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『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第4話

◆#4「許されない関係」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
謎めいた連続人体消失事件を追う警察戦隊、咲也が運転席なのは納得として、助手席に圭一郎、後部座席につかさ、というのが数字や階級では計れない人間関係のヒエラルキーを感じさせます。
「慣れてるだけだ。訓練生時代からの腐れ縁だからな」
つかさがやたらと圭一郎扱いに慣れている事から、もしかたら旧知の仲だったりするのか……と思っていたら台詞で裏打ちされ、基本的なテクニックではありますが、こういった関係性を先に台詞だけで説明するのではなく、端々の描写で受け手に想像させておいてから納得させる、という手法が巧み。
地味なジャブみたいなものですが、こういった積み重ねがどこまで丁寧に出来ているか、が作品全体の完成度を高め、後々ストレートやアッパーでKOできるかを決めてくるので、安心感が増します。
「じゃあ、つかさ先輩の弱みなんかも、知ってたりするんですか?」
「弱み? …………思いつかんな」
「圭一郎に見抜かれるような私じゃない」
軽口に紛れて打撃系先輩の弱みを聞きだそうとする咲也は、やはり腹黒枠で2クール目の終わりぐらいに事務方と共にギャングラーへの内通が判明するのではないか。
「お願いします。桃華を、娘を助けて下さい」
「はい、必ず。約束します」
失踪した少女の両親に、圭一郎が「約束」するのも、さりげない台詞ですがしっかり第2話を踏まえていて良かったです。
現場の捜査からの帰路、被害者の部屋にあった鮫のぬいぐるみを気にしていたつかさが、同じぬいぐるみを扱う移動販売車を発見。店主に被害者について確認するが芳しい返答は得られなかったその時……
「見つけたぜ、ラブルム・ジョウズ」
高い所から快盗が参上し、コグレからの情報提供が省かれる事で、警察の捜査に途中から快盗が介入するという逆パターン。
「おまえ達は……」
「世間を騒がす快盗さ」
ルパンレッドが快盗カードを店主に投げつけると、偽装が剥がれてギャングラーの正体が判明。
「予告する。あんたのお宝、いただくぜ」
ふと気付いたのですが、ルパンレンジャーは自分達を「快盗」と名乗っているけど、これ、ギャングラー怪人から見たらまるっきり敵対組織のヒットマンで……「あんたのお宝、いただくぜ」が「あんたのお命、いただくぜ」に聞こえてきました。
快盗は簡易名乗りから戦闘を始め、警察戦隊も変身。第3話では未使用だった気がする新兵器カメラを使用し、
〔カメラ画面奥へ移動(前方の映像) → カメラ移動方向そのままで、その上をバック宙で飛び越えるルパンレッドにフォーカス(上方の映像) → カメラの移動方向が見た目の上では手前方向へ逆転し離れていくルパンレッド中心の戦闘シーン(後方の映像?)〕
という一連の動きがカット割らずにシームレスに繋がっている、というのはどういう処理しているのかわかりませんが、面白い映像。
全天映像をぐるぐる回しても今ひとつ面白くなりませんでしたが、なるほど、前後左右などの軸移動だと、これまでにない展開が出来そうです(明らかに画質が変わるというデメリットとの足し引きがありますが)。
ジョーズ怪人を倒してしまうと消えた人々の行方が分からない、と攻撃が鈍った所で反撃を受けて逃げられてしまい、快盗赤と青はすぐにその後を追うが、桃の叫びに足を止めた黄は、ジョーズ怪人が持つルパンコレクションは、なんでもデコレーションする力を持っている、と言い残し……
「どうしてこっちの情報をペラペラ話すんだ」
「お口にチャック必要か。ん?」
茶店で男2人にいびられる事に(笑)
魁利はいうなれば気の置けない男友達ポジション的イメージなのでしょうが、口を引っ張ったり頭ポンポンしたり、これが某不滅の牙だったらギルティで処刑されてしまう所です。
「ごめんてば。……でも、人が消えちゃったんでしょ。無事に帰ってきてほしい気持ち。うちらわかるじゃん? だから……!」
「わかった。…………わかったから」
前回は激情を利で収めるという形でしたが、今回は甘さを心奥に関わる情で受け入れるという形で快盗3人の関係性のバランスを取りつつ、初美花は男2人ほどさばけていない(壊れていない?)と、温度差もちらり。
3人揃って甘さを見せると警察戦隊との関係が緩くなってしまう所を、魁利と透真は足も止めず、初美花だけが悩んだ末に……という形で見せたのが良かったです。
手がかり不足の快盗達は、国際警察の動向を見張っておいしい所をいただく作戦に切り替え、圭一郎達は失踪した人々の部屋で次々と、ギャングラー印の鮫のぬいぐるみを発見する。
「頑張って探してくれよ〜、おまわりさん」
その頃ギャングのボスは、ジョーズの集めた人間を買って欲しいとゴーシュからおねだりされていた。
自・分・で・買・え、と至極もっともな意見を口にしては銃を向けられ、ボスには「いいじゃん買っても」と言われて言葉につまり、サボテンマッチョさん、ちょっと可哀想(笑) てっきり無骨なボディガードかとばかり思っていたら、「デストラ、買ってやれ」と言われる所から金庫番も兼ねているようで、もしかして、凄く苦労人ポジションなのか……?!
圭一郎と咲也が消失現場を再捜査中、支部では事務方を中心にぬいぐるみを分析調査。
「くっ! ……ふぁっ! この優秀な私とした事が! 何も見つからないなんてぇ! ななな何も何も何も見つからないぃ!」
調査に行き詰まってヒステリーを起こし、やおら立ち上がると腕を振り回して叫ぶ事務方、やはり漂う、なんともいえない大魔王臭。親分が腕時計型通信機に向けて起動コードを告げると、巨大化するのではないかとか、不安になります。
休憩を持ちかけた司令は甘味を買いに外出し(この人がサボりたいだけもしれない)、事務方もエナジーオイルの補給に向かい、ひとり部屋に残ったつかさは、じっとぬいぐるみを見つめる。
「どうして…………(どおしておまえはこんなに可愛いんだっ!!)」
つかさは全力で拳を机に叩きつけると、陶然とした視線をぬいぐるみへ。
(は?! 私は刑事……おまえは犯罪の証拠品。こんな形で出会わなければ……私は……私は……)
きりっとした顔立ちと部分的に男言葉を使う事も意識してか、ぬいぐるみの周囲を回りながら手を伸ばし、語りかけるように独白するという歌劇的な演出が、つかさのキャラクターとベストマッチ。
正直、1−2話の時点では短い出番で特徴を出す為の口調が浮き気味で、狙いはわかるけれど物語に馴染んでくるまで時間がかかるかも……とつかさがかなり心配だったのですが、掘り下げと同時に、描写の方向性にガイドラインを設置してみせるという、中澤監督がさすがの手腕。
勿論、1−2話はまずルパンレンジャー中心で見せていく、というのは設計通りでしょうから杉原監督の不備というわけではなく、3−4話に信頼感の高い監督を配置して警察戦隊の演出的な方向性を固めてもらう、という構造の差配が見事なスタッフワークです。
回るつかさは私服・私室妄想の中でぬいぐるみをぎゅう。
(今すぐおうちにお迎えするのにぃぃぃっ)
つかさが可愛いものが好き、というのはOPで明確に示唆されているので(定番でもあり)、特にインパクトは無いのですが、
(でも、私たちは……そんな事、許されない関係。そう……許されない。けど……)
これまで比較的、劇中の決め台詞だったりシリアスな要素と繋がっていたサブタイトルをここに持ってくる事で、今後のサブタイトルのネタを広げつつ、台詞そのものを笑えるものにしてしまう、というのがお見事。
また、つかさの独白を長めに用いる事で、これはサブタイトルここで突っ込んでくるのか……という心の準備を受け手にさせておいて、思わせぶりなサブタイトルへの期待を裏切りつつ、ネタとしての用い方で期待に応える、という“期待コントロール”が実によく出来ています。
そういう点では、“決め台詞”に向けて綺麗に線を引いていくという香村脚本の特性が、前回の予告から段取りを踏んでここに到達しているといってもよく、回をまたいでメタ要素も取り込んだ上でテクニカル。
苦悩するつかさは、周囲の気配を窺うと、禁断の頬ずり……の瞬間、つかさの姿が室内から消失し、部屋には床に落ちたぬいぐるみだけが残される!
外では、決定的な手がかりを得られないまま日本支部に帰還した圭一郎達を魁利が木の上から見つめており……ちょっと素で高い所を怖がっているように見えるのは気のせいでしょうか(笑)
そして姿を消したつかさは、薄暗い洞穴の中に転移しており、失踪した人々を発見する。
「顔すりすりが、ワープのスイッチだったのか」
禁断の関係が思わぬ種明かしに繋がり、内側から牢を破壊したつかさは囚われていた人々を脱出させるが、ジョーズに見つかってしまい、銃を落として変身不能に。生身戦闘におけるピンチを、光線技などで吹き飛ばすのではなく、ぎりぎりと締め上げ、更にかなり痛そうな効果音と悲鳴を重ねて描写する、というのは今作の端々に感じる表現的な攻めの一環か。
(あんなワープ方法……ジム達が気付くとは思えない)
追い詰められるつかさだが、そこへ意外にもワープしてきた圭一郎と咲也が突撃。
「つかさ――戦えるな」
怪人に銃口を向け視線を逸らさぬまま、落ちた銃をつかさへ渡す圭一郎が、ここまででも屈指の格好良さ。熱暴走が一直線すぎて空回り気味、という描写が多かっただけに、警察のターンの今回で、圭一郎の格好いい姿をストレートに描いてくれたのは嬉しい。
「……当然だ」
銃を手にしたつかさも不敵に応え、3人並んで警察チェンジ。
「国際警察の権限において、実力を行使する!」
その頃、店で魁利達の帰りを待っていた初美花は行方不明の人々が発見されたというニュースを聞いて慌てて2人に連絡し、ニュース速報で現場に駆けつける快盗は、凄く斬新な気がします(笑)
「なんだよあいつらいつの間に……」
「倒される前にコレクションを回収するぞ」
快盗達は慌てて警察vsギャングラーの戦いに乱入し、前半の快盗の登場シーンに加えて、前回にならって警察の上前をはねようとした快盗が今回は結果として出し抜かれる、と第3話までで構築したパターンの逆を突く、という構成が巧み。
「邪魔するな、快盗ども」
「言ったろ。お宝はいただくって」
ルパンレッドの銃撃を防ぐ為、抱え上げた戦闘員を盾にしながら突撃して投げつける警察レッド、新しすぎて戦慄(笑)
前回、青にしてやられた緑が青とぶつかりあって汚名返上する姿も挟まれ、戦闘中に黄の姿を確認した桃は、怪人に至近距離の銃撃から強烈な中段蹴りを浴びせると、故意にルパンイエローの方へと吹き飛ばし、黄はコレクションを回収。
「ルパンコレクション、いただきます」
「情報提供のお礼だ」
「つかさ、何をしている」
「悪い。手が……いや、足が滑った」
1号はそれ以上の叱責を諦め、つかさ、訓練生時代にセクハラを働いてきた教官を、足が滑って再起不能に追い込んだとか、警察学校に伝説を残していそう……。
桃はお宝ゲットに喜ぶ黄に構わず怪人に追撃の銃弾を浴びせると、残った構成員を回転撃ちで一掃し、残るはジョーズのみ。
「「よし、トドメだ」」
「え?」
「あ?」
シンクロして顔を見合わせるW赤。
「グッドストライカー、ふらっとさんじょー!」
そこに飛んでくるコウモリ野郎、タイミング良すぎて最低です……。
「おいらは自由の身。やりたい時に、やりたい事をするだけさ」
グッティは警察戦隊を選んで融合ストライクでジョーズを滅殺し、なんだか毒気を抜かれつつも改めて互いに銃を構える警察と快盗だが、そこに現れた毒婦ゴーシュが金庫を踏みつけながらシュビドゥバ巨大化。
立ち向かうパトカイザーだが、巨大ジョーズ怪人のワープ攻撃に大苦戦し、快盗がジェットメカで介入。それを見たコウモリニンジンは警察合体を解除して、改めて快盗と合タイム。今回は快盗ロボのテーマソングでルパンカイザーが巨大怪人を撃破し、〔後から介入→怪人のヒントを提供→パトレンに出し抜かれる→巨大怪人のトドメを刺す〕と前回のパトレン同様、下がって上がって下がって上がる、と非常にバランスに配慮した構成。
また、復讐の為にギャングラーを葬り去る事にもこだわるルパンレンジャーですが、怪人→巨大化のプロセスが、「瀕死状態からの巨大化」や「なんだかんだ芋羊羹を食べる余力はあって巨大化」などではなく、「一度完全に死んでからの再生復活」なので、どちらかにトドメをさせば一応の抹殺ノルマを果たせる、というのは考えられた設定です。
同時にそこに、快盗達を“復讐者”として位置づける事へのこだわりが見えて、不穏。
グッティはまたも空の彼方へ飛び去っていくが、とにもかくにもミッションは達成され、コグレはルパンコレクションを回収。
「コグレさん……一度も食べていったことないな」
食事を勧めるもそそくさと退店するコグレを見送る3人、画面上の空白の置き方といい伏線めいた見せ方(コグレは人間の食事をしない存在?)なのですが、愛を込めて君に料理をマンの、プライドが傷ついているだけのように見えなくもありません(笑)
そして警察戦隊では、鮫のぬいぐるみに左右からすりすりする男2人の録画映像が公開されていた(咲也、凄く嫌そう)。
「こうして、お二人はつかささんの元へ駆けつけたのです」
「そうか、二人ともやったのか……顔すりすり」
つかさ、なんだか、悔しそう。
「こっそり録画するなんて、ジムさん意地悪だなー」
「え?! 趣味みたいに言わないでください。捜査の記録です」
もっともらしい事を言っていますが、人間の弱み握る気満々だ!
恐怖の大魔王・事務方への不信は募る一方も、無事に事件を解決しておやつタイムとなるが、つかさには疑問が一つ。
「しかし、よく思いついたな圭一郎。ぬいぐるみに顔をこすりつけるなんて」
「だっておまえ、昔からやるだろ」
「……えっ」
「訓練生時代も」
朝加圭一郎は見ていた。
そして胸に秘めていた。
「見てたのか?!」
「おー、つかさは、ぬいぐるみが好きなのか」
「え……」
「えー! つかさ先輩、めっちゃ可愛いじゃないですか!」
「え?!」
「おや? つかささん、顔が赤いですよ〜」
こいつ、人間の弱みを握る気満々だ!
圭一郎は無表情にどら焼きを頬張り続け、狼狽するつかさは「不覚……」と項垂れ、オチがついて、つづく。
乙女の秘密を知るも黙っていたが、最終的に上司と同僚の前で公開処刑する圭一郎、紳士度が高いのか常に切り札は温存しておくもっと邪悪な何かなのか、現時点では判断に悩むところです(笑)
冒頭のやり取りも含めて考えると、別に恥ずかしいともなんとも思っていないので単純に捜査の過程で事実を述べただけ、という可能性もありそうですが、それはそれで隠しておきたい気持ちには全く気付いていないので、真摯ではあるがデリカシーはないかもしれず、やはり君は栄光ある戦隊ダメンズの一員なのか圭一郎。
――次回、最近の戦隊だとそういうペースかと思ってはいましたが、早くも新たなVSビークル登場。
そしてそれを巡ってぶつかり合う、警察・快盗・ギャングラー。
「貴様等は間違っている!」
「俺たちはこれしかないから快盗やってんだ!」
まずは一つ、赤と赤の信念のぶつかり合いになりそうで、楽しみです。……そして、もしかしたら苦労人なのでは疑惑が急浮上したサボテンマッチョさんに見せ場はあるのか?! 日頃のストレスのはけ口になるのは、果たしてどちらの戦隊だ?!
ここまでのパターンから桃黄セットで掘り下げるのかと思いきや黄の内面にはそれほど踏み込みませんでしたが、結果として前回と比べて引き締まったエピソードになり、面白かったです。
W戦隊のバランスと1エピソードとしてのバランス、どちらを優先して組むのか、というのは今後も何かと難しそうですが、基本の主体が快盗サイドというのも含め、初美花を後回しにしても、つかさのキャラクター性を早めに明確にした、というのは良い判断だったかな、と。
ところで……ここまでのパターンから桃黄エピソードだと解釈する、クライマックスバトル中の桃から黄への配慮、「許されない関係」というサブタイトル…………総合するとつまり、ルパンイエローは明神つかさの顔すりすり対象にロックオンされたのでは。
(どおしておまえはそんなに可愛いんだっ!! ……は?! 私は刑事……おまえは快盗。こんな形で出会わなければ……私は……私は……今すぐおうちにお迎えするのにぃぃぃっ)
前回は咲也にナンパされ、国際警察で人気沸騰、ルパンイエローの明日はどっちだ!!
ちなみにこの「おうちにお迎えする」というのは、知る限り、ぬいぐるみ好きの言い回しとして凄くリアルで、実は可愛いものが好き系のキャラ付けとして、納得度の増す味付けなのも良かったと思います。