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『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第12話

◆#12「魔法の腕輪」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:荒川稔久
透真はどれだけ、彼女に躾けられていたのか。
中学生カップルの甘酸っぱい青春を覗き見し、思い出の絵本のタイトルにイベント回想モードに入ってしまう透真は、今後いちゃいちゃ回想タイムに入る度に、彼女による人格矯正の軌跡が描かれそうな勢い。
超高速で走り回る爆弾魔ギャングが出現し、空から追跡していたルパンレンジャーは、赤と青がギャングをおだてている内にこっそり忍び寄った黄が金庫を開けるという変化球でコレクションを回収。だがギャングの反撃を受けて取り落としたコレクションを、物陰で身を隠していた少年が拾ってしまう。
タイミング悪くパトレンも介入してきていつもの混戦となり、少年を追いかける青。
「それを返せ」
ベンチに座ってじっと腕輪を見つめていたら、背後に真っ昼間から青い夜会服に白いシャツと帽子を合わせ、おまけにドミノマスクして妙に背が高い男が立っているという、軽くないホラー。
120%通報案件に少年は脱兎の如く逃げ出し、身体能力の高い大人とすばしっこい少年の街中での追いかけっこはスピード感があって割と面白かったです。前回酔いそうで困った走行中の主観映像も、障害物を倒すワンカットのみを挿入し、それをパルクール回避に繋げるという使い方はなかなか効果的で、中学生を後ろから脅かす余裕かましていたドS透真さん、最終的に体格差から金網の穴をくぐり抜けられず逃げられてしまう、というのも定番を組み込みつつ良い案配。
もう歩く事ができず車椅子の練習に励む幼なじみを励ますため、陸上の大会で勝ちたいが記録が伸び悩んでいる少年は、偶然手に入れたコレクションの力に惹かれるが……一部始終を見ていた青い不審者は帰り道に回り込んだ!
「コレクションを返せ」
「……あの腕輪は、途中で怖くなって捨てた。嘘だと思うなら、調べてみろよ」
今回面白かったポイントの一つが、少年が少年なりに懸命に知恵を絞るところで、中学生の浅知恵とそれを上回る悪辣な大人の頭脳戦が、どちらを応援しても楽しいバランスでまとまっていました。
「逃げる途中のどこかに隠したな」
ニヤリと笑った鬼畜怪盗は、さあ拷問のフルコースだ、おまえの指の爪を一枚ずつ……だと放送できなくなってしまうので、君の大事な彼女の車椅子のネジが、ある日ふと、緩んでいるかもしれないなぁ……と少年に迫るが、甘酸っぱい青春のメモリーを全て見られていたと知った少年が開き直って口走った絵本の名前に気を取られている内に、またも少年に逃げられてしまう。
「うそうそ、取り返せなかったの?! 中学生の子から?」
「マジかよ」
ビストロ・ジュレは、笑顔がいっぱいでアットホームな職場です。
加速装置コレクションとそっくりな魔法の腕輪が登場する絵本『ヒナーノの谷のセイン』は、コグレ曰く本物のルパンコレクションを題材にしたとも言われる作品で、かつて透真の彼女が手にしていた絵本であった。
「でも、夢物語は夢物語でしかない」
「そりゃそうだよ。でもさ、夢物語で癒やされて、また現実に立ち向かおうって、背中を押してくれたりもするんだから」
つかさの、国際警察戦力部隊は給料もいいし各種年金も充実していて将来安泰だ発言もありましたが、「夢いっぱいの魔法の絵本」という題材を、“仕事で疲れた大人の癒やし”として持ち込むという今作のお仕事回りのリアリティ表現は、戦隊としては引き続きユニーク。
と同時に、「夢物語」=ルパンコレクションを集めればなんでも願いがかなう、「現実」=大切な人の喪失という怪盗達の状況が重なっているのが、きつい仕込み。
――その夜、少年の居室の壁にJPカード、じゃなかったルパンカードが突き刺さり、「明日、大会の前に必ずお宝を頂きます」と予告が成される、というのは予告状の正しい使用が今作としてはワンアレンジになって良かったです。
一方、国際警察ではギャングの戦力を分析しており、ギャングの投げる爆弾の威力はTNT換算で10キログラム。
「……直撃しても、一発二発なら耐えられるな」
「理論上はそうですけど、滅茶苦茶痛いですよ!」
「耐えろ」
というやり取りが面白かったのですが、クライマックスバトルに全く活かされなかったのが残念。
「市民の平和を壊した奴は絶対に許してはいけない」
同席する圭一郎が強い怒りの表情なのですが、冒頭でギャングがばらまいた爆弾が市民をかなり巻き込んでいるように見え、実際に死傷者が多数出た(それを防げなかった)事に対する怒り、なのか……?
そして大会当日、アップ中の少年に迫る爆弾ギャング。青い不審者にしたのと同じ弁解で切り抜けようとする少年だが、あっさり「だったら死ねよ」と爆弾を投げつけられてしまうのは、同じ状況とシチュエーションを用いる事で怪盗とギャングの一線を示して良かったです。……まあギャングこそ、拷問してでも捨てた場所を吐かせなくてはいけない気はするのですが、きっとこの爆弾魔も、元デストラ組。
神社へと逃げ込んだ少年は軒下に隠していた腕輪を手に取るが、してやったりと青い不審者が登場。更に赤い不審者と黄色い不審者に囲まれるが、ギャングも追いついてきて混戦に陥り、不審者達は怪盗チェンジ。ルパンブルーは「おまえにそれを預ける」と少年を逃がし、腕輪の力を引き出すコツを教える。
「自分を信じない奴の願いは叶えてくれないんだ。だから走る前に心の中で呟け。俺は速い、てな」
つまりルパンコレクションの力を引き出すのに必要なのは、自己肯定力だ?!
「ちょっとした賭けだが……」
俺が選んだんだお前をーーーと自己暗示で颯爽と駆け出した少年の背を見送った青は呟き、怪人はそーいえばコレクション回収済みだしさくっとデリートしてしまおう、とステルスブーメランで文字通りに瞬殺(^^;
「ブラっと参上、ブラっと解決! 人呼んで、さすらいのー」
「いいから早く行くぞ」
いつかやると思ったネタをこなしたグッティはパトカイザーとなってヨーヨー乱舞で怪人を粉砕し、完全に消化試合を警察に任せた怪盗一味は、少年の大会を見学。
「俺は……速い」
レース中、再び自信を喪失しかけた少年だが、怪盗の言葉に背中を押されて自分を信じ直し、猛然とした追い上げで自己新記録を出すとトップでゴール。喜ぶ少女の元へ向かうが、その笑顔に対して不意に後ろめたさを感じて腕輪をそっと背中に隠す、というのが今回の白眉。
「やったね、ユウキ。ありがと。あたしも絶対頑張る!」
演出的にも構成的にも、このままちょっといい話で終わってしまいそうで凡庸な出来になるかと思っていたら……自分が今した事は、胸を張って「君も頑張れ」と言える行為だったのか? 自分はこの後、彼女の横に立ち続ける事ができるのか? という苦さを真っ正面から取り込んで描いてきたのはお見事でした。
「返す。ハルカの喜ぶ顔見たら、なんか急に恥ずかしくなって。次は俺、ちゃんと実力で優勝したいから」
「勝ったのは実力だ。それは偽物だからな」
そして少年が自ら腕輪を返しに来たからこそ、透真は既に前夜、予告状を見て不安になった少年が隠し場所を探った時点で本物を回収していた、と納得の真相を種明かし。既に本物を回収した透真にとっては、偽の腕輪を本物と思い込んで今後も頼り続けた少年が道を踏み外しても知った事ではないわけであり、それが魁利の言う「甘くない」部分なのは、ルパンレンジャーというヒーローの荒川さんなりのスタンス解釈なのかなと思います。
「じゃあ……俺は本当に自分の力で」
「駄目なら駄目でしょうがないと思ったが……良かったな、実力が出せて。……フ、たまには夢物語も、いいかもしれない。じゃあな」
そして同時に、少年側に預けた「選択」が期待以上の結末を迎えた事で透真は賭けに勝ち、彼女の望んだ夢物語を現出させる事で、一時、少年に救われる。それはまた透真にとって彼女の存在の証明でもあり、だからこそ透真は、闇の中をひたすら歩き続ける――。
一切の照れを排除して正面突破で描き切った中学生カップルから透真の抱える「夢」と「現実」を掘り下げ、二度と取り戻せない事を知りながら懸命に前を向こうとする少年少女と、失ったものの存在証明を求めずにはいられない大人が対比されながら互いにそれぞれの背中を押し、表向きちょっといい話の合間にそれぞれの辛さや苦みが練り込まれているのが痛切でした。
透真が少年を導くのではなく、あくまで最終的に「選ぶ」のは少年というのも良かったですし、少年が好感を持てる造形だったのも良かったです。
難を言えばパトレン側の扱いがややおざなりだった事ですが、メインライター以外の単発エピソードではそこまで求めず、キャラエピソードに徹して貰うという方針になるのでしょうか……?
あと細かい所では、コグレに「普通じゃルパンコレクションは使えません」という発言があり、これは修練を積めば使えるようになるという事なのか、それとも純正(?)ルパンコレクションは普通の人間には使えず、VSチェンジャー関係は、オリジナルルパンコレクションを使いやすいように加工した品……という事だったりするのか。
またゴーシェ発言によりルパンコレクションは各ギャングに「与えられた」という事が明確になり、盗んだコレクションを配って生まれた現状が、どこまで親分の狙いによるものなのか、というのは今後のギャングラー側の注目点になりそう。
次回――遂に、ルパンイエローおうちにお迎え?(待て)