◆第41話「キャンディ・スキャンダル」◆ (監督:石田秀範 脚本:小林靖子)
侑斗&デネブ、公園の一角?で寝泊まりしていた事が判明。
……と言っても、ゼロライナー車内で食事している所は何度も描かれていますので、普段はゼロライナーで寝ていると考えた方が自然であり、監督の悪のりの一環かと思いますが。
冒頭の雪崩式坂転がりに始まり、遊園地を彷徨う良太郎と侑斗、突然の着ぐるみ、など石田監督の悪のりが全開。
まあ、石田監督に長い尺の説明会話シーンを与えたら何かやってくれるに違いない、むしろ何かしろ、という雰囲気がありますが。
このノリが好きか嫌いかでいえば、やり過ぎが目立つのは気になるのですが、石田秀範が00年代の東映ヒーローものを代表する監督なのは間違いありません。
平成ライダー10年で、“巧い”のはやっぱり、長石多可男と石田秀範。
演出テンポの好みの問題もありますが、80・90年代なら、小林義明、東條昭平、長石多可男。00年代なら、長石多可男、石田秀範。
と、名前を挙げたい。
雪崩式坂転がりはドタバタギャグなのですが、自転車の人はけっこう命がけ。
愛理が侑斗の事を覚えていないのをハッキリと目にした良太郎は、侑斗を追いかけて遊園地でここまでのまとめ。
「ずっと考えてたんだ……」
「何を?」
「君と桜井さんのやってる事は矛盾してるって」
侑斗はもしかしたら、良太郎を撒こうと思って遊園地に突入したら、平気でついてこられてしまったのか。
ゴーカート、メリーゴーラウンド、ミラーハウスなどアトラクション行脚をする二人。
分岐点の鍵である桜井侑斗を消そうとするカイから逃げる為に桜井さんは過去を巡り、そして侑斗には戦う力を与えた。しかし、ゼロノスが戦えば戦うほど桜井侑斗の記憶は失われ、その存在は削られていく。ならば、桜井の行為は、自分の存在を危うくするもの……突き詰めればカイのやっている事と同じではないのか?
「俺は自分を消す為に戦ったりしない。ただ、未来を消さないために、やらなきゃいけない事をやってる。言えるのはそれだけだ」
「自分を消すつもりじゃないならいいよ」
侑斗の言葉に納得した良太郎は、改めて、自分も戦い続け、愛理の記憶も諦めない、と決意を表明。あと台詞を聞く限り、侑斗にはまだ、良太郎に説明していない何かがある模様。
一方、黒幕たるカイは、部下の無能な仕事ぶりに、少々お疲れの様子であった。
「この時間を俺たちの時間につなげるんだよ。そうすれば…………ふふっ。俺もああいう顔して何か思い出したりするのかも」
良太郎を思い浮かべるカイ、台詞を額面通りに受け止めると、カイは“過去を持たない”存在なのでしょーか。残り話数1桁っぽいのに未だに黒幕の背景がさっぱり見えてきませんが、それで物語が成立しているというのも見事。
「居た……あれでいい」
必要な時間に跳ぶ為の、目標の人物を見定めるカイ。
やっぱりカイ、けっこう一生懸命、自力で検索していたのか(笑)
契約者の目標を指定したり、電王関係の最新ニュースをラジオで伝えたり、イマジンラジオの取締役も、割と大変なお仕事の模様。
カイが探し当てた人間は、望月翔子。なにやら病院を退院し、快気祝いに遊び歩いているらしい翔子に、オクトイマジンが憑依する……。
前回の件(自分が侑斗を忘れていた事)にふかーく落ち込んだデネブ、思いあまって、眠った侑斗に憑依。
D侑斗になって、夜の街で飴を配りまくり、侑斗の記憶を持った人を増やそうと暗躍。その秘密活動中、遊び疲れて公園のベンチで眠りこけてしまった翔子を見つけ、上着をかけてあげたのがきっかけで、全く自覚のないまま、何となく翔子といい雰囲気になってしまう。
意外と、天然ジゴロだ、デネブ。
少なくとも、M、K、Rよりは、モテスキル高いゾ(笑)
そしてデネブ、鼻が悪いので、翔子に憑いたイマジンには気付かず。自宅に戻って恋する乙女モードの翔子は、イマジンの声をスルー、という離れ業をやってのけるが、会話の流れで、「侑斗を連れてくる事」が望みになってしまう。
翌朝、翔子と約束した公園にそれとなく侑斗を連れて行こうとするデネブだったが、途中で昨夜のキャンディ大作戦が侑斗にバレてしまう。怒りの侑斗に、突如からみつくタコイマジンの触手! 不意打ちをうけて大ピンチに陥る侑斗だったが、そこに、俺、参上!
珍しいバイク戦でタコの触手を切り裂くS電王であったが、タコの特殊能力でバイクが操られ、暴走してしまう。
「操られてる?! この馬鹿野郎! しっかりしろぉ」
普段の扱いが雑(ごくたまにしか乗らない)だから、バイクとの間に信頼関係が感じられない仮面ライダー電王であった。
挙げ句、強行降車でバイク放棄。
暴走バイクから強引に脱出したS電王は、タコに「俺の必殺技――パート5!」を炸裂させている最中に、後ろからぐるっと回ってきたバイクに轢かれる(笑)
愛が足りてない(笑)
バイクはそのまま海に転落、タコは煙玉(タコ墨玉)で逃亡。
「俺のバイク……デンバードぉ!」
て、名前、あったのか。
よくよく考えると、バイクが無いとデンライナーで過去へ跳べない気がしてきましたが、これ、演出上の勢いなのか、はたまた次回への伏線なのか(笑)
オクトイマジンの目的は、誰かの元へ「桜井侑斗を連れて行く事」。本来ならこの時間で侑斗の事を知っている人間はごく限られている筈だったが、デネブのキャンディ大作戦により、契約者候補が絞れなくなってしまう……。公園で侑斗を待ち続ける翔子……果たして、時の旅人と恋する乙女の関係はどうなるのか?!
前回からのイマジン合唱OPに映像が合わないのが気になったのか、今回からOPに本編映像が大量に挿入される形となり、歌と絵の違和感は多少、軽減されました。しかしイマジンバージョン、強烈に耳につく(^^;
◆第42話「想い出アップデート」◆ (監督:石田秀範 脚本:小林靖子)
いーね! いーね! スゴいね!
OPの合いの手がウラバージョンに。
……なんか、気持ち悪い(おぃ)
「俺は決めたんだ! 関係ないやつを巻き込むなっ! この馬鹿ぁぁっ!!」
タコイマジンの攻撃で負傷してデンライナーに運び込まれた侑斗は、色々な人に侑斗の記憶を持ってもらおうとしたデネブの行動を責める。興奮状態の侑斗だったがナオミに謎のお薬を注射されて意識を失い、とりあえずデネブと良太郎は翔子との待ち合わせの場所へ向かう。はたして……待ち合わせを3時間もオーバーしたにも関わらず、二人は公園で遊んでいた翔子の姿を発見。
「俺じゃ駄目だ……。ほら野上、彼に、頼んでくれ」
「彼って……?」
「ほら、カメタロス」
「カメタロス……?」
確か以前にキンちゃんの事も、クマタロス扱いしていた事がありましたが、結局のところ割と侑斗以外の事はぞんざい(笑) 心の中の棚が足りないというか。
ご指名にお応えして登場したU良太郎は翔子と接触、コートを取り戻そうとするがさらりとかわされ、代わりに携帯電話の番号を渡される事になる。
「ま、簡単に言って……桜井侑斗に一目惚れ、だね」
久々に女性相手の活躍の場だったのに釣り針を完全にスルーされ、少々プライドの気付くウラタロスであったが、U良太郎とデネブは、翔子が寝転がっていた場所に砂の跡を見つけ、彼女こそがオクトイマジンの契約者であったと知る。翔子の願いは恐らく、一目惚れした王子様と再会したい……
M「その王子様ってのは、おデブと侑斗のどっちなんだよ?」
K「当然おデブやろ。“男は中身“やからなぁ、はっはははは」
「あー、それは幻想ですよ」
ナオミさーん(笑)
車内に戦慄が走る中、イマジンが直接侑斗を狙ってくるとは限らないと、契約者を直接見張る為、翔子とのデートに臨む事になるD侑斗。
前回は何故か男二人で遊園地を彷徨う事になりましたが、今回は東武動物公園でれっきとしたデート。変なラブコメを、ひたすら楽しそうに撮ってます、監督。
初めは逃げ腰だったD侑斗だったが、《スキル:染み抜きLV5》の発動をきっかけに距離が縮まり、和気藹々。なお、表に出る事を拒否してデネブに任せようとする侑斗はやはり、女性の扱いが苦手っぽい(笑)
動物園を堪能し、どういうわけか砂浜でキャッチボールを始める二人。周囲をガードしていた良太郎はそこへ近づくオクトイマジンの気配に気付き、ロッド電王に変身して迎え撃つ。
「デートの邪魔する前に、僕に釣られてみない?」
キャッチボールをしながら、最近まで闘病生活を送っていた事を語る翔子。明日があるかはわからないけど、昨日があるのは間違いなくて、一日一日を生きていく内に、やがて明日は今日になる。必ずチョウになれるとは限らないけれど、今日を生きているサナギが好きだ、という翔子の言葉にいたたまれなくなったD侑斗は、わざとボールを遠くに投げ、その場を逃げ出す。
「侑斗……どうしよう……あんなに、あんなに一生懸命で、毎日大切にして。侑斗の事もほんとに……」
「でも俺が変身すれば忘れる。……忘れられるほうだけ考えるなよ、デネブ。……忘れる方だって辛いんだ」
ここまで行動や言動ではそれとなく見せられていましたが、明確には語られていなかった、侑斗が敢えて孤独で居ようとする理由がここでハッキリと言明されました。
自分の変身は未来を守る為だが、その為に、誰かの記憶――すなわち時間を、いたずらに奪いたくない。
39話、赤いゼロノスカードを手に、「もうあの店(ミルクディッパー)には行かない」と宣言していた心情もハッキリとし、いったいどこまでヒーローなのか、桜井侑斗。
というか、どこまで酷い設定なのかゼロノス。
“ヒーローの持つ暴力性の矛盾”というのは古くより指摘される所ではありますが、“未来を守るために過去を消費する”という、存在性の矛盾したヒーローであるゼロノスは、ヒーローの宿すそういった根源的な矛盾に対するアプローチの亜種なのかもしれません。
一方で、愛理への未練を断ち切るような事を言いながらも、前回冒頭、明らかに偶然とは思えないタイミングで引ったくりを撃退した辺り、変なスキルに目覚めてしまった気もしないでもないですが。そこが“人間”の葛藤というものであります。
ただ“目的”と“心情”としてはともかく、状況としては追い詰められているので、“手段”を選んでいる場合なのか、という問題はあるのですが、そこで“手段”にこだわるというのも、一つの正道ではありましょう。
果たしてこの先“極限の選択”を迫られる事になるのかどうか、行き着く所を楽しみにしたいです。
「桜井くん……? 桜井くん」
デネブと分離した侑斗は、くしゃみをする翔子に自分のマフラーをかける。
「ごめん……俺は忘れないから」
そこへ暴走トラックでロッド電王を追い散らしたタコが出現。侑斗と翔子が一緒に居た事から、棚ぼた的に契約完了。完了というか、要するに何もしていないぞタコ。
タコは2006年11月15日――翔子が病院の庭でサナギを見つけた日へと跳び、タコを追う為、翔子の目の前で「変身」するゼロノス。
座り込む翔子と赤茶けたゼロノスを画面左に置いて、右手の空には真っ赤な夕陽が浮かぶ、落日の砂浜(撮影は多分、このカットだけどこかの土手ですが)という、素晴らしいカット。
やはり絵がいいと、見ていてボルテージが上がります。
病院の庭で桜井侑斗を見つけ、暴れ回るタコ。なお今回、カイの台詞に「教えてやった場所を壊しまくれ」というものがあり、必ずしも桜井さんを直接狙うだけでなく、場所を破壊する事にも、何らかの意味がある模様(多分)。初期のイマジンの行動との整合性を取るため、というのもあるかとは思いますが。
「最初に言っておく、俺は、かーなーり、強い!」
タコとぶつかり合うゼロノス。タコの力で腰の剣を操られるが反撃に転じ、背後から迫った変則触手攻撃を、やってきたライナー電王が切り払う! 最後は、電車斬りとスーパーデネブ砲がクロスで炸裂、とここで格好良くダブルライダーの共闘を入れました。
ようやく並走しながらも、しかし互いの戦いへの姿勢から、交わらないと思われていた二人のヒーローの想い、それが「失う者の悲しみを知る」事から交わり、それに合わせるかのように、必殺技もクロスで炸裂。
溜めに溜めた上で、物語の意味と重ねた、非常に格好いいダブルライダーとなりました。
また、ライナーフォームは、勢い良くすぱっと出てきて、一気に必殺技に持ち込む、というのが一番格好良く見える用法っぽい(笑)
ところが、タコを倒したと思ったのも束の間、タコの能力が暴走したという事なのか、なんと、時の列車の「線路」が暴走。デンライナーとゼロライナーは、時の砂の世界で、線路と戦う事に。
最終盤に来て、まさかの、線路vs電車(笑) なお、デンバードは元に戻っており、前回の水没は特に伏線ではありませんでした。
暴走する線路(自分で書いていて日本語が意味不明)に苦戦するデンライナーとゼロライナーだったが、その時、地平の彼方から巨大な電車が姿を現す――それはあの、ターミナルが変形した、キングライナー! 集結した電車がキングライナーと合体し、なんだかもう大変な事に……て我ながら毎度同じような表現で誤魔化している気もしますが、正直、電車戦にはあまり興味がないので(^^;
今回で言えば、暴走線路の疾走感とか、TVシリーズとしてはよく出ていると思いますし、電車戦のCGそのものは格好いいとは思うのですけれども。
キングライナーの圧倒的な火力により暴走線路は粉砕され、平穏の戻る時の砂の世界。
そして現在――
砂浜で、我に返る翔子。
「なんで、こんなマフラー…………大体なんでこんなとこ来たんだっけ。……かーえろ」
この辺り、前回から一貫して陽性の人物と描いてきたのが、さっぱりとした切り替えに効果的となりました。若干、物語が暗いトーンになる中、エネルギー溢れる恋する乙女、というキャラクターが良いアクセントにして、好演・好演出。
翔子は駆け出すがその時、誰のものともしれないマフラーが、道ばたの灌木に引っかかって外れてしまう。
一瞬足を止めるが、
「んー、まあいいや」
走り去る翔子。
マフラーが落ちるのではなく、引っかかって、誰かの首に巻いたみたいに取り残される
というのが、素晴らしい。
走り去った翔子を見送り、砂浜に立ち尽くす3人の男。
「俺が馬鹿だった……自分の勝手で記憶を持たせて。結局あの子にも、侑斗にも」
「デネブ、俺は決めたんだ。だから、おまえも」
「侑斗……一緒に来てくれる?」
良太郎は侑斗をミルクディッパーへと連れて行き、扉の隙間からそっと店内を覗く侑斗。そこでは愛理が、あの、誰の為のものだか忘れ去った筈のノートを手にしていた。
羽虫B「愛理さん? なんですか、その、桜井君用スペシャルブレンドっていうのは」
羽虫A「まさか、僕たち常連より、更にランクが上の常連がぁっ?!」
さりげなく、この二人も侑斗を忘れている事がハッキリします(狙って個人の記憶を消すシステムではないでしょうから、今回あたり、まとめて消えたか)。
「いえ、自分でも書いた覚えないんです。……ただ、完成させなきゃいけないって。いつか、飲んでもらわなきゃ、って。不思議なんですけど」
微笑む愛理。
「侑斗……オーナーが人の記憶は強くて脆いって言っていたけど、僕は強いと思う。……姉さんは思い出すよ」
侑斗は唇を噛みしめながら無言で去って行き、良太郎はデンライナーへと戻り――固まる。
そこに居たのは、オーナーと並ぶ、オーナーと瓜二つの男・駅長。
……ああ、先日はずっとR良太郎だったり駅で降りなかったりで、良太郎は駅長に会うのは初めてでしたか。
駅長は前回、オーナーを通じて良太郎が問い合わせた、「桜井侑斗が分岐点の鍵とはどういう事なのか?」を調べ、それに答える為にやってきたのだった。駅長が運んできたアタッシュケースの中から出てきたのは…………というところで、つづく。
次回、やっぱり、
いーやん! いーやん! スゴいやん!
なのか、刮目して待て!