はてなダイアリーのサービス終了にともなう、旧「ものかきの繰り言」の記事保管用ブログ。また、旧ダイアリー記事にアクセスされた場合、こちらにリダイレクトされています。旧ダイアリーからインポートしたそのままの状態の為、過去記事は読みやすいように徐々に手直し予定。
 現在活動中のブログはこちら→ 〔ものかきの繰り言2022〕
 特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)

『ボーン・コレクター』(ジェフリー・ディーヴァー)、感想


 かつてニューヨーク市警の鑑識課員として極めて優秀な捜査官だったリンカーン・ライムは、捜査中の事故によって頸椎を損傷、四肢麻痺の障害を負い、今では生きる希望を失っていた。動くのは首から上と左手の薬指だけ……自ら死を望みつつ、しかし死ぬ事さえ自分ではできないライムは、市警から連続誘拐事件の捜査協力を要請される。警察を嘲笑うかのように次の事件の現場を示唆する残忍な犯人を、ライムは果たして止める事が出来るのか……?!
ニューヨークを舞台に、自分一人では身動きもままらない元捜査官とその指揮下の警察官達が、狡知に長けた連続猟奇誘拐犯を追うサスペンスミステリ。
主人公が元鑑識という事で、現場で集めた証拠を元にした科学捜査が推理のベースとなり、そこから膨大な知識と組織の情報力を活かして犯人を追い詰めていく警察ミステリであると同時に、故意にヒントを残していくサイコキラー安楽椅子探偵の頭脳戦という本格ミステリでもあり、濃厚な物語がスピーディーかつスリリングに展開。
なにが濃厚って、ハードカバー450ページ以上なのに2段組という物量が超濃厚。
しかし描写が冗長だったり語りが回りくどかったりするかというと全くそんな事はなく、読みやすさと適切な情報量を兼ね備えて物語自体はテキパキと進みつつ、決して淡泊な文体ではない、という案配がお見事。
その上で、犯人は猟奇殺人犯ではなく猟奇誘拐犯というのがミソで、常に、ライムらの捜査が犯人の残したヒントを読み解き、人質を救い出す事ができるのか、というタイムリミットサスペンスが盛り込まれているという構造が実によく出来ています。
有名シリーズとして名前は知っていたものの、サイコサスペンスの類にままあるグロ要素が苦手なので敬遠していたのですが(タイトルからあれな感じですし……)、苦手なシーンはありつつも、それでも先を読みたくなる出来の良さでした。矢継ぎ早に展開する頭脳戦の合間には、ライム、そしてその目と手足となって現場鑑識を担当する事になる婦人警官サックスの抱える心の問題も織り込まれ、それらが解きほぐされる中で遂に姿を見せる真犯人……。ライムと犯人の対決はミステリとしてしっかり決着し、そして最終章、ライムのみならず、あらゆる犯罪捜査官に対して突きつけられる業、という最後の一撃が強烈。
多彩な要素を一つの器にふんだんに詰め込みつつ、それらを御して一つの物語にまとめあげ手綱捌きが見事で、非常に面白かったです。