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『仮面ライダー電王』感想27

◆第47話「俺の最期にお前が泣いた」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子
年明けて2008年――良太郎達はデンライナーで正月を満喫し、オーナーは駅長とエクストリームフラッグバスターチャーハンデスマッチの決着を付けるべく、ターミナルに向かっていた。今を逃すとしばらくターミナルには行けない……そう、未来の繋がる日が、近づいてきていたのである。同時にそれは、イマジン達との別離が近い事も意味していた……。
「ま、そういう事だよね……」
順序の問題なのか、他より消耗の早い感じのウラとキン、それとなく色々と匂わせる台詞と、砂演出。
そんな中、書き初めをするキンタロスが書いたのは、
「笑うで」
キンタロスは皆に、今年の抱負として書き初めをさせようと半紙を配る。
「まあ、おまえの望みを言え、ちゅうやな」
「僕はただ……今年も、モモタロス達と一緒に戦っていければいいかな」
「それやったら大丈夫や。任せときぃ」
元来、終わるべきであり終わらせるべきものであったヒーロー物の戦いを、日常化し、それもまた人生であるならば、楽しまなくては損だ、むしろ楽しもう、というのは『超光戦士シャンゼリオン』の持ち込んだテーゼですが、東映プロデューサーとしては白倉−武部ラインなので、多少の思想的影響はあるかもしれません。
この、ヒーロー性が日常の人間性を駆逐するのではなく、日常の人間性に包括された所にヒーロー性が存在する、いや、そうでなくてはいけないのではないか、というのは、90年代から徐々に形作られ00年代に明確に打ち出されていったポスト80年代ヒロイズムとでも言えるものの一形態(勿論、個々の作品においてはそれ以前にも例があるかとは思いますが)。
ちなみにその、ヒーロー性と矛盾しかねない人間性の部分を取っ払ってみて、純然たる正義のヒーローの化身として誕生したのが『特捜ロボジャンパーソン』であり、結果としてジャンパーソンがヒーロー性の抱える狂気を存分に抉りだしたり、絶望的に人間愛を信仰しているというのは、00年代から振り返ってみた時に、かなり先進的であったと思えます。
特救指令ソルブレイン』の場合、ヒーロー性と人間性を相克させるのではなく、ヒーロー性にリアリティをぶつけてしまった上に、リアリティに軍配をあげてしまった事で脱線してしまいましたが、90年代初期の模索が生んだヒーローの敗北、であったのかもしれません。
……話を『電王』に戻します。
「野上愛理……それにアレ、桜井侑斗。やってくれるよなぁ」
未来への分岐点に関する真相を知り、激高するカイは、前回呼び出したモールイマジ軍団とお喋り中。
とりあえず一画面に3体までは置けるモールイマジン、それ以上の時は、CGで水増し。
「潰さないとな……何も残らなくなるまで、潰す」
腹いせに、モグラに殴る蹴るの暴行。ここでの、イマジンに対する「誰かの記憶がなけりゃ存在する事もできないくせに」「この時間を手に入れるって事は、この時間の人間の記憶を手に入れるって事だぞ」という台詞は、最終盤への伏線という所か。
「だから早く潰すんだよ。今も過去も、全部俺たちのものになる。アレ、野上愛理潰せば」
正月早々、初詣先でダブルで鼻緒が切れるという不運に見込まれた良太郎は、愛理をガードする為に侑斗が神社へ来ている事に気付く。デネブが勝手に仕立てたという丈の足りない袴を見て一言。
「七五三みたいだね」
参拝者、参拝者の皆様の中に、お医者様はおられませんかーっ。
年明け早々、良太郎きついよ、きっと何か怒ってるよ!
多分、桜井侑斗に。
2007年1月10日――あの日、桜井侑斗と愛理はいったい何をしようとしていたのか。そして、良太郎は、何を忘れたのか。桜井侑斗に踊らされているとしても、やるべき事は、愛理のガードだ、と改めて意志を固める二人だったが、その目前で突如崩壊していくビル群。
「過去でイマジンが暴れてる……」
「くっそ、いったいどの時間に」
その時、風を切るJPカード!
……じゃなかった、カイが投げた電車のチケット。その日付は、2000年6月16日。しかし、カイが自ら姿を見せた事といい、愛理を狙う罠である可能性は高い。変身カードの残り少ない侑斗が現在へ残り、良太郎が過去へ跳ぶ事になる。
変身カードが残り少ない=現在の方が都合がいい、理由が全くわからないのですが、フェロモンにやられているから仕方がない。過去でイマジンと戦うより、現在で愛理さんをガードする方が盛り上がる、盛り上がるさ!
「“過去が希望をくれる”……僕たちが踊らされてるとしても、それは本当だと思う。過去も今も未来も守りきって、姉さんと桜井さんに思いっきり文句言ってやろうよ」
良太郎は、桜井のものだった懐中時計を侑斗に渡し、デンライナーは過去へ。そこでは、モール&再利用イマジン軍団が大暴れしており、良太郎はライナーフォームへと変身する。再利用のお約束として一体一体の力は弱まっているようだが、とにかく数の多いイマジンに手を焼く良太郎。
(変だ……なんか、時間稼ぎしてるような)
一方現在では、侑斗の読み通り、愛理がイマジン軍団に狙われていた。侑斗は愛理の前でゼロノスに変身して彼女を逃がし、デネブ経由で、現在で愛理が狙われているという連絡がデンライナーへともたらされる。
物語の焦点がそこからはズレているのでもうツッコむ所ではないのですが、なんだかんだで、デネブのキャンディ大作戦が効いている気がして仕方がない(笑)
愛理が危ない……焦る良太郎だったが、過去で暴れるイマジンを放置するわけにもいかない。その時、デンライナーを飛び降りたキンタロスがイマジン軍団の攻撃を防ぐと、ライナーフォームからベルトを奪い取り、変身の解けた良太郎へ謎の物産セットを渡す。
「おい良太郎、おまえの望み、果たしたでぇ」
それは五月人形の金太郎……と、その他色々。
「これがモモの字カメの字。オレに、リュウタや。契約完了」
書き初めの際に口にさせた「今年も、モモタロス達と一緒に戦っていければいいかな」という良太郎の何気ない一言を“望み”として、契約完了を主張するキンタロス
明らかに以前から準備していたとおぼしく、良太郎の性格まで読み切ったキンちゃん、思わぬ策士ぶりを発揮。
「ただ消えるのを待つなんて、キンちゃんには出来ないし」
「あんた達、いつの間に……」
「こんなのは、わかりきってたことだろうが……。それより、クマにこのままいい格好させとく気かよ」
「クマちゃん、もう戻ってこないつもりだ。だって、実体化しちゃったら、デンライナーに乗れないし」
「あの馬鹿グマがぁ!」
「もともと、良太郎ちゃんとチケット共有でしたから……」
良太郎との憑依状態を解消してしまったキンタロスは、もう、デンライナーに乗る権利を持たない。
愕然とする良太郎の前で、キンタロスはベルトを装着するとアックス電王へと変身、再利用イマジン軍団へ向けて斧を振るう!
「気にするな! オレはとっくに、消える筈やったってゆうたやろ! おまえのお陰でここまでおれたんや!」
「そんなの……僕はそんな凄い事したつもりない!」
「凄い事なんや! 命だけの事や無い。オレは時間も持てたんやからな」
「時間?」
「カイの阿呆が云うとったように、オレらには、思い出すような過去はない。そやけど、良太郎に拾われてからの事は、全部思い出せる。俺は自分より、この時間を守りたいと思うとる!」
あれだけ個性の濃いと思われたイマジン達は、しかし、思い出/過去/記憶――すなわち時間、ひいては己自身を持たない存在だった。
それ故にイマジンは人の記憶に依存し、その事によって存在を保てる。
そんなイマジン達が良太郎との旅の中で、思い出を――時間を――自分だけの記憶を、手にする。
自分を、手に入れる。
そして自己のアイデンティティを真に確立したからこそ、彼等は「自分」よりも、「今」を守ろうと決意する。
それが、何よりも「自分」らしいから。
「良太郎……デンライナーに乗れ、戻るぞ」
モモタロス……」
「クマ公は置いてく」
「モモ!」
「いいんだよ! 良太郎、急げ!」
キンタロスの覚悟を汲み、決断を下すモモタロス。アックス電王は回転ダイナミックチョップで群がるイマジン軍団を蹴散らすと変身を解除。キンタロスはベルトをデンライナーへと投げ込み、未だ尽きないイマジン軍団を食い止める為に立ち向かっていく。
「戻って戦うんや。おまえは強い! 良太郎、はよいかんかぁ!」
愛理を、今を、未来を、過去を守る為、良太郎はデンライナーへと乗り込み、走り出す電車。
キンタロス……きっと迎えにくる……」
「おおきに」
デンライナーの小さな窓から、過去に残されていくキンタロスを見つめるシーンは、少しばかり劇場版のラストシーンを思い起こさせます。
「そんなら本番いこかぁ……オレの強さに、おまえがわろた」
デンライナーを見送り、イマジン軍団へと向き直るキンタロス
「あかん……しまらんのぅ。オレの強さは――やっぱ泣けるでぇ!」
現在へと急ぐデンライナー……だがそこではゼロノスが大量のイマジン軍団に足止めを食い、ひとり逃げた愛理の前にはカイが姿を現していた。
「なぁ……なんでおまえみたいなのが、分岐点の鍵なんだ」
そしてカイの手刀が、愛理の背中へ突き刺さる――!
イマジンの設定はこれまでも小出しにされていましたが、それと、1年間の物語の意味、をダイレクトに繋げ、出来上がったパズルの綺麗さはお見事。
M、U、K、に関しては人格とトラブル率はともかく、精神的には良太郎より“大人”ポジションに描かれていたわけですが、実は物語は主人公・良太郎の成長話だけではなく、彼等の自己確立の物語でもあった、というのは鮮やか。
同じく小林靖子がメインライターを務めた『未来戦隊タイムレンジャー』において、最終盤にしてサポートロボがロボットである自分を乗り越える、という名エピソードがありましたが、それを彷彿とさせつつ、全体として更にそれを推し進めたような構造。
スキルバランス的に若干の使いにくさが見えていたキンタロスも渡世の仁義を果たし、らしくて良い見せ場となりました。
残す所、あと2話!