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最近読んだ本幾つか

攪乱者 (ジョイ・ノベルス)

攪乱者 (ジョイ・ノベルス)

現政権の転覆を目論むある組織に所属する3人の男女は、今日も組織の命でテロ活動を行う。だがその指令は、「地方のスーパーに指定されたレモンを置いてくる」「公園の砂場にアライグマを置いてくる」など、不可解なものばかり。果たしてこの指令の意味はなんなのか。任務を忠実にこなしながらも、その真意を知ろうとする3人であったが――。
テロ組織に所属する3人が、組織の不可思議な指令の目的をディスカッションするという、“トリッキーな設定”と“議論シーン”を一つの特徴とする石持作品としても、かなり異色の味付けをされた、連作短編集。
各話のタイトルは名作文学から取られており、3話一括りで、少しずつ状況が変わっていって……という構成になっています。
一つ一つの謎解きの面白さよりも、この物語はどこへ走っていってどこへ辿り着くのだろう、という方が興味深かったのですが、正直、最終的にはがっかり。
石持さんは、意識しているのか無意識なのかわかりませんが、終わってみると「○○○○」*1というのが多くて、特に今作は、それだけで終わってしまった感じ。途中までそれなりに面白かっただけに、残念。
あと一つ、もともと雑誌連載の作品なので仕方のない面はあるのですが、毎回毎回、所属する組織の特徴とか組織の目的について行数が割かれるのが、一冊の本として読んだ場合にはわずらわしくて、これは単行本にするに際して改訂してほしかった。

背の眼〈上〉 (幻冬舎文庫)

背の眼〈上〉 (幻冬舎文庫)

売れないホラー作家の道尾は、旅行で訪れた福島県の白峠村で、霊のものではないかという不思議な声を聞く。東京に帰り、旧友の霊現象探求家・真備のもとを訪れた彼は、その助手・北見凛を加えた3人で、再び白峠村へ向かう。その地で繰り返し起きていた4人の少年の失踪事件と、道尾が聞いた“声”に繋がりはあるのか? そしてそれは本当に“霊現象”なのか? 調査を進める3人が辿り着く、思いも寄らぬ真実とは――。
オカルト色を強く前面に打ち出したミステリー。
本編におけるオカルトと本格のバランスについて触れてしまうと興を削ぐので語りませんが、なかなか良くできた作品。
面白いのは、探偵役を務める事になる真備は、あくまで“霊現象”(と思われるもの)の調査が主目的であり、それと関係があるかもしれない事件は、あくまで付属品でしかない事。これに語り手であり三枚目の巻き込まれ役である道尾をうまく絡める事で、物語構造における「探偵」と「事件」との間にワンクッションを起き、事件ととの関わり方における不自然さを減じさせているのは、構成上、秀逸。
一方で、そのワンクッションゆえに、真備にしろ道尾にしろ、物語的には不用意な発言や行動もあったりするのですが、その不用意さを含めた部分を、作者が一貫した作品世界の“リアリティ”として設定している所は、評価したい。
加えて、真備が霊現象を探求する理由や、その助手・凛の立ち位置など、登場人物の造形が、あざとすぎず、コミック的でもない所でまとまっているのも好印象。文章の読みやすさもあって、上下巻の分量を感じさせない出来となっています。
傑作とか名作とは言いませんが、良作。

  • 『骸の爪』

骸の爪 (幻冬舎文庫)

骸の爪 (幻冬舎文庫)

売れないホラー作家の道尾は、親戚の結婚式に出席した帰り、ホテルのトラブルから、翌日に見学予定だった瑞祥房という仏所に宿泊するという事になる。その夜、工房に忘れたカメラを取りに行った道尾は、闇の中で、千手観音が“嗤う”のを見る。慌てて工房を飛び出した彼の耳に聞こえる、「マリ……」という痛切な声。そして蠢く仏像の腕……。後日、瑞祥房で撮影した写真に、“血を流す仏像”が写っていた事から、道尾は真備の元を訪れる――。
シリーズ第2弾。
またも不思議体験をした道尾が、真備、凛とともに、山深き仏所(仏像を彫る工房)を訪れ、そこで仏師の行方不明事件に関わっていく、という話。
本格ミステリ”としては、非常に良く出来た作品。
とにかく細かく散りばめた伏線が、ミスディレクション含め、最終的に全てかちっとはまる構成は見事の一語に尽きます。
その上で、ガジェットとトリックに溺れる事なく、“物語”をしっかりと紡いでいる所も優れています。
一方で、あくまでも“本格ミステリ”の枠内というか、それ以上でも以下でもなく、“良くできた本格”止まり、というのが個人的な感想。
厳しめの言い方をすれば、90年代以降の日本の“(新)本格”というジャンルがあまりにも“物語”という要素を蔑ろにしていたカウンターの存在として一定の評価をされるレベルの作品ではあるが、もっと面白い“小説”は幾らでもあるし、逆にもっと面白い“ミステリ”も幾らでもある。レベルの高い所でまとまっている作品ではあるが、そこで止まってしまっている。出来うれば、ここから更に、高みを目指してほしい、そんな作品。
これはあくまでも、私が読みたいもの、という話でありますが、私が読みたいのは、もう一つ上、の作品。
なお前作以上に京極夏彦テイストを感じるというか、気をつけて“京極まで行かないように”している感じなのですが、この点に関しては前作『背の眼』が特別賞を受賞したホラーサスペンス大賞(新潮社・幻冬舎共催)において、選考委員の一人であった綾辻行人が選評で

「主要登場人物の設定をはじめ、随所に京極夏彦氏の某人気シリーズの影響が(かなり露骨に)窺われるけど、僕としてはこれをエピゴーネンであると否定するよりも、若い作者による強烈なオマージュとして受け止めるべきだろうと考える」
と書いているので、私だけの思い込みでもない模様。
しかしそれならやっぱり、『魍魎の筺』を越えてもらわないとなぁ、と思う。
その上でシリーズが続くようなら希望したい事としては、メインキャラが増えすぎないと嬉しい(笑)
ところで第2作にして、語り手である道尾が幼少の頃から少し不思議体験しやすい体質でそれが人付き合いが苦手な遠因になっている、というような前作では全く語られなかった説明が入るのですが、正直、そこは余分だった気がします。まあデビュー作であった前作では入れにくかった設定を、シリーズ化していく中で入れた、という言い方は出来るかもしれませんが。
語り手である道尾の造形に関してはどうも適当というか、「人付き合いが苦手で出不精で家に籠もり気味」な人格にはとても読めない、というのは少々引っかかる所。前作における「真備に会うのが10年ぶり」という設定の為の設定、という感は多少否めず、まあ、そういう都合は少々は出るもので、くさすほど致命的ではないのですが。

  • 『花と流れ星』

花と流れ星

花と流れ星

上記シリーズの短編集。
うーん、方向性としては、長編向きの作家なのかなぁ、という印象。内容が薄い。

*1:ネタばれになるので伏せる