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『ウルトラマンジード』感想・第23話

◆第23話「ストルムの光」◆ (監督:武居正能 脚本:三浦有為子)
んーんーんーんんー……ちょっと期待値上げすぎたかなぁ……。
思わせぶりなサブタイトルはただ純粋にそのままだし、K先生は単純に物理で殴り勝とうとしているだけだし、ベリアルの憑依と誘導が判明した事により、実際これまでアリエ人格はどの程度あったのかという事になり、アクセントとしてアリエを面白く受け止めていた身としては、場合によってはアリエの人格はどこにも無かったとされてしまうと、凄くガックリ。
この手のキャラ台無しは、1話限りのゲストキャラならともかく、連続性のあるキャラクターでやるのはデメリットが多すぎたのでは。
逆にもっと長い期間の中で違和感を少しずつ布石として積み重ねた上でなら面白くなる場合もありますが、特に匂わせる伏線があるわけでもなく、登場期間的には、最悪の分量だったように思えます(^^;
最後に倒れたアリエの様子を先輩が確認していたので、生きているのなら次回以降に拾われる事を期待したいですが……というかこれで完全退場だと、むしろ前回で退場していた方がよほどマシだった感。
“書き記す”という要素が、ラスト2話?でもう一度掘り下げられる事に、一縷の望みを賭けたい。
置き手紙を残してリクが姿を消し、アリエの残した資料からK先生が沖縄に居る可能性が高いと判断したゼナ先輩は、リクもそこに居るのでは、と沖縄に飛ぶ事に。リクの置き手紙を見つけて以来、目が据わっているライハはそれに同行を申し出る。
「……危険だ。私たちに任せて――」
「これは私の戦いでもあるの。誰がなんと言おうとついていく」
(じゃあ一人で勝手に行けよ……)
と内心で思ったけど、ゼナ先輩は大人なので口には出さず、
「……1時間後に出発だ。準備しろ」
と同行を許可。
据わった目で机を叩くライハは迫力はあるのですが、「誰がなんと言おうとついていく」という台詞の絶妙な格好悪さもあいまって、どうにも漂う何言ってるのこの娘感。
今回最後まで見ると、「リクだけの戦いではない」という事を言いたかったらしく、それなら前段で「これは私たちの戦い」とでも言っておけばAIBに対するニュアンスも違ったのですが、別にモアに声をかけるわけでもないので、リクに向けて「あなたは一人じゃない」と言っている当のライハが、一人でいい格好しようとしているという、頭を抱える分裂具合。
で、ライハが“色々あって徐々に周囲に馴染みつつある孤高の復讐者”というキャラクターならば、仲間への頼り方を知らないという理解でこの言行のちぐはぐさもまだ消化可能なのですが、しつこい繰り返しになってしまいますけれども、ライハは全くそういうキャラクターとして描かれてきていないので、スタッフの構想上のライハと、劇中の実際のライハの間に横たわる大きな溝が、結局最終盤、見事な地雷として爆裂。
……それともライハの中では未だ、これはリクと私とその他大勢の戦いみたいな認識なのでしょうか。
リクくんと泥棒猫2号の沖縄アバンチュールなんて絶対許さない、と当然一緒に行こうとするモアだが、ゼナ先輩は居残りを指令。
「やっぱり……私では役に立ちませんか」
「おまえは、ここに残って指揮を執れ」
「……え?」
「私もジードも居ないこの街に、もし伏井出ケイが現れたら、ゼロと力を合わせて戦えるのは、おまえしかいない。やれるな」
いつもの無表情ながら感情のこもった言葉と共にじっとモアを見据え、ここぞの切り札として肩を叩いて励ます先輩かっこいーーー。
さすが元テロリスト養成キャンプの教官、どこかの不滅の牙と違って、部下の人心掌握術もばっちりです。また、さりげなくゼロの行動に抑制を掛けているのが、熟練の戦士の目配り。
一方、沖縄のリクは、脳に直接囁いてくるようなK先生の声を聞き、その姿を目にしていた。
「おまえは、自分の生まれた星が、目の前で燃えるのを見た事があるか?」
以前レム回に登場した小説の内容――「ずっと昔、ぼくには静かな世界があった。でも、ある日、街が炎に包まれた。すべてを失ったぼくは、暗闇の中で気がついた。自分の力で運命が変えられない事を。そして、闇の支配者に全てを委ねた。」――は、リクの事を示唆すると同時に、どうやらK先生自身の過去を暗示していたようで、両者の相似と対比をより打ち出す形に。
ここで緑色の光の粒子をまといながら、夏の沖縄に漆黒のロングコートで出没するK先生の姿は、幻想的良い雰囲気でした。
「それは、想像を絶する恐怖と……絶望だ」
居残り組はアリエの手記から、K先生が敢えてジードやゼロの攻撃を受ける事で、ウルトラマンの攻撃エネルギーを反転して蓄積、自らを強化していたのでは、と推論。そしてそのストルム器官を最も強化する方法……それこそが、かつて侵略により灼き尽くされたストルム星が今も発し続ける炎、ストルムの光を浴びる事。それは地球では30年に一度、数分間だけ、沖縄のある場所で観測できる……
「ストルム……我が故郷」
K先生はその身に降り注ぐ碧の光を浴びながら、リクに囁きかけ続ける。
「私は失望した……弱いストルム星人である自分に。力が欲しい……もっと強い力が! その時出会ったのだ……ベリアル様に。あの御方の圧倒的な強さに」
「なにが強さだ。あいつはおまえの事を利用しただけだ!」
率直に、未だにヒーロー側が悪役を殴る理屈が「おまえは利用されただけだ」なのは苦しいというか、リクの言葉がK先生に届かない断絶を描くならば、もう少し届きそうな言葉をリクに考えてほしかった所です。
「あの御方が利用したのではない。私が、全てを捧げたのだ」
案の定、K先生にはバッサリと切り捨てられ、遂に城跡で直接対峙する2人。
「おまえなど必要なかったのだ。たとえウルトラマンの遺伝子はなくとも、あの御方の理想も夢も、この私が」
「それを止める為に僕がここに居る。それが、ウルトラマンとして生まれた僕の使命だ!」
今回、やたらめったらリクが「使命」だの「宿命」だの強調するのですが、第12話において「朝倉リク」としてウルトラマンになり、第17話にして「変えてみせる! 僕の運命は、僕が決める!」と父の呪縛を断ち切ったリクが、「具体的にはわかんないけど、誰かを元気にさせたり、楽しい気分にさせたり、そういう人」として戦うのではなく、公器としてのウルトラマンにこだわり続けているのは、テーマ的に半歩後退した感じで、どうもしっくりとノれず。
まあリクにとってK先生との決着は“過去の清算”であり、それを済ませた時に“自分の未来”へ一歩踏み出せる、という意図なのかもですが、結末へ向けて若干の不安要素。
「……少し話しすぎたようだ。今日この場所でおまえとの決着を付ける。さあ……ここでエンドマークだ」
「僕がおまえを止めてみせる!」
両者は共にフュージョンライズし、駆けつけたライハとゼナの前で、激突するジードとKゼットン。久々登場のヒゲスラッガー+クローも、ストルム力前回のKゼットンに弾き飛ばされ、ジードはモミアゲマスターを発動。
「これで、本当に、エンドマークだ」
対するK先生は遂に最強の怪獣カプセル二つを自らの体内に打ち込み、掟破りのスーパーウルトラジャイアントKゼットンへと変貌。その巨体はゾフィー先輩の87光線でも打ち破れないが、スーパーウルトラジャイアンゼットンパンチを回避したモミアゲの、宇宙最強ロイヤルエンドの全力放射により、K先生、史上最大のエンドマーク(通算5回目)
「なぜ……なぜ勝てない……!」
地面に這いつくばって呻く先生を見つめるリクの元に、駆けつけるライハと先輩。
「もうよせ。おまえの負けだ」
「朝倉リクぅぅ!!」
ところがその時、もう一人の人物が軽やかに現れ、怪獣カプセルを拾い上げる……それはなんと、死んだ筈の石刈アリエ。
「私の息子に勝てるとでも思ったのか」
K先生を冷然と見下ろしたアリエは、突如振り下ろした手でK先生の体を貫いてストルム器官を抜き取り、それをごくりと飲み干すと、その体にベリアルの影が重なる……!
「私は常に、おまえと共に居たのだよ」
「ベリアル様……」
ダダロボの砲撃を受けた際、K先生が記憶と力を取り戻したのは、ただのショック療法ではなく、既にアリエに憑依していたベリアルの力によるものだった。
「私がおまえに力を与えていたのだ、ずっと。だが、ここまでだ。ストルム器官を失ったおまえは、数日で息絶える。おまえの使命は終わった。ふふふふふふふははははははは」
アリエの体から抜け出し、陽炎のように浮かび上がったベリアルは哄笑を続けながら宇宙へとその姿を消す。
「あなたは、遂に私を選んで下さったのですね。……はは、あはは、あはははははははははははは」
力を奪われ取り残されながらも、その姿を見上げ、喜びに打ち震えるK先生。
「見たか! ベリアル様は復活した!! おまえたちはおしまいだ。これからベリアル様はこの宇宙を征服する。新しいベリアル様の世界が、始まるのだぁ!!」
「これがあなたが望んでいたこと? 利用されてただけじゃない!!」
「おまえ達に何がわかる。あの御方と一つになれた。これ以上の、喜びがあるか……?」
K先生は崇拝するベリアルに使い尽くされた事を喜び、互いの価値観が噛み合わないままなのは別に構わないのですが、ライハまでがリクと全く同じボールを投げつけ、物語の重要なポイントを強調したというよりも、ライハのキャラクター性の弱さが浮き彫りになります。
そもそも上述したようにこの批判はクライマックス寸前としては悪役を殴るのにあまりに軽い鈍器なのですが、10歩譲ってリクは“誰かに利用される存在から自分の運命を切り拓く”というテーマ性を持っているのでまあ良いとしても、ならばライハが抱えているテーマとは何か? という話になるわけですが、なんでしたっけ……?
もう一つ、リクの持っているテーマはテーマとして、それはK先生との対比要素、つまりは衝突する争点にしかならないので、リクがK先生を「倒す」のではなく「止める」としているのを“キャラクターの変化”として描きたいのならば、リクはK先生に対して別の論点を持ち出さなくてはならないのですが、それが出来ていない為に、1クール前と同じ事を繰り返しているだけになってしまっています。
K先生の身柄を拘束しようとするGメンだが、K先生は海に転落して失踪。
「可哀想な人。……リク、もう、一人で行くなんて言わないで」
「ライハ……」
「あなたは彼とは違う。あなたは……一人じゃない」
K先生とリクの違いを、支配者への無限の忠誠に救いを求めたのではなく、共に歩いていける仲間の存在を得た事とするのですが……率直にこの言葉、モアとかペガの方が効果的になったと思います。
作り手からすると、正ヒロインポジションであり最もキャッチーなキャラクター(だった筈)のライハが、代表してこれを言うのが当然の集約だったのでしょうが、私の中では、ライハ、モア、ペガ、レム、レイトと並べた際に一番キャラクターの芯が弱いのがライハなので、ライハが決めの台詞を割り当てられる度に、何を言っているんだこの娘は感が増していきます。
ライハへの思い入れで印象が変わってくるところでしょうが、個人的にはライハ、8−9話の複雑骨折後、ろくにリカバーされないままここまで来てしまったと思っているので、結局あの大惨事が長い尾を引いたのが残念。もういっそ、なんだかんだライハはリクに好意を持っているというエピソードでも挟まれていれば、じゃあまあ仕方がないですね、と納得感が上がったぐらい(^^;
(僕は本当に、彼を止めたかったんだ。世界の為にも、そして彼自身の為に。でも……まさかあいつが、ベリアルが戻ってくるなんて。これから起こる事、それは、想像を絶する恐怖と、絶望の物語が、始まろうとしていた)
宇宙では、二つの怪獣カプセルを取り込み、デモニックフュージョンしたベリアルが新たな姿に、でつづく。
あちこち不満点のあるエピソードでしたが、次回予告に、伊賀栗家の前に姿を見せるK先生、K先生と切り結ぶライハ、という映像があり、大きな穴と、触れて欲しい要素の二つが上手く繋がってくれれば、ライハ奇跡の大ジャンプの可能性もあり、望みを託したいところです。一方で今回、モアが職場で認められるルートに突入してしまい、ヒロインレースの行く末は波乱含みですが、ゴール後の感想が「……うんそれで、何を言っているんだこの娘は」にならないといいなぁ…………。キングの宇宙の崩壊、というのは今作ならではの仕掛けなので、最終章、面白く着地して欲しいです。