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『顔のない敵』(石持浅海)読了

家に居る時は全然読まないのに、出かけるので乗った電車の行き帰りでさくっと読んでしまう辺り、我ながらちょっと何だかなぁと思わないでもなく。昔は電車の中で本を読めなかったのですが(すぐに頭痛くなる)、大人になってから読めるようになりました。非常に便利。
というわけで、今個人的に注目の作家、石持浅海による、“対人地雷”をテーマに据えた短編集(+デビュー作を収録)。
カンボジアで地雷除去の為に活動するNGO組織が地雷原の中で発見した頭を吹き飛ばされた死体、日本で地雷を製造している会社の中で起きた殺人事件……などなど、妙な舞台設定・ほとんどディスカッションで進む話・名探偵の不在、と、物凄く“らしい”全7編で、作者はもうこれを「作風」という事にするつもりなのでしょうか(笑)
ミステリとしてはそれほど精緻というわけではなく、謎解きよりも、“地雷”というテーマ性と絡めた物語重視で、これも“らしい”といえばらしい所。あまり謎解きなどを期待して読むと肩すかしを食う事になるかもしれません。どちらかといえば、ミステリという道具を使って、社会小説的なアプローチをしてみた、という感じ。
収録作の中では「地雷原突破」が一番好き。全体通しての感想は、ぼちぼち、といった所。少々、物語性の面が強調されすぎていて、単純にミステリとして見た場合は今ひとつ。とはいえその辺りは、まえがきにあたる著者のことばで断っていない事もないですし、ファンなら読んで損なしかな、とは思います。
ガジェットで終わらせる事なくテーマとして対人地雷を扱い、ミステリという舞台装置に踊らされる事なく物語をしっかりと描く、という作者のものの書き方は評価。
改めて、(もちろん好きは好きなんでしょうけど)本格マニアである書き手自身がマニアルールに基づいてマニアの為に書いているミステリ*1、とは一線を画す「小説」を書く力を持った石持浅海の今後に期待です。

*1:それはそれで需要がある分には良いと思いますが、帯に「本格マニア向け」と注意書きでもしておいてほしい(笑)