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『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想・第39話

◆Space.39「ペルセウス座の大冒険」◆ (監督:加藤弘之 脚本:毛利亘宏)
 見所は、ミニスカニーソ魔女コスプレで腕を振り上げた際に脇を隠すラッキー。
 役者さんへの変な好感度が上がりました(笑)
 タコの装置によって暴走したチャンプが連れ去られ、追いかけようとした赤・黄・橙・空の4人は、謎の電波により変身解除、強制的にコスプレRPG空間に飲み込まれてしまう。
 勇者小太郎、道化師スティンガー、と来て、ミニスカニーソ魔女ラッキー、半裸バイキングスパーダの二人を、割と容赦ない方面に振ったのは、コスプレ回としては良かったです。
 戦隊たるもの、女装はしておかないとね!(それはそれでどうか)
 そしてスパーダには、潜在的なツルギへのライバル意識を感じずにはいられません。
 爽やか変態紳士枠は、渡さない!!
 戦いになると体が勝手に逃げ出し、何か喋ろうとすると歌ってしまうという道化師体質に苦しむ顔と心はマジなスティンガーを引き連れ、エネミー悪代官を蹴散らした一行は魔王の城に。そこにテンション高いアントン博士が姿を見せ、チャンプを作りだしたアントン博士と、チャンプに正義の心を教えたアントン博士は同一人物にして別人――二重人格であった事が明かされる。
 以前に、アントン博士は実は数百年を生きるサイボーグでした、というのが台詞だけで説明される時点で雑でしたが、ジャークマターに長年協力していた科学者は善と悪の二面性を持った二重人格でした、とやはり自己申告だけで語られるのも極めて雑。
 そして悪の人格は完全なる機械生命体となったが、その際に残った善の人格を始末する前にチャンプを連れて逃げられた、というのがまた雑。
 副将軍再生の件も含めて、実は敵の中枢に関わる人物でした、と持ってくるのならもう少し丁寧に布石を散りばめておいてほしいのですが、今更アントン博士は凄い重要人物でした、と言われても、目を白黒させるばかりで心の整理が追いつきません(^^; やるならせめて、もう1クール前に提示してほしい要素。
 「ここは私たちに任せて! おまえはチャンプのところに!」
 「でも今の俺は! ……唄う事しかできない、役立たずだ」
 「だったら唄えばいいだろ! やれる事をやるんだ!」
 不条理な運命に立ち向かう為の牙には、人それぞれ様々な形がある――常に運命に抗う牙を求める姿勢と、何かを得るためには相応の賭け金が必要なので、唄って駄目だったらそれはそれで仕方ない、という命の扱いとが掛け合わさって、ラッキーらしい良い台詞でした。
 これを「言葉」にして口にできるようになったのはラッキーの成長であるのでしょうが、ラッキーにはこの言葉を牙なき(と思い込む事に馴らされた)地球人に向けて言うか、或いはラッキーがこの言葉に辿り着く成長曲線を丁寧に描いてほしかったです。
 この「やれる事をやる」というのが、ラッキーにとっての「だから――俺は言い続ける! よっしゃラッキー! てな!」だったわけで、それを他者の立場に置き換えて伝えられるようになった気付きは良いのですが、その気付きに至る積み重ねが雑なので、今回も“作り手の脳内理想における『キュウレンジャー』”にしかなっていないのが、実に残念。
 そして、チャンプの元へ走ったスティンガーが、襲いかかってくる暴走チャンプと割と普通に戦ってしまう、という不注意な演出にがっくり。破壊兵器と化した暴走チャンプがスティンガー相手でも容赦なく攻撃してくる姿を見せる必要性を感じたのでしょうが、戦う力を失ったスティンガーがそれでも運命に立ち向かう事が肝心なシーンで、尻尾振り回してアクションしてしまうのは、物語全体のテーマすら損なう大事故。
 尻尾の一突きにより、チャンプの暴走回路を破壊する事を躊躇ったスティンガーは唄って踊り出し、その心……というか多分、サソリ座系星人の音域がアントン印のコスプレ空間発生装置と相性が悪かったらしく、装置が機能停止。更に暴走チャンプも動きを止めて破壊衝動に抗い、スティンガーはサソリの一突きを見事に成功させる。
 「あんまりひでぇ歌で、目が覚めちまっただろうが」
 「おまえの為の歌だ。この程度で十分だろ」
 ところでスティンガーは歌ネタが多いけど音楽活動でもしているのだろうか、とちょっと確認したら、むしろ今作が俳優デビューとなるシンガーソングライターだそうで、歌の方が本職でした。そう考えると、演技経験の無い役者さんにクールキャラ(熱血叫び系と並んで演技させやすい)をあてがって、その感情の発露を歌で示すという発想は悪くなかったと思うのですが、格好良いシーンにしようと先にコスプレを解除させた結果、「道化師だから言葉が歌になってしまう」というより、「作詞作曲:俺」になってしまったのは、“格好いい”の使い方を間違えたのでは、と思ったところ。
 チャンプは正気を取り戻すが、白骨チャンプが現れ、合流した5人は改めてスターチェンジ。
 「再生能力を捨てて手にした無敵の力! 甘く見るな!」
 どうやらそろそろ、タコの扱いが面倒くさくなってきた模様です。
 結局タコは箱に詰まった悪アントン(元ネタはジェイムスン教授なのかサイモン・ライトなのか)を抱えて撤退するのですが、敵キャラクターの扱いの雑さは、悪い方向へ悪い方向へと転がりっぱなし。……ここでわざわざタコを生き残らせたという事は、最終的に再生幹部軍団と救世主それぞれがマッチアップ、みたいな事を考えている可能性もありそうですが、メカスコルピオ登場という更なる大惨事にならないか不安。
 巨大化した白骨チャンプを撃破したキュウレンジャーはアントン博士が居座っていた城を漁って宝箱の中からペルセウスキュータマを入手。残り一つのキュータマを求めて、次なる星系へと旅立つのであった。
 コスプレ回としては意外と悪くなかったのですが、アントン博士に関する致命的な引きの不足から、悪役サイドと関わるドラマが面白くもなんともならないという毎度ながらの『キュウレンジャー』で、悪役サイドの魅力と広がりを期待する身としては、厳しい作りです。
 またここに来て2話連続で、メインライターによって、人数の多さが作劇の幅を広げる姿ではなく、結局は半減させた方が書きやすい、というのを見せられるのは実に残念極まりませんが、そういう点では次回、人数ならではの話を仕掛けてくるみたいないので、どう作ってくるのかは注目したいところです。