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映像の原則より――『Gのレコンギスタ』感想・第15話(Bパート)

◆第15話「飛べ! トワサンガへ」◆ (脚本:富野由悠季 絵コンテ:斧谷稔 演出:河村智之)
Bパート、射撃の応酬を終えたアサルトG−セルフと、ロックパイ率いるモラン部隊の距離が詰まり、白兵戦へ。
ここでの戦闘シーンが、富野演出の原則論のテキストとして、非常にわかりやすいので、折角なので少々分解してみようと思います。
(キャプチャ画像か、せめて略図ぐらい使った方がわかりやすいですが、文章だけでご容赦)

映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

富野演出の原則論の一つに、大雑把にまとめると、
「画面右手(舞台における上手)から上位の存在が登場し、逆に、上昇志向のあるものは画面左手(舞台における下手)から登場する。劇全体のなかで敗北していく役柄は上手から出て下手に消え、劇の終了時に成功を収める役柄は下手から上手に向かって演技を展開すると、映像の意味性を受け手が本能的に納得する」
というものがあります。
(※あくまで原則論です。何故そうなるのか、という理屈もあるのですが割愛)
今回で言えば、メガファウナを追撃する月艦隊及びロックパイ部隊(左←右)、迎撃に出るG−セルフ(左→右)という構図が、そのままこれに当てはまります。
白兵戦にはまず、その位置関係のまま突入。
「死ぬなよぉ!」
アサルトG−セルフはミサイルにより、モラン1機の脚部を破壊して戦闘不能に。しかし反撃を受けてアサルトパックが被弾。敵に囲まれ不利な状況になるG−セルフだが、アサルトパックを分離して隠れ蓑に使い、反撃。
「あれは不採用になったYGじゃないか!」
ここでG−セルフに見覚えがある敵パイロットが登場。
G−セルフは素早くモランの背後に回ると、サーベルで脚を切り裂き、2機目を戦闘不能に。
ここで位置関係の左右が逆転し、G−セルフが上手に、モランが下手に、と切り替わります。
パイロットは脱出してよ! 爆発させてないんだから!」
勿論、単純に戦闘中の動きとして切り返しによる左右が逆転してもおかしくはないのですが、3機目のモランとの戦いは、この位置関係のまま展開。
「僕にライフルを使わせないで下さい!」
下手から迫るモランに対し、コックピットをビームサーベルで直接攻撃しそうになったベルリはそれを寸前で止めると相手の攻撃を回避。距離を取ってビームライフルで腕を破壊して3機目のモランを戦闘不能に。
「――まだ居るっ!」
そのG−セルフに画面右側からロックパイ機の操るアリンカドが迫り、ここでまたも位置関係が逆転し、G−セルフが下手に、アリンカドが上手(優位な立場)に。
「追いかけてこなければ!」
「YGは速い!」
G−セルフはアリンカドの射撃をかわすと回り込んでクローを切断し、再びG−セルフが上手に逆転。
続けて、ビームサーベルをアリンカドの機体右側に突き刺すのですが、このカットではアリンカドが画面奥を向いており(画面に尻を向けており)、意図的に下手(アリンカド)−上手(G−セルフ)の位置関係が保たれている(クローを破壊された時点でアリンカドの進行方向が逆転している)のが見て取れます。
「ラライヤが地球人に寝返ったのか?!」
「これ以上僕にライフルを使わせると、みんなで死ぬぞ、って言ってるでしょ!」
G−セルフは襲いかかるモランを蹴り飛ばし、もつれ合う2機。
「あれはラライヤではない。地球人が操っているんだ!」
ここでロックパイが確信をもって言うのは、クリムの姫様評「彼女にそれほどの腕は無い」と同じ理論でしょうか(笑)
ロックパイは舞台上手に撤退して白兵戦は一段落し、ここで、下手にG−セルフ、上手に月勢力、という今回における基本の構図に戻ります。
白兵戦におけるめまぐるしい攻守の逆転の中で、常に位置関係の優劣が物語のダイナミズムとして組み込まれている、という富野演出のわかりやすいサンプルでした。
このシーンだけ取り上げると「それで?」で終わってしまう話ではあるのですが、こういう映像の意味づけを延々と積み重ねていく事で、映像に物語を付加していく技が、富野由悠季のずば抜けた所であります。
ちなみにこのBパートの戦闘シーン、位置関係の理屈について把握した上で、遅めの早送り(て、何と言えばいいのだろう(^^; 早口だけど聞き取れる音声が出るぐらいのスピード)で見ると凄く面白くて、立ち回りとして非常に良く出来ているのがわかるので、ちょっとしたお薦め。
ロックパイ部隊を退けたG−セルフの後方では、メガファウナへ迫る砲撃を、皆でビームを拡散させて防御中。ラライヤも真っ赤に塗ったモランを出撃させてこれに参加し、パイロットしての基本的な技術を見せる。
「ラライヤ、チュチュミィを忘れていった!」
…………捨てられた?
ここで、本作のメカデザインを務める刑部一平さんの、12/4付けのツイート&イラストをご覧下さい。
〔https://twitter.com/ippeigyoubu/status/540499020108414976〕
見た時爆笑しましたが、危惧が現実に……?
ヘカテーとクリムジャハナムも出撃し、毎度楽しそうに雑魚を蹴散らしてちょっぴり活躍。ヘカテーヘカテーのキット化を宜しくお願いしますバンダイ様。
両機の深追いを危惧したベルリは、月艦隊へ向けてアサルトパックで砲撃。
「これで撃つけど……これは牽制なんだ! 誰も死ぬなよぉっ!!」
この一撃が、退却中のモランを直撃して撃墜。
前回あっさりと追撃してくるモランを撃破したベルリが、今回は宇宙空間での操縦に慣れてきたのか、やたらに「死ぬな」台詞を連発し、明確に直撃を避ける動きも見せるのですが、散々やった挙げ句に、これです。
酷いとか酷くないとか通り越して、もう単純に、こういう演出を出来るのが凄い。
「まさか……地球人の中に、伝説に言われているニュータイプなんてのが……居るわけはないだろう!」
ロックパイは、マッシュナー艦隊の支援を受けながら、何とか撤退。
出すと一部で大喜びされる「ニュータイプ」という単語ですが、“伝説”と収めたのは世界観としてもしっくり来て、いいバランスだったと思います。そちら方面には行ってほしくないし9割方行かないとは思うのですが、サービス、サービス。
クリムジャハナムが接近戦で細かい傷を負ったのをミックが視認し、両機は手近なメガファウナへ着艦して応急修理。ベルリは久々に、落ち着いた状態でクリム達と顔を合わせる事になる。
クリム「アメリア軍に入隊してくれたか?」
ベルリ「自分はキャピタル・ガードのままです」
ミック「な? 可愛くないだろ?」
に始まり、
クリム「姫様はなぜ、トワサンガへ向かう気になったのです?」
アイーダ「ドレット艦隊の動きを、止める為です」
と来て、
艦長「どういうつもりで、サラマンドラを出したのか?」
クリム「トワサンガの存在を、タブーにしている意味が無くなったからです。となれば――」
ベルリ「ドレット艦隊と連合するんですかぁ?!」
クリム「なんだって?」
などなど、月を目前にしても、それとなく腹の内を探り合う人々。
ベルリがかまかけ(多分)を外した後、クリムを「天才の考える事だから」とおだててみたり、そのクリムは軽口紛れにベルリの立ち位置を改めて確認していたり、艦長はクリムの暴走を心配しており、クリムからスルガン総監も噛んでいるのでしょう?と振られて「え?」という姫様の反応は素なのかポーズなのかさっぱりわからなかったり、戦闘が終わっても色々と油断がなりません。
ベルリが如才ないのは相変わらずなのですが、最近の姫様は、高度に政治的な韜晦なのか単なる機能不全なのか、本気でわからなくて困ります(笑)
なお今回、ヘカテーについてミックが「スルガン総監が調達してきた」と言っており、アメリア国産ではない模様。クリムいわく「真の宇宙用」との事なので、スルガン総監とトワサンガからの密航者勢力に繋がりがあるという裏付けか。G−セルフの事を考えると、ヘカテーも制式採用されなかった試作機という事なのかもしれません。
で、今回出てきたエルモランがスペースジャハナムと似たラインに見えるのですが、元々ヘカテーとモランが同系列の開発機で、スペースジャハナムヘカテーを参考にした結果、似通ったという所でしょうか。
そんな一幕もありつつ、マッシュナー艦隊の追撃を振り切ったメガファウナサラマンドラはいよいよ月の重力圏内へ入り、巨大な隕石をいくつかの輪っかで繋ぎ合わせたような、宇宙に浮かぶ奇妙な人工物――ラライヤの生まれ故郷、シラノVに辿り着く。
政権とドレッド側の対立を相変わらず軽い調子で語るリンゴに対し、隣に座るラライヤは妙に不満げな表情。
「君はレジスタンスの仲間だったのかよ!」
「南リングは私の田舎です」
ここまで1クール、人なつっこかったラライヤのイメージが強いというのはありますが、それにしても明らかに、リンゴへの態度が冷たい。
「下に居ないと思ったら! 艦長、捕虜をこんな所に!」
ケルベス教官がリンゴを見て眉を吊り上げ、やはりリンゴは一応、軟禁状態に置いていた模様。ケルベス教官が特別固い性格とも思えず、捕虜の扱い方に関しては、キャピタル・ガードの方がまともなのか(笑)
さて、前述してきた戦闘シーンの構図の要請で、ここまでメガファウナは左←右に移動しており(マッシュナー艦隊が上手から追撃してくる都合)、目的地である月が舞台下手にある、という原則論からするとやや歪な進行方向だったのですが、ここでそれが逆転し、メガファウナ→シラノVという進行方向に。
この際、特に劇的な出来事が発生しないのに進行方向が180°逆転すると違和感が出るので、カメラ位置を利用して応用的な段取りを踏んでいます。
大雑把に図示すると、


(立場が下位)ギゼラ○−−−−−−−○艦長(立場が上位)

カメラ
メガファウナ進行方向↓

という感じで、ギゼラを下手、艦長を上手に置き、艦長が喋る時はカメラを右に振る(艦長が右向きの絵になる)、ギゼラが喋る時はカメラを左に振る(ギゼラが左向きの絵になる)、というカットを切り替え、場面上で上位の存在であり主導権を持つ艦長の方向(操舵士であるステアもこちらのサイド)に物語の進行方向を自然に近づける事で、映像の連続性を保ちながらドックへの入港時にはメガファウナ−−→シラノVという位置関係が成立しています(大きな絵としては、月を画面左側に置いてその陰からシラノVが画面真ん中右寄り見えてくるカットでも、全体の進行方向を整え直している)。
実際のカットはもう少し曖昧なカメラ位置ですが、途中でケルベス教官がブリッジに入ってくる所で、教官を正面から捉える事によってブリッジ内を左側/右側にハッキリ分けるという効果が生まれており、いっけん洒落かと思うと実は重要な出番だったり。
メガファウナは誘導に従って南リングの古びたドックに入港し、罠を警戒してか一番明るいドックに入ったサラマンドラのクリム達は、MSでコロニー内部へと入り込む。
「MSだぁ!」「見るんじゃないの!」
ヘカテーを指さす子供、手を引いてそそくさと立ち去る母親、という描写を交えつつ、コロニー内部に入って即座に、MS、建物、人間の対比を一枚の絵に収めてきます。
様子を窺うクリム達だったが、突然電磁ネットをかけられ、制圧されてしまう。
スペースコロニー内でビームを使う馬鹿が居るかぁ!」
稲田徹さんが、名前ありキャラでも登場。なんか良かった。
一方、メガファウナ組はG−セルフ、アルケイン、レックスノーが先遣隊となり、コロニー内部の雑木林に降り立っていた。
「こんな荒れ地に降りなくたっていいのに」
「少しでも早く故郷の土を踏みたいんだって!」
“故郷の土”とは比喩的表現ではありますが、スペースコロニー内部でも、土は土、という事なのか。ラライヤの故郷への想いと、生活環境が窺えます。
「あはっ、ただいま! サウス・シラノは、トワサンガ!」
そこへやってくる、ラライヤの知人にしてEDダンサーズ最後の1人、フラミニア。ラライヤにとって姉のような存在らしいフラミーは一行に好意的に接すると、アイーダとベルリを見て驚きの表情を浮かべる。
「会っていただきたい方が居ます」
フラミニアが2人に会わせたい人物とは誰なのか、捕獲された天才達の運命はどうなるのか、次回――理不尽な真実がベルリを直撃する!
月勢力の登場後の13−14話と、各陣営の思惑が目まぐるしく錯綜してスポットライトの当たるキャラクターも多かったのですが、今回は、〔トワサンガへ向かうメガファウナvsそれを追うマッシュナー艦隊&ロックパイ〕にほぼ焦点を絞ったシンプルな構図で展開。
かなり意図してシンプルにしたのは、同じ追撃を受ける身ながら、サラマンドラ艦内の反応がばっさり切り落とされていた事からも窺えます。
そしてそのシンプルな迎撃戦に大きく尺を取った上で、その前後は“月は月でなにやら面倒くさそうだ”で挟んだ、という構成。
翻って身内同士でも腹の探り合いをしていたり、どこもかしこもひたすらシンプルとは行きません。
月の政権、ドレット家、レジスタンス、それぞれの思惑。未だ姿を見せぬカシーバ・ミコシは何を思うのか。そして、レコンギスタ作戦とは――チュチュミィの明日はどっちだ?!