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『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第13話

◆#13「最高で最低な休日」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:荒川稔久
国際警察には、代休が存在している!!
「つかさ先輩って休みの日なにしてるんですかね? ……まさかデート?」
「俺の知る限りその気配はゼロだ」
「ははは……ですよねぇ、ははは」
不在をいい事にちょっと下世話な話で盛り上がる男2人は、だいぶ失礼だった。
だがそこに不穏な情報をもたらす、人類の弱み確保に熱心なジム。
「でも、いつになく、浮き浮きしてましたよ」
「えぇ?!」「なに?!」
本当に失礼だった。
そのつかさが気合いを入れて向かったのは――毎度お馴染み東京ドームシティ。その目的は――ぬいぐるみスタンプラリー参加。だがそこで同じく休暇を取っていた初美花と鉢合わせてしまい、なんの因果かペアでスタンプラリーに参加する事に。
(うそうそ……なんで国際警察が?)
(な、なぜだ……知り合いには見られたくないのに、ゴリゴリのご近所さんに遭遇してしまうとは)
この、身内でも友達でもないけれど頻繁に顔を合わせる知り合い、といういたたまれない距離感が絶妙(笑)
一方、ギャングのアジトではボスを慕いゴーシュに嫉妬の炎を燃やす忍者カッパによる、一方的な女の戦いが勃発していた。
食堂に乗り込んできたカッパに「なんだいきなり」と凄むも完全スルーされるデストラさん、また胃薬の量が増えそうです。
「この女だけは気にいりません」
ゴーシュに突っかかるカッパは、人間界を掌握したら後継者になる代わりにゴーシュを追放してボスの側に仕えたい、と嘆願。
「愚かな考えね」
「はははは、構わんよ。俺の後継者はおまえが勝手に決めればいい」
「?! ドグラニオ様」
並の忠誠心だったらそろそろ独立起業を考えたい所ですが、心から敬服しているのか、或いはボスの力を恐れているのか……デストラさんの胃薬の行方はどっちだ?!
……デザイン的にてっきり、骨の髄まで筋肉なボディガードだとばかり思っていたデストラさんが、ボスの思いつきに真人間ツッコミを入れてしまう苦労人の金庫番という、こんな面白キャラになるとは夢にも思いませんでしたが、お互いのリアクションによりキャラクターを肉付けしていく(視聴者に想像を広げさせていく)手腕が巧み。
キャストの都合も出る面ですが、一言ずつでもいいから、キャラとキャラを絡めて“関係性で動かす”というのが大事、と改めて。
「ナイーヨが、人間界を掌握した時の話だ」
当のゴーシュの目の前で適当に承諾する親分、どうも端々の反応にカッパの事を面倒くさく思っている節が窺え、失敗を前提に話を進めているように見えるのですが、現状の馬鹿騒ぎを面白がっていると同時に、分不相応な野心に対するドライな反応が透けて、ここまでで一番ボスの根にある恐ろしさが出ていた気がします(映像的にも、目を光らせるボスのアップ)。
その野心を焚き付けてガソリン撒いて外気を送り込んでいるのはボス自身なわけですが、スキップ踏んで出撃していくカッパに背を向け、艶やかにほくそ笑むゴーシュはその思惑にどこまで噛んでいるのか、思わせぶり。
その頃、つかさと初美花はスタンプラリーの真っ最中で遊園地のアトラクションを巡り、お化け屋敷が苦手なつかさの姿に詩穗の事を思い出し、思わず背後から「大丈夫だよ」と抱きしめてしまう初美花。
「友達と来た時の事、思い出しちゃって……」
JKノリでいちゃいちゃ回想タイムを再現してしまったけど、こ、これはもしかして公序良俗に反する行為として現行犯逮捕案件?! と慌てた初美花は友人について話して弁解。
普通、幾ら友人の事を思い出しても顔見知り程度の相手に取る行動ではないところに初美花の抱える「喪失」の大きさと、そこから零れ出た狂気の欠片を漂わせつつ、初美花の顔を凝視するも結局なにも言わなかったつかさは、何か訳ありを感じ取ったのか(或いは、女子高生大量失踪事件と直接的に関連づけたか)。
「今日来たのも、その子が大好きなふわパンのぬいぐるみ、ゲットする為なんです」
そして前回の透真同様に、喪失した存在の為に行動する事で、二度と取り戻せない事を否定し、怪盗としての行動を肯定する姿が痛切。ここまで来て、前回−今回が2話1セットであった事が見えてくるのですが、魁利の出番を大胆に減らした上で、掛け替えのない存在との関係を軸に透真と初美花を掘り下げていったのは良いタイミングだったと思います。
また、夢物語へ対する複雑な心情と、それがもたらす歪みの部分についてはここまでの香村脚本よりも少し踏み込んだ内容になっており、警察と怪盗の間の一線も改めて引き直された感があります。
気を取り直してお化け屋敷探索を続ける初美花とつかさだが、ルパンコレクションの力で遊園地にバリアーを張り巡らせたカッパがお化け屋敷を襲撃。その存在を知ったつかさ、ハンドバッグからVSチェンジャーを取り出す。
たとえ代休の日でも国際警察の権限においてトリガーは軽いぞ! とつかさはギャングラーへの対応に向かい、困った初美花はスタッフルームにあった衣装を用いて簡易変身。それぞれ仲間と連絡を取った2人は狭い通路で怪人と戦闘になり、三つ巴と足の引っ張り合いの末、近距離ファイトに発展した桃と黄、3号が平手打ちを繰り出すのが早い(笑)
掴み合って揉めている所にカッパの忍者チェーンにより互いの手首を繋がれてしまった2人は、大ダメージを受けて変身解除。咄嗟の連携で緊急脱出に成功すると、チェンジャーで破壊できない鎖を怪人の鎌で切断する事に。
「万が一、どっちかの腕が飛んだとしても、恨みっこ無しでいいな?」
「……OK」
前回に続いて自分にも他人にも厳しいつかさのハードルを初美花が正面から受け止め、なんだかんだとビストロでは男衆から妹分扱いの初美花が、一人の怪盗としてつかさの向こうを張ってみせる、というのが今回のキモ。
「痛みは我慢すれば済む。……おまえに言ってもわからないだろうが、私たちは、ギャングラーから多くの人々を守れなかった。もうこれ以上……犠牲者を増やしたくないんだ」
怪盗3人の中では最も良識的に描かれてきた初美花ですがそれはあくまで比較論であり、負傷を押して戦いに向かうつかさに信念があるように、初美花にも決して譲れないものがある、と回想を含めて改めて強調。
前回の爆弾事件を受ける事でつかさの心情の吐露が説得力を増し、それ故に同じ力を持ちながらその姿勢に同調するわけにはいかない初美花の目的意識も重みを増しました。つかさの言う「ギャングラーから多くの人々を守れなかった」が、前回の事件を指すのか、過去の特定の事件を指すのか、これまでの数々の被害(失踪事件含む)を指すのか、はわかりませんが、大きな伏線の可能性もありつつ、そのどれでも納得出来るというのが2話セット構造で効果的に。
更に、特定個人の為に戦う怪盗と、不特定多数の為に戦う警察の対比も陰影を増し、この辺りは数多くのメインライター経験を持ち、サブライターとしても多くの作品に関わってきた荒川さんのベテランらしいサポート技術が光ります。
バリアーに阻まれていた男衆が合わせ技で突破に成功した頃、初美花とつかさは連携で怪人に挑み、見事チェーンの切断に成功……から勢いでハイタッチ、は拒否。
「馴れ合いはしない」
「頭かたいな〜〜」
「甘く見るな。こうしてる間にも、どうすればお前を利用してあいつに勝てるかを考えてるんだからな」
「とか言ってると、逆にあたしに利用されるかもよ」
3分で真ヒロインを作れる男・荒川稔久が得意技で女性キャラの可愛げを引き出してくるのですが、序盤から頭1つ抜けた表情の華やかさで見せてきた初美花と直接対決させると、つかさがどうしても顔芸担当になってしまって、少々分が悪い(^^; これは全体の演出の中で、怪盗が本音を内に秘める分、警察は顔芸路線、というのもあるのでしょうが。
「面白い。やれるものならやってみろ。――警察チェンジ!」
「怪盗チェンジ!」
変身した2人は意外と強い忍者カッパに苦戦するが、イエローが3号を盾にしたと見せかけて不意をつく急造コンビのトリックプレイで反撃し、イエローはちゃっかりお宝の回収に成功。鎖で繋がれた状態で至近距離で見つめ合っても全く正体がバレない怪盗マスクですが、忍者鎌の斬撃にも耐える耐久力を見せ、やはりルパンコレクションの一つなのか。
「説明しなくてもわかってくれると思ってたよ。これ以上長引くのは、お互い辛いからね」
そこに赤青が参上してブーメランでぶったぎられたカッパは一撃死し、その爆発に巻き込まれて気絶するつかさ、可哀想(^^;
そして巨大化復活したカッパは、ルパン皇帝ヘリコプターによる空中打ち上げからナイトによるエアリアルストライクで撃破されるのであった。
後日――ビストロにて。初美花の無事を喜びつつ戦線の途中離脱に不覚とうなだれるつかさに、首尾良く2人分ゲットしてきたぬいぐるみ(怪盗らしく、こっそりいただいてきた……?)を渡す初美花だが……
「違う」
つかさの狙いは別のぬいぐるみだった、でオチ。
(つかささん……守備範囲広すぎ)
背景で我関せずとコーヒーをたしなむ圭一郎、これじゃない扱いされたぬいぐるみを愛でる咲也、がおいしい(笑)
荒川さん得意(趣味)の女性メンバーエピソードでしたが、接近遭遇により2人が「変化」して歩み寄るのではなく、現時点では決してわかり合えない事が強調されるという内容だった事もあり、単話としてはやや消化不良。どちらかというと、後々の「変化」に繋がる可能性も含めて、バラエティ回と見せて大量の伏線を散りばめるエピソードだった感。
そのため煩悩控えめだった影響か切れ味がもう一つだったのですが、やはり荒川さん本領発揮の為には、「初美花、一日署長になる」


ヒルトップ「パトレンジャーのイメージアップの為には、可愛いマスコットなんか必要だと思うンだヨネ」
ジム「……」
ヒルトップ「そうそう、あのビストロの子とか、いいヨネ」
咲也「いいですよねぇぇぇぇぇ!! 初美花ちゃん署長の為なら、僕、TNT換算30キロでも耐えてみせます!」
ヒルトップ「ヨシ、それだ!」
ジム「……」
とか、「つかさ、一日アイドルと入れ替わる」

圭一郎「なぜギャングラーはこのアイドルを狙ってるんだ……?」
咲也「そういえば僕、前から思ってたんですけど、彼女、つかさ先輩とちょっと似てません?」
ヒルトップ「ヨシ、それだ」
ジム「私に任せて下さい! 彼女の癖・趣味・ギャグのネタからハイキックの角度まで全てインプット済みです!」
つかさ「はぁ?!」
ぐらいの煩悩解放が必要という事か。
あと、前半スタンプラリー関係の過度なギャグ演出は不満で、前回のシリアス一辺倒から今回はギャグ寄りと見せて中盤からぐっとシリアスに転換……という狙いだったのかもですが、個人的には演出で過剰に煽るのではなく、内容とのギャップで笑わせて欲しかったです。杉原監督らしいかなとは思いますし、完全に個人的な好みの問題ですが。
次回――いよいよ警察強化のターン?
怪盗ごっこをしている子供相手に、「君たちの遠足は、必ず守る」と約束する圭一郎先輩の図でボルテージ高まりますが、いよいよ、親分、外出?! も超楽しみ。