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ものかきと映画:第3回『地球防衛軍』

地球防衛軍 (1957年 東宝


 山崩れや陥没など、奇怪な現象が相次ぐ富士山麓に、突然ロボット怪獣・モゲラが出現。なんとかモゲラを撃退した防衛隊だが、それは第5惑星人ミステリアンの先兵だった。母星を核戦争によって失った彼等ミステリアンは、地球人との結婚を要求する。だがその真の目的は地球侵略であった。ミステリアンの要求を拒否し、彼等のドーム基地に攻撃をしかけた防衛隊は、ドームから放たれる怪光線によって全滅に近い被害を受けてしまう。
 ――このままでは地球は侵略されてしまう。打倒ミステリアンを旗印に、世界各国が協力。ここに、“地球防衛軍”が結成される。様々な超兵器と超兵器がぶつかり合い、今、地球を守る為の決戦が始まる!
東宝特撮映画の古典、であります。
ゴジラ』を筆頭とする怪獣ものとはまた別、後に『海底軍艦』や『妖星ゴラス』などに繋がっていく、“超科学戦争もの”(と言うらしい)のはしり。
珍しく、映画館で見た映画。
と言っても大きなところでなく、ミニシアターと言うのでしたか、古い映画を何本かまとめて定期的に上映しているような所で見ました。……ミニシアター、じゃなかった気しますが(^^; 友人に連れられて行った東宝特撮フェアでして、他のラインナップが『美女と液体人間』と『海底軍艦が宇宙に行くやつ(あまりに面白くなかったので題名失念)』という凄まじさ。
実は『美女と液体人間』が凄く面白かったんですが、残念ながら、詳しく内容を覚えておらず(^^; 当時のノリでタイトルに“美女”などと付いているので安っぽい感じがするのですが、これが非常によく出来た悲哀あるSFなんですよね。同じ傾倒(?)の『ガス人間第一号』『電送人間』なども見たいな、と思わせるぐらいの傑作でした。
……で、じゃあ『地球防衛軍』は話を覚えているのか、と問われると、実はよく覚えてなかったり(^^;
いやしかし、良いのです。この作品の魅力は、はっきり言って、物語では無いのです。
この作品の魅力は、モゲラが迫り、空中を戦艦が飛び、パラボラ戦車が大地を走る、様々なメカ兵器の迫力溢れる戦闘のスペクタルにあるのです。
物語の方は、いたってシンプル。
古典的な侵略ものの体裁を取っています。ミステリアンが最初は搦め手から攻めてきたり、主人公の友人がミステリアン側についたりという動きなどはまあ有るんですが、“地球防衛軍”は割といきなり出来ますし、裏切った友人もクライマックスであっさり改心。人間関係や異星人などの描き方に特に深みはありませんが、焦点は富士山麓での地球防衛軍と宇宙人の激突にあります。
本田猪四郎円谷英二の黄金コンビニよる特撮は見応え抜群。東宝特撮の名物ともいえるパラボラ戦車マーカライトファーブの登場はこれが元祖。
敵の繰り出すロボット、モゲラがまた格好悪いデザインなのですが、これが円谷英二の手にかかると格好良く見えるからあら不思議。円谷英二の大きな才能の一つは、巨大な何かが迫り来るシーンの迫力の出し方にあるのですが、その能力はこの作品でも遺憾なく発揮されています。モゲラはホント、デザインだけ見ると凄まじく格好悪いんですけどねー。映画を見ると、何となく好きになってしまうのが、恐ろしい所。
とりあえず“決戦は富士の裾野”というのはこの頃から東宝の伝統芸か、という感じなのですが、燃えます。
実は見る前はあまり期待していなかったんですが、ひどい破綻もなく(この時代の映画にはままある)、純粋に迫力を楽しめる良作でありました。
円谷英二ファンなら、押さえておいて美味しい一本。