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『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第16話

◆#16「仲間だからこそ」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久
透真、つかさの尻に敷かれる(物理)
初美花の尻にも敷かれ(物理)……十中八九、彩さんの尻にも敷かれていた(魂)と思われるので、これは、そういう宿命の暗示なのか?
国際警察はクレーンビークルの隙間に入っていた黒アルパカの金庫を回収・調査し、軽い感じで手を伸ばす咲也を、圭一郎が無言で止めているのが細かい。
「外部からの破壊は極めて困難ですが、内部からの衝撃には非常に脆いと」
「では、奴らを倒した時、木っ葉微塵になるのは、金庫の内側が爆発しているのか?」
「推測ですが……その後、金庫を元に身体が再生される事から、この金庫が、奴らの、本質というか……核なのでは」
現状まだ謎の理屈ですが、思わぬ方向から“ギャングラーとは何か?”という要素が浮かび上がってきたのは大変興味深く、ここを掘り下げていく展開があれば、個人的好みとしてはかなり嬉しいので期待。
その頃、快盗レストランの面々は、3人揃ってジビエ系の食材買い出しからの帰路におり、透真、太いスポンサーがついたのをいい事に、欲しかった食材を片っ端から試しているのでは(笑)
「折角だからあたしも食べてみたいな」
「どうせ余んじゃね?」
「……どういう意味だ?」
殺・気!
だがそこにギャングラーの奇声が響き、声の元へ向かった3人が目にしたのは、口から次々と火球を吐き出して結婚式を滅茶苦茶にするマンタギャング(地味に伏線)。
空前絶後のーーー、お宝の力だぜ、いえーーーい!!」
OPのキャスティング見てびっくりしましたが、檜山修之の高音域ギャグ怪人って個人的には初めて見たのですけれども、過去に例はあるのでしょうか。
ジビエの前にマンタ料理だ、と襲いかかる快盗戦隊だが、マンタギャングの「かわるんじぇい」光線により黄とハトの精神が入れ替わってしまう。挑発により「もどるんじぇい」させる事に成功するが、今度は事故で青と怪人の精神が入れ替わってしまう事に。
「なんじゃこりゃぁ?! こんな変な身体、ありえねぇーーーーーーー!」
「それはこっちの台詞だ! 元に戻せ!」
中身透真のマンタギャング(以下:Tマンタ)が、中身マンタギャングのルパンブルー(以下:M透真)に殴りかかると、ブルーはそのダメージで変身が解けて地面を転がり、そこに駆けつけたパトレンジャーは、透真がマンタギャングに襲われる光景を目撃して、透真を助けようとTマンタを銃撃する。
定番の人格交換ネタですが、そこにパトレンジャーとのすれ違い要素を加える事で、ぐっと面白く。
「大丈夫か?!」
「大丈夫じゃねえよ! なんて事をっ!!」
「え?」
普段の鉄面皮はどこへやら、自分の肉体を撃たれたM透真は金切り声で絶叫し、頭を抱えるルパンレッドとイエロー。
「一般市民に悪さは許さん!」
「透真くんは逃げて!」
パトレンジャーはM透真に襲いかかろうとするTマンタを懸命に阻止し、元の体に戻ろうとするM透真だが……
「いや……待てよ。今入れ替わると、痛そうだぜいぇい……」
チェンジ技の動作(両腕を顔の前で立てる)から寸前で発動を止め、そっと横に顔を出す、というのがコミカルで面白く、またそのせせこましさにより、透真だけど透真ではない透真、に見えるようになる切り替わりが鮮やか。
警察に十字砲火を浴びる自分の肉体を目にしたM透真は情けない表情で逃走し、ルパンレッドとイエローは、とにかく警察戦隊の無慈悲な銃弾から透真を守ろうと、Tマンタを連れて撤退。
「快盗! ギャングラーと手を組んだのか?!」
「見損なったぞ!」
ルパンレンジャーはギャングラーとは敵対しており、そこには明確な一線がある、とパトレンジャーが受け止めていた事がハッキリしましたが、特にやはり3号は、先日の一時休戦もあってか「見損なう」程度には、快盗には快盗なりの矜持がある、と捉えている様子。
全盛期の井上敏樹が書いていたら、ここから誤解と錯綜が思わぬ形で転がり続けて予想もしない決着に辿り着いたりしそう、とつい思ってしまい、そういう方向性も見たかったですが、今回はここから、別の方向に面白くなっていく事に。
「それにしても、なんなんだよこの体ぁ。……腕ほせぇし、穴もねぇし」
這々の体で逃げ、頭を抱えるM透真は通りすがりの女子高生と正面衝突してしまい、倒れた所を手を引いて起こすぐらいかと思ったら、肉体に染みついた習性(?)なのか、ごくナチュラルにお姫様だっこを発動し、久々に、笑いすぎて一時停止を押してしまいました(笑)
……なんか前回も大爆笑した記憶があるのですが、2週続けて全く違うベクトルで大笑いさせられるとは、『ルパパト』、恐るべし。
肉体の反射でお姫様だっこに持ち込める所まで調教されていた透真の潜在能力(多分、結婚式に向けて日夜特訓していた)により、無自覚にイケメンムーヴを発動したM透真は女子高生に左右から囲まれ、ツーショット写真をせがまれる事に。
(お、お、お? ……なんだこれ? もしかして俺、生まれて初めてモテてるぅ?!)
ここで、写真のフレームに収まろうと首を軽く動かすタイミングに合わせて(なんだこれ?)の声が入っているのが素晴らしい(笑)
M透真が煩悩覚醒してしまった事など露知らず、ビニール被せられてなんとかレストランに運び込まれるTマンタだが、一息ついたのも束の間、透真を心配してやってくる警察戦隊。透真は風邪で休んでいる、と言い訳して警察を追い返す事に成功するが、その警察は外で、女の子を4人並べて侍らせて、大興奮で街を歩くM透真を目撃してしまう(笑)
「いえーーーーーーーーーーーい!! 君も、君も、可愛いねーーー!! なんでも買ってあげちゃうぜ、いえーーーい!!」」 
マンタ、外見とイケメンムーヴで心を掴んだ筈なのに、せがまれるままにプレゼントを買っているようなのが、普段モテない反動の産物なのだと思うと、咲也の体ならあげてもいいぞ、とか思います(待て)
それにしても、使っているお金はいったい誰のお金なのか……ギャングラー、人間社会の各種活動資金として現地通貨は持っていそうですが、肉体交換しているのでやはり透真のカードなのか。
「……透真くん」
スキップ踏んで通りを練り歩く浮かれきった姿に、口元を引きつらせるつかさ(笑)
「仮病で店を休んでこれか」
「ふしだらな……行くぞ」
思わぬ形で自分の株価が地の底に落ちているなどやはり露知らず、文字通りに踏んだり蹴ったりのTマンタは渋い声で「もどるんじぇい」と唱えてみるが、不発。怪人の固有スキルは怪人の精神に紐付けられている事が判明し、M透真を見つけだした魁利は肉体の交換を要求するが……
「やーだねー。生まれてこのかた、こんなにモテて楽しいの初めてだいえーーーーーい!!」
シリアスなBGMに対して、透真の体と声の演技の弾けっぷりが実に酷い(笑)
キャストがキャストなので、てっきり初めてのモテにより自己肯定力が高まり喋り方まで格好良くなるネタかと思ったら、ひたすら下品で頭が悪いのを貫き、普段の透真とのギャップを徹底してきます。
……しかしこれ、現場では透真が普段の声でこの台詞を叫んでいたのだろうか、と思うとそれもそれで面白い。
「やる気? ……じゃ、やってみろよ。できねーよなーーー! 仲間の大事な体だかんなぁーーっははぁーっ!」
M透真は胸ぐら掴んで殴りかかろうとする魁利を挑発し、崩しにくい透真を人格交換で崩した上で、思い切って色々な表情を演じてもらう、というのは実に戦隊らしい演出。ここで終始、BGMはシリアスで魁利の心情に寄り添っている、というのも滑稽に見える状況は実際は悲劇である、というのを崩さず示していて良かったです。
「いい体貰ったぜぇ」
魁利を殴り飛ばしたM透真は、ルパンブルーに変身。
「快盗ってんなら銀行でも襲って大金手にすっかぁ! あーばよー。ははーん」
“願い”の為に命を賭ける快盗の誇りを目の前で踏みにじられ、唇を噛みながら拳を握りしめた魁利は店に戻り、透真と二人で話し合う事に。
「覚悟するしかないな。やれ。俺の体だとしても遠慮はいらない」
マンタ自前のコレクションは回収したものの、結果として奪われる形になったVSチェンジャーを取り戻す為、悲痛な覚悟を決める二人。
「たとえ誰かが倒れても、残った奴が願いをかなえる。最初に倒れたのが俺だっただけの話だ」
マンタの顔がちょっと情けなく見えるたれ目なのも、ギャップ狙いの意図通りでしょうが、向かい合った2人がうなずき合うシーンでは、さすがにマンタの顔アップに透真の目元アップが重なって良かったです(笑)
致命的とは言わないまでも少々気になったのは、この話し合いに初美花が省かれているところ。男2人の対面でのやり取りの方がシーンとして劇的になるという判断も影響したのでしょうが、「約束」で繋がっている快盗3人としてはここは初美花を同格に扱うべきだったのではと思われ、男2人がなんだかんだで初美花を年下の女の子扱いするのが、どこかで火を噴く事があるのかどうか。
翌日、M透真を呼び出しての決闘に初美花も同行しているのでさすがに話は通したようですし、事前に方針を打ち合わせるのも、「わかった。俺がやる」のも、魁利の“甘さ”の表現の一つという面はあるのでしょうが。
「はーん、勝ちのわかった勝負はつまんねーがなぁー! ははははー!!」
回収したコレクションも餌にしての決闘にM透真は乗っかり、台詞回しのバカっぽさと、透真の下品な笑顔が絶妙にブレンドされて、意表を突く演技での檜山ギャグ怪人が一周回って、これはこれで檜山ヤンキー怪人の系譜にあるのだな、と妙に納得。
なんだか、洋ゲーの雑魚敵として出てきそうなノリなのも、ちょっとしたツボに入ってきました。
「いや……俺が勝つ。言ったろ、今度は本気だって」
両者変身して赤青対決となり、一度は劣勢に追い込まれる赤だったが、接近戦からの回転アクロバット撃ちで青のチェンジャーを弾き飛ばすと、変身が解けて慌てて起き上がったM透真の土手っ腹に銃口を突きつける。
「――終わりだ」
「う撃てるもんかよ」
「撃てるさ」
レッドは銃口を心臓へと動かし、激しく狼狽するM透真。
既にVSチェンジャーは取り落としているので回収可能ですし、ここまで来たら元の体に戻りたいと音をあげるまで拷問するでも良い気はするのですが、駄目ですかそうですか。
「うう、う……嘘だろ?! 仲間だぞてめぇの!」
まあ大口開けて絶叫する透真というのがエピソードのポイントなので、追い詰められたM透真は生身でないと面白くないわけなのですが、そういう点では、変身は解けるもチェンジャーは握ったまま、の方が良かったかな、と。
「だからだよ」
レッドは迷わず引き金を引き、その一撃が透真の肉体を貫く寸前、緊急「もどるんじぇい!」によりマンタと透真の精神が再び入れ替わり、仰向けに倒れ込む透真イン透真。
「……あっぶねー! 本当に撃ちやがったぁ。俺様のモテ期を終わらせやがってぇ!!」
元に戻ったマンタは電光でレッドを背中から攻撃し、更に初美花に襲いかかるが、半身を起こした透真の放った銃弾がマンタへと突き刺さる。――透真を撃ち殺したかと思われたレッドの射撃だが、寸前に銃口を急所からわずかに逸らし、更にレッドが自らの手を撃ち抜いて威力を弱める事で、レッド、透真、2人が共に傷つきながらも致命傷を避けていたのだった!
特別面白いという程ではないトリックプレイでしたが、レッドの手のダメージが流血で示され、透真の服にも弾痕がクッキリと残り、背負ったリスクがしっかり描写されたのは良かった点。
関節をゴリゴリ極められるつかさ、猛毒で瀕死の圭一郎などもありましたが、監督が全部違う事を考えるとやはり、今作全体として“痛み”の表現にこだわっている部分があるのかな、と感じます。
「嘘だろー! そんな出鱈目な作戦!!」
無茶しやがって。……奴が元に戻らなかったらどうするつもりだったんだ」
「へっ、そんときゃもう一度撃てばいいだけだろ」
今度は耳たぶから順番にですね!
「2人とも、いける?」
「当たり前だ」
「じゃ、さくっといっちゃおう!」
「「快盗チェンジ!!」
ルパンレンジャーは揃い踏みして回転し、そこに飛んできたグッティによるレッド分身に続いて、ブーメランとサイクロンも発動。
「これが俺たちの――怒りの全てだ!!」
快盗の誇りを汚して逆鱗に触れたマンタ、全装備同時発動のビークルマシマシストライクを受け、断末魔がドアップになって大爆死。途中から、「イケメンに入れ替わってナンパ、いいじゃないか」と機嫌を直した親分と一緒に観戦していたのか(不正にハッキングしているのかもですが、散りばめられた要素を考えるとどうも、ギャングラーは国際警察の監視カメラの映像を見ているのでは……)、ゴーシュが出てきてシュビドゥバ巨大化し、警察戦隊、これを目撃。
中盤から蚊帳の外になってしまった警察の誤解がこれで解ける、というのは錯綜要素が突き詰めきれずに惜しかったですが、M透真が面白かったので、配分としては仕方のない所か。常に1エピソードの中でバランスを取ろうとするよりは、2話セットで快盗のターンと警察のターンを描く方が、アベレージは上がりそうですし。
CM開けるといきなり挿入歌を流しながらのスピーディな銃撃戦、というロボ戦の演出は格好良く、久々にガトリングと糸鋸を活用してから、こちらもビークル特盛りでサイクロンナイトになり巨大マンタをアデュー。かくして思わぬ大騒動は解決するが……
「透真くん……ちょっといいかな?」
後日、店を訪れた常連客3人が醸し出す微妙な空気に怪訝な表情を浮かべる透真、椅子に座らされると始まる 尋問 説教タイム。
「君も……たまには羽目を外したくなる時もあるだろう。しかし、仮病を使って、魁利くん達を騙してまで複数の女性と遊び歩くのは」
「……あ?」
「僕が言うのもなんですが……ちょっと、あれはやりすぎっていうか……」
「おい、なんの話をしている。誤解だ!」
「ごかいもろっかいもあるか。この目でしっかりと見たぞ」
「……いやだからそれは。……魁利、初美花」
同僚に助けを求める透真だが、魁利と初美花は顔を逸らして含み笑いを浮かべ、助け合わないのが快盗のルールです。……まあ純粋に面白がっている魁利に対して初美花はいつもの意趣返しもありそうで、闘争は闘争を呼び、世界から哀しみが終わりません。
「刺されないように気をつけろよ」
興味薄げな圭一郎はぼそっとたしなめ、魁利に対する対応と比べると透真に対して冷たすぎる気はしますが、成人男性は自己責任で?
と考えると、圭一郎の「魁利くん」呼びと、つかさの「透真くん」呼びは、“子供扱い”という点でもしかして共通しているのかもと思うのですが、圭一郎とつかさって、26ぐらいなのか……?
「……違う。……それは俺だが……俺ではない」
宵町容疑者は意味不明の供述をしており、国際警察では更に詳しい事情を聞くべく……
「まあ座れ。君の気持ちも、わからなくはない」
営業時間中で他のお客さんも居るのに容赦ないつかさ先輩、完全に余計なお世話ではあるのですが「仮病で仕事を休んで」という所がお説教スイッチを押してしまったのでしょうか。なお間接的に、「咲也、おまえが同じ事やったら、シめるぞ」という警告が発せられているような気がしてなりません。
(――ギャングラー)
かくして余計なところで、更に激しく膨れあがる透真の殺意であった。
なお来月か再来月、カードの請求を見て更に膨れあがる事になりそうですが、それはまた別のお話です。
久々に見ると思ったら、なんと『ニンニンジャー』以来となる渡辺監督の戦隊参加で、過去何度もコンビを組んでいる荒川さんとの息の合った酷い話で、大変面白かったです(笑) 物語上は今後も崩しにくそうな透真を演技の上で思い切って弾けさせると同時に、怪人声優としては常連である檜山さんが幅の広さを見せてくる、という変化球も好印象。サブライターが次々と飛び道具を放ってきますが、そろそろ香村さんが、私もギャグ回がやりたい、と何かトンデモないネタを撃ち込んでくるのではないか、と淡く期待したい。
難を言えば怪人の特殊能力が主でコレクションが完全におまけになってしまっていた点ですが、それをミスディレクションに使った鹿の回以降、怪人の特殊能力の押し出しが全体的に強くなりすぎている感があり、今作としてはやはりコレクション中心の話が見たいところです。
コレクション回収をパターン化しない事を優先するあまり、肝心のコレクションそのものが目立たないのでは本末転倒な気がするので、もしかしたら新展開の前振りになっている可能性もありますが、今後バランスの修正が欲しい部分。
次回――「圭一郎に恋する、一人の少女。一方! 夢の世界に、みんなが閉じ込められる?!」
やたらテンション高いナレーションさんですが、恐らく次回は警察側のビークルを特盛りし、双方のメカ要素をひとまとめした所で話数的にはその次の第18話から新展開? と持っていく感じでしょうか。今後の展開に余裕があるなら、もう2話ぐらい単発エピソードを挟むかもですが、崩しにくい透真を背景の重さを壊さない形で崩しておき、「公」の為にスーパーダイナマイトできる圭一郎は、では「私」においてどのような生き方をしているのか……が気になってきた所で圭一郎に個人的感情を向けるゲスト登場、と痒いところを掻いてくる構成が綺麗。
にしても圭一郎先輩は、天然のヒーロー力でお姫様だっこを無差別発動しそうで不安だ!
「……違う。……それは俺だが……俺ではない」
朝加容疑者は意味不明の供述をしており、国際警察では(以下略)