『仮面ライダークウガ』という作品の本質的なテーマが描かれており、その部分に非常に誠実な一作。

「あいつはただ、好きだったんだ……誰かの笑顔が……だから守ろうとした」
「……」
「それは正義じゃない。もっと単純な事だ」
「……」
「だから……あいつは苦しかったんじゃないかと俺は思ってる」
ところで、私の大好きなマンガ『闇のイージス』(作:七月鏡一/画:藤原芳秀)に登場する、主人公の親友であるキャリア警視正・甲斐彰一のモデルは、今作の一条薫であると原作者によって明言されているのですが、その一条薫が小説中において、国際テロリズム対策課を経て公安部外事第三課に所属しているという、『闇のイージス』における甲斐と似たような経緯で同じ部署に居るのは純粋なる偶然なのですか?!
クライマックスの舞台があの場所だし、『闇のイージス』ファンとして、変な興奮を(笑)
終盤、思わぬ展開から怒濤のクライマックスに雪崩れ込み、物語としても純粋に楽しかったですが、強いて言えばラストはちょっぴり不満。いや、そうでなくてはという話ですし、ニーズに応えているのもわかるのですが、○○○○○が完全に放置されてしまって、そこは最後に少しでも拾ってあげて欲しかったかなーと。最終的にはむしろ、そちら側の掘り下げが読みたくなってしまっていたので、ちょっぴり、最終回でページ数の足りなかったマンガ、みたいな事は感じてしまったのでした(^^;
小説としては、時折主観が入り交じるのと、一条視点の文章に不意に地の文からツッコミが入る箇所などもありますが、本業作家ではない脚本家の小説としては、読みやすい方かなと。ページ数の問題だったのか、割り切ってト書き扱いで書いたのか、説明部分が一気に一段落で語られるのがやや読みにくいですが、まあ許容範囲。あと同じく、アクションシーンも一連の動きを全て一つの段落に収めてしまうので動的なスピード感や戦闘の緊張感はほぼ皆無ですが、それを割り引いても内容としては十分に楽しめました。
とにかく、『仮面ライダークウガ』という作品のエッセンスを誠実に抽出した作品で、これはこれそれはそれ、として読めるなら、一読する魅力はあると思います。
追伸:亀山の扱いが素晴らしかったです。