◆第42話「Jの迷宮/ダイヤモンドは傷ついて」◆ (監督:石田秀範 脚本:長谷川圭一)
ダブルvsジュエルの戦闘に、アクセルTとナスカV3の高速戦闘が乱入し、エクストリームのシールドビームが反射されてジュエル以外3人の変身が解除されて痛み分けで水入り。
こと防御力に関してはここまでの劇中で最強っぽいジュエルですが、“防御が最大の攻撃”という描写は数多の怪人の中でも、なかなか珍しいような。
泪、誠、智、毎日不良達と大げんかしていた三人組の事を思い出す刃野。
「刃野、あたしらが喧嘩するのは、この街が大好きだから」
ところがある日、泪が子供達が作った土手の風車を破壊してしまう。
「おまえ、この街が好きだって言ってたろう」
「好きよ。でもあたし、好きになればなるほど、最後には壊したくなる」
回想シーンを見る限り、泪はちゃんと女でした。男3人の倒錯した友情とか無かった……!
翔太郎に、「上杉が危ない」とその情報を伝えた刃野の前に、泪が姿を見せる。ここで格好良く説得するわけではなく、「俺を宝石に変える気だな?!」と本気で怯えて後ずさる辺りが実に刃野刑事というか、物凄く意表を突く展開です(笑)
刃野という男の存在が、間違いなく一人の人間を救うにも関わらず、その刃野は劇中でさっぱり格好良く描かれないという空中殺法は、なかなかお見事。
「あんな単純で騙されやすい男、宝石にする価値もない」
「おい、勘違いするなよ。刃さんは騙されやすいんじゃねぇ、騙され上手なんだ。昔っから刃さんに世話になりながら、そんな事にも気付けねえのか。情けねえぜ」
泪は、刃野も翔太郎も自分に騙されている、と言い残して逃走し、その言葉に考え込む翔太郎。フィリップはジュエルの能力を知る為に再び星の本棚へ入るが、そこでまたも若菜に弄ばれ、クレイドールに変身した若菜に、踏まれる。
かつてここまで、主人公達が前後編で踏まれまくる作品があっただろうか……!
既に若菜の星の本棚とのシンクロ率はフィリップを上回り、フィリップの検索を感知した上で、フィリップよりも自在に本棚の中を動き回れるようになっていた。下手をすればそのままミュージアムに拉致されてしまう、と思い悩むフィリップだが、亜樹子の「半分こ」発言に何かを閃くと、再び本棚へと向かう――。
一方、泪から会いたいと連絡があった、と事務所を上杉が訪れ、翔太郎と亜樹子はそれに同行するが、上杉を罠へ誘い込もうとした泪が3人の目の前で爆死。泪は愛する上杉と爆死心中を目論むもミスにより死亡し、事件はこれで幕を閉じたのか? 報告書を作る翔太郎だが、そこには事件の真相、最後の1ページがまだ欠けていた。
「じゃあ行こうか」
「行くって、どこに?」
「……報告書の、ピリオドを打ちにさ」
わざわざ亜樹子の前でこれ見よがしに報告書をタイプする辺り、いつか使いたかった秘蔵の台詞ナンバー18ぐらいだったと思われます。
翔太郎達はフェリーに乗り込むと、そこに居た上杉を事件の真犯人でありドーパントの正体として糾弾し、そこへ粉々に吹っ飛んだ筈の泪も姿を現す。
翔太郎達が目撃した、泪のドーパントへの変身は、ジュエルの能力により空気中に鉱石の粒子を散らばらせる事で作った鏡の映像であり、フェイク。女達を宝石に変えていたのは上杉であり、恋人であった智を宝石に変えて人質にされた泪は、その命令に従ってわざと現場で目撃される怪しい女を演じていたのだった。かつて風車を破壊したのも上杉であり、当時上杉に惹かれていた泪はそれをかばうが、やがて上杉の性質に恐れを抱き、見るからに三下ちんぴらだった智と結ばれる。だが、泪が自分を愛していると思っていた上杉はそれを許さず、己の凶行に二人を巻き込んだのであった。
…………あれ? これだと、上杉は本当は智を愛していたという解釈も成り立つような(待て)
「僕はね、完璧主義者なんだよ。愛せば愛すだけ、その不完全さが目につく。それが次第に、我慢できなくなる。全部消してしまいたくなる。おまえの事もそうさ、泪」
とんだサイコさんだった上杉は、智の指輪を海に投げ捨てるが、そこへ飛び込んできた青い疾風が指輪をキャッチ。そうそれは、時々戦闘中にトライアルになれる事を忘れていないか心配になる照井竜の、アクセルトライアルであった!
このタイミングの為に待機していたらしい課長、今回は凄く小間使い。でも仕事だから文句言わずに自分の役割を果たすのが課長のいい所。なお爆死寸前の泪を救ったのも、現場で待機していたアクセルTであった。
「「さあ、おまえの罪を数えろ」」
人間のクズではあるがここまで最強クラスの力を誇るジュエルに苦戦するダブルとアクセル。だがフィリップは既に、ジュエルの能力とその弱点について検索を完了していた。フィリップは故意にシンクロ率を下げて星の本棚へ入ると、X土偶を擦り抜け、若菜が開いたジュエルの本だけをまんまと閲覧する事に成功していたのだ。
先に、シンクロ率の低かった若菜が本棚には入れるけど本とフィリップに触れない、というのを伏線として利用し、フィリップが頭脳プレイ。どうやって意図的にシンクロ率を下げたのかは謎ですが、まあ、そう出来るという事なのでしょう。
ダブルはエクストリーム化すると、鉱石の弱点である、割れやすい方向――“石目”を正確にプリズム剣で貫き、ジュエルを撃破。
「るい……おまえが……刃野みたいな、あんな刑事かばわなきゃ……こんな奴等、呼び寄せる事なかったのに。なぜ刃野を……?!」
「あの人だけは傷つけたくなかった。昔から、どんな嘘にもすぐに騙されて……馬鹿な人」
ここで、「Nobody’s Perfect」が流れ、泪と刃野の回想シーン。
「おまえもう絶対喧嘩しないって約束したろ」
「ダチが人質に取られたんだよ」
「――そんな事が! よしわかった。いいか、でももう二度と、喧嘩すんじゃねえぞ。わかったか」
あまりに簡単に、嘘を信じる刃野。その姿に泪は、その嘘を守る。
「なんだかあたし、騙されたあいつに、付き合わなきゃならない気がして……本当に、二度と喧嘩しなかった。だから、あの人は、私の恩人」
「僕の……完璧な計画が…………あんな、間抜けで騙されやすい、刑事の為に……」
「上杉、一言云っておくぞ。刃さんは騙されやすいんじゃねえ――騙され上手だ」
「Nobody’s Perfect」で翔太郎と泪の回想を重ね、今回のキーとして「騙され上手」で締める、という構成。BGMというのは基本的に、シーンの意味を方向づける為に用いるわけですが、今作の切り札中の切り札である「Nobody’s Perfect」を用いるのは少々ズルながら、綺麗にまとまりました。
終盤のサブキャラエピソードで、普通に作ると刃野が格好良い所を見せて(最後に説得に現れたり)わかりやすくいい話にしてしまいがちな所を、刃野がかなり間抜けな所は弄らないまま、そんな刃野の影響で周りのちょっと折れ曲がりそうになっている若者達が真っ直ぐになる事がある、そして刃野は終始蚊帳の外、というか檻の中、という形の変化球にしたのは面白かった所。
特に、刃野を急に格好良くしてしまうのではなく、格好悪いけど、そんな大人の真っ直ぐな格好悪さが人を救う事もある、としたのは良かった。
史上最もマキシマムドライブ〜メモリブレイクに長時間耐えた男・上杉誠も遂に倒れ、ジュエルメモリが砕け散ると、指輪から元に戻った智は泪としっかり抱き合う。
(女性達も全て元に戻り、今度こそ、事件は終わった)
……で、全員、船でどこまで行くんだ(笑)
調子に乗りまくっていた真倉は180°態度を改めて下っ端に戻り、「もう俺は簡単には騙されねえぞ」と宣言する刃野だが、翔太郎の「あ、雪男!」という言葉に走り出して中年男の人格は一朝一夕では変わらず、しかし突然の冷気と共に風都署の前に雪男らしい怪物が通りすがって嘘から出た真……? でオチ。
まあどう考えてもドーパントなので、驚いてクラクラしている場合ではないぞ、翔太郎。
犯人が悪女だと思ったら、その背後にとんでもないクズ男が居た、という風都=悪女という約束事を逆手にとってミスディレクションに使うという、ある種の禁じ手エピソード(笑) 真っ当にやるとアンフェアになりすぎると考えたのか、予告から「悪女」を強調する事で、むしろ悪女ではなさそうという流れを作って物語を組んだのは、良い配慮だったと思います。
気になった点としては、少々ジュエルが強すぎた事。各ドーパントの特殊能力に焦点を当てる事で単純なパワーインフレを巧く避けてきた今作ですが、防御特化型とはいえビームも出せるし、真っ向勝負でもジュエルがやたらめったら強くて、一般市民ドーパントが、どう見てもナスカ婿殿より強そうなのはどうだったのか(笑)
この星は、霧彦さんに厳しい。