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『轟轟戦隊ボウケンジャー』感想・第44話

◆Task.44「仙人の温泉」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:武上純希
着物姿で新年のご挨拶は画面に向けてメタに消化……と見せて、牧野先生に向けてでした、という趣向。
一方前年度の売り上げ不振で景気の悪いダークシャドウでは、ヤイバ先輩がゲッコウ様に、仙人峡に封印された強大な力の解放を求めていた。
「ならん! ボウケンジャーなど、関わらなければ、それで良い」
目的は“力”ではなく“金”である、と安定のスタンス(笑)
「既に私の策は、動き出している……」
だが打倒ボウケンジャーを期するヤイバ先輩は社長命令を破って仙人峡へと向かい、山頂の塚を破壊。中からフクロウを模した彫像が現れると、DS屋敷ではゲッコウが急に苦しみ始める。
「まさか……仙人峡の塚に、何かあったのでは……」
異変を感じ、苦しみながらも仙人峡へ飛ぶゲッコウだが、翼を負傷。なんとか仙人峡の山中へ入ったところで、温泉の無料招待券につられて仙人峡へとやってきた菜月・蒼太・映士と遭遇し、そういえば、誰もゲッコウ様がダークシャドウの頭領だと知らなかった。
ここまでずっと、貫禄のある声の巨大化アイテム、とほぼ同義であったゲッコウ様の立ち位置を活用し、ボウケンジャーと直接出会わせてしまったのは、面白い一ひねり。
映士と蒼太は冷たく先を急ごうとするが菜月はゲッコウを手当しようとし……最上蒼太容疑者、猫(みゆ)を手当したのはメスだったから疑惑が真っ黒に。
蒼太さん、さわやか系二枚目枠なのに、歴代戦隊メンバーでもトップクラスの病巣の深さかも。
菜月の優しさを利用する事を思いついたゲッコウは忍法で菜月と二人姿をくらますと、自らを人語を解する「森の主」と称し、仙人峡の山頂まで運んで貰う事に。
一方、温泉無料招待券の封筒に使われていた墨から、無料招待はダークシャドウの罠であると牧野先生が見抜き、菜月達の後を追って仙人峡に入ったチーフ・さくら・真墨は、風のシズカと遭遇。ヤイバの作戦の為、逃げの一手に徹するシズカだったが、逃げ回っている内に蒼太と映士に出くわしてしまい、前後を挟まれるというドジっ子アクシデント(笑)
「うーん……この娘、なんて単純なんだ」
疑いもせず言う事を鵜呑みにする菜月との混浴を思わず妄想しつつ、山頂に辿り着いたゲッコウ様は塚の修理を菜月に頼むが、その前に立ちはだかったのは、本命ヤイバ先輩。ヤイバvsイエローという珍しいマッチアップとなり、影分身の術でイエローに助勢するゲッコウであったが、ヤイバは上司にすら手裏剣を投げつけると、菜月ともども拘束してしまう。
「ゲッコウ様、もう止められません。一緒に月の出を待ちましょう」
ゴードム兵を蹴散らされたシズカがひたすら逃げ回る内に日が落ち、夜の闇に包まれていく仙人峡……
「あと15分もすれば、三体月が現れる。その時、あの塚から溢れる力で、仙人峡に居る人間は全て死ぬ」
この、“なんかよくわからないけどきっと凄い”というざっくり感が非常にダークシャドウで、何かと有能なヤイバ先輩も、生まれの因果からはなかなか逃れられない事を感じさせます。
菜月に正体をバラされたゲッコウは、仙人峡に封印された力とは、かつてゲッコウが封印した魔鳥であると説明。ゲッコウがフクロウの姿なのは、秘術を尽くして自ら魔鳥と融合し、そこから分離した魔の力を彫像に封印していた為――つまり、自らの肉体を犠牲にして、魔鳥封印のいわば楔と成していたのだった。
「魔鳥の力、それがあのプレシャス」
こんな身近に、そんな燃える設定があったという真実に、ヤイバ先輩の闇の力ゲージがどぎゅーーーんと急上昇した!
「力が解き放たれれば、我が肉体は魔鳥に戻る。それは仙人峡だけでなく、世界を滅び尽くすまで暴れ続ける」
(実は邪神を封じていた老師、悲劇の封印解放、そして世界の危機……こ・れ・だ!)
「世界を滅び尽くす?! そんな……」
(いいぞ、いい反応だ、ボウケンイエロー)
「ヤイバ、おまえにも止められぬ、恐ろしい鳥じゃ。早く封印塚を元に戻すのじゃ!」
(身に余る力、禁断の選択、計り知れぬ代償…………)
「ふふふ、はは……面白い。ゲッコウ様が魔鳥になる姿、見せていただこう」
(そう僕は時のマヨイゴ、許されざる罪を犯した片翼のダテンシ)
変な副音声が脳内を駆け巡っておりますが、ここで先輩がオープンフェイス(本音)を見せる、というのが好演出。
「世界を滅ぼす姿、是非見せてもらいたい」
(ここが君との約束された暗黒のエデンなら、そうさ世界の終わりを二人で見るのが僕たちの誓いだったね)
「ゲッコウ! おまえの肉体がどうなろうと、知った事ではない。ふはははははは……」
ヤイバ先輩の呪われた前世からの宿業という名のディスティニーにダイナマイトで着火してしまったところで、5人に追われたシズカが到着。
「ようこそボウケンジャー、仙人峡へ」
「チーフー! 真墨ー!」
「あ、菜月?! ヤイバ、貴様ぁ!!」
拘束されている菜月の姿に激怒するブラックですが、助けを求める菜月が先にチーフの名前を呼んでいて、王子様力が足りない!!
同じく拘束されているゲッコウ様に気付くシズカだがヤイバ先輩に丸め込まれてそのまま戦闘に参加し、そして炸裂する千羽鶴・闇吹雪から闇一閃の、ヤイバ先輩本気のヒートコンボ。
激しい戦いを見下ろす月が三つに割れると、解放された彫像の魔力が器と融合し、ゲッコウ様は巨大な魔鳥モードへと変身。意外と格好いい魔鳥ゲッコウは大爆炎で眼下の人間をまとめて吹き飛ばし、映士に菜月の救出を託したチーフは、ボイジャー・アンドック。だがダイボイジャーが身動きできないほどの風を巻き起こし、一斉砲撃すら弾き返す魔鳥のハザードレベルは、なんと600を計測する!
魔鳥の起こす風は横殴りの雨をともなう嵐となり、見た目が巨大怪獣で両手が翼なので嘴でつついて攻撃してくる敵という、そこはかとなく《ウルトラ》風の戦闘がますます《ウルトラ》風に。渡り合う4つの敵組織が全て最終盤まで生き残ってしまった為、各ネガティブ最後の脅威のインフレ表現が難しくなる中、外的な要素(この場合は天候)で強大さを表現するというのは、ハッタリが聞いて良かったです。
そしてその嵐の中、ゲッコウを助けようとすがりついてくるシズカに、闇の力がオーバーヒート中のヤイバ先輩の剣が一閃。
「後は魔鳥が始末してくれる。ふふふふふ……」
「ヤイバ様……」
シズカは額から血を流して倒れ、ダークシャドウ、身内の燃える設定の発覚から、本格的な内乱に発展。
菜月を助けようとしていたシルバーも魔鳥の吐き出す爆炎に飲み込まれるが、変身解除級のダメージを受けつつも、なんとか菜月を救出し、映士は王子様ポイントを獲得した!
「俺様に、できねぇ事はねぇーーー!!」
激しい嵐を、ロボ戦のハッタリ、ダークシャドウの波乱の特殊効果、そして菜月と映士への障害、と3つの要素で使い切り、風雨に打たれながらも映士と菜月が塚を元に戻して封印の札を貼ると、魔力を失った魔鳥は急速に弱体化し、冒険轢殺ナックルの直撃で大爆発。
「鳥さん……」
爆発した魔鳥からはじき出され、意識不明で転がるゲッコウ様を拾った傷だらけのシズカは姿を消し、ひとまず世界の危機は回避されるのであった……。
「ヤイバの奴、忍者の一族を裏切って、いったい何をするつもりだ」
「それにあの頭領、ゲッコウといったな。手下を失ってこれからどう動く気だ」
「うん。考えてみると、あの鳥さんもなんかやっぱり可哀想……」
牧野先生の追跡調査により、仙人峡とは元は忍びの里であった事が判明し、繰り出すツクモガミのスペックが高い割に、端々で資金不足や戦力不足が感じられたダークシャドウは、どうやら魔鳥によって里を滅ぼされた忍び集団の生き残りであった、という事で納得のいく背景に着地。
恐らく、ダークシャドウの真の目的は、プレシャスを闇から闇へ流して得た金で、忍者教室を開く事!! 冒険学校によるインスタント生け贄作戦は、そのテスト運営を兼ねていたのに違いありません。
「抜け忍には、死、あるのみ」
重傷を負うも復帰したゲッコウはシズカに向けて低く呟き、それはそれでまた闇の力の昂ぶってくるるヤイバ先輩は、いずこかに姿を消すのであった……。
今作中盤以降の制作状況から、脚本家の手配の都合などもあったのでしょうが、魔鳥は1話で倒してしまって内部分裂したダークシャドウの動向を引き要素にする事で、ネガティブが秘密兵器を繰り出してきた!→前後編で撃破してネガティブを壊滅させた!というパターンの繰り返しを回避した、というのは良かったです。
菜月とゲッコウ様の絡みは、菜月の純真さを感じるもゲッコウ様が明確に菜月にほだされる所までは行かず、広げても広げなくてもいい、という緩めのパスになりましたが、果たしてダークシャドウの行く末や如何に。
予告では陛下が出張っていましたが、この辺り各組織の錯綜があった方が集大成として盛り上がりますし、真墨とヤイバ先輩の因縁を考えた時も、ここで「組織(仲間)を捨てる」というのは重要なポイントになりそうなので、どう決着をつけてくれるのか、楽しみです。
正直、鈴村監督×武上脚本という組み合わせに対する信頼度が低くて不安もあったのですが、スクランブル体制の中で9回に繋ぐ為のワンポイント登板としては、前回今回と十分以上の出来。「個性を出す」というよりはプロデューサーなどの「オーダーに応える」ウェイトが大きい仕事だったろうとは思いますが、頭抱えるような事にならず、しっかり抑えてくれました。
敢えて言うと、蒼太さんがなんの下調べもせずに温泉に向かうのが違和感ありましたが、お子様トリオが山へ向かい、居残りの蒼太さんがDSの罠に気付く……でも良かったような。そういう意味では、いつもの蒼太さんの役割を牧野先生が担っている事になり、ラストを控えて牧野先生にもう少し出番を、などの事情があったのかもしれません。
今回の地味な面白ポイントは、
凄く格好良く口にした
「既に私の策は、動き出している……」
の中身が、ケチな詐欺メールだった事。
ヤイバ先輩、絶対それで、組織の活動資金稼いでますよね……?
宛名をスカウト対象の真墨ではなく菜月にしたところに、手慣れた職人の技を感じます。