◆第48話「ウラ腹な別れ…」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
前回キンタロスが良太郎に渡したイマジンセット。
ウラタロスを現すかめゼリーってどこで見つけたんでしょう(笑)
いいアイテムが見つからなくて、小道具で作ったのかもしれませんが。
モモさんがピーチゼリーではなく、股引なのは、きっと傷つきやすいモモさんへの優しさ。
最初、シリアスな場面でこの赤鬼は何を握りしめているのだろう、と素で首をひねりましたが(笑)
「おまえら辛気くせえぞぉ。戦いは勢いなんだ。こんなんじゃ負けちまうっつうんだよ。そうだろ、良太郎」
キンタロスの思いを無駄にしない為にも、今は進むしかない。精一杯顔を上げ、現在へと向かう一行だったが、その途中でウラタロスは、車内に潜り込んだNEWモールイマジン達が、先頭車両に爆薬を仕掛けているのを発見する。既に爆薬はセット済み、後は起爆装置を押されれば、デンライナーの先頭車両は粉々に爆破され、彼等は時の中を永遠に彷徨う事になるだろう……。
「そろそろ僕も、そっちに戻ろうか」
「なに?」
「おまえ、まさか……」
「千の偽り万の嘘。僕が嘘をつき続けた理由、教えようか」
その頃……クライマックスだというのにオーナーはずっとチャーハンで対決していた。
駅長と二役なので、撮影の手間だけは、無駄にかかっています。
現在では侑斗とデネブが愛理の元へ急ぐが、愛理は道に倒れて気絶していた。そしてそれを見つめるカイは、何か恐ろしいものを見たような表情で、拳をわななかせているのだった……。
カイはデザイン上のハッタリが無い謎の悪役、という事で難しいキャラクターだったと思うのですが、この最終盤で非常に作品世界の中にはまってきて、演技と演出で積み上げてきた、良い仕事。
そして、突如、脱線するデンライナー。
「悪いけど降りてもらうよ。元の時間には、帰らせない」
ウラタロスはモグラ達と一緒に食堂車に乗り込んでくると、一行を強制的に途中下車させる。その日付は――2007年1月9日。
「嘘でしょ?! まさか、あんた、最初っから……」
「そう。最初っから。もっと疑っておくべきだったね?」
「カメ、てめぇマジかよ? クマ公があそこまでしたの見てたろうが。そいつを無駄にすんのかよ!」
「手に入れた時間を守る……か。けど自分が消えたら終わりだよ。あのクマ、やっぱり脳みそ干物だね」
なぜか電車の外でも実体化しているモモとリュウを交え、良太郎達はデンライナーから追い散らされ、デンライナーを奪われてしまう……。
一方、愛理の中を覗いた現在のカイは、なぜか恐慌状態に陥っていた。
「なんだあれ……。分岐点の鍵なのに鍵じゃない。……どうなってんだ…………。俺最高に怒った顔してるよな……してるよなぁ!!」
そして一体のイマジンを吐き出す。
それは、銀の死神――デスイマジン。
「もう全部潰せよ……「「潰せぇ」」
ここの気持ち悪そうなカイは、吐きそうな顔しながら何故か後頭部を叩く、という謎アクションが秀逸(笑)
カイが最強のイマジンを出現させている頃、過去の良太郎達は路地裏でサバイバル中。灯油缶に薪をくべて暖をとっていた(笑) ……良太郎、財布ぐらい持っていないのか、と思ったのですが、イマジン達が居るので、人目につく所に出られない、という事か。
「あのカメ野郎……ずっと騙してやがったのかよ!」
「嘘つきだとは思ってたけど……」
「もう、あたしの食堂車には戻れないんですかね。これから、どこでコーヒー淹れればいいんだろう……。ウラちゃんも、女の子には優しかったのに……」
今更ながら、ナオミのアイデンティティは食堂車でコーヒー淹れる事にあったのが判明。またここで、両肩剥き出しで寒そうなナオミに、良太郎が上着をかける、という珍しい絡み。この辺りは、かばわれ守られる側だった良太郎の成長、というニュアンスか。
「ねえ、なんで……。クマちゃん居なくなって、カメちゃんが変な風になって……なんか、凄く嫌だぁ」
ウラタロスの突然の裏切りに、モモタロスは荒れ模様、その他の面々も暗く沈み込む……だが。
「みんなおかしいよ。ウラタロスと一緒に居た間のこと、忘れちゃった? 僕は覚えてるよ、全部。ずっと一緒に戦ってきた事。だから……心配してない」
良太郎、ずっと目が据わっていると思ったら、そういう事か。
この状況においてもなお、良太郎ただ一人だけが、ウラタロスを信じていた。
それは、無防備で愚かな優しさと表裏一体ではあるが、紛れもなく、良太郎の強さ。
そして良太郎は、今この時間で一つ、やるべき事を見つけていた。彼等が強制下車させられたのは、くしくも2007年1月9日――愛理が記憶を失う前の時間であったのだ。
コハナとともにミルクディッパーへ向かった良太郎は、そこで過去愛理が、割と直球で過去良太郎に事情を説明していた事を知る。
「僕が時間を元に戻すとか……意味わかんないよ!」
それはそうだ、と店を飛び出してきた過去良太郎と接触する良太郎。
「ねえ、今言ってた“新しい家族“って……」
「ね、姉さんに、赤ちゃんが。桜井さん、との……」
「姉さんに、赤ちゃん……」
瓜二つの自分と出会った事で、目を回して気を失う良太郎。……そういえば、久しぶり。
「そんな……僕そんな事、全然……」
桜井と愛理の間の子供……それは今の良太郎の記憶には、全く存在しない。
「ねえ、もしかしてそれが、良太郎の欠けた記憶」
良太郎は過去良太郎の上着を身につけ、すり替わってミルクディッパーの愛理に話を聞きに行く。
「赤ちゃんを忘れるなんて、どうしてそんな……」
「この子を……イマジンから守る為に」
イマジンによる時間の破壊は、特異点たる良太郎の記憶によって修復が可能。だがその時、良太郎の記憶の中に「赤ちゃん」の存在が無ければ?
「欠けた記憶で修復された時間には、赤ちゃんはいない。イマジンから赤ちゃんを隠せるのよ。そうしなければ、イマジンは何度も何度も襲ってくる」
「でも、どうしてそこまで……」
「この子は……良ちゃんと同じ、未来の特異点なの。だから……明日侑斗はカードを使う。忘れなきゃいけないから。未来を守るために。この子も、侑斗の事も」
今ついに明かされる、最後のピース。
正真正銘の分岐点の鍵は、桜井侑斗でも野上愛理でもなく、二人の間の子供であった。
本来なら、時間が破壊され、誰の記憶からも失われたならば、その子供は時の運行から零れ落ちる筈である。しかし、特異点であるが故にその子供は、過去の破壊の影響に左右されずに、存在を確立し続けられる。
修復された時間には存在していないのに、しかし未来には存在する。
確かに存在しているのに、イマジンが探す過去には存在しない。
まさしく特異な存在と化すその子こそが、今と未来を繋ぐ全ての鍵。
ゼロノスカードを使って部分的に記憶を消費した上でカイに故意に大破壊を行わせ、良太郎の記憶によって修復された世界に、鍵たる子供を欠落させる事こそが、桜井侑斗の真の計画であった。
裏技……というか、もはやバグ技。
極めて綱渡りな計画ですが、これで、ゼロライナーが侑斗と愛理の元を訪れたのは、二人が未来への鍵へと直接繋がっていたから、という事で一応の説明がつきました。
そして桜井侑斗がこれだけの覚悟を貫き通したのは、今愛する人達の為だけではなく、まさしく、未来の為だった。
表に出ている二人のヒーローだけでなく、この最終盤に、誰にも知られずに戦い続けていたもう一人のヒーローの姿が鮮明に浮かび上がる、とお見事、実にお見事。
しかも地味に30代ライダーだ!
物語の最初から最後までその陰で、一人の男が、“家族を守る為に”戦っていたという構図を入れたのは実に素晴らしい。
それにしても、ゼロライナー(のオーナー?)は、相当細かく、桜井&愛理に事情を説明していた模様。
一番丁寧に事情を説明してくれる人は、物語スタート時に既に不在だった、と(笑)
言われて急に忘れられるものでなし、良太郎が都合良く赤ん坊の記憶を忘れているのは、ゼロノスカードの影響、という事で良いのでしょうか……?
過去改変の影響は特異点の記憶に影響を与えられないけど、ゼロノスカードならもしや……みたいな話は、数話前にウラとキンが会話していましたし、あれがこちらの伏線だったとすると、納得。
桜井侑斗が物凄い策士すぎますが、そこは愛の力という事で、物語として美しいので良し。
「姉さん達は……そこまでして守ったんだ――未来を」
良太郎達が全ての真相を知った頃、路地裏で待機中のモモタロス達の元に、モグラ3体を引き連れたウラタロスがやってきて、デンライナーを動かす為のパスの引き渡しを要求する。
「カメ……やっぱマジなのかよ?」
「だったら……?」
狙い澄ました流れで、ここで、モモタロスVSウラタロス、お久しぶりのガチ喧嘩!
激しいバトルの最中、ナオミ、モグラたちの数に気付く。
「1、2、3……あれ、今、デンライナー……からっぽ?」
ナオミさん、ここに来てまさかの大・活・躍。
ナオミとリュウタロスはデンライナーを取り戻すと良太郎とコハナを回収し、郊外に戦いの場を移していたモモタロス建ちの前に電車が滑り込む。
「あ〜、誰か留守番残るべきだったねぇ」
デンライナー強奪の為にパスを手に入れる必要がある、とモグラたちをそそのかしたウラタロスは更に、モグラの爆弾スイッチを取り上げる。スイッチをONにするが、既に爆弾は解体済み。全てはウラタロスの、千の偽り万の嘘。
前回、キンちゃんの思わぬ策略を見せつけられたウラタロス、サギ師の品格に賭けて、モールイマジン達を一本釣り。
ウラタロスの場合、キンタロスと逆に、話術スキルが高すぎて常に全力を出せない、というのがありましたが釣り師フルパワーでこれまた見事な見せ場。
ウラタロスは駆け寄ってきた良太郎からベルトを奪うと、自らロッド電王に変身。
いつもより沢山、回っております。
ロッド電王はモグラを一体片付けると良太郎を電車に押し込み、変身を解除したウラタロスはベルトとパスを車内へ放り投げると、自らは過去へ残る事を選ぶ。デンライナーが現在へ向けて発車する中、残りのモグラを足止めして戦うウラタロス。
「おまえたちには感謝してんだよねぇ。これ以上、あっちにいたら、クールで格好いい僕じゃ、居られなくなりそうだったから。僕……嘘泣きしかした事ないし。時間を手に入れるのも、良し悪しだよねぇ」
消滅の近づく我が身を前に、ウラタロスもまた、「自分」らしくある為に、自らの戦いを選んだのだった。
「今夜は……僕に釣られてみる?」
その頃現在では、病院に運び込んだ愛理を侑斗が甲斐甲斐しく看護していたが、そこへもイマジンは迫る。
「ここから先は立ち入り禁止だ!」
イマジンの大軍団に立ちはだかるゼロノスとデネブだったが、そこへ現れる、デスイマジン。
「今日、ゼロノスが死ぬ。覚えておけ」
他のイマジンとは別格の力に、病院の守りをデネブに任せたゼロノスはデスイマジンを病院から引き離すが、大剣の攻撃をものともしないデスイマジンに大苦戦。
そして――
「よく見たらこんな時間。面白くもなんともない、って気がするよ」
分岐点の鍵を見失い、混乱の極みで怒れるカイは、この時間を破壊しようと空間に亀裂を走らせる。
「どいつもこいつも……消えろぉ」
果たして、デンライナーは間に合うのか。
現在の運命は。
次回、最後までクライマックス!
◆最終話「クライマックスは続くよどこまでも」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子)
「始まるな……この時間は消える。おまえもだ」
ゼロノスを追い詰めていたデスイマジンだが、空間断裂の状況を見てカイのガードへと向かう。
「もっとだぁ……もっとぉ! 分岐点でも特異点でもなっっっんでもいい。こんな時間、全部きれーーーいに吹き飛ばしてやる」
かつて2007年1月10日引き起こされた大破壊が再び迫る中、現在へと到着したデンライナーから降り立つ、良太郎とモモタロス。
「おいおい、あれでこの時間吹っ飛ばすつもりかよ」
「させないよ……この時間は、絶対消させない」
歩み出す二人、にオープニングタイトル(歌なし)で、最終回スタート。
ホント平成ライダーは、時間の使い方が贅沢で素敵だなぁ。
「気合い入れてけよ、良太郎。俺たち二人だけなんだからな。おまえ。ここまで来て、迷ったりはしてないだろ?」
言葉に詰まる良太郎だったが、砂を吹くモモタロスの体を見て、最後の覚悟を固める。
「……モモタロス!」
「……なんだ」
「望みを言うよ」
「言っとくが、できねえ望みは聞かねえぞ」
「僕と…………最後まで一緒に戦ってくれる?」
近づいてきたイマジン達を切り払うモモタロス。
「おまえの望み――聞いたぜ」
遂に良太郎が望みを言い、それを聞くモモタロス。
またここで、良太郎がモモタロスの名前を改めて一度呼ぶ、というのがいい。
良太郎もライナーフォームに変身し、二人はカイを止める為、カイの居るビルの前をふさぐイマジン軍団へと突撃する。
一方、デスイマジンの猛攻を受けて変身が解けてしまった侑斗の前にもイマジン軍団が姿を見せる。変身しようとする侑斗だったが、遂にキャンディ大作戦もとい赤いゼロノスカードも0。そこへ病院前のイマジン達を殲滅したデネブが駆けつける。
初期の強さに比べて自然と弱体化して、最近はサポート役のような扱いになっていたデネブでしたが、ここで大活躍。最終回ですから、ノリがいい方が勝つのです。
もう変身は出来ない、しかし、立ち止まるわけにはいかない。
「“過去が希望をくれる”……やるしかないだろ!」
侑斗は懐中時計を手に徒手空拳でイマジン軍団へと突撃し、消滅が近づいている事を感じながら、デネブもそれに続くのだった。
モモタロスがイマジン達を引きつけている間にカイの元へ辿り着いたR電王だったが、その前にデスイマジンが立ちはだかる。
「無ー駄。この時間、潰すから」
R電王はデスイマジンに叩きのめされ、食堂車で座り込んでいたリュウタロスは、良太郎の危機に反応してデンライナーを飛び出していく。
前後の台詞を考え合わせると、リュウタロスが状況を怖がった為に車内に置いていく、というようなシーンがあったけど、尺の都合でカットされたとかっぽい。
迫る大破壊……モモタロスはビルの前で乱戦中、侑斗は愛の力を拳に込めて生身で敵陣突破中、と最終回らしく、着ぐるみと中の人達、ド派手に大投入。
R電王の奮戦むなしく、カイは遂に破壊エネルギーを呼び込むが、その途中、R電王は捨て身のタックルを決め、カイととともに屋上から転落、身を挺したリュウタロスによって、良太郎は落下の衝撃からは守られる。
個人的にはもう一回ぐらい、リュウタロスと“お姉ちゃん”を絡めて欲しかったのですが、ここでお姉ちゃんに固執しないで良太郎を守る所に、リュウタロスの成長がある、という流れか。前振りにちょっと尺が足りなかったぽいのですが(^^;
ビルから転落しながらも平然と瓦礫の中でほくそ笑むカイに、近づく良太郎。
「過去なんか覚えてなくても、時間なんて手に入る。これからが俺たちの時間だぁ。へへへ」
「違うよ。この時間も未来も、君のものじゃない」
身を起こしたカイは、現在の状況に気付く。カイの力で破壊は引き起こされたが、それはごく一部に留まっていた。カイの目論みはまたも、失敗に終わったのだ。
「そっか……おまえが邪魔したんだ。――ったく、もっかいやんねぇとなんねえだろ」
「無駄だよ」
「なんで」
「君は気付いてないんだ。姉さんと桜井さんが守ったものに。消えた筈の未来に、特異点が残ってるって」
「未来の特異点? そんなものどこに」
「姉さんたちは生まれてくる筈の家族を忘れる事で隠したんだ。その子は誰の記憶からも消えたけど、だからこそ君さえ気付かなかった。いつも目の前にいたその子……ハナさんに」
カメラに対する良太郎の立ち位置がちょっと不思議だな……と思ったら、良太郎が目線を動かして、そこにカメラのピントが合うと、立っていたのはコハナ。
そう、彼女こそが、桜井侑斗と野上愛理がイマジン達から隠し通した、真の鍵であった。
「じゃあおまえが時間を繋ぎ止めてたってことか。だから俺たちの時間は繋がらなかった」
「そう。繋がるのは、私たちの未来」
時の世界で、分岐点から伸びていく線路……。
「うあぁぁぁぁぁ! さいっこうだよおまえら! さいっこう! 今すぐ……潰す」
良太郎とコハナは、廃墟に群がるイマジン軍団に囲まれる。
「俺死んでほしいって……顔してるよなぁ」
ここで良太郎がカイにネタばらしする理由は実は全く無いのですが、さすがにこれは、台詞で説明しないとわかりにくい(ピンと来なかった人がすっきりしないままクライマックスを迎えてしまう)という判断か。
お陰で良太郎、悪の黒幕のような立場に(笑)
まあ今作の本当の黒幕は、ある意味で桜井さんだったので、義弟として黒幕代行といった所か。
そして悪の黒幕らしく、相手に大逆転の付け目を与えてしまう(笑)
その頃、爆心地へひた走る侑斗に、デネブが隠し持っていた最後の緑ゼロノスカードを手渡す。
「桜井が俺に託していた、最後のカードだ。これで、桜井の存在は全て消える。侑斗は、桜井と違う時間を生きていく事ができる。それが……桜井が侑斗に託した、最後の希望だ」
良太郎とコハナに迫る再生イマジン軍団とデスイマジン。
「今度こそ……消えろ」
だがそこへ走り込んでくるデンライナー。
「ちょっと待ったぁ!」
降りてきたのはモモタロス……に続いて、ウラタロス、キンタロス。
「ウラタロス、キンタロス、みんなどうして」
「ナオミちゃんが迎えにきてくれた」
「やー、オーナーも居なかったんで、頑張ってください!」
「ナオミはやる時は、やる女やでぇ」
ナオミさん、まさかのルール違反。
さんざんシリアスに展開しておいて、ここで裏技中の裏技が炸裂するという、まさに『電王』。
「おまえら……消えてもいいわけ?」
「うるせぇ……もうそういう話は、うんざりなんだよ」
再び揃ったイマジンカルテット、カイのイマジン軍団と戦闘開始。良太郎はガン電王へと変身する。
「おまえたち倒すけどいいよね? 答えは聞いてない!」
そしてコハナに迫るイマジンを殴り飛ばした侑斗(関係を考えると、最後の最後で実に趣深い)は、最後のカードをその手にし、ゼロノスへと変身。追いついたデネブと二人揃えて、
「「最初に言っておく。俺たちはかーなーり、強い!!」」
と、バッチリ決まりました。
台詞のポーズ中に振り回すゼロノスの大剣をデネブがしゃがんでかわすのが、ちょっとアルゴリズム体操(笑)
そして始まるクライマックス大乱戦。
電王はガンからアックス、ロッドと、フォームをチェンジし、次々とデスイマジンと交戦。
一方、戦場の匂いに沸き立つ修羅の血を抑えきれなかったのか、イマジンを背後から鉄パイプで殴りつけたコチャンプだったが、かえってイマジンに目を付けられてしまう。
チャンプ、間違っているよチャンプ!
貴女の最凶の武器は、拳だ!
だがその時、コハナの危機を救う白い影。
「降臨……満を持して」
流れるは、キンちゃんのDouble-Action並みに恐ろしい、あのBGM。
「ジーク……?」
「姫、久しぶり。小さくなった姿もまた、麗しい」
まさかのジーク降臨!(笑)
小型化したのにすぐにチャンプに気付くあたりが、さすがすぎます。
「たまたま居たんで、連れてきちゃいました☆」
オーナー不在で、ナオミさんフリーダム。というか、普段のストレスを解消しているように見えない事もありませんガクガクブルブル。
ここに来て、完全に空気が変わってしまう最終決戦(笑)
ジークはテーマ曲のイントロが強烈すぎて、アレ流れると全て吹き飛んでしまいます。
ここまで色々あったけれど、徹底的に、最後は楽しく。
実に今作らしいクライマックス。
そう、
「どっちが強いかじゃねえ。戦いってのはなぁ……ノリのいい方が勝つんだよ!」
なんだかんだで能力は高いジークは、コハナに群がるイマジン達を蹴散らしていく。
「姫は、この私が守る。家臣一同、心おきなく働くがよい」
「だれが、家臣だよ! てめえに言われなくたってやるんだよ!」
ここでモモさん、良太郎に憑依。
真打ち登場ソード電王、なんか変な排熱してポーズ追加で
「俺、参上!」
途中のポーズはやっぱりあれですか、ノリがいいポーズなのでしょうか。
「へへっ、良太郎!」
(うん!)
「行くぜ行くぜ行くぜ!」
ゼロノスも、デネブと合体、アルタイルからヴェガフォームへ。
「デネブ、来い!」と呼ばれた際、なんかデネブが凄い回転ジャンプしています。
デネブがデネブなのであまり目立たないけど、デネブの中の人って、けっこう凄いよね……と思って軽く調べたら、デネブのスーツアクターは、押川善文さん。平成ライダーシリーズでは『アギト』のギルス以降、ゾルダ、ギャレンなどメイン級のライダーを務め、現在ではキョウリュウレッドという、エース級の方でした。
「最後に言っておく! 侑斗をよろしく!」
ダブルライダーはデスイマジンに猛攻を加え、ひるんだ所でモモさんの号令一下――
「おめぇら、行くぜ!」
「いいよ!」
「よっしゃ。泣けるでぇ!」
「いぇい!」
「うむ」
「正真正銘のクライマックス……必殺!」
ソード電王の必殺技で飛ぶアレを、各々が武器で受け止めながら増幅しては投げを繰り返し、次々とイマジン軍団とデスイマジンへ連続攻撃……なんかもう、無茶苦茶ですが、ノリがいい方が勝つので仕方がない。
そしてヴェガフォームのボウガンが炸裂し、最後に反射した切っ先をS電王が受け止め、今放たれるは――
「俺の必殺技! ――ファイナルバージョン」
クライマックスに怒濤の近接滅多切りがデスイマジンを切り刻み、最強のイマジン、大爆死。
その光景に、崩れ落ちるカイ。
「終わった……くそぉ……けどおまえらも消える。イマジンはみんな、消える……」
捨て台詞を残し、砂となって消滅するカイ……そして残りのイマジン達。
それは当然、モモタロス達も例外ではなく、強制的に変身解除された良太郎と侑斗の周囲には、イマジンは、誰一人として存在しないのだった――。
「デネブ……」
ゼロライナーへ走った侑斗は、デネブの作った食事が残されているのを目にする。
「侑斗へ 椎茸ちゃんと食べて」
最後のメッセージに、静かに嗚咽する侑斗。
「モモタロス……ウラタロス、キンタロス……リュウタロス……まだ話したい事があったのに……。さよならも言えなかった」
膝をつく良太郎。言葉をなくすコハナ。
廃墟を風が吹き抜け、残るはただ砂ばか――
カメラ手前に見覚えのある後頭部。
何故か消滅しなかったイマジンカルテット&ジークが、地面の窪みに隠れてヒソヒソ話をしていた。
「やっべえなぁ……タイミング逃した。困ったぁ……」
「先輩、早く出てった方がいいって」
「無理だよおめえ。あんだけ盛り上がってんだからよぉ。出ていけねえよ」
「じゃあ僕が」
「なんでおまえなんだよっ」
「むぅ……あれたちは、なぜ私の名を呼ばぬのだ」
「こらっ、おまえが行くな」
「じゃあボクが行くぅ!」
「なぜ私の名を呼ばぬの」
「「「「頭が高い」」」」
「私が真っ先に」
「「「「頭が高い!」」」」
誰が最初に出て行くかで揉めていたイマジン達、半眼の良太郎に気付かれる。
「何やってんの?」
イマジンの未来は消え、しかし、彼等は消滅しなかった。
鬼気迫るチャーハンデスマッチもクライマックス、残り僅かの米が旗を支え、奇跡の粘りで大逆転勝利を収めたオーナーは誰にともなく一人呟く。
「記憶こそが時間。そしてそれこそが、人を支える。もう、誰の記憶に頼る事もない。彼等が共に過ごした、時間と記憶が、彼等を、存在させるんです」
皮肉にも、イマジンの未来との接触を断たれた事で、イマジンズは“今”に存在を確立するのであった。
最後本当にチャーハン食べているだけだったオーナーですが、基本バランスブレイカーなので、クライマックスの現場から外したい、というのはあったのでしょう。その上で、オーナー不在がナオミにルール無視のチャンスを与え、最後の最後でチャーハンが演出的に物語と繋がる、というのはお見事。
チャーハンの旗はもう、(たぶん演出の方が)完全に意地で繋げただけかとは思いますが(笑)
「みんなぁぁぁぁぁ!!」
良太郎、イマジンズにダイブ。ゼロライナーでは、泣きながら椎茸ご飯を頬張る侑斗の元へデネブも帰還し、涙を流す。
そして病室の愛理の元へは……
「守れたのね……私たちの、未来」
愛理の手が桜井侑斗の頬に触れ、そして、桜井侑斗は消滅する。
「わかってる……いつか、きっと……」
「未来は、きっと……」
かくて全ては終わり、現在は守られた。
良太郎はオーナーにパスを返し、デンライナーを下車する。
今日もミルクディッパーには羽虫ーズと、にこやかな愛理の姿。
羽虫ーズは最後まで羽虫ーズでしたが、それでいい。
自転車で走る良太郎の横を、走り抜けていくゼロライナー。侑斗は自分の時間へと帰り、デネブは……ゼロライナーの車掌か?
続けて通り過ぎていくデンライナーから、それぞれ別れの言葉をかける仲間達。
「愉快であった」
「じゃあね」
「オレの、強さに、おまえが、泣いた。ぐぅぅー」
「楽しかったよね? 答えは聞いていない」
最後にずっと黙っていたモモタロスも立ち上がり、勢い込んで窓に頭をぶつけながら、良太郎に手を振る。
「まぁた会おうぜい!」
笑顔の良太郎も手を振り返し、自転車に始まり、自転車で終わる、『仮面ライダー電王』、これにて閉幕。
「いつか、未来で」
・・・
いやぁ、配信半年間、存分に楽しませていただきました。
念の入った伏線、丁寧な展開、泣いて笑ってそして怒濤の大団円!
様々な謎が解かれていく中で、失わせたくない者と、失いながら戦う者、二人のライダーの想いが交差し、そこに、愛する者達の為に全てを賭けて戦っていたもう一人のライダーが浮かび上がる。特にこの、ある種古典的なヒロイズムの延長線上に居た侑斗の更に先に、究極とも言える形で桜井侑斗が存在していた、そしてそれが本当に最後の最後まで明かされない、という構造はお見事。
後の細かい解釈は個々にお任せ……という範囲だとは思いますが、個人的に気になった所を中心に、蛇足気味に幾つか。
過去侑斗と未来ハナはそもそもイレギュラーなのですが、それぞれの“現在”へ戻ったところで、存在が固定されるという事でいいのでしょうか……桜井侑斗は最終的に自らの存在を消滅させる事により、部分的に未来を知ってしまった過去侑斗が、自分と切り離された存在として人生を生きられるようになる所まで仕込んでいた……という理解で良いのかな?(或いはそうしないと、過去侑斗が桜井侑斗をなぞってループしてしまうという事になるのか)
まあ、過去侑斗もバッチリ、貴方の嫁のフェロモンに脳髄まで浸蝕されていますが!
というか、そこまで仕込みっぽいんですけど。
ある種、時空を超えたノロケなのかもしれませんが、自分自身の事とはいえ、桜井さんの計画は、過去侑斗が愛理さんに惚れるの前提っぽい(笑)
で、若干強引に解釈すると、ハナ→コハナの変化は、桜井侑斗の計画にともない、繋がった未来におけるハナの誕生が10年ほど遅れる、という事なのか。
というか今頃、侑斗はミルクディッパーを探しているのか……(笑)
この辺は前向きに、大団円の一環として捉えたい。
ハナ&コハナは、紆余曲折の結果、ヒロインにはなれなかったものの、物語の最終的なキーに。
まあ、修羅だから仕方ない。
カイに関しては、最終的にはよくわからないまま消滅(?)。
恐らくカイの背景や、タイムリミットなどについて設定はあったのかとは思いますが、特に語られないまま終わりました。この辺り設定の出し入れに関しては、別に全て語る必要はない(同時に、劇中で語られなかった設定は存在してないと同義)と思っているクチなので、変にカイにも事情があるんだよ(終盤の描き方を見るとそういった感じであった)、とされるよりも、作品としては良かったと思います。
ラスト3話は、普段通りにギャグもやりつつ各イマジンの見せ場も作りつつ謎解きもしてクライマックスにふさわしいバトルもして、とさすがに少々、忙しくなった印象で、出来ればあと1話欲しかった所か。それでも充分面白かったですが。
あと今回ばかりは、配信で3話連続で見ると、つい30分ほど前に感動の別離をしたイマジンがしれっと帰って来て、台無し感5割増し(笑)
まあ今作は、クライマックスフォームにしろライナーフォームにしろ、シリアスに盛り上げた後で、台無しな豪球を放り込んでくる、というのが一つパターンになっていたので、許されるのですが。
この辺りもシリーズ構成の妙味というか。
後まあ落ち着くとまた少し出てくるかもしれませんが、非常に面白かったです。
厳密に突き詰めると幾つか筋の通りにくい所もあるかとは思いますが、多少の瑕疵は無視していいほどの完成度と面白さでした。結局はそこの足し算引き算で、充分すぎるプラス。
素晴らしい作品でした。
また、感想連載中にコメントを下さった皆様、こういった複雑な作品に関して、非常にネタバレに配慮したコメントをいただき、ありがとうございました。
個々のキャラクターの話など、残りは色々、最後にまとめで。