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『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第28話

◆#28「誕生日も戦いで」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:香村純子)
劇場版を終えて杉原監督が復帰し、ジュレには福々しい顔の初美花パパがご来店。
そして魁利は何故、食べたプリンをそのまま冷蔵庫に戻すのか。
「このチャラ男〜! 気安く初美花に触りやがってーーー!!」
「誰?」
「パパ……いきなり何すんの?!」
「……え? パパ?!」
初美花をたぶらかしていると勘違いされた魁利は透真を巻き込もうとするが、
「俺には婚約者が居るので」
必要以上に助け合いません!
エネミーの注意を逸らした隙に魁利は逃走し、猛然と追いかける初美花パパだが、そんなタイミングでコレクションの情報を手にコグレが登場。魁利抜きで話を聞く事になる透真と初美花だが、逃走中の魁利は、人間を一瞬で老化させる玉手箱スモッグを放つギャングラー(リュウグウノツカイを胴体に巻き付けたデザインがなかなか秀逸)と遭遇していた。行きがかり上、初美花パパと一緒に逃げ回って身を隠した所に国際警察が駆けつけ、凄くさらっとパトレンXを加えて4人で揃い踏み。
ここまで快盗とは2回行ったのに警察とは行っていなかったので、なにかしら話のタイミングを狙っているのかと思っていたのですが、至極あっさりでした(^^; (と思い込んでいたのですがキーウィのアジトへ突入する際に既に行っていた模様)
装甲重視のパトレンジャーではガード不能の玉手箱スモッグとは相性が悪い、と竜宮ギャングの相手を買って出る金だが、コレクションによる地中潜行能力に苦戦。ギャングはパトレンジャーを翻弄するだけ翻弄して、警察の相手は趣味じゃない、と逃走してしまう。
「地中の敵を攻撃するには、これじゃ駄目ってことか」
何やら考え込んだノエルが去った後、魁利を追いかけているのも忘れた様子で、初美花パパは国際警察に情報提供を申し出、その様子に慌てながらも、話し終えるのを待って姿を見せる魁利。
「おまえ……俺を待ってたのか」
「そりゃ、あんな事があったんだし心配でしょ。仲間のパパさんなんだから」
善良な一般市民たる初美花パパの姿を見て、逃げ回るのではなく丸め込む事に方針転換するのが、邪悪! 凄く邪悪だよ魁利!!
今回、「よく喧嘩とか巻き込まれる」(ルパンレンジャーの戦いの婉曲な表現?)、「女友達の父ちゃんには嫌われるタイプ」と自己申告されましたが、見た目と性格から因縁つけられやすいなどはあるのでしょうが、兄への反発でグレていた頃に、何をしていたのか本格的に心配になってきたぞ魁利!
透真と初美花がギャングのアジトを探っている間、魁利はジュレで初美花パパの相手をしている事になり、父親の反対を押し切って初美花がジュレにやってきた顛末を知る事になる。
「ママには連絡あるが、俺には一切ない」
「そんで我慢できなくなって、顔見にきたんだ」
「今日は初美花の誕生日だからな」
初美花パパは油断していると、事情を知らないとはいえ物分かりの悪い親ポジジョンとして悪印象が先に立ってしまいかねないのですが、ここで見せる表情が、いい人全開で大変良かったです。
一方、初美花も透真に事情を説明中。
「ごめんね……パパが迷惑かけて」
「…………娘の居る父親ってのは、そういうもんだ」
「え?」
「……俺も彩の父親に怒鳴られた。娘が居なくなったのはおまえのせいだってな」
透真のコック以前の経歴も割と怪しげなところがあるので、婚約の段階で金属バットでも投げつけられたのかと思ってドキドキしましたが、失踪後の出来事で若干ホッとしました(笑) そして、ザミーゴに消し去られたという真相を知る怪盗達と視聴者以外、消えた人々の関係者からすれば、それは「謎の失踪」でしかなく、やり場の無い哀しみと憤りが積もっていくしかない、というのが示されていて痛切。
「ま、冷静じゃいられないだろ。……どうした?」
「…………透真があたしに、そんなこと話してくれると思わなかった。だって、あたしの事、完全に子供扱いしてたから」
「……ふ、そうだったか?」
「そうだよぉ!」
どうしても、快盗と警察、W戦隊の距離感に目が行きがちな中、快盗内部は快盗内部で時間と経験による距離感の変化を織り込んでくれるのが、お見事。
「大丈夫。あいつ、滅茶苦茶しっかりやってるから。あいつは今、どうしてもかなえたい事があって……やなこと辛いこともたっくさんあるけど、すげぇ頑張ってる。――強いっすよ、あいつ」
親を知らない魁利が、初美花を思う親の心に打たれて、ややサービス気味に喋って照れ笑い、というのもいいシーンになりました。
また、“親の愛とはそういうものなのか”と知る事になる魁利、“娘の父親”というものを肌で経験している透真、“親をちょっとうるさく思う年頃”の初美花、と3人それぞれの目線から「親」という要素を捉えて語られるのも、香村さんらしい複層構造の取り込みが鮮やか。
そこへコグレがやってきてオーナーとして後を引き取り、魁利はトレビアンなものを用意したというノエルと共に竜宮ギャングのアジトへ向かうが、アジトでは既にギャングと青黄の戦いが始まっていた。
「レッドの情報が無ければ、危なかったかもな」
「19歳の誕生日に、お婆ちゃんになりたくないよ!」
玉手箱スモッグをかわし、頭脳プレイで床への潜行も阻止する青黄だが、平面なら壁の中にも潜れたギャングの反撃を受け、一転ピンチに。
……これまでの厳密な記憶は無いのですが、戦闘の尺が長めな事で潜行中のギャングがスモッグを放ってこないのが印象的となり(意図的?)、ギャングの固有能力とコレクションの能力は干渉して同時使用不可なのか? と、コレクションに関わる秘密の要素として、気になる部分。
駆けつけた赤と金が新ビークルのマジックを発動すると、ルパンレッドは巨大な弓矢を装着し、超貫通の矢で壁を砕いてギャングを追い詰める。新ビークルは結局、潜水艦なのか飛行船なのか不明の「マジック」でしたが(《対潜行》なので、潜水艦?)、関連性は感じられないものの、新武装の快盗アローは、ブーメラン&シールドに続いて格好いい。
ピチピチの素材を老化させてしまう竜宮ギャングの能力を嫌うゴーシュが、ボスに言われて嫌々巨大化したところで、老化被害者の線から事件を追っていた警察戦隊が現場に到着し、今日も和やかに癒着している快盗戦隊と自称潜入捜査官を目撃。
「……快盗! ノエル!」
市民の安全を脅かすギャングラー殲滅という最大目標の為に清濁併せ呑んでノエルを受け入れている圭一郎ですが、初登場以来、好感度は下がりっぱなしです!
「お待ちかねのおいらの出番! て、マジックちゃん! いつの間にダイヤル付きに?」
グッティが飛んできてルパンカイザーに合体し、相変わらず、反応がなんだか不穏。……まあ元々グッティも初代ルパンに改造されたというのなら、トリガーが付いたりダイヤルが付いたりする事に問題は感じていないようではありますが。
「圭一郎くんたちは、僕に任せて」と請け負ったノエルはどうやって弁解するのかと思ったら、
「……ノエル、なぜ連絡しなかった?」
「君たちとリューグは相性が悪い。ただそれだけ」
巨大リューグに視線を向けながら両手を大げさに広げて白い歯を光らせ、まったくもって、まともに向き合う気がなかった。
こいつそろそろ、国際警察日本支部地下600mに秘密裏に用意された、太陽の光はもちろん衛星からの電波も届かなず助けに来る者など居る筈のないさあたっぷり歌ってもらおうかその舌の滑りがよくなる為にまずは大量のエクストラバージンオリーブオイルからご馳走してやるぜハッハッハな隔離施設にご同行いただいて膝の上にコンクリートの板を何枚乗せられるか試すゲームを三日三晩続けてやろうか、という顔になる圭一郎の前で、ルパンカイザーはマジックビークルを快盗武装
従来の腕のみではなく左腕と頭部が揃って変わる新パターンで、チェンジした顔が割と格好いいルパンカイザーマジックは、ハンドパワーを発動して、ギャングを翻弄。思わせぶりに引っ張った割にはさくっと登場した新ビークルですが、一応、これまで以上の変形合体という事で差別化しつつ、なんだか関連商品の売り上げがよろしくないという話を聞いたので、今後の拡張が出来るのか心配になってきます。
「ありえん……」
「凄すぎです……こんなのズルいですよノエルさん!」
「そうかい? でも……格好いいだろう」
両手を広げて自慢げに笑みを浮かべるノエルだが、つかさはその背に不審の眼差しを向ける。
(ノエルは、自分で作ったVSビークルを、なぜ自分で使わないんだ?)
つかさの疑問に加え、このシーンのノエルの表情や仕草が、やけにマッドサイエンティスト寄りの描写に見えて、エンジニアとしての暗黒面が炙り出されていて不穏。
「気分はいつも以上に、さいこーーーーーーーほーほーほHoHoHoぉー!」
そしてビィッグボンバー的イリュージョンで竜宮ギャングを爆殺した後のみならず、マジックと合体しているニンジンのテンションが終始物凄く高いのも、大変不穏です。
戦いを終えてジュレに戻ると、すれ違いで初美花パパは帰路についており、コグレが預かっていた誕生日プレゼントを開けると、中には大量のお守りが。男衆に促されて初美花は父を追いかけ、コグレまでもが優しい眼差しを向ける中、キッチンの守護者・宵町透真は、魁利がコーヒーを淹れた後の惨状を目にして無言でプルプル震えるのであった、という小芝居が酷い(笑)
一日休みを貰った、という名目で初美花は父と共に実家で過ごす事にし、魁利との関係を最後まで気にする初美花パパ、そんな事より、娘さんには悪質なストーカーが!でオチ。
初美花パパと咲也の絡みは、これ以上やると煩雑になりますし、命を救ってくれた正義のお巡りさんだと思っていた相手が許しがたき卑劣な盗撮魔であった(若干の風評被害)、というのはそれはそれで面白いので、正月辺りに再登場して美しい誤解が血みどろの修羅場に発展するのが見たいです!(おぃ)
初美花パパが「メンバーの肉親」というだけでなく、「善良な一般市民」の具体化となる事で、警察戦隊との接触が物語全体にとっての意味も持つ、という細かい仕掛けが鮮やかでしたが、もう一つ注目は、これまで黒に近付いていく灰色だったコグレが白に近付き、白に近づいていく灰色だったノエルが黒に近づくという、描写の逆転がされている事。
マジックの活躍を見つめるノエルは人間味に薄いラブ&ピースな笑顔を浮かべ、一方のコグレはまるで本心からのように「私も、初美花さんを頼りにしてるんですよ。ホント、彼らが居て良かった」と和やかな表情を浮かべ……シンプルに視聴者への幻惑であるのかもしれませんが、後半戦に向けて快盗戦隊の志と関係性を再確認するエピソードでもあったので、今後の展開にまたも不穏のスパイスを加えてきます。
同時に、あまり視聴者の幻惑だけに囚われるとアンフェアになって面白みが削がれてしまうので、バランスを見失わないでほしいところ。
そしてつかさからノエルへの疑問ですが、確かにこれまでも、わざわざ電車ビークルを他人に渡して巨大化してもらう姿には余計な手間をかける違和感があり、Xトレインが特殊装備だとすると(考えてみるとダイヤルもトリガーもついていない?)、ノエルはVSビークルを「使わない」のではなく「使えない」という可能性が浮上し……そうすると単純に思いつくのは、ルパンコレクションが普通の人間には扱えないのなら、逆に改造ルパンコレクション(VSビークル)はギャングラーには扱えないのではないか、という事ですが……えーとノエル、もしかして、<化けの皮>をかぶったギャングラー?
超防御と超回避のコレクションが既に登場していますが、ルパンXの防御力と、パトレンXの回避力は、ノエルの固有能力という推測も可能であり……まあ、「使えない」理由は幾らでも作れるので、あくまで現時点で出ている情報からの類推ですが、初代ルパンの時点で異世界と何らかの接点があったのは間違いなさそうなので、世界と世界の関わりも物語に影響を及ぼすのか、今後の展開がますます楽しみです。
次回――ようやく警察のターン! で、なんかトンデモないものを……総集編でないといいなぁ(笑)