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『仮面ライダービルド』感想・第40−41話

◆第40話「終末のレボリューション」◆ (監督:諸田敏 脚本:武藤将吾
「葛城……桐生戦兎の記憶が戻ったのか」
見所は、幻徳に迫られて激しく動揺する戦兎。
前回の半裸アピールが功を奏したのか、晴れてライダー軍団の一員となった幻徳が私服と壮絶なファッションセンスを披露。事前に「変なシャツの幻徳ファッションショーがあるらしい」という情報は目にしてしまっていた為に衝撃度はどうしても低くなってしまったのですが、思ったほど酷くなくてホッとしました。
……ああいや、センスは酷いのですけど、なにぶん「ファッションショー」という言葉で思い描いたのが、『機動刑事ジバン』のクイーンコスモファッションショー(ラスボス候補と目されていた悪の強キャラの目的が登場から10話目にしてようやく明かされたと思ったら延々とファッションショーを始める)だったので、もっと果てしなく、次々と披露されるのだろうと身構えていて……(笑)
どちらかというと、ショーそのものより、ギャグに紛れさせて幻徳と葛城巧の関係を有耶無耶のまま流してしまっているのが問題なのですが、幻徳は私服のセンスが壊滅的におかしいのではなく、葛城巧と永遠にアデューした事で心の大事な部分が壊れてしまったのでは。
そう思うと、今回の幻徳のあらゆる奇行を生暖かい目で見守れます。
前回ラストでお披露目されたジーニアスビルドは、目にも止まらぬ高速移動から繰り出す攻撃でマッドローグを蹂躙。体の半身がそれぞれ光り輝いて必殺技を放ち、奇抜な怪奇フルボトル男のようで、右半身が青、左半身が赤、と基本フォームの意匠を受け継いでいる、というのは成る程。
「このボトルを使って、俺は人間を意のままに操る。そして、おまえ達の未来を、全てを、支配する。ははははははは……!」
ジーニアスの勝利に空気が緩んだ隙に猿渡から3バカ形見のボトルを奪い取ったエボルは、内海を拾って撤収し、OPにジーニアスとエボルが追加(でも相変わらずクローズ銀で、今作のOPマイナーチェンジはずっとこんな感じ……)。
ヒゲから逃れて海岸で座り込んでいた戦兎に語りかけてきた脳内葛城巧は、エボルが回収したボトルは、葛城忍が作り出したロストボトルである事を教え、前回の感想で、葛城人格が戦兎に脳内ツッコミを入れてきたら面白いかも、とは書きましたが、使われ方がただの便利な情報提供役、というのはどうも残念。今後も登場するなら、脳内葛城こそ描写に遊びが欲しいところです。
……しかし成り行き考えると、脳内葛城巧が発生したのは、幻徳ファッションショーのあまりの衝撃から精神の平衡を保つ為であった可能性が高く、隠れた殊勲だなヒゲ!
そう思うと、今回の幻徳のあらゆる奇行を生暖かい目で見守れます。
戦兎はロストボトルについて調べる為に北都の実家へ向かい、3バカの形見を探す為に北都のファウスト研究所へ向かう猿渡と同道。北都ではエボルが元北都首相を実験材料にロストスマッシュを生み出し、「人間を共食いさせる」と宣言。単独行動を取った猿渡は内海に捕まり、追いネビュラガスを注入されてしまう。
戦う理由がよくわからなくなってきた発言から、3バカの形見を取り戻す事にこだわって軽率に単独行動し、唐突に死亡フラグを立てまくったグリスは、マッドにやられてキラキラし始め、クロックアップばりの高速でフラグ回収。あわやこのままリタイアかと思われたが、ビルドの言葉に戦う理由を改めて見出すと、愛と平和に心火を燃やし、万丈に借りたドラゴンゼリーを投入する事で強引に上書きして、ダブルパイルパンカーで反撃開始。
さすがにこれで猿渡が死ぬと、ファッションショー第2弾を行っているヒゲと、どう考えても単独行動しそうな猿渡をしっかり止められない戦兎が酷くなりすぎるので死なずに良かったですが、この期に及んで追いネビュラによる強制レベルアップ(しかも自分の意思では無い)しか戦いについていく手段のない、グリスの持て余し感は一体なんなのか。
猿渡自身は物語の中でそれなりに機能しているだけに、グリスへのケアの薄さが全体のバランスとして惜しまれますが、戦力ヒエラルキー的にはグリス、変身できないけど戦闘員は倒せる凄腕の一般人、ぐらいのレベルなので、むしろそう割り切って話を作れればまた違ったような気もしますが、なまじ変身できるだけにそうはいかないか。
個人的にはどうも、猿渡とグリスって変身前後のキャラクターとしての一体感がずっと弱いままなのですが、猿渡一海の魅力と仮面ライダーグリスの魅力の不一致、そのギャップを面白さに変換できなかったのがグリスの不幸の一因であるのかなと。
もう一つ浮上したのが、ロストボトル効果により倒すと消滅してしまうかもしれない北都首相スマッシュとの戦いにおいて、青羽を殺してから約20話あまり、それどころで無かったといえば無かったにしても、戦兎が、追いネビュラ被害者の救済方法を一切研究していない、という事実。
……から突然の
ジーニアスフォームなら、首相を救えるかもしれない」
これが、遡れば香澄も含め、これまで救えなかった人々への悔恨を胸に、戦兎が密かに続けてきたスマッシュ救済の研究成果の結実、というような形であればだいぶ劇的になるのですが、葛城人格が残していったマジックアイテムにおんぶにだっこという、桐生戦兎というキャラクターの駄目な部分が集約されていて、大変残念。
それこそ、二人の人格の融合による研磨が救えない筈の存在を救った! とでも転がせば、葛城巧人格を経由した意味まで大きく変わってくるのですが、そういった積み重ねが一切ありません。
そういえばグリスが戦闘中にヒートアップすると熟語で喋るようになるのはスクラッシュドライバーのよろしくない副作用だったと思うのですが、特に手を打たないまま放置してしますしね!
「このボトルはネビュラガスを中和する事が出来るみたいだ」
ビルドは天才キックで元北都首相を救う事に成功し、ついでに猿渡も蹴っておこうかと持ちかけるが、今は力が必要な時と猿渡はそれを断り、死亡フラグは続行。
二人は首相と融合していたロストボトルを回収するが、そこにエボルが出現する。
「このボトルをどうするつもりだ」
「それを使って、俺は新世界を創る」
そして葛城忍の遺品から見つかった不自然な写真を手がかりに、懐かしの密航船船長と接触した万丈は、船長が半年前にも、葛城忍を船に乗せていたという、衝撃の事実を知る。
「戦兎の親父が……生きてる?」
でつづく、なのですが、本人を目の前にしている時はともかく、葛城巧人格を大変粗略に扱い、戦兎とは別人として接していた万丈ら周囲のキャラが、葛城忍を「戦兎の親父」と呼ぶのは非常に違和感があって、そこは「葛城巧の父親」という方が自然ではないかな、と。児童層へのわかりやすさを優先して強調したのかもしれませんが、どうにも葛城巧周りの言葉の選択は、デリケートさに欠けるというか、戦兎自身も含め感情的な不自然さが目立って気になってしまいます。
……ところで、“10年近く前に死んだ父親の遺品を詰めた段ボールの中からここ数年の間に撮ったとおぼしきよその女の写真とメアドが出てくる”って相当に意味不明な状況設定だと思うのですが、“香澄からの手紙”“鍋島は全て知っていた”と同カテゴリの『ビルド』名物みたいなものだと思えばいいのでしょーか(笑)


◆第41話「ベストマッチの真実」◆ (監督:諸田敏 脚本:武藤将吾
「なめられたもんだな。完全体な俺を攻略できるのかぁ!?」
「勝利の法則は決まった!」
ジーニアスはどういうわけかフェーズ1で出てきたエボル(きっと何か事情があるのでしょう……)がエボルドライバーを起動しようとした腕をがしっと掴むと、至近距離から天才パンチ。
「完全体になる前に倒す。それが勝利の法則だ」
これにより体内のネビュラガスを中和されたエボルは、マスターの姿になって膝を付くと胸を押さえ、動悸息切れが気になってくる年頃です。
「なんだ……この感覚は? …………そうか。…………そういう事か。戦兎ぉ! おまえは最ッ高だ! そのボトルに、こんな力まであるとはなぁ! おまえの発明に免じて、ボトルの回収はまたの機会にしてやる。チャオ」
目眩と立ちくらみに年齢を感じるようになったエボルトは撤収し、何故かそれを黙って見送る戦兎は、エボルトがマスターの外見で「おまえに俺を殴れるのか……?!」と迫ったら、素で、「くそ! 俺には出来ない!」とか言いそうで、洗脳、怖い。
茶店で合流した戦兎達は情報を確認し合い、今回もヒゲファッションが大暴れ。諸田監督の悪ノリも感じつつ、容赦なくツッコむ美空が勢いでヒゲと馴染む、という効果は悪くないのですが、既に合計会話時間が猿渡より多いのでは疑惑が持ち上がり、猿渡がエボルドライバーを貰いに行かないか心配です。
マッドグリス! ふははははははは!
なお、回想シーンにちらっと登場する、職に就いていた頃のヒゲ@スーツが、普通に格好いい。
一同は物語の整理も兼ねて「これまでの仮面ライダーエボル」を振り返り、ここで、スマッシュ被害者には戦兎達の周辺人物という共通点が見出され、“最初の被害者にも隠れた接点が?”というのはミステリ的で面白い発想。
…………なのですが、この回想シーンで振り返ったスマッシュ被害者は全て、番組始まってからの被害者で、ビルドはそれ以前から戦って既にフルボトルを入手していた筈なので、とてつもない大惨事が目の前で展開しているような。
回想途中にあらすじ劇場のノリで「メタな事言うな」的なツッコミがあるのですが、いや今、あなた方の推理の前提がメタになっていますよ?
そして戦兎は、密航船船長から受け取った、忍に託されたメモリに記されていた、ベストマッチの真実を美空に語る。
「ウサギと戦車……タカとガトリング。……愛と破壊。ベストマッチはおまえとの思い出だったんだよ」
石動惣一の記憶からフルボトルを精製しようとしたエボルトはまず“好きなもの”を30問い、次に“その命を奪うもの”を30問いかけた……
「結局、シめあげても変な答しか出なかった。俺はその時はじめて人間の、感情ってやつに触れたんだ。人間はなんて不思議で……愚かな生き物なんだろうってね」
前者の30は“美空の好きなもの”であったが、 石動は後者の途中で抵抗。結果として、ベストマッチは薔薇とヘリコプターや、トラとUFOなど、大多数が意味不明な組み合わせになったのであった!
「きっと、美空の好きなものを、どうしても守りたかったんだろうな」
ベストマッチの真実を石動親子の愛情と絡めて着地させ、こじつけ感は強いなりにそこそこ綺麗にまとめたと思うのですが、例えば美空が前者についてところどころで関連性を見出しかけるなどあればもっと劇的になるのに、そういうのが一切無くて、瞬間的な泣きの芝居の勢いで突っ切ろうとするのが、凄く『ビルド』です。
もっと言うともはや、「ベストマッチ」とかだいぶどうでも良くなっているわけですが、道中の随所に使うかどうかわからないけど散りばめておく、視聴者の想像を膨らませるタイプの遊びを持った布石が足りていないので、「急にそれ持ち出されてもな……」という種明かしが多いのも今作の困ったところ(何故か、幻徳親子だけは上手く転がりましたが)。
今回はそういった要素のオンパレードなのですが、物語というのは、受け手の目からくらませておく事で面白い伏線と、受け手に端々で意識させる事で面白い伏線とがあるのに、今作はとにかくその仕分けが下手な印象。
……それはそれとして、美空は忍者が好き(だった)という事実が明るみになり、美空への好感度はアップしました(笑)
「喜び……哀しみ……怒り……驚き。俺にとって人間の感情全ては、想像で演じるしかなかった。だが…………あの時、俺に人間の感情が宿ったんだ! ……はは、こんなに楽しい事は無い! はは……」
一方、天才パンチの副作用によりどういうわけか感情を手に入れたエボルは大興奮。
敗因の前振りの予感が強いですが、エボルトは人間の感情に該当するものを持っていなかった、というのもどうも急かつ、「愚かな生き物」とか連呼するようになってしまったのは、あまり好みでない方向性。
エージェントSの調査により、葛城忍の教え子だったと判明した男と接触する戦兎だが、男はロストスマッシュに変身。天才キックで中和するビルドだが、情報を得る前に男はエボルにより抹殺されてしまう。
「俺に本物の感情が芽生えたんだ。だから、怒り狂ったおまえを見て、ワクワクしたくてな」
この台詞の外道ぶりは良かったですが。
「父さんが悪魔のボトルを作ったのは、きっと正義が勝つと信じていたからだ! 人の想いを弄ぶおまえには屈しない。おまえが何を壊そうと、俺がこの手でビルドする! 父さんが生み出したこの力で!」
ストスマッシュ化を根性で跳ね返したビルドは反撃に転じ、ライダーシステムが、エボルドライバーを参考に忍が考案し巧が完成させたものだと判明した流れを汲んで、ライダー名と繋げた台詞そのものは悪くないのですが、とにかく今作、父子要素の積み重ねが足りません。
石動家、氷室家、葛城家、擬似的には難波重工も含めて、父子要素そのものは前半から散りばめているのですが、そのどれもが広げてもいなければ繋げてもいないので、終盤の集約点とするには、どうにも唐突。要するに「万丈における香澄」と同じなのですが、使う時しか引っ張り出さないので、物語としての厚みが生じず、急に感情を爆発させても動力不足で劇的になりません。
天才キックでダメージを受けたエボルは、怒りの感情に振り回されながらも猛打を浴びせてビルドから2本のボトルを奪い取ると、最後まで生かしておいて「究極の絶望を味わわせてやる」と言い残して、撤収。
そしてマスターと一緒に黒いパンドラパネルにボトルをはめた男の正体は……
「ずいぶん感情的になっていたようだが」
「ただの遊びだ。それより、計画を早めるぞ。葛城せんせ」
で、つづく。
最終クールに入って、劇的な積み重ねの不足が怒濤の勢いで露呈していく今作ですが、幻徳の坊ちゃんネタとか、エージェントSの秘密とか、世間のネタを公式が拾う的な悪ノリもちょっと気になるところ。まあこういうのは互いに楽しめれば良いといえば良いのでしょうが、エージェントSなんかは、いっそ悪ノリしないとキャラに説得力を与えられないので、自虐ネタの感があるのもなんだか。
「二枚目気どりの三枚目」というヒゲシャツのフレーズは面白かったですけど。