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ボトルショーなら空も飛べる筈――『Gのレコンギスタ』感想・第9話

◆第9話「メガファウナ南へ」◆ (脚本:富野由悠季 絵コンテ:斧谷稔 演出:遠藤広隆)
クリム・ニックミック・ジャックがアーマーザガンでメガファウナを離れ、ベルリはスルガン総監に船をキャピタル・テリトリィへ向けるように願い出る。後方の情勢に変化があったのか、ウィルミット・ゼナムというカードを手に入れたスルガン総監の決断により、メガファウナキャピタル・アーミィの目を避けながら、キャピタル・テリトリィへ侵入を目論む事になる……。
と、これまで基本、メガファウナに対してアーミィが攻撃を仕掛けてきてそれを迎撃する、という構図でしたが、メガファウナスコード教法皇接触する為、キャピタルタワーを目指して大陸に入る、と大きく状況が変化。
5話でのやり取りを見る限り、カーヒルの戦死後もキャピタルタワー占領作戦は継続しており、本隊と連動して動いていた筈のメガファウナがここでかなりリスキーな単独行動を取ったという事は、アメリア本国の方で何らかの方針転換なり情勢の変化があったという事か。
「中尉の帰国は、大統領からの圧力ですか?」
「いや、作戦上の都合です」
と、ベルリ母とアイーダ父が探り合いをしていますが、このやり取りがある事自体、色々と裏で動いているという事でしょうし。
ただ実際、アーマーザガンの出発時には出る2人も見送る艦長達もかなり深刻な表情をしており、モンテーロも置き捨てている事から、ゴンドワン絡みか宇宙絡みか、何らかの急を要する事態が後方で発生している、という可能性はありそうです。
占領作戦に関しては、メガファウナの出番が終わったから自由行動とまでは少々考えにくく、シンプルにアーミィの戦力が予想以上だったので方針を転換した、というのはありそう。そうすると総監が別の手を打つ為に行動するというのはすんなり繋がりますが、まあこの辺りは、見えていない部分が多いので色々なパターンが考えられ、どうなりますやら。
艦橋での会話シーンでは、それぞれの母と父が同席している事により、ベルリとアイーダの態度が少しよそ行きになっているのが面白い。
「申し訳ありません」
ときちっと頭を下げるベルリに、口が丸くなるアイーダ様。ちらっと母親の方を見たり。
……まあ、ここまで、野放図すぎたので、驚くのも無理はありません。
そんなアイーダ様のよそ行きのきりっとした表情に改めて見とれるベルリ、女子とノベルからブーイング(笑)
艦橋に突入してきたノレド達に対し、「行儀よくなさい。ここはよそ様の軍艦ですよ」という母のセンスが引率の先生みたいですが、段々面白くなってきたので、これはこれで良い気がしてきました。
メガファウナは大陸に入って一路キャピタル・テリトリィを目指し、ここからしばらくは、メガファウナ珍道中とでも言った趣。
クルーの動きを中心に、メガファウナ全体に厚みを与える描写が細かく入るのですが、ボトルショー3話分をダイジェストにしたような構造。
仮に今作が1年4クールものだったら、この道中で5話ほど使って内3話ぐらいサイドエピソードを入れるのだろうなぁという感じで、来週の『Gレコ』は、


メガファウナ、食料を買う」
「母さん、船に酔う」
「アルケイン射出訓練」

の3本をお届けします、みたいな。
ボトルショーの有無というのも良し悪しがありますが、今回ぐらい鮮やかに圧縮されると、1話ぐらい寄り道エピソードも見たいなぁとは思ってしまう所。まあ今作に関しては2クールにまとめる事でクオリティを保っている面があると思うので、これ以上を望むのは贅沢かなと考えますが。
物語を進めつつボトルショー的エピソードを圧縮して見せるというアイデアも含め、非常に良いAパートでした。
キャピタルガードと連絡を取る為、有線の長距離電話を借りようと二足歩行メカで移動する、ベルリ、ベルリ母、ノレド、ラライヤ、アイーダメガファウナ看護師の一行。
3話の時は巨大なMS(モンテーロ)と自然&動物という描写が重ねて入りましたが、今回は人間の視点で、豊かな自然や動物が描かれます。
そんな道中、

「内緒の話なんだけどー」
「はい?」
「ベルって、貰いっ子なんだって」
「え? ご養子って事ですか?」
「本当の事は知らない」
ノレド、さらっと内緒の話をする(笑)
キャピタルガードと連絡を取る事に成功し、合流を目指すメガファウナギアナ高地を低速飛行。
「う、宇宙戦艦なんて……人類を滅亡にうっ」
揺れるメガファウナの中で酔うベルリ母。エチケット袋を進めるが拒否られるアイーダ父(笑)
とにかく今回は、端々の細かい描写がいちいち秀逸で、いつも以上に拾いきれません。
またこの辺りの会話のやり取りとこれまでの流れから、キャピタルタワーの所在地が、カリブ諸島から南下して南アメリカ大陸に入り、ギアナ高地を抜けたアマゾン川流域の赤道近辺、と大まかにですがハッキリしました。
テーブル台地の地形を利用してアーミィのレーダー網をかいくぐろうとするメガファウナだが、偶発的にマスクのエルフ・ブルックと遭遇してしまう。
「こんな所で奴に出会えるとは。絶望しないで済むぞ、G−セルフ!」」
という台詞からすると、前回部隊を壊滅させているし、クンタラ仮面は海賊部隊の掃討任務を外されたという事でしょうか。
ベルリはエアバッグによる対Gを利用しながら、G−セルフで反転射撃。
オートパイロットで射出されたモンテーロの突撃で右手を破壊され、G−セルフの背面蹴りを浴び、アルケインの射撃によって左翼を破壊され落下していくエルフ・ブルック
「バララ!」「これまでか、バララ!」
最初「バナナ!」と聞こえて、先輩は何を言い出したのだろうかと、思わず巻き戻して聞き直してしまいました(笑)
聞き直した結果、「バナナン」? クンタラ的な「南無三」みたいな感じ? と思った、私の聞き取り能力。まあこの時点で、人名とは思いませんでした(^^;
エルフ・ブルックを諦めたマスク大尉は、何を考えたのか、高空でコックピットハッチを開くと、外へ。エルフ・ブルック撃墜に迫っていたG−セルフだが、その姿を見て動きを止める。
「人ぉ?! 人を見ちゃったら撃てないでしょぉ!」
一瞬、外へ出たマスク大尉がG−セルフと目が合うのですが、変なマスクをつけている為にベルリが先輩だと気付かないのが切ない。
脱出装置が作動しなかったのか、下手すると元々ついていないのか、キャプテン・クンタラは外へ出ると、横に並んだ僚機の飛行メカめがけて――
飛ぶ!!
「へいぇぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
――そして勿論、風にあおられて、引き離される(笑)
「駄目でしょぉぉぉ!!」
咄嗟に、ビームライフルの砲身でマスクの背骨を強打するベルリ(笑)
「バララぁ!」
G−セルフはエルフ・ブルックの噴煙にまかれて目標を見失い、空中で加速のついたマスクはエフラグとの生身ランデブーを図るという、いきなりのアクション・スペクタクル(笑)
前回「実験台」という台詞がありましたが、キャプテン・クンタラはやはり超人血清を打たれて、肉体的に強化されていたりするのでしょうか。普通ビームライフルにはたかれた時点で死にそうな気がするし、そもそも、墜落する機体で軟着陸を図る前に、空中へダイブするという、発想がおかしい。
……まあ、あのままだとG−セルフにトドメを刺されていた可能性が高いので、結果的には間違っていなかった……と言っていいのかどうなのか。基本的にどう考えても詰んでいたので、ここから、マスク先輩の不死身伝説が始まるのか。
マスク大尉はなんとか飛行メカに拾われ、ここで先程から名前を呼んでいた新キャラ・バララが初登場。ボトルショー的展開で厚みを出す→ノルマとしての戦闘→生身アクションスペクタクルでスパイス、から、新キャラの顔見せまで鮮やかにやってきました。
にしても、前回マニィが再登場したと思ったら、新しい女の影ですよ!
バララ思いの外可愛げのある感じだし、その辺りのもつれもちょっと期待したい(笑)
またこの遭遇戦で、リモートで射出されたモンテーロがエフラグの銃撃で全破。前回、綺麗な瞳さんが珍しく死にかけなかったと思ったら、今回、愛機が大爆発してしまいました(笑)
恐るべし、運命の調整力。
ジャハナムは出すな、勿体ない」という艦長の台詞があって、モンテーロの方が勿体なくないかと思ったのですが、どうせ誰も動かせないから、捨て駒にしても勿体なくないという事だったのか(^^;
このモンテーロ爆散とエルフ・ブルックの墜落は、タイミング的には、新メカへ乗り換えの布石というところでしょうか。
マスクを退けたメガファウナはキャピタルタワーへと近づき、キャピタルガードの部隊との接触に成功。レクテンキャノンはてっきり一発ネタだとおもっていたら、めでたく再登場。そして、ケルベス教官も再登場。テンション高い。
「キャピタルガードの職員というのは、ああいうものですか」
スコード教の信者、という方が正しいですね」
「あぁ……スコード教ねぇ」
ガードの一隊はメガファウナに補給までしてしまうのですが、戦争はアーミィがやっているだけで、自分達はスコード教の教えに従うだけ、という事なのか。タブー破り云々への不満もあるのでしょうが「キャピタル・アーミィとガードって、そりが合いませんから」で済む問題は超えている感じ。
まあ元々、アーミィが幅を利かせる以前(1−2話)から、キャピタルの構造自体にどこか、歪な気配はあったので、その根本に宗教的狂気があるというのが表に見えてきているのかもしれません。
慎重を要する操船の際、操舵士の肩に艦長が手を置いてえらく距離が近いのですが、親戚か何かだったりするのかしら。
メガファウナは密林の中に身を隠し、主要人物達はキャピタルの都市へ。そこでは週末の享楽的なお祭り中で、相変わらず、戦争の影が迫っている緊迫感は無い。とはいえ補充兵の徴募なども行っている事を考えれば、キャピタルはハレとケのハレが、極端に出る傾向がある、とも見えるところ。一行は法皇様との面会に成功するが、クンパ大佐(おしゃれシャツ)も遅れてその情報を手に入れていた。
「週末だから監視していなかっただと?! 冗談を言ってるのか?!」
この辺り、安息日を守る、というのも宗教的な要素があったりするのか。
「何がキャピタル・アーミィだ。つくづく地球人は、絶滅していい動物の中に入るな」
そして突然の衝撃発言。
単なる愚痴なのかもしれませんが、流れからすると「地球人」という物言いには意味がありそうですが、さて。また、電話で「マスクをジュガン司令に面会させたいのだ」と話しており、クンパ大佐にはマスクの使い方に関して何か思惑がある様子。
法皇と面会した一行は宇宙からの危機について聞くが、ノレドの存在に気付いた法皇は、長官への返事よりノレドへの挨拶を優先。ベルリまで少々違和感を覚えた顔をしており、ここでノレドの存在も謎めいてきます。あまり、日常キャラだと思っていた幼馴染みが物凄く重要人物だった、みたいな展開は好きではありませんが、こちらもどうなるか。
次々と法皇に疑問や政治的思惑をぶつける一行だが、法皇スコード教の重要性を語るだけで、話はどうも噛み合わない。
フォトンバッテリーが宇宙で自然に湧いて出るとでも、お考えでしたか?」
ここでフォトンバッテリーが地球人には修理も解体もできないオーバーテクノロジーである事が判明し、不安を煽るような揺らぐカメラワークの中、クンパ大佐も登場。更にケルベスらが飛び込んできてベルリを連れ出し、不穏な気配を感じたアイーダ、ノレド、ラライヤらもそれに続く。
取り残された大人4人をそれぞれ、宗教画を背景に1人ずつあおり気味のカットで映し、最後は俯瞰気味で背景の宗教画が大きく写るカットで幕。
カメラワークといい無言といい、何とも不気味な雰囲気の漂うラストシーンになりました。
特に、これまで本性の見えなかったゲル法皇が、非常に不気味な感じに。雲を掴むようなやり取りを、カメラワークで不気味に見せていくという演出も面白かったです。
ところで、ラストカットの宗教画は、右側が仏教・ヒンズー教系、真ん中がキリスト教系というのはわかるのですが、左側はどういうモチーフとイメージなのでしょう。どうも人の顔(仮面?)が真ん中に大きく描かれているのですが、他は幾何学模様で、ピンと来ません。ローカライズの問題があるので、左側に関してはこれといったモチーフは無いのかもしれませんが。
〔前半のボトルショー的珍道中→中盤のアクションスペクタクル→後半の不穏な伏線と不気味な会見〕
とシチュエーションを変えながら展開する中身の詰まった3部構成で、非常に面白かったです。特にラストの、今回の流れから(数分前にはマスク大尉が空を飛んでいた)、思いもかけない不気味な空気に持っていったのは良かった。直接死人が出ているわけでも悲惨な事が起きているわけでもないだけに、いっそう場の気持ち悪さが見ていて不安を募らせます。
次回、ベッカー大尉大暴れ? そして予告のベルリがえらく調子に乗っているけど大丈夫か?! それとも不在の「天才」への嫌がらせなのかっ?!
なお次回はアニメ『進撃の巨人』の監督である 荒木哲郎氏が、自ら売り込んで絵コンテを担当したとの事。
〔[ガンダム Gのレコンギスタ]富野監督が絶賛 「進撃の巨人」監督参戦の裏側/マイナビニュース〕
ハードな駄目出しには逸話の多い富野監督ですが、「絵コンテを書いて、富野監督に渡すと、100枚以上の付せんが張られて返ってきたという。」ってそれだけ真面目に打ち返してくれているという事であり、これはたまらない体験だったろうなぁ……。