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『県庁おもてなし課』(有川浩)、読了

県庁おもてなし課 (角川文庫)

県庁おもてなし課 (角川文庫)


この物語はフィクションです。しかし、高知県庁におもてなし課は実在します。


高知県庁観光部に発足した、「おもてなし課」。県の観光をもり立てようと、親しみやすさと積極性を期待された部署であったが、これまで県庁内部の仕事しかしてこなかった職員達は、熱意はあってもフットワークは重い。手始めに、他の自治体を参考に『観光特使』を導入してみたものの、その一人である県出身の作家・吉門喬介から、厳しい駄目出しの数々を受けてしまう。たまたま吉門への連絡を受け持った事からいわば吉門番となった掛水史貴は、公務員と民間の感覚の違いをまざまざと突きつけられながら、奮闘していく事になるのだが……。
はたして、おもてなし課は羽ばたく――か?
主人公は、25歳の若い公務員、掛水史貴。「若い」とはいっても、単純に掛水の若さが硬直化したお役所体質を切り拓いていく……というわけでもなく、たまたま県出身の有名人という事でリストアップされ、『観光特使』を依頼した作家・吉門喬介との出会いにより、掛水自身が変わっていく事から、物語は動き出します。
公務員と作家、役所と民間、都会とイナカ……対比の中で描かれていく、見落としていたものの数々、そして「観光」とは何か。二十数年前に県庁であった出来事、そして吉門の過去……おもてなし課は、観光立県として高知を発信していけるのか。これを物語の主軸としつつ、そこに男女の恋愛要素が絡んでくるのは、毎度お馴染み(笑)
今作では、やや特殊な事情の男女が登場し、その関係の描き方はこれまでの作者の描いてきた間合いとはちょっと違っていて、それがまた良いです。
家族の情、男女の情、郷土の情……そういったものも物語の中に上手く盛り込まれ、まとまりの良い長編。
私が有川浩に科しているハードルは高いので、これぐらいはこの作者としては当然のレベル、とは思っていますが。
総合的には、“気持ちの良い”小説。
また全編を土佐弁が彩り、『空の中』読者には、ちょっと懐かしい雰囲気もあるかもしれません。