都合により、前編。
◆第15話「飛べ! トワサンガへ」◆ (脚本:富野由悠季 絵コンテ:斧谷稔 演出:河村智之)
トワサンガへ向かって進むメガファウナとサラマンドラは、月艦隊の追撃への備えとして、ビーム除けのネットを広げる。一方、ベルリ達はラライヤから、月の内部事情について聞かされていた。
姫様が勝手に名前をつけたG−セルフの正式名称は、YG−111。
軍に制式採用されなかった試作MSであり、ラライヤの任務は先遣隊として地球に乗り込み、レイハントン家の生き残りを探しつつ、ドレット艦隊の到着を待つ事にあった。
月ではフォトン・バッテリーの技術を巡り、それを部外秘にしようとするレイハントン家と、それを知ろうとするドレット家の対立が古くからあり、結局、フォトン・バッテリーの技術は現在ヘルメス財団が管理。
大雑把に言えば、保守(レイハントン家)と革新(ドレット家)の対立、といった所でしょうか。
で、革命主義の姫様が
「技術の独占は反対」
と、軽口めいてはいますが、現時点では悪玉っぽく描写されているドレット軍のスタンスに近いのは、ちょっと面白い所。
面白いというと、一応、荷物を積んで仕切りめいた物はあるものの、寝袋+ハンモックでベルリが寝ている横で、女の子達がお喋りしている、という距離感は如何にも宇宙戦艦らしくて面白い所。ベルリもそのままシャワールームに突入したり。
またここで、空気の球をパイロットスーツの背中に装着する描写が初めて入り、ソフトボール大の空気の球一つで、人間が一ヶ月生存可能である、という事もハッキリしました。
月艦隊からは追撃のMS部隊が発進し、ロックパイはMSで長距離狙撃用のビーム兵器・アリンカドに乗り込む(第12話で輸送艦を落としたのはこの兵器か?)。
「金の鉱脈に餌を求める妖怪がアリンカド。地球人にはこの性能は、想像はつくまいよ」
好戦的な気質らしいロックパイ、とても楽しそう。
メガファウナ側では、アサルトパックを装着したG−セルフ他が、迎撃に出撃。
「あれ? どっちが上なんだ?」
「宇宙では、北極星の方向が上。俺らの感覚は関係ないんだよ」
緒戦で長距離ミサイルの撃ち合いが発生し、月艦隊側では、射程距離の近づいたアリンカドが砲身を伸ばし、エネルギーを蓄積する。
「ははははっ! このエネルギーの溜まりよう、地球人ども、月へ辿り着けるなどと思うなよ!」
メガファウナ側が左→右
月側が左←右
という進行方向を基本の構図とし、進行方向(物語のベクトル)の連続性を保ちながら両サイドを描き、小刻みに印象的な台詞を挟んでいくという、凄く、富野コンテです。斧谷稔単独名義の絵コンテは実に9話以来となり、非常に富野分が濃厚。
「アイーダさんは、メガファウナへ、後退!」
「俺たちの帰れる所を、守ってください」
「そうです。僕の帰る所は、メガファウナなんですから」
「り……了解」
皆、姫様の扱い方がわかってくる(笑)
というか姫様もようやく戦場の役割分担がわかってきているというか、これも姫様の成長という事でありましょう。
……若干、不満そうだけど。
「この距離だと直撃するかもしれないけど、そっちが攻めてくるんだから、死なないでよ!」
アサルトG−セルフは、長距離ビームを発射。
その頃、ラライヤは艦長に頼まれ、ドレット艦隊の武装についてリンゴ少尉から話を聞き出そうとしている筈だったが、「リンゴ少尉の言っている事など、私にはわかりません」と何やら不満顔。
「信じられん……あんな子が先発隊に送り込まれていたのか。ドレット軍なんていっても、やっている事は無茶苦茶だろ」
さてここでちょっと気になるのは、リンゴ少尉が一応、軟禁状態にある事。とはいっても独房などがあるわけではなく、格納庫の隅の倉庫に入れられてる、といった程度の描写ですが、ベルリの時とはだいぶ扱いが違います。まあ慣れない宇宙空間での交戦中、という事で当然といえば当然の処置なのですが、この辺り、地球人同士の戦いとの感覚の違いが見て取れるような気もします。
鹵獲されたリンゴのモランは赤く塗り替えられ、ノレドとハッパの心配を押し切ってそれに乗り込むラライヤ、かなりアクティブ。
サラマンドラからはクリムとミックも出撃し、ヘカテーのガトリングガンの先端に接近戦用のビームノコギリがついているという描写。
「戦艦以上に速いものに高熱源が……二つか!」
アサルトG−セルフはビームとミサイルで見事にアリンカドのビーム攻撃を防いでみせると、反撃。
「死ぬんじゃないぞ、撃っちゃうから!」
その一撃で逆にアリンカドを一機撃墜してみせる、と長距離武装同士の激突がスピーディに展開。戦闘のシチュエーションとバリエーションの変化、防御用のネットが漂っているというアクセントなどは、監督の十八番といった感じ。
ここまでがAパートで、Bパート編に続く。