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『仮面ライダー電王』感想21

◆第36話「憑かず、離れず、電車斬り!」◆ (監督:舞原賢三 脚本:小林靖子
ゼロライナーに乗り込み、“桜井さん”とゼロノスのカードについて説明をうける良太郎。
デネブによると、“桜井さん”とデネブが契約し、そのデネブが侑斗にカードを渡したのだという。
「全部桜井さんが決めた事なんだ……突然居なくなったのも……桜井さんの記憶が消えていくのも……そんな……」
「しょうがないだろ」
「しょうがない……?」
「ああ。やらなきゃ未来は消える」
「僕はそんな簡単に納得できない。侑斗は本当にそれでいいの? 言われるままに変身して、戦って」
「言われるままじゃない! 自分で決めて、受け取ったんだ。これからも俺は変身して戦う」
「自分の存在を犠牲にして?」
「……今更だろ。もう覚えてるヤツはほとんどいないしな。そのうちおまえだって忘れる」
どうなのかなーと思ってはいたのですが、この台詞から判断すると、デネブの“お友達大作戦”はやはり、現在進行形の侑斗を少しでも繋ぎ止める為、という理解でよさそう。
愛理の事もあって珍しく良太郎が強行に反駁するのですが、その中に既に、良太郎にとって侑斗が“友達”になっている、というニュアンスが含まれているのも上手い流れ。
そして、“失わせたくない者”と“失われていく者”と、戦う二人の意義がぶつかり合う。
「使う必要ないよ、こんなの!」
良太郎は思わずゼロノスカードを奪って走り去り、俺が追う、と言いつつ侑斗を食い止めるデネブ。
「侑斗、ここはこのまま……」
「何がこのままだ、馬鹿!」
ここ数回、心底、侑斗を心配しているという描写のデネブですが、改めてイマジンとしては、デンライナー組に負けず劣らずぶっ飛んでいる模様。“桜井さん”と如何にして契約したのかなど、今一番、謎多き存在かもしれない(笑)
最もストレートに考えると、本編の始まる約2ヶ月前(“桜井さん”失踪時)――或いはもっと以前からイマジンの侵略行為は始まっていて、デネブに憑依された“桜井さん”がそれを知って……という流れになりますが。
一方デンライナーでは、キンタロスが良太郎とうまくシンクロできなかった件について考えていた。
オーナーの「どうやら、変化は続いているようですね……新しい路線が見えてから、ずっと」という言葉に、何かに思い至るウラタロス。
「ぼくたちと、良太郎の未来は、一緒じゃない、てこと」
「…………そんなのは最初からわかってる事じゃねえか。俺は暴れられれば文句ねえよ。戦えるだけ、戦うぜ」
「そこや、問題は」
「良太郎が強くなりたいって言い出したのも、案外、いいタイミングだったかもね」
「ああん?」
なにやら策を練り始める、イマジントリオ。
どうやら電王が活躍した事で、“イマジンが過去に侵攻してこない未来”が生まれつつあり、良太郎とイマジン達の存在する時間が大きくズレ始めている、とか、そんな所でしょうか。
とすると電王は、戦えば戦うほど別離を必然とする、という事になりますが、この辺りは今作と同じく小林靖子がメインライターを務めた『未来戦隊タイムレンジャー』を思い起こす所でもあります。
モモさんがそれを飲み込んだ上で、「俺は暴れられれば文句ねえよ」という言葉の持つ意味が、1話の頃とは違うものになっている、というのも実に上手い。
そういえばウラは意図的に特異点に憑いたと言っていましたが、未来がズレても存在を保てる可能性が高いから……とか、そんな所でしょうか。
と、侑斗の秘密が明かされて以降、一気に色々と繋がっていく、点と点。
初の衣装チェンジしたコハナと(ナオミ辺りが見繕って買ってきたのか?)ミルクディッパーに戻った良太郎は、愛理から望遠鏡を譲ってほしいという客が居る、という相談を受けて思わず激高。
「本当にそう思ってるの? あんなに大事にしてたのに」
「え?」
「姉さん、やっぱり思い出さなきゃ駄目だよ。この望遠鏡の事。それに……この時計の事も。忘れていい筈ないんだから。思い出してよ、絶対覚えてる筈だよ!」
「良ちゃん……?」
ミルクディッパーを飛びだそうとした所で侑斗とばったり出会ってしまい、その場を離れる二人。ゼロノス抜きでも戦えるように強くなると言う良太郎だが、それでは遅すぎる、と侑斗は容赦の無い言葉を浴びせる。
「未来を消していいのか?」
「何かを犠牲にするのが、正しい方法だとは思えない」
あくまで侑斗を止めようとする良太郎だが、その時、2006年に残った2体のモールイマジンが電王を呼ぼうと暴れだし、2007年のビル群が次々と崩壊していく。会話のバックにサイレンの音が聞こえるなど、現在進行形の被害が入る、今作としては珍しい演出で、イマジンの脅威を改めて強調。

「おまえ前に言ったよな……弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても、それは何もやらない事の言い訳にならない。未来の俺が言ってたって」

「そうだよ。だから僕は……」

「知らないでもやれっていう奴が、知ってるのに黙って見てられると思うか。……犠牲になる気はない。俺は強くて運もあるしな」

油断していると、不幸は感染するけどな……!
ここでくるっと、良太郎に力を与えた言葉が、侑斗の“理由”になる。
その強さに、良太郎はある意味で、諦める。
代わりに、信じる。
「これ……君の事なのかも。“過去が希望をくれる”」
桜井侑斗を信じる。
持ち出してきてしまった懐中時計の裏蓋を見つめ――
そして、

「侑斗……僕も犠牲にする気はないよ。君が何枚カードを使ったって、僕は絶対忘れない。姉さんの記憶も取り戻す」

野上良太郎を信じる。
良太郎は侑斗にカードを返し、二人は並んで変身。今ここに二人のライダーが初の揃い踏みを果たし、過去へと跳ぶ……!
「おい良太郎、過去に跳んだらやばい事になるかもしれないが、慌てんなよ!」
(え? やばいことって……?)
「まあ、行ってみてからだ。一応準備もしてるしな!」
デンライナーではリュウタロスが皆に囲まれてお絵かき中。
そして廃墟(劇場版のクライマックスと同じロケ地)でモールイマジンと対峙する、電王とゼロノス

「俺、参上!」
「最初に言っておく。俺はかーなり、やる気だ!」

ところが……
モモタロス……なんか、モモタロスの声が遠いんだけど)
「やっぱりな……おい良太郎、もうおまえに憑いていらんねぇ。いいか、しばらく一人で――」
戦闘開始早々、S電王への変身を保てなくなってしまう電王。強制的にプラットフォームに戻り、モモタロスデンライナーの中へと弾き飛ばされてしまう。ゼロノスは大剣をP電王へと渡し、自らはデネブを呼んでヴェガフォームへとチェンジ。P電王はへっぴり腰で大剣を振るうもドリルモールに押されっぱなしとなり、炸裂するダブルモグラビームの直撃を受け、ゼロノスともども吹き飛ばされる。P電王をかばってデネブと分離するほどの大ダメージを受けたゼロノスが立ち上がれない中、大剣を手によろめきながらも立ち上がるP電王。
ここは意図的に被せたのだと思いますが、劇場版のクライマックスを思わせ、良太郎が個人で根性を見せる事がより強調。
「野上……無茶だ……」
「でも……やらなきゃ」
更なるモグラの攻撃を受け、工場の屋根を突き破って地面に叩きつけられるも、死力を振り絞って立ち上がるP電王。
「決めたんだ……強く……なる……」
容赦なくモグラのとどめが迫るその時、飛び込んでくる4つの光。それは砂状態で過去へとやってきたモモタロス達であった。4つの光は融合すると例の赤い携帯電話となり(もともと持っていた赤い携帯電話に合体したと考える方が自然ですが、演出的にはこう見える)、P電王がそれをベルトに装着すると、黄金の線路に乗って飛んでくる、変な剣。
変な剣。
へんなけん。
柄の所に電王4モードの仮面が付いているという、脱力ものの大型剣に言われるがままにパスをはめこむと、今度はデンライナーが走ってきて、それに触れたP電王は、燃え上がるような新しい姿へと更なる変身を遂げる!
その名を、ライナーフォーム!
スーツの基本色が赤となり、赤い目の横に、青・紫・黄色のぎざぎざ、そして、頭にパンタグラフ
変身時のCGといい、頭のパンタグラフがえらく強調されているのですが、えーとこれはあれか、外部からエネルギーを得ているというイメージなのかそうなのか。まあ単純に電車という事なのでしょうが。
これこそ、良太郎に憑依できなくとも、電王に4人のパワーを与えるという秘策であった。
デンライナーの中で、メリーゴーランドのような設備に座り、良太郎に話しかけるモモタロス達。
「あ……これで話せる相手が変わるんだ」
変な剣の取っ手を動かすと、マスク部分が回転。それに合わせてデンライナー内部の椅子も回転し、コンタクトできるイマジンが変化。
ひどい、色々ひどい(笑)
淡々と、「ウラロッド」「キンアックス」「リュウガン」「モモソード」と読み上げる、音声ナビもたいがい酷い(笑)
……何かに似ていると思ったらあれか、ダーツ板だ。
「必殺技きめんだよ必殺技!」
モモタロスの声に応じ、変な剣を構えたライナー電王は、浮かび上がる黄金の線路の上に身を滑らせ、ライナーフォームの底知れぬ危険な雰囲気というか出鱈目さに恐怖を感じたモールイマジンの放つ合体モグラハリケーンとぶつかり合う!
「必殺技! えと…………んー……電車斬り!」
最悪な感じの必殺技は、しかしあっさりとモールイマジン2体を両断。強敵モールイマジン兄弟も、良太郎達の絆の力(という事にしておこう)の前に撃滅されるのであった。
変な剣、終始へっぴり腰、最悪な必殺技の名前と、かつてない衝撃、前代未聞、空前絶後超弩級の格好悪さで、新フォーム・ライナーフォーム登場。
CLIMAXフォームも酷かったですが、輪を掛けて酷いものが突っ込まれてくるとは、夢にも思いませんでした。
本体てんこ盛りに続いて武器てんこ盛りという事で、発想としてはCLIMAXソードといった所なのでしょうが……玩具、あったのでしょうか、これ。クリスマスに買ってきたらむしろ泣かれそうなレベルですけど。
しかし、格好良いつもりで格好悪い、というのはままありますが、明らかに確信犯で、もう、笑うしかありません。後々これを格好良く見せてくれるんですよね? という期待値込みで。
泣けるで!
祝勝会ムードのデンライナーでの説明によると、ライナーフォームへのパワーアップにはオーナーの協力もあったそうですが、具体的にオーナーがどんな協力をしたのか、通常、積極的に助けてくれないオーナーがどうして協力してくれたのかは、謎。
「どうして過去でみんな僕に憑けなかったんだろ……」
という良太郎の疑問には、皆誤魔化して、だんまり。
次回以降を見ないと何ともですが、今の所は、過去でのみうまく憑けない、という事でしょうか。となると今後は、現在での戦いでは各フォームを使うけど、過去ではライナーフォーム、という事になるのか。必殺技のギミックとか割と好きだったのですけど、CLIMAXフォームはお役御免になってしまうのか、心配です。
必殺技といえば、ライナーフォームのダーツ剣も接続しているイマジンごとに技が変わったりするのでしょうか。
さしづめ、
電車突き・電車断ち・電車撃ち
といったところか。
特製ケーキも出てきて大騒ぎの中、オーナーは隅のテーブルで沈黙し、ひとりワインを口にするその視線は、謎の路線を見つめていた……そしてその奥で、何かが光る――。
侑斗の覚悟と決意、そして良太郎の新たな決意。
二人の仮面ライダーは、改めてそれぞれの信念を強くしながら、戦いに臨む。
ゼロノスカードの秘密編は、今作がここまでじわじわ積み上げてはいたものの、直接は触れなかった「ヒーロー」という要素に踏み込んで、ひとまとまり。
ゼロノス/侑斗のヒーローたる所以と、物語の謎も上手く絡まり、お見事。そしてそれを受けて、良太郎が更なる一歩を踏み出す、という有機的な繋がりがしっかりと出来ており、主役が引っ込んでしまわないのも良い所。ゼロノス/侑斗というヒーローにスポットを当てて描きながら、しかしそれが、野上良太郎というヒーローをあぶり出す形になっている。
今作は、表向き突飛でイレギュラーな作風なのですが、その一方で、凄く丁寧にヒーロー物をやっており、それをしっかりとまとめるエピソードとなりました。その骨組みがちゃんとしているのが、今作のとても優れた所。