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『星獣戦隊ギンガマン』感想・第4話

◆第四章「アースの心」◆ (監督:辻野正人 脚本:小林靖子
「シルバースター乗馬倶楽部! ここが、バルバンと戦う為に森を出た、ギンガマン達の仮の住まいである。彼らは、現代社会での生活を、ここで、始めようとしていた」
かつてここまで雄々しく紹介された乗馬倶楽部があっただろうか!
ちなみにヒーローと乗馬倶楽部というと、宇宙刑事ギャバン=一条寺烈が地球で現地通貨を稼ぐ為にアルバイトしていたのがアバロン乗馬クラブでしたが、“馬”という小道具を物語に取り込みつつ、高寺さんらしいオマージュ要素でもあるのでしょうか。
知恵の木モークはこれまでのバルバンの活動傾向から、その目的が魔獣ダイタニクス復活にあるとズバリ見破り、さっそく有能。三白眼が少々怖いですが、よく見るとモチーフに、梟(知恵のシンボルでもあり)が入っているのか……?
ダミー企業で働きながらバルバンの動きを警戒しつつ、より戦闘力を高める為に訓練を継続する、とひとまずの方針を定めるギンガ組員達だが、今年の猿顔枠ことギンガイエローのヒカルは、森を出てもなお訓練を続けようというストイックすぎる仲間達の姿勢がやや不満。そんな折、馬に悪戯をしようとしていた高校生をアース雷撃で追い払った事で、カタギさん相手の軽々しいアースの使用をハヤテに叱られる。
「人相手にアースを使っていいのか!」
「でもリョウマは今朝、星獣剣で薪割ってたぜ! それはいいわけ?!」
……割っていました、すみません。
高い戦闘力と他者の気遣いを見せていたリョウマを流れ弾で軽く落とし、説教の矛先がリョウマに向いている内に、ヒカルは逃亡。勇太と街へ繰り出すと、客の集まっていない大道芸人に肩入れして、アース雷撃を大道芸代わりに使い始めてしまう。
一方バルバンでは、3000年の間に地球がどうなったかについて学習を進める樽が電気エネルギーを提案し、ムカデヤンキー出陣。ボーゾックの一員に見えてならない樽ですが、バルバンでは貴重な知力70台らしく、船長から「先生」呼びなのが妙に面白い。
ムカデは次々と民家に入り込んで電気を奪うと、それを構成員が風船に集めていき、せせこましさとご町内単位の迷惑のかけ方が、やたらと『カーレンジャー』ノリ(笑) そもそもガンマン軍団が宇宙暴走族ノリなのは、2年前の作品にどうしてここまで寄せてしまったのか首を捻る部分だったのですが、演出まで寄せてしまったのは少々やり過ぎだったかなと(辻野監督は『カーレン』には参加していないので、怪人の方向性からなんとなく重なってしまったのか、高寺Pから要望があったのかはわかりませんが)。
ちなみに小林靖子の戦隊デビュー作となった前年の『電磁戦隊メガレンジャー』第16話を担当したのが辻野監督で、この回は脚本・演出ともに良かった『メガレン』前半の秀逸回。
モークはバルバンの活動を察知し……
「知恵の木モークは、地中に根を張る樹木から情報を得る事ができる」
なんだこの有能な木!
そしてヒカルの居場所も把握しつつ、調子に乗ってアース乱れ打ちの真っ最中なので、今呼ぶと激怒したハヤテが小指詰めさせかねないからそういうのはR15指定の劇場版だけにしてほしいな……と気を遣い、コマンダーにしてアナリストにしてレーダー兼オペレーターにして人間の心理さえ考慮し、早くも風格が漂います。
……ドングリ、ドングリも、その辺りの地面に埋めたら、8頭身で声が子安武人マスタードングリになったりしないのか。
やむなく4人で出撃したギンガマンだか、一当たりするとムカデは奪った電気を手に手に逃走。満を持してヒカルの元へ向かったハヤテは大激怒。
「アースは見世物じゃない!」
便利な力を人助けに使って何が悪い、とその場の感情だけを正当化する子供っぽい理屈で口を尖らせるヒカルに対し、ハヤテはその無軌道を戒め、アースを使う事の意味を諭そうとする。

「あるものなんだから使えばいいじゃないか」
「絶対使うなと言ってるんじゃない。いい気になって、振り回すなと言っているんだ。いいか、アースというのは、個人の力じゃない」
「星から借り受けた力である、だろ? もう聞き飽きたよ」

ギンガマンを特徴付ける能力である<アース>の基本設定が、性格によるキャラクターの衝突を通す事で非常に自然に説明され、同時にヒカルのみならず物語としての濫用にも制限をかける流れが鮮やか。
ほとぼりが冷めた頃にお土産のドーナッツを持ち帰って懐柔をはかろうとするヒカルだったが、ハヤテばかりかモークにも、戦士としての心構えを批判され、家出。ところが街では、樽電池を内蔵する事で蓄電能力を高めたムカデによる大規模停電が発生し、ハヤテを見返す為にヒカルは1人で戦いを挑んでしまう……。
バルバン感知したモークは現場へ高速移動する為の蔦を用意し、コマンダーにしてアナリストにしてレーダー兼オペレーターにしてトランスポーターとか、なんだこの有能な木!
長官ポジション好きとしては最初、胡散臭い長老よりはマシだけど木はどうなんだろう木は……と思っていたのですが、ここまで有能だと好きになれそうです木(笑) 特殊能力の数々を木である事と繋げ、都合の良いジョーカーになりかねないけど、とりあえず動けそうにない(いざとなったらわかりませんが)という大きなハンデを与えたというのもバランスとして良し。
街へ繰り出したリョウマ達は、大規模停電によるパニックを防ごうとアース光で街に日中のような明るさをもたらすと、暴れ回る海賊兵士と戦闘。生身ゴウキがインディ・ジョーンズばりに鞭を振るったと思えば、ハヤテはまさかの吹き矢を放ち、サヤはパチンコ、リョウマはブーメラン、とそれぞれ生身での個人武器を使用。
ムカデと戦うイエローは木の無い場所に移動してしまった為にサーチできない、とモークレーダーの限界も設定され、そのイエローはあらゆる雷撃を吸収されて苦戦中。だがそこはバルバン滅殺を宿命づけられた3000年の血統、ギンガの民。トドメを刺そうと近づいてきたムカデの土手っ腹に、おんどりゃいてもうたるでぇオヤジの仇やぁ! とドスもとい星獣剣を突き立てるイエローだったが、ムカデの腹に内臓された樽電池によって防がれてしまう。
変身解除に追い込まれたその時、モークレーダーが探知不能な木の無い場所、という要素を逆に手がかりとして、鳥に乗ってビルの屋上を探し回っていた緑が駆けつけるも、単身では苦戦。喧嘩しながらも助けに来てくれた緑の為、電撃を放とうとするヒカルだが、消耗しきったその掌からは、終わりかけの線香花火のような火花しか散らない。
「俺の力って、こんなもんだったのか……」
「ヒカル、それは違う」
だがその時、うなだれるヒカルのブレスからモークの声が響く。
「アースは君だけの力ではない。道具のように使い捨てるものでもない。星から借り受けし力、それは無限だ。そのアースを生かすも殺すも、後は君の心次第だ。立て! 自分の心でアースを掴め!」
「生かすも殺すも、俺の心次第……」
選ばれた人間だけが使える便利な道具、と思っている内は自分一人の器に収まる力しか振るえないが、星から借り受けた力である事を謙虚に受け止めた時、その器は何倍にも膨れあがる――《アース》の根源を示しつつ、仲間の危機を救いたいと心から願う時、星の力を自分のものだと捉える慢心を改めたヒカルが真のアースに触れるというのは、非常に盛り上がりました。ヒカルと<アース>の関係を通して、今作独自の設定説明と「力を何の為に使うのか」という普遍的なテーゼを重ね、ヒーローとしてのステップアップへ繋げた展開は実に鮮やか。
どうしてもその後の小林作品と比べてしまう事もあり、ややもたついた印象のあった1−2話ですが、この第4話までできっちりと、ギンガマンというヒーロー像を確立してきたのは、お見事。
「ハヤテ……ハヤテぇ!!」
星の力と繋がる事で、黄金の輝きを纏い、立ち上がるヒカル。
(感じる……これが本当のアースの力か)
「行くぞ! 銀河転生!!」
再変身したイエローは巨大な雷撃でムカデに大ダメージを与え、緑と並んで疾風一陣と雷一掃のW必殺で撃破。そのまま勢いで緑と黄の星獣シンクロで倒してしまい、残り3人蚊帳の外なのはやり過ぎ感がありましたが、『ギンガマン』の現状、この流れで個々の星獣を繰り出すとテンポが悪くなるというのは問題点で、合体ロボ登場までゆえの作劇でしょうか。
高寺Pは当初、今作を合体ロボ抜きで進めようと構想していたそうですが、怪人を個人技で倒してしまう所も含め、個人レベルの物語と<戦隊>をどう擦り合わせていくか、という実験的方向性を孕んでいたようで、これは後の『ゲキレンジャー』を想起させるところ。
戦闘終了して5人は合流し、アースの使いすぎで気絶したヒカルは、ハヤテによるお姫様だっこからおんぶで帰宅のコンボを受け、ヒロイン度、爆上げ。
……待って?! 私が何も嬉しくないよ?!
「俺、始めて感じたよ。アースの大きな力」
「……ああ」
から、さすがにこの状況が割と本気で嫌だったのか、あえて説教癖を批難したヒカルが背中から振り落とされる、でオチ。
高寺Pの段取りへのこだわりと、田崎監督と小林靖子が共に初のパイロット版担当という事で探り探りという部分もあったのか、1−2話は大河にそろそろと漕ぎだした感がありましたが、この3−4話はキャラクターの掘り下げと設定説明のバランスが非常に良く、ギンガマンとは何か?が個々のキャラクターの心情と一緒にぐっと伝わってきて、鮮やかな出来でした。
次回――花の戦士、を差し置いて新たなドス。「機刃(キバ)」という当て字が大変格好いいですが、ギンガ抗争の行方や如何に?!(私の中で現在『ギンガマン』が仁義なき戦いになっているのは、何もかも第1話のリョウマが悪い(おぃ))