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『獣拳戦隊ゲキレンジャー』感想・第27話

◆修行その27「ベランベラン!燃えよ実況」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:中島かずき
見所は、激臨の大乱当時の、長髪メレ様。
かつての大乱においてメレと戦ったバエは、禁断の獣身変化をするも技が不完全だった為に小型化してしまいメレに飲み込まれ、その後、メレの死亡にともなって死亡。そして理央がメレを甦らせた際にセットで甦った事により、定期的に メレ様に踏まれなければ メレの放つ臨気を浴びなければ生きていけない体質になってしまっていたのだった!
と、数話前は拳聖2人と巨大戦を実況するなど、臨獣サイドから抜け出すチャンスは何度もあった筈のバエがメレの側を離れない理由が明かされ、とりあえず高度な変態ではなくてホッとしました。そしてそんなバエが、同じく獣身変化が不完全だった事で狼と人間を行き来してしまうゴウの為にその力を振るう事に。
……にしてもバエ、もし技が完全だったら(拳聖クラスだったら)、巨大なハエ男と化していたのか。
そして、スクラッチ社屋の様子を窺っていたバエを捕まえ、「何か事情があるのでは……」ではなく「臨獣拳に鞍替えしやがったゴミ野郎をこれから激獣拳名物パワハラ尋問だひゃっはー!」と煮たり焼いたりしようとするガゼル、安定の拳聖マインド。
日なたに出てきて凄く暑そうなロンの嫌がらせにより狼男と化して暴れるゴウをジャンが率先して食い止め、自分の長所(耐久力)を自ら活かそうとするのは良かったですし、ゴウにまとわりつく邪気の存在を察知した猫がその解決手段を与えるのではなく、バエの手助けは借りながらもゴウが自ら乗り越える、というのはスーパー化とゴウの登場を契機として、後半戦に入る『ゲキレンジャー』の構造自体がだいぶ変わってきた感。
……まあ、本来なら守破離の「破」を明示する筈だった過激気の「3000年誰も修得した事がない」という設定に無理があってあまりにも嘘っぽかったのを筆頭に、ジャン達がビーストアーツの既存の道の先へ歩み出した、事に関する劇的な説得力が弱い為に、心を鬼にして弟子の成長を見守る師匠達というより、ジャンがズタボロになるのを遠くから観戦している師匠達、に見えてしまうのが困るのですが(笑)
過激気修得エピソードは大きな転機だっただけに、前半戦の問題点がまとめて弾けて崖から転落になってしまったのが、どうしても尾を引きます。
「さあ立ち上がれ、深見ゴウ!」
「ああそうだ、俺の心は、俺自身の拳で取り戻す。それが俺流だ!」
激獣フライ拳は言葉に激気を込めて力を与える獣拳であり、ゴウの内面の闘争を、バエの実況を通す事で具現化した戦いとして見せる、という展開は、今作の特色の一つである「実況」をメタネタに終わらせる事なく物語に取り込んでアイデアとしては面白かったのですが、バエに侵食される事でゴウ兄さんの俺様フィールドが弱まってしまい、まだまだ登場したてといえるゴウの掘り下げにあまり繋がらなかったのは残念。
「お前の牙と爪よりも――」
「ゴウ、気合いを込める!」
「俺の拳と魂の方が! つぇぇんだよぉぉ!!」
理央を止める為に禁断の技を用いたゴウの心情などはこれといって触れられず、自分の中の獣を打ち破ったからOK、で片付けてしまい、“獣そのものの意味”に踏み込まなかったのも、個人的に物足りなかったところです(今後、理央との対面があれば改めて踏み込むかもですが)。
冒頭から巨大戦でゲキファイヤーとゲキトージャに挟み撃ちで袋だたきにされるなど、扱いが酷い割に鉄砲魚拳士は声もデザインも格好良く、拳士ながらモチーフ的にガンマンでもあり、水面と波紋を表現したテンガロンハットがお洒落。
ゴウが自分と戦っている間、立ちはだかる青と黄を追い詰めていた鉄砲魚だったが、ジャンとゴウが合流するとバイオレット肘打ちで瞬殺され、巨大戦ではバエ魂の実況の元、ゲキトージャとゲキファイヤーのコンビ攻撃で葬り去られるのであった。
かくしてW巨人の戦闘を実況し、満足げに地面に落ちるバエだったが……絶命寸前、メレに回収されて割とインスタントに復活。
「勘違いするんじゃないわよ! ……おまえも、私と一緒に理央様に甦らせていただいた体。いわば、おまえも理央様の愛の一部」
メレ様、愛の超理論が炸裂(笑)
「はぁ……」
「理央様の愛に生きるこのメレのプライドに懸けて、その命、簡単に終わらせるわけにいかないのよ。……フン。今日は戦う気はないわ。また会いましょう、格下ーズ、プラスワン」
「参ったぜ。いいところをカメレオン女に取られちまった」
本当に、全部持っていきましたね!
バエ自体は巨大戦重視の今作にアクセントを加えつつ、コメディリリーフであると同時にメレ様の魅力を縦横無尽に引き出す相方として大活躍しており、今となっては今作において極めて重要なポジションなのですが、巨大戦好きと身の上への共感から生まれたゴウとの絡みが面白くなったかというと個人的にはあまり面白くは感じず、もう一つしっくり来ないエピソードでした。
それこそ前2話を担当した會川脚本なら、ゴウの中の獣との対峙をもっと重視して意味づけしてきたと思うのですが、脚本が初参戦、監督は劇場版を終えて久々、という影響が多少はあったのかも。……あと私がゲキトージャウルフを見る度に、一人で操るゴウ兄さん格好いい! というよりも、チーター……(涙)という気持ちになるからかもしれません(笑)
本当にこれで狼男問題は解決した事にしていいのだろうか……という疑問も若干ある中、白とオレンジのジャージの男が、船から港に降り立っていた。
「日本かぁ。相変わらず、湿っぽい空気だなぁ」
と、怒濤の新キャララッシュで、つづく。