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『仮面ライダー電王』感想20

◆第35話「悲劇の復活カード・ゼロ」◆ (監督:舞原賢三 脚本:小林靖子
「おまえ……この先も戦ってけるのか。俺が変身できない以上、これからも電王だけだぞ」
「やるよ……僕がやらなきゃ。その為にも――もっと強くなる」
誰も零さない強さを手に入れようと、改めて決意する良太郎。
前回、救済策が示されて良かった良かったみたいな雰囲気で落としましたが、やはり良太郎はピアノマンを救えなかった事を引きずっており、まあそう楽天的な話でもないよね、と改めて。
前回オチで表向き明るくまとめておいて、次回の冒頭ではピアノマンが消滅するシーンは回想するけどデンライナーに乗り込んでくるシーンは回想されないとか、作っている側の本音が見えて『本当は怖い「仮面ライダー電王」』みたいな、少々ずるい(笑)
さて、かつてここまで、良太郎が強くなろうとしてろくな事態になった事はないわけですが……
ケース1:Mさんの場合
鉄パイプ?持ってチンピラのグループを追い回すM良太郎。
「良太郎いいか。雑魚はほっとけ、まず一番強いヤツを潰すのがコツだぜ。後は勢いだ」
「最初に神官を倒せ」みたいな。
必死に逃げるチンピラを楽しげに追いかけるM良太郎だったが、コハナのハリセン攻撃を受け、道路にひっくり返る。
モモタロス、リタイア!
ケース2:Uさんの場合
ナンパ道・108の奥義が一つ、華道をたしなむU良太郎。
「そして釣りは徹底的に楽しむ事」
一緒に花を生けていた女性陣達をよろめかせた所で、コハナに網をかけられ引きずれていく……。
「あんたはもう、女の子見るだけで、犯罪だわ」
ウラタロス、リタイア!
こうして順番の回ってきたK良太郎は……滝に打たれていた。
(ねえキンタロス……これって本当、戦いの練習になるのかな。なんか、冷たくて痛いだけって感じが……)
へんじがない。ただのいねむりのようだ。
流木が滝を落下してきてあわや即死寸前に、コハナのキックでキンタロスが目を覚まして事なきを得るも、滝での修行はこれにて終了。基礎体力の強化以外に実践的な戦闘技術を学びたいと考える良太郎と、それを応援するコハナであったが、キンタロスにはそれ自体が、どうもピンと来ない。
「しかし、強くなるゆうてもなぁ……」
二人の懇願に押され、かつて本条に乗り移って殴り込んだ空手道場へ向かうが、相手を怒らせた上に、憑依を解いた良太郎が空手家にかなうべくもなく、一発ノックアウト。慌ててK良太郎になって退散する事に。
「あんな良太郎、なんでそんなに気張るんや」
(だから、それは……)
「何度も言ってるじゃない。強くなりたい、って」
「そんなん必要ないやろ」
(でも……)
「良太郎はめちゃめちゃ強いやないか」
自分を受け入れた時の事、モモやウラが従っている事などを例に出し、良太郎の持つ強さについて諭すキンタロス
“強さ”にこだわるキンタロスが、“良太郎の求める強さ”に疑問を感じ、“良太郎の持っている強さ”を語る、というのは非常に上手く、久々にキンタロスが輝きました。
「どう見ても、強い思うけどなぁ……あかんのか?」
しかし、失ってしまったものの重みを感じる良太郎は、それに素直に頷くことは出来ない……。
その頃、ゼロライナーの侑斗とデネブのもとを、桜井侑斗が訪れていた。
無言で彼が差し出したのは、追加のゼロノスカード。
これまで過去の時間にしか登場しなかった桜井侑斗が、ゼロライナーに直接乗り込んでくる、という急展開。帽子の下の謎の赤バイザーが気になる所ですが、ますます謎めいた存在になって参りました。
「契約は絶対俺が果たす。だからカードは持って帰ってくれ。とにかく帰ってくれ」
侑斗をこれ以上変身させたくないデネブは桜井侑斗を強引に追い出すが、戦えば戦うほどに世界との繋がりを失っていき、桜井侑斗の差し出したカードを咄嗟に受け取れなかった侑斗は、自分の戦う理由に惑う。
(俺は……なんのために……戦うんだ……)
時の運行を守る事に対して真摯で、大きな代償を払いながらも戦い続ける事を選び、その為に良太郎の在り方を非難した事もあった侑斗の足下が揺らぐ、という、もう一人のヒーローであるゼロノスの、転換点。
失わせない為に戦うヒーローである良太郎(電王)に対して、失いながら戦うヒーローである侑斗(ゼロノス)に、根源的な問いがここで立ち上がり、その前段として“誰も覚えていない者”であり“良太郎が零してしまった者”であるピアノマンのエピソードが置かれている、という実に見事な構成。
そしてそんな侑斗の足は、ミルクディッパーへと向かう……。
今日は静かなミルクディッパーでは、カウンターで愛理が眠っていた。その下に広げられたノートに書かれていたのは、「桜井君用スペシャブレンド」(苦くないコーヒーの事と思われる)のアイデアメモ。
小林靖子は本当に、さりげない小ネタを物語に絡めていく事に執念を見せるのですが、ある種のお笑い要素であったものが、ここでこう繋がってしまうのは、全くもって、脱帽の出来。
そして点と点が繋がった場所で、大義を掲げていたヒーローの、人間の部分が浮かび上がる。
桜井侑斗はなんのために戦うのか?
“ヒーロー性”と“人間性”の相克と共存しいては新生というのは《平成ライダー》の抱える大きな命題ですが、側面からきっちりとそこへ辿り着いてきました。侑斗がカードを失ってからの一連の展開は、実に冴えています。
あとちょっと謎だった、桜井侑斗の記憶が消える事は、現在進行形の侑斗の記憶に影響を及ぼすのかという問題ですが、これを見る限り、進行形の侑斗に関する記憶は残っている模様。認識が別人だから、という事でしょうが。
一方、後にしてきた空手道場でイマジンが暴れている事を知り、駆け戻るK良太郎だったが、既にイマジンは空手家・山口の過去へと跳んでしまっていた。2006年11月22日――それは、山口が町内のど自慢大会でこの道場の人間に負けた日。
「また随分軽い記憶で跳んだなぁ……」
何はともあれ、過去へと跳ぶK良太郎。
山口の熱唱から始まる町内会のど自慢大会、会場の観客に加えて審査員まで用意して、無駄にキャスト使っています(笑)
そこへ出現したモールイマジンは、青いスーツに赤い上着という派手な色使いで、イマジンとしては一風変わったデザイン。追いかけてきたK良太郎の前に姿を見せる、もう2体のモールイマジン(手のデザインで、アックス、クロー、ドリル、の3体)。モールイマジンもまた、初めから電王が狙いだったのだ……!
「オレの強さにお前が泣いた」
立ち向かうアックス電王だったが、3対1に加え、いつもより動き辛いという謎の不調で大苦戦。追い詰められた所で2体のモールは姿を消し、残った1体がいざとどめ……という所で現れる、ゼロライナーと侑斗。侑斗は姿を見せた桜井侑斗から追加のカードを受け取り、それを必死に止めようとするデネブ。
「駄目だ侑斗、もう変身しちゃ、駄目だ」
「デネブ……イマジンを放っておけば未来が消える。やるしかないって最初に俺のとこ来た時、おまえ、そう言ったろ」
「そうだけど……でも」
「俺がゼロノスになって戦う事。それがおまえと、未来の俺との契約だ」
侑斗はベルトを取り出し、カードを手にする。
「やめろぉぉ!」
(侑斗!)
「変身!」
久々の落雷とともにゼロノスは登場し、その変身を見届けて、かき消えるように居なくなる桜井侑斗。
「最初に言っておく。俺はかーなーり、強い!」
アックス電王の危機を救ったゼロノスはそのまま勢いでモールイマジンを撃破。桜井侑斗は何を知り、何をしようとしているのか、侑斗は良太郎の問いかけに答える事なく歩み去って行く……。
以前から印象的に使われている桜井侑斗の懐中時計が、秒針が止まるという演出でクローズアップされましたが、今のところは意味不明。登場する度に何時を示しているのかメモしようかと思ったけど面倒で結局やらなかったのですが、何か意味があるのか無いのか。
予告通り、戦闘ではさっぱり見せ場を貰えなかったキンタロスですが、良太郎とのやり取りが非常に良かったので、むしろ株価は上昇。
ここに来て、“何の為に戦うのか?”“強さとは何か?”と、“ヒーローとは何か?”という根源的命題に二つの面からスポットが当たる形となりました。それぞれが、答えを掴み直す事が出来るのか。そして物語はいよいよ核心に迫っていきそうな気配。
なおリュウタロスは、どうせ乗り移ったら殺っちゃうからいいや、という立場の為、強さ談義には全く興味無く、ナオミとあやとり三昧(笑)
次回、なんかまた、凄いのが……。