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『ウルトラマンジード』感想・第22話

◆第22話「奪還」◆ (監督:武居正能 脚本:三浦有為子)
前作に比べると、アバンのあらすじダイジェストの編集が面白い今作ですが、時系列を入れ替えて、
「やっと運が向いてきたみたい」「私と一緒に来て」「貴方のこと守るから」
のアリエさん3連発で締めたのが、凄くどす黒くて良かったです。
どうも結局、隠れ家提供の申し出は断られていたらしい石刈アリエが仕事場近くで何者かの気配に振り向くと、そこに居たのはK先生。K先生はアリエの頬に手を伸ばし……この姿を、仕事場の中に置いたカメラからロングで映しているのが良い演出で、やはりあの仕事場の壁はサイコサスペンス。
K先生はアリエを人質とし、人命が大事ならばダークルギエル&エンペラ星人のカプセルと交換、その引き渡し役は朝倉リク、というメッセージを宇宙Gメンに送信。
「今朝、AIB本部に届いた映像だ」
真っ赤な背景で不穏かつ極悪非道なメッセージからカット切り替わると、事態に対してすっげー無表情な先輩、というのが面白く、あくまでも偽装した宇宙人の器、というシャドー星人ゼナの異質感は、本当に良いアイデアでした。
そして、リクらにも宇宙Gメンにもまるで関係ないのに人質になっているアリエについては、K先生の事件を追っていたノンフィクションライターが巻き込まれたらしい、という形で説得力が与えられ、上手く繋がりました。
人命保護を優先する宇宙Gメン(ここで、ジードの力を都合良く利用したいのではなく、本来は巻き込みたくないというスタンスを見せているのが秀逸)からの協力要請をリクは承諾し、それを心配そうに見つめるモアは、星雲荘を出た所でその不安を口にする。
「リクくんを……一人で伏井出ケイに近付けるなんて、危険すぎます。これは、罠なんじゃないでしょうか! 伏井出ケイの狙いは、カプセルじゃなくて、リクくんを襲うことかも!」
「彼を危険な目には遭わせない。私にも策がある」
これを小揺るぎもしない同じ無表情のまま言うのが、先輩かっこいー。
その頃……レイトさんは、大きな営業先のアポイントメントを取る事に成功し、会社訪問直前だった。
(おお! はっは、おまえもたまにはやるじゃねぇか!)
「ゼロさん、ぼくだって、やる時はやる男なんです!」
内部の人も珍しくサラリーマンの戦いに称賛を送り、意気揚々と自動扉をくぐった途端、内部で待ち構えていた不審な黒服の2人組にズルズルと拉致されてしまうレイト。
「ニコニコ生命保険です」
「え?」
「緊急事態につき、ご協力をお願いします」
「えぇぇ?! やっとアポ取れた営業先なのにー!」
(あー……これだけはしょうがない)
伊賀栗レイト、またも社会的死亡の危機!(何回目?)
……典型的なお約束ギャグではあるのですが、さすがに洒落にならないドタキャンが多すぎる気がして、AIBの謎のコネクションでなにかフォローしてもらえるのでしょうか……レイトさんの社会的生命も保護してあげて下さい!!
いよいよ約束の時間、指定された取引現場へ到着する、リク、ライハ、モア、ゼナ…………て、リクを指名した筈なのに、物凄く戦力揃っているんですが。
内心、(え、こいつら……私のメッセージ、本当に理解したの?)と思っていそうなK先生はしかし、宇宙最強のSF作家としてそんな様子はおくびにも出さず、アタッシュケースに収められたカプセルを確認。鉄塔から吊り下げた人質のアリエを見せつけると、鉄塔にストルム火球をぶつけて半壊させる。
「さあ……カプセルを渡してもらおうか」
「……行くよ」
「気をつけて」
モアは進み出たリクにアタッシュケースを渡しながら、その手をぎゅっと握りしめ、ヒロインレースも最終コーナーを回った所で果敢に抜け出しをはかりますが、果たして先頭でゴールに飛び込む事は出来るのか?!
「このカプセルをどうするつもりだ」
「ふふふ、なぜ、おまえを指名したと思う? ……この物語に決着をつけるのは、この私か、ベリアル様の子であるおまえの、どちらかだ。ベリアル様に選ばれし者が、この物語にエンドマークを打つ。ベリアル様の意志を継ぐ者、それはおまえじゃない。私だ。この物語の決着の鍵は、私の手の中にある」
「……僕が絶対におまえを止める」
「はははは、ほざくがいい。さあ、カプセルを渡せ」
リクがアタッシュケースを渡そうとした時、そこへ飛び込んでくるZレイト。
「リク、ここは俺に任せろ」
リクはアタッシュケースを抱えて退き、後方待機していたGメン先輩も参戦してのK先生との激しい格闘戦に。派手な打撃のZレイトに対し、相手の腕を取って的確にダメージを与えていくテクニカルな先輩、という殺陣の違いがまた格好いい。
先輩の援護を受けたZレイトはアリエの救出に向かい、K先生の追い火球で崩れ落ちる鉄塔から、華麗なお姫様だっこでその身をキャッチ。アタッシュケース抱えてこれを見ているだけになったリクがちょっと間抜けになりましたが、最近ゼロはこれといった見せ場がなく、ヒーローゲージが溜まりっぱなしで暴発寸前だったので、やむを得ない所でしょうか(笑)
「間に合ったぜー」
久々の見せ場で、テンションも変に高い。
モアはアリエとアタッシュケースを車に乗せ、廃倉庫の中ではK先生と先輩が戦闘中。先ほどの格闘戦から今度は遮蔽物を利用しながらの射撃戦、と味付けを変えてきたのが良い緩急で、椅子を囮に使い、横っ飛びに銃撃を決める先輩もかっこいーーー!
そこへ更にライハが剣を振り回して参戦し、オールスター肉弾戦で追い詰められていくK先生。
「もうやめなさい」
刀を突きつけるライハはどうやら、復讐の事は完全に乗り越えた扱いになったようですが……ライハ認識では、「K先生はベリアルの復讐をしようとしている」→「復讐なんて虚しいもの」→「やめなさい」みたいな思考過程という事なのでしょうか。
それはそれで、ライハ個人の復讐の域を超えた破壊活動を行っているK先生に対するある種の“赦し”の観念がどこから出てきたのかもう一つ見えないのですが(キングへのアクセスの影響という可能性はありますが)、ライハはとにかく、ここに至っても、ライハの内面から出てくる感情や意志、に納得できる力が薄いのが本当に残念。
ライハは表面的な要素だけでも「なんだかんだ妙に周囲に気を配る少女」と「相手の気持ちには頓着せず自分の価値観を押しつける小娘」が不自然に同居しているのですが、解消されないまま最終回を迎えそうです(^^; 何度も繰り返しになりますが、第8−9話で爆発してしまったライハの動機と言行のちぐはぐさは本当に痛い失点でした。
「うるさい虫けらめ」
色々な意味で、結局は“振り切れない”ライハに奇襲攻撃で形勢逆転したK先生は殺意を向けるが、
「伏せろ!」
そこへ背後から飛び蹴りを直撃させる先輩超かっこいーーーーー!
今回あまりにも先輩が各所で格好良すぎて、もうこの先見せ場が無いのでは、と心配になるレベル。
「やはり簡単には終われないという事か」
Gメン先輩がモアにこの場からの逃走を指示し、K先生はキングジョーとギャラクトロンの怪獣カプセルにより、キングギャラクトロンを召喚融合。
これまでの融合怪獣が、元の怪獣の要素を取り込みつつもオリジナル怪獣としてのフォルム的まとまりが強かったのと比べると、ギャラクトロンの右腕にキングジョーが付属、みたいな勢いでフォルムのまとまりが悪いKギャラは、キメラ性がより強いと同時に、雑なその場しのぎ感が、K先生の現状を示しているようにも見えるところ。
ジーッとしてても」
「「ドーにもならねぇ!!」」
再びシンクロ変身したジードとゼロは、連係攻撃を浴びせるもマッハギャラクトロンパンチで押し返され、逃走するモアの車めがけて放たれようとするビームに気付き、体勢を崩しながらも駆けるジード。
「モア!」
リクが、モアの危機に、EXヒーローアクションを発動し、身を挺してビームを受け止めた!!(感涙)
……考えてみれば、第5話(あいかた回)も第10話(サンドドリアス回)も、リクがモアを守る時はジードへの変身がセットになっており、リクにとってのジード(「公のヒーローとしての力」)が、対モアに関しては、大切な人を守る為にちょっぴり背伸びした強さとして発揮される(意味を変える)のは、狙っているのかどうなのか。
前回、友達であるペガを生身で救っているのとは興味深い対比にも思えるのですが、(結果的なものも含めて)狙っていたらいいなぁ……。
ジード決死の<かばう>アクションにより、好感度上昇のSEが鳴り止まないもよく考えたらモアからリクへの好感度は既にMAXだ! というわけで直撃は免れるも爆発の衝撃に巻き込まれて車は停車。ビームの放出が止まった所に、体勢を立て直したゼロが後ろから放った飛び蹴りが、凄く高い打点でいい所に入っており、どうっと倒れたKギャラが少々心配になる勢い(^^;
「舐めた真似しやがって。本気出すぜ、ジード」
とにかく久々の見せ場で終始テンション高いゼロですが、むしろ2人揃って、相手を舐めて本気出してなかったの?! とちょっとどうかと思いました!
ところが、本気出したモミアゲマスターとゼロビヨンドに対して、Kギャラがこの局面で思わぬ力を発揮。
「そんなものか?! もっと、もっとだぁぁぁぁぁぁ!!」
まとめて押し込まれた両ウルトラマンのカラータイマーが点滅を始め、余裕かましてエネルギーを浪費していたからでは?!
(なんだ、この力は……?)
(今までと、何かが違う!)
前回ラストでも背中のストルム器官が光を放っていたK先生、ここでは目までが紅く光っており、なにやらベリアル復活へ向けての伏線でしょうか。
一方、先輩とライハは車に駆け寄るが、車内に居たのは気絶したモアだけで、アリエとカプセルは消えていた……。
ここでライハがモアを凄く心配している様子なのは悪い事はないですが、基本的にろくに会話をしておらず、この2人の交友をきちっと積み重ねるか、交友中心のエピソードが一本欲しかったところ。
一度は押し込まれたモミアゲとビヨンドだが、それぞれ剣を手にして反撃し、ゾフィー先輩の87ビームがKギャラのバリアを打ち砕く。
「俺の刃を刻み込め」
溜まりに溜まりまくるヒーローゲージを持て余している間に新必殺技と決め台詞を考えていたらしいゼロは、巨大スラッガーにウルトラ舎弟パワーを集中して最大出力で光の刃を纏わせ、KギャラをZの字にぶったぎるウルトラグラフィティブレイク(器物損壊罪にあたり刑法261条により3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料)により、K先生、ど派手なエンドマーク(通算4回目)。
ビジュアル的には凄く格好良かったのですが、残り話数を考えると、これ以上のドラマ要素はなく今作のゼロビヨンドの天井はここになりそうでしょうか。伊賀栗家とゼロの関係でもう一跳ね見たいところはありますが、変にヒカリ宅急便再び、みたいな大惨事になっても困るので、悩ましい(笑) 光の刃を放つ巨大な獲物、巻き起こる土煙、すれ違いざまの一閃でZを刻む、と映像は文句なしの格好良さでした。
がっくりと膝を付くK先生をおいつめるリクとZレイトだが、そこに、アタッシュケースを手にしたアリエ、そして息を切らせてモア達が駆けてくる。
「リクくーん! 彼女を止めてー!」
リクとレイトが状況を飲み込めない内に、K先生に近づいたアリエは、その中身を渡してしまう。
「お望みのものよ」
全ては、協力関係にあるK先生とアリエの狂言だったのだ……はストレートに、しかし途中で興ざめにならない形で、きっちりやり切ってきました。
「私、役に立つでしょ」
「想定していたよりもずっとな」
「そろそろ認めたらどう? これは貴方だけの物語じゃない。私たちの物語。私たち二人が、この手で、世界を終わらせる。その瞬間を見るのが、待ちきれない」
K先生の頬を両手で挟み込んで微笑みかけるアリエだが――その腹部を、K先生の手が無造作に貫く。
「ご苦労様」
二つの怪獣カプセルを手に、もはや物言わぬアリエに残酷な笑みを返すK先生。
どう転がすのかと思われた両者の関係は、アリエが無惨に切り捨てられる、という結果になりましたが、これによってまさに、K先生はベリアルの継承者であり、継承者であるが故に、ベリアルの駒である事から抜け出す事は無い、というのがほぼ確定。
今作に散りばめられてきた点と線から、表現者の業みたいな裏テーマがあるかと思っていたので、世界の終わり>本の発表、という変質により、アリエさんの作家としての狂気と執念が、K先生への崇敬にすり替わってしまったのはやや残念でしたが(K先生、他の宇宙人からはだいたい嫌われているので、悪のカリスマ感は薄いですし)、中途半端に仏心を出すK先生は見たくありませんでしたし、どうもK先生との決着は次回で付くようなので、潮時ではあったでしょうか。
そういう点では、K先生は忠実なパートナーたらんとしたアリエを切り捨てる事によって、自らベリアルの前座にしかなれない運命を選んだともいえますが、K先生の行為により、間接的にベリアルの邪悪が浮き彫りになる、というのは納得のいく構成。
キャスティング含めて好きなキャラクターだったので、もう少し、引っかき回す所は見たかったですが。
「朝倉リク! もう一度言う。この物語にエンドマークを打つのは、私か――おまえだ」
不敵に口角を吊り上げてK先生は姿を消し、倒れ伏したアリエに駆け寄るモアだが、その目が開く事はもう二度となく……明確に死に顔を描くと共に、遺体に取りすがって泣き叫ぶモアの姿を重ねる、というのは、かなり思い切ってきた印象。
(結局、彼女を救う事はできなかった。――僕たちは、伏井出ケイの手の中で、踊らされていただけだった。ケイを匿い、取材を続けていく内に、彼女は彼に心酔してしまったのだろう。だが、こんな結末を……彼女は予測していなかったに違いない)
毎度恒例のリクのモノローグで綺麗にまとめてしまうのは、今回は不必要だった気もしたのですが、必ずしもリクが、アリエの真意を掴んでいるわけではない、というのはちょっとしたポイントか。
「私のせいだ。彼女を止めていれば…………命は、守れた」
「なに言ってるの?! モアの方が殺されてたかもしれない!」
「それでも! 彼女とカプセルを守るのが、私の使命だったのに」
そしてアリエを救えなかった事を後悔して激しい自責の念を抱く、という形でこの最終盤にもう一段階、モアの心情を掘り下げる方向へ進んできたのは、ちょっと驚き。今回かなりモアとリクの関係が上積みされているのですが、アリエの死にまつわるモアの痛みと苦しみは、今回限りではなく最終章全体で意味を持った要素になってくれる事を期待したいです。そうする事で、石刈アリエというキャラクターにも、もう一段階の意味が出てくれると、なお嬉しい。
果たして、K先生は手に入れたカプセルを使わずどこへ消えたのか……
「僕が……やらなきゃ」
ひとり夜風に当たりながら、ジードライザーを握りしめるリクの脳裏に、K先生の囁きが響き渡る……で、つづく。
相性の悪い三浦脚本という事で少し不安だったのですが、小休止2本を挟んだ後の最終章第1話、しっかり盛り上げてきて面白かったです。
まずはアリエさんがリタイアし、ベリアル/Kと、K/アリエの関係が相似を為して描かれましたが、とするともしかして、かつてのK先生には、ベリアルの為に生きるという以外の、個人の執着があったのかもしれません。ここに来てK先生がが、“物語を紡ぐ事”へのこだわりを強く見せていますが、いったい誰が、誰の物語にエンドマークを打つ事になるのか。
次回――割と「闇」と「光」を明確な対立概念として置く今作(シリーズ)で、敢えて「ストルムの光」というサブタイトルに、期待が高まります。