- 作者: 原辰徳
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/03/01
- メディア: 単行本
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「自分で考え、決める力」「父から学んだ力」「人をひきつける力」「失敗から学ぶ力」「活かす力」「育てる力」の全6章に、父親である原貢氏、選手からのコメントなどが、挟まれるという構成で、子供時代・選手時代のエピソードを絡めつつ、監督としての選手への接し方や、考えなどを紹介するという内容。
この手の本にありがちな、無理に一般企業になぞらえたり関連づけてビジネス本としての体裁をとったものではなく、あくまで野球の話に終始してます。ただ、雑誌や新聞などで既出の話が多いので、原の追っかけをしている方には、目新しい話はあまり無いかもしれません。逆に、監督・原辰徳入門(入門してどうするのかはさておき)としては、上手くまとまっていると思います。
知らなかったエピソードで面白かったのは、高校時代、
「俺は松阪牛じゃねえぞ」って、今の原のイメージと言い回しのギャップが楽しい。
今となっては時効ということでお許し願いたいが、父は「若い時期にビールを飲むとな、いい筋肉ができるんだ」と言って、僕にビールを注いでくれた。俺は松阪牛じゃねえぞ、と思いながらも、父の言うことを素直に聞いた。
ちなみに飲む(飲まされる)量は、きっちりグラス一杯と決まっていたそうです。
あと、衝撃のカミングアウトが一つ。
な、なんだってーっ!?
余談になるかもしれないが、僕は『三国志』でいえば、曹操のようになりたいと思う。
まあこの後に「あそこまでにはなりきれないだろう」と続くのですが……。
全体的に、原のイメージがそのまま本になったというか、言葉こそ武器であると自ら語る、モチベーター型指揮官らしさに溢れた内容なのですが、
とか、WBCについて触れた章で
メディアの後ろにも、たくさんのファンがいる。したがって、監督という立場で、メディア向けにコメントを出すのは、戦略、戦術、用兵の次ぐらいに大事な仕事だと思う。言葉の使い方にしても、自分が感じたことの表現方法にしても、それを明快かつ的確に伝えることは非常に大きな仕事になる。
とか、敢えてしつこく書いている辺り、本当に珍しく、落合というか中日というかに関しては深く根に持っている模様。
世界中にいるすべての日本野球人が、日本代表に誇りと憧れを持って協力してくれると信じていたのだが、必ずしもそうではなかった。僕は悲しかったが、「こういうことも起こるのだ」「こういう逆風もあるのか」と学んだのは大きかった。
まあしかし、さすがの原も、根に持つ事はある、というのは逆に安心するといえばします(笑)
あと第二次政権以降の原には、どこか肝の据わったというか据わりすぎたというか、一種の開き直りみたいなものが感じられる事が多々あるのですが、
と語っているのは興味深いです。
1年間、懸命に監督を務めれば、やめることだってできるのだ。それが僕の中での宝物であり、ボーナスだ。やめることも、また喜びなのだ。
(中略)
僕も今、監督業は唯一の生活の術ではない。つまり、やめることだってできる。だから、僕は一生懸命できるのだ。1年燃え続けてなお続けるもよし、1年で燃え尽きてやめるもよし。どっちに転んでもいいんだというのが、僕が監督をやるうえでの覚悟であり、楽しみだ。やめることはまったく怖くない。
片一方で、あと5年、優勝争いを続けられるチーム作り(目標は10連覇)をしている人間が、片一方で「監督は、1年1年が勝負だと僕は思う。僕の中でのスパンは、あくまでも1年だ」と言う、この二つが矛盾なく同居しているというのが、どうやら、帰ってきた原、の凄みの秘密なのかもしれません。
原にはいつかその内、川相さんとかと一緒に、徹底的に藤田監督について語った本を出してほしいなぁ。