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『獣拳戦隊ゲキレンジャー』感想・第25話

◆修行その25「ヒネヒネ!俺だけの紫激気」◆ (監督:竹本昇 脚本:會川昇
「フ……参ったぜ。俺はゲキレンジャーなんかにはならないぜ」
俺の肉体美を、見せつけられないからな!!
「俺はただ好きなように生き、好きなように戦いたいんだよ。ガラじゃないんだ、正義の為に戦うってのは」
勿論、そもそも正義の心が無くては激気を使えないのでは? とツッコまれるゴウだが、
「俺のは、激獣拳じゃない。深見流ウルフ拳だ」
と、あくまで独自のモラルを主張すると、レツのグローブをスパークさせながら紫激気を放ち、修業時代の事を思い返す……
「これが、俺の……俺だけの、激気」
「そのような激気、儂は教えておらぬぞ」
「どうも人と同じことをやるのは苦手なもんスから、我流で会得しちまったみたいです。これ過激気ですか?」
「それは紫激気。臨気に近い危険な激気じゃ」
問題児ばかりな上に、まるで導けていないですね師匠!
「へー……俺が正義ってガラじゃないから、紫激気なんてもんが。…………俺って臨獣拳に近いのか」
「紫激気がお主を決めるのではない。お主が紫激気をどう用いるかじゃ」
「ふん……難しいスね」
ゴウの紫激気はパワーグローブでは対応できず、それが一緒に戦えない証明だというように壊したグローブをレツへ返したゴウは、スクラッチを去って行く。
(俺は一匹狼……独りに戻るよ。レツ……またな)
「おまえ……形から入るタイプだろ? そういう奴はな、挫折したら細波海岸だ。俺も昔よくここに来た」
……すみません、今、未来から混信が。
クラッチを去ってハードボイルドに浸っていたゴウだが、女子小学生?がきゃいきゃい遊ぶ砂浜に大の字になって転がる黒ずくめのマッチョは、完全な通報案件であった。このままでは、身許引受人として美希との再会の時は近いかと思われたその時、転がってきたビーチボールを投げ変えそうとするも、(俺の拳は、汚れている……)と立ち去ろうとしたゴウは、一団の中に居た真咲なつめから、抗議の砂をぶつけられる事に。
これが10年前だったら、後頭部に投石がクリティカルヒットして大爆発を引き起こすところだったので、高寺戦隊でなくて良かった。
(お嬢ちゃん、俺は危険な男だぜ。それぐらいにしときな……)みたいな満足げな表情で背中を向けるゴウだったが、漂うロンのおなら、じゃなかった、黄色い靄に包まれると再び狼男と化してしまう。人々が逃げ出す中、母親譲りの胆力を持ち、獣人慣れもしているなつめがそっと手を伸ばすとゴウは元の姿に戻り、興味を持ったなつめにつきまとわれる事に。
ハードボイルドな一匹狼と勝ち気な少女のバディものとか別の作品が始まってしまう! と大人げないハイジャンプでなつめを撒くゴウだったが、そこに現れたのは今回もロンから怪しげな情報を吹き込まれたメレ様。
理央に怒臨気を修得させる為、とそそのかされ、ロンの掌の上でころころ転がされてしまうメレ様ですが、理央様への愛が行動理念なのに加えて基本そこまで知力は高そうではない、というのは納得の行くところで、逆にロンの異質さが光る形に。
「お前が、深見ゴウ。格下ーズブルーの兄ですってね」
格下ーズも衝撃的でしたが、そのままストレートに呼んでくるのが凄いよメレ様!
その発想に嫉妬します(笑)
「参ったぜ。次から次に怖い女の子が現れやがる。臨獣殿の者か」
「理央様の愛の為に生き、理央様の愛の為に戦うラブ・ウォリアー、臨獣カメレオン拳使いの、メレ」
「理央か……。奴には近いうちに挨拶に行かせてもらうぜ」
びしっとポーズを決めるメレ様にゴウはあっさりと背を向け、ラブ・ウォリアー流された! いや或いは、これ以上お近づきにならない方が良いと判断したのかもしれませんが、そのゴウに背後から襲いかかるメレ。
ゴウはその強襲をしのぐと、ゲキレンジャーになる気は無いと告げて改めて立ち去ろうとするが、そこになつめが現れ、メレの攻撃からなつめを守ったゴウは、2人で逃げる事に。
ジャンの餌付けに続いてゴウにはお姫様だっこされ、真咲なつめ、なんという末恐ろしいヒロイン力。
その頃、噂の格下ーズはヒヒヒに立ち向かっていたが、怪我の影響でスーパー化も出来ず、今回も3色のよく弾むサンドバッグと化していた。
「ゴウが出てったからだ! あのヒネヒネ野郎!」
「いや……兄さんはきっと戻ってくる」
ブラコンだからね!
からの、
「本当の兄さんは、苦しんでいる人を放っておけるような人じゃない。ただ……今はヒネヒネだからね。だから、そんな兄さんが、仲間になりたくなるような僕たちを見せてやろう!」
というのは、物語構造上、受け身になる事が多いトライアングルが、甦った助っ人に甘えるのではなく、自分たちのできる事をして力を得ようとする意志が示されて良かったです。
気持ちを新たにした格下ングルは、これまで培った修行の成果を活かしての反撃から零距離豚の角煮砲を炸裂させるが、さしたるダメージは与えられないまま怒りのヒヒヒが巨大化し、ゲキトージャで立ち向かう事に。
一方、メレを引き離したゴウ&なつめの下には、ジャン達の危機を伝える美希が現れ、ゴウは両者の母娘関係を知る事に。
「ママ?! おまえ、美希の子か」
十数年ぶりの現代で色々と感覚が麻痺しているのかもしれませんが、そこは、もっと驚いて欲しかった(笑)
「もう……ジャンみたいな事言わないでよ」
そこから、同じ言い回しだけど意味が違う、というなつめの返しに繋げるのは、気の利いたユーモアで面白かったです。
スケ番回にもちらっと出てきましたが、なつめはキャスティングもいいですし、きびきびした台詞回しやビーストアーツの外側の立ち位置もアクセントとして有用なので、今後もちょくちょく登場を期待したい。
「ゴウ、あなたの力が必要なの」
「……なんと言われても、俺には大事な正義ってものがねぇからな。だから激気も紫激気にねじ曲がっちまった。俺の拳は――汚れている」
ゴウは浸りモードに入った!
憎しみに任せて他者を傷つけた経験など具体例があるわけではなく、独自のモラルによる強い思い込みがかなりの重症を感じさせますが、しかし母娘はダブルヒロインパワーでゴウの背後に回り込んだ!
「貴男は、本当に他人の苦しみを見捨てられるの?」
「そうよ! さっきだって独りで逃げれば良かったのに、私をかばってこの傷を受けたじゃない」
「そんなの当たり前だろ」
その言葉に微笑み、近づく真咲。
「それを私達は、正義って呼ぶのよ」
今作における「正義」のテーゼは、ここまでのところ徹底してジャンの第1話の“気付き”であり、それ自体は一本芯が通っていて悪い事ではないのですが、第1話からスーパー化を経由してここまで、見せ方まで一本調子なのは、もう一工夫欲しいところ。
今作の場合、第1話があまりにも鮮やかに決まりすぎた影響というのはあるでしょうが、最初に提示したテーゼがあまりに強固すぎて、1年通して山場の度に同じ事を繰り返すだけになってしまった後の『ゴセイジャー』の失敗を、少々思い起こしてしまいます。
「……俺の中にも、正義の心が」
「ゴングチェンジャー……貴男の紫激気を活かした、貴男だけのアイテムよ。マスター・シャーフーに言われて作っていたの。貴男が、紫激気を纏ったあの日から」
さすがにシャーフーの指示という事になりましたが、ゴウが姿を消した後も紫激気用の装備を真咲が開発し続けていた、というのは熱い展開。
「俺が正義の意志で用いれば、紫激気も正しい力となる。マスター……そういう意味だったんですね。全ては俺の、意志次第だと」
ゴウが自分流にこだわり激獣拳と距離を置こうとしていたのは、持ち前の性格もあるもののそれ以上に、紫激気に目覚めてしまった自分自身にショックを受けていた事、そしてそれがビーストアーツを汚すのではという恐れの為だった……というのはゴウが理央を止める為に一種の自爆技を用いた事や、愛しの弟から敢えて遠ざかった過去とも繋がり、ナルシスティックなロンリーウルフのようで実はナイーブ、というゴウの柔らかい部分が上手く示されました。
深見ゴウというキャラクターを通す事で、ようやく今作において、會川さんの持ち味が活きた感。
「深見ゴウ! 今度は逃がさないわよ」
「逃げるつもりはない」
そこへ現れたメレとリンシーズに向け、崖の上で背中を向けたまま格好良く言い放ったゴウは、チェンジャーと一緒に真咲が用意してきた紫のジャケットを身に纏い、背中のシンボルマークに鋲が打ってあるのが、デザイン当時の真咲の趣味を窺わせます(笑)
「仲間を――同じ激獣拳の仲間を、助けに行かなくちゃならないんでな! 響け! 獣の叫び! ビースト・オン!」
ゴウがいーとーまきまきしてチェンジャーを起動するとゴングが鳴って(名称にここで納得)四角いマットのジャングルが展開し、ゴウは紫のゲキレンジャーへと変身。
「紫激気、俺流、我が意を尽くす! アイアンウィル・ゲキバイオレット!」
名乗りの際のアクションでわかりましたが、変身モーションはいーとーまきまきではなく、ワイクルー・ラムムアイ(ムエタイで試合前に行う祈りと踊り)がモチーフのようで、2クールも終わり間際に登場した追加戦士は、ムエタイ風。
「ゴウ……生きていたのか」
そして、持ち前の拳士センサーにより、あまり思い出したくない友達の気配を感じてしまう理央様。
「だが、なんだこの力は。俺の知っているゴウより、遙かに強い」
ジャズ調のテーマソングと狼の遠吠えをバックに、リンシーズをスピーディに蹴散らした紫は、ムエタイらしい肘打ちでメレの剣を破壊すると続いて膝蹴りを炸裂させ、紫激気・俺流・美しい!空間を発動。理想のオレバトルを実現する為に紫激気によって具現化されたリング上にメレを引きずり込むと、腰だめのストレートで殴り飛ばし、ロープで跳ね返ってきた所にアッパーを叩き込むエクセレントオレコンボで天高く打ち上げ、メレ様、遂に大爆発(悲鳴)。
まあ、リタイアするとは全く思いませんでしたし、この後ヨロヨロしながらも巨大戦の実況の為に現場に登場するので、割とたくましい(笑)
その巨大戦では、負傷の重かったイエローが担当する右足への集中攻撃を受け、史上最大の危機に陥っていたゲキトージャの下にゲキウルフが駆けつけると、右足が入れ替わるゲキトージャウルフにバーニングアップ。ノコギリ回し蹴りでヒヒヒを葬り去り、早くも、怒臨気の存在価値に疑問符が生じるのであった!
同時に当然、過激気の相場も下がっているのですが、ある水準に達したトライアングルに匹敵する追加戦士を出す際の説得力として設定した紫激気から、それ故に悩める男とその克服、に繋げた流れは良かったと思います。
「長い旅をして答を見つけたか。よく帰ってきた、ゴウ」
4人となったゲキレンジャーの背を見つめ、良い話だった風にまとめるシャーフーだがしかし、新入りは早速、キャプテンの権力下に組み込まれてしまうのだった!
「ほらゴウ、さっさとコーラ買ってきなさいよ。あん? これ、コカ・コーラでしょ? コーラっていったらペプシに決まってるでしょ〜」というやり取りがあったとか無かったとか、全ては獣拳の深い闇の中の出来事です。
一方、激獣拳の新たな力の目覚めを感じ、理央様は屈辱に震えていた。
「なぜだ……なぜ奴らばかり力に目覚める?! その強さは、何故だぁぁぁぁ!!」
……資金力?
かたやボロ寺、かたや最新鋭インテリジェンスビル! 格差社会の現実に絶望的な怒りを感じたその時、理央は新たな力を身に纏う!
「これは……怒臨気!」
「これはこれは。まだ時間がかかると思いましたが……これならゴウをけしかけるまでもありませんでしたか。ふふふ」
その姿を見て物陰でほくそ笑むロンは果たして何者なのか? 憎しみ、妬みに続き、怒りに目覚めた理央様はどこへ向かうのか?!
……ところで意図的なものだとは思うのですが、理央様、手段を選ばずに強さを求めていた割には、妬みはともかく、憎しみにも怒りにも囚われた事が無かったというのは面白いキャラ造形で、これから後半戦、どうなっていくのか引き続き楽しみです。
あとゴウ兄さんは今のところ割と好きな系統のキャラの気がするので、紫の戦士に恥じない活躍を期待したい。合言葉はフォージャスティス!(そちらへ引きずり込むのは危険なのでやめましょう)