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『獣拳戦隊ゲキレンジャー』感想・第1話

◆修行その1「ニキニキ!激獣拳」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:横手美智子
パンダと戦う野生児
という衝撃的な開幕。
「……ゾワゾワだ。……ゾワゾワの匂いがする」
独特の感覚(&感性)と常人離れした高い運動能力を示す半裸の青年は密林に墜落するセスナを発見。
「よーし……行く!」
と、勢いよく崖から大ジャンプをしたところから、OPに。


――獣を心に感じ、獣の力を手にする拳法、獣拳。
獣拳に、相対する二つの流派あり。
一つ、正義の獣拳、激獣拳ビーストアーツ。
一つ、邪悪な獣拳、臨獣拳アクガタ。
戦う宿命の拳士たちは日々、高みを目指して、学び、変わる!

もともと主題歌は好きなのですが、イントロからナレーションと映像を被せ、イントロの盛り上がりとOPナレーションの盛り上がりの重なりから相対する二つの拳がぶつかり合ったところで、歌が入り始める、というのは抜群に格好いい。
映像的にも、まずはワイヤーを交えたアクションで今作の特色を明確に見せ、キャラ紹介において敵方(メレ&理央)を同格に盛り込む見せ方も印象的。主題歌と映像もマッチしており、個性的なスーツが気にならなくなるレベルで、歴代でも屈指レベルの格好いいOP。
そしていきなり……脱いだ!
理央様、本編でもかなり切れ味抜群なのですが、なんだろうこの、真墨完全体みたいな。
<闇の三つ首龍>の力を受け入れた真墨=理央様感が凄いのですが、そういえばOPナレーションから「正義の獣拳」と力強く打ち出しているのは、前作が前作だけに変な笑いが浮かびます。
セスナの墜落現場に居たのは、アタッシュケースを片手に抱え、キョンシーの集団に追われる女。
「困っちゃうわねぇ……そんなにこれが欲しいの? でも駄目。渡さない」
ビジネススーツの女は意外や激獣レオパルド拳でキョンシー軍団を蹴散らす戦いを披露し、ここは、油断していると通りすがりの通行人が形意拳で反撃してきたり、折れた椅子を振り回して壁を駆け下りたりする修羅のクンフーワールドなのか。
「かりそめの命を与えられた、哀れな死者リンシー達。今こそ永遠の眠りにつきなさい」
ハードボイルドに決めた女がキョンシーを塵に帰した所に降ってきたのは半裸の野生児。
「俺、ジャン。漢堂ジャン。虎の子だ」
そして更に、額からカマキリ生やした怪拳士が登場。
「選ばせてやるぜ。俺にいたぶられてからそれを渡すのと、それを奪われてからいたぶられるのと……どっちがいい?」
「どっちもお断り」
「ひゃはははははは! いいぜいいぜー。強がっていた女が苦痛と恐怖に泣き出すところを見るのは、大好きだ」
いい感じにサディスティックでインパクトのある悪役なのですが、どうして、額からカマキリなのか。
そして、覆面×人間のフォルム×なんか変、という組み合わせが、どうにも世界忍者を思い起こさせます(笑) ここはこの後、城拳士・フクロウ男爵とか、異形拳士・紅トカゲとか、宇宙拳士・デモストとか登場してしまう、修羅のクンフーワールドなのか。
野生児ジャンが状況についていけない中、2人の拳士は激突し、不時着時の腕の負傷を突かれた女――真咲美希がケースを弾き飛ばされ、中に入っていたギギの、じゃなかった、拳魔の腕輪を拾うジャン。カマキリ拳士の攻撃を受けたジャンは野生の本能で咆哮するも木の下敷きとなって腕輪を奪われ、結局満足して帰ってしまうカマキリさん、そそっかしい。
そして……どことも知れぬ巨大な館の中で、カメレオン怪人の不意打ちをかわす黒衣の男。
「足りぬ。 セロリもピーマンも 高揚も衝撃も。メレ、その程度の攻撃では、俺の渇きは癒やされぬ」
「ああーん、理央様、私の愛の一撃で、いつか癒やしてさしあげたい。あなた様の、その渇き♪」
なよなよと崩れ落ちるカメレオン怪人はチャイナドレス風衣装をまとった美女の姿となり、美形悪役カップルというのは、ここを好きになれると個人的に視聴が楽しくなりそうです(笑) ……考えてみると、顔出しの美男悪役というと(悪にカウントするとして)仲代壬琴(『爆竜戦隊アバレンジャー』)以来?
若干呆れた視線を向けられたメレは立ち上がると真剣な口調に一変。カマキリが拳魔の腕輪を持ち帰った事を告げ、真墨完全体もとい理央様は、三つの輪が連なった拳魔の腕輪を身につける。
「いにしえの拳魔達よ、我に言葉を――授けよ」
「我らを呼び起こそうとする若獅子よ、おまえは何を求める」
「強さを。それのみ」
「ならば人間どもに悲鳴をあげさせよ」
「弱き者どもの絶望が、我ら臨獣拳を強くする」
「弱き者どもの……絶望!」
3つの声で喋るマジックアイテムを入手した悪役サイドが活動を開始する姿はかなり劇的に描かれ、OPの扱いと合わせて、従来作と変化をつけた描き方への意識が見えます。
そして、台詞のタメからポーズへの流れ、振り返り方に至るまで、理央様は大変闇の力に溢れていた。
「道は示された」
その背には黄金の獅子の闘気が浮かび、徹底して芝居がかった描写は良い感じ。
一方、真咲(色々な意味でどうしてこの苗字になってしまったのか……)に拾われて医務室のベッドで目を覚ましたジャンは、それぞれチーター拳とジャガー拳を扱う黄と青の戦闘訓練を目撃し、あっちもこっちもネコ科だらけだな、と思ったら、永井一郎の声で喋る猫のマスターが登場。
割とさらっと人間大で立って喋って服を着ている仙猫が登場するのですが、まあパンダと虎が生息する樹海も日本国内だったようなので、ここは修羅のクンフーワールドです。
「獣拳ていうのはね、激気を燃やして、獣の力を手にする拳法よ」
「げき?」
「獣拳の、力の源よ。心に獣を感じた時に沸き上がる情熱を、激気というの。それを燃やして、無限の力を引き出すのが、獣拳よ」
一般人が聞いても恐らくわけがわからないのは一緒なのですが、文明と隔絶していた野生児に説明する、という形にする事で、印象をスムーズにしつつ、第1話通して、設定説明は多め。
真咲美希は、正義の獣拳流派・激獣拳ビーストアーツの戦いをサポートしている企業・スクラッチの重役であり、白くて明るい巨大なビルを有する後援組織の存在もはっきり設定。そして資本主義経済との戦いに敗れてしまったのか、なんだか薄暗い臨獣殿では、相談役の雇用により経営方針の定まった邪悪な獣拳流派・臨獣拳アクガタの皆さんが大変盛り上がっていた。
「これより臨獣殿が、世界を統べる。愚かな人間共に、悲鳴を、絶望を……そして臨獣殿の、力となせ」
その気配に気付くマスター、そしてジャン。
マスターはジャンをスカウトというかほぼ強制的に、激気を最大限に活用可能とする、スクラッチ開発の装備ゲキチェンジャーを装着させる。
「激獣拳の第一歩は正義の心じゃ。正義の心なくして、激気は生まれん。わかるかの?」
「正義の心……? なんだそれ? でも……なんかわかんねぇけど、俺やる!」

ジャンは大人の口車に乗せられた!
ジャンは社会人としてレベルがあがった!
ジャンは服を手に入れた!

街ではリンシー軍団が大暴れし、人々の悲鳴と絶望を吸収したカマキリ拳士が強化変身。胴体に頭と手足が飲み込まれ、服を突き破ってカマキリ怪人の姿に変貌する、というのは異形の出現として面白いアイデアかつ、臨獣拳が人々の悲鳴と絶望により力を得る、というのが映像で明確に示されたのが大変良かったです。
カマキリ怪人は高速道路をぶった切る凄まじい力を発揮し、現場に駆けつけた3人は、まずランとレツが変身。
「「たぎれ! 獣の力! ビースト・オン!」」
構えを取りながらグローブのスイッチを押す、という一風変わった変身アイテムを発動すると2人は腕を振り回し、

「日々是精進、心を磨く! オネスト・ハート、ゲキイエロー!」
「技が彩る大輪の花、ファンタスティック・テクニック、ゲキブルー!」

……こいつ、隣の女子を差し置いて、花とか自称したぞ…………!(戦慄)
ここまで理央様フィーバー中だったのですが、一瞬で、ゲキブルーが全て持っていってしまいました(笑)
イエローは、さすがに前にならえ固定だと戦いにくかったのか、槍を持ち出したリンシーを、チーター拳で次々と撃破。一方ファンタスティックテクニシャンはくるくる回っており、リンシー撃破後に英語で何か残念そうな事を呟いているのですが、聞き取れず。
2人の活躍を見て同じく変身しようとするが出来ないジャンは、カマキリによる破壊行為の中で逃げ遅れた少女を発見。助けに行こうとするも車2台の大爆発に巻き込まれている内に、カマキリが少女へと刃を向ける。
「弱き者の悲しみ、苦しみが俺たちを強くする。それが臨獣けぇん!」
テンション高く少女をいたぶるカマキリの姿で劇中における“邪悪”とは何か、をしっかり定義付けし――
「最期に最高の叫びを聞かせてみろぉ!」
それを止めようとするジャンの胸に、その時、正義の心が――激気が宿る!
「おまえゾワゾワする。ゾワゾワのキチキチ! 許さねぇ!」
正義という言葉を知らない男が、誰かを守りたいとその身内から沸き上がる想いに突き動かされた時に言語化のプロセスを通して力が具現化し、周囲を圧する咆哮を放ったジャンがOPイントロで初変身、というのは非常に格好良く決まりました。
「なにあれ?! 凄い激気」
「ありえない」
ビースト・オンしたジャンは灼熱の闘気を放ちながらの突撃でカマキリを殴り飛ばすと、野生の戦法で空中連続蹴り。
「……圧倒的なパワーと柔軟性。これは――虎。激獣タイガー拳か。まさか」
超ライバル感覚を発動する理央様、隙の無いお仕事(笑)
赤き虎の百歩神拳もといタイガー殺法の直撃を受けたカマキリが、自ら巨大化してゲキレンジャー大ピンチのその時、闘気を巨大化させたマスターが登場して続く……と、ヒーロー誕生の流れは好みだっただけに、このオチはどうか(^^;
ED前に、かずえお姉さんのビーストアーツ講座が挟まれ、ダンスEDでもファンタスティックなポーズを披露するブルーは、ちょっと狙い過ぎな気がしてむしろ残念ポイントが下がりました(真顔)
以前に第1話を見た時はもう一つピンと来なかったのですが、『ボウケンジャー』から続けて見ると、成る程、前作を吹き飛ばすにはこれぐらいやらなくてはいけなかったのだな、と納得(笑)
確かに半裸の野生児でも持ち出さないと、《俺は既にいい事を言った! このボウケン(びしっ)レッドが!》な不滅の牙のインパクトはぬぐえず、この辺り、前作にも参加していた宇都宮Pと中澤監督が、『デカ』『マジ』を経てメインライターとなった横手さんとよくよく話し合ったのかな、と思うところ。
その上で、OPから何かの嫌がらせのように繰り返される「正義」と「邪悪」の対決の構図に関して、今作における「正義」と「邪悪」とはなにか? というのをしっかり定義付けしてくれたのが大変良かったです。
そしてそこに、「正義」とは何かを知らない(しかし実は知っている)野生児・ジャン、というピースが綺麗にはまり、この物語ではそれを正義と呼ぶ、というのを綺麗に示す事ができました。
これは塚田プロデューサー、そして実質的な3人メイン体制の一翼として横手さんが参加していた『マジレンジャー』において、劇中の根幹キーワードである「勇気」の定義付けを、パイロット版でボタンを掛け違えたまま曖昧に進めてしまった反省も活かされているのかなと思うところですが、考えてみると『マジ』では「勇気」に対するネガ概念も不明瞭で(窓際騎士ウルさんが時々「闇の力」とか宣ってましたが、そもそもウルさん自体が不明瞭で以下略)、今作においてはネガ概念としての「邪悪」を明確にしたのも、初回の構造として上手く行った点だと思います。
次回――野生児はロボットに乗れるのか。